可愛いだけの我儘を俺に
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俺は猿飛木ノ葉丸。
俺には妹が一人いる。
「木ノ葉丸さん、なに見てんすか?」
「.....妹」
「へぇー、どの子っすか?.....あれ?てか木ノ葉丸さんて妹さん居ましたっけ?」
「生物学上モエギの妹」
「あーーー!モエギさんのか、とすると...あの子っすね、やっぱ似てますねぇ」
「は?どこがだよ?全然似てないだろ」
「え?似てますって.....まあ、モエギさんがキレイ系なら妹さんは可愛い系で...」
ビシ!!とりあえず一発。
「っいってー!!何するんすかー!!」
「うるさいよお前、いやらしい眼でジロジロ見てんじゃないぞコレェ」
「そっそんなんじゃねーし!ってか、それは木ノ葉丸さんでしょーが!〝.....妹〟とか言っちゃって白々しいっすよ」
「モエギの妹は俺の妹だろコレ」
「え?ちょっと待ってください、何か凄い事言った!それはモエギさんは自分の嫁だから、その妹は自分の妹になるって意味っすか?」
「モエギには七歳の時にとっくに振られてるんだよ」
「え!マジにすか?でも七歳ってそんなの時効じゃないすか、ワンチャンありますって」
「はあ.....お前ホント素直だな」
俺の恋路はそんな単純じゃないんだよ。
「あ!こっちに気付きましたよ!手振ってますねーアハ何だか可憐すね.....」
ゴンッ!!二発で済めばいいけどな。
「痛いってもー!何なんすか!!」
「お前が振り返してるんじゃないよ」
俺を見付けて笑顔になって、少し遠慮がちに手を振る。俺が振り返さなくても俺が隣の後輩をいじる姿を見て楽しそうに笑う。
ガキならともかくイイ歳の兄妹は、公衆の面前で笑顔で手を振り合ったりなんか普通しないと思うぞ。
ホント(自称)妹なんて面倒臭い事この上ない。
*************
「見つけたー!ちょっとアンタ、木ノ葉丸!!」
「お!?うおっ.....て何だよモエギか」
ーー何かヤバい、これはめちゃくちゃ怒ってるヤツだ。この歳で今更こんな目に遭おうとは。昔の俺なら即察知して逃げる所だが、今回は身に覚えがない上に鈍ってたのか完全に逃げ遅れた.....
「アンタねーちょーお喋りな後輩くんに何吹き込んでんのよ!おかげでアンタと私が付き合うのも時間の問題とかすでに家族とか夫婦同然とかある事ない事言われちゃってるんですけどっ!!!」
「あっあーーーーーーーーーーそれか.....」
「それか...じゃあないわよ!七歳の時のことなんて何で言ったのよ!随分経ってからあれは勘違いでしたってご丁寧に訂正しに来たのはどこのどなたでしたっけ!」
「いやだってそんなもん時効だし勘違いだし別にいっかーて.......すまん、ダメだったか?」
「それだけじゃないからよ!何で家族とか夫婦とか言われなきゃいけないの!」
「いやーーーそれは.....あいつが勝手に盛ったんだろ」
あ...
「何か言ったの?」
「ナズナの事を妹って...モエギの妹は俺の妹って言った...からカナ?」
「カナ?ってね...何それ」
「すみません、ごめんなさい、マジで」
「思ってもないこと言うからでしょ」
「本当ごめん、俺 全力で誤解解きまくってくるから!必ず!だから勘弁してくれ」
「ナズナの耳に入ったらどうするつもり?」
「どうって...別に普通に説明するだろ」
「普通にって...」
「それより、モエギの方は大丈夫かよ、好きな奴に誤解されなかったか」
「.....大丈夫、しばらく里を離れてるはずだから」
「そっか、なら良かった。けど、何かあったら言えよ」
その後、俺は虱潰しに忍び連中に噂を否定し誤解を解いて回った。わざわざ言って回るのも変だったかもしれないが、自分の撒いた種だし、この手の話は家柄のせいで放っておくと後々厄介な気もしたから仕方ない。努力の甲斐もあって、昨日から流れ出た噂は何とか落ち着かせる事ができたのだった。
**********
「やっと来た」
ナズナは嬉しそうに笑う。何がそんなに嬉しいんだよ。
「もしかして、私が一番最後ですか?妙な噂と誤解を払拭する特別任務は」
「ナズナには必要ないと思うけど、一応」
「本当は一番に誤解を解きに来るべき相手だと思うんだけどな~?私、身内だよ?ついに本当に木ノ葉丸ちゃんの妹になっちゃうのカナなんてハラハラしてたのに」
「何言ってんだ、どーせ、モエギに好きな男がいる事もそれが俺じゃない事もよく知ってるんだろ」
「うーん、まあ.....お姉ちゃんの事ならね」
「それに。こーいう時、身内は一番後回しって決まってるんだぞコレ」
「ふぅん........でも、おかげで久々に思い出して懐かしくなっちゃった、木ノ葉丸ちゃんがお姉ちゃんにプロポーズした時のこと」
「おっお前...あれはな...そういうんじゃないんだよ」
「そういうんじゃないって、じゃあどういうの?」
「...そそれは子どもだったしちょっとした勘違いがあったんだよ、ただそれだけで、別に初恋の相手がモエギって訳じゃないし.....」
「ふぅん.....そうだったんだ?」
「そうだよ」
「.....だったら言わなきゃ良かったな『お姉ちゃんと結婚できなくても私は木ノ葉丸ちゃんの妹になってあげるからね』ーなんて」
「.....へ?」
「あの時の木ノ葉丸ちゃん、お姉ちゃんに振られてものすごーく落ち込んでたから何とか慰めたくて、思わずそう約束しちゃったんだよね」
あの時の俺。そりゃあもう相当凹んだよな。思い出したくないくらい情けない思い出だけど、あれは、幾ら思い返しても色が褪せない初恋の思い出でもある.....
「そんなこと言っちゃったからいつまで経っても私は妹なんだよね、自業自得なんだけど」
「そんなのいつまでも気にするなって言ってるだろ?いい加減忘れろよ」
「うーん、でも.....約束破る事になっちゃうじゃない」
兄貴面で守ってるつもりでも、特に何かしてやれた訳でもない。こんなふざけた関係、メリットどころかデメリットしかない。
「こっちはもうナズナの心配なんかしてられないんだよ」
「そんなこと言って、本当はずっと心配してるくせに」
「してないよ、お前だってもう大人だろ」
「大人だって何だって危なっかしいのは変わらないよ」
「.....何の自慢だよ.....とにかく兄ちゃんはお役御免でいいんだよ、お前もちゃんとリセットしとけ」
「別に木ノ葉丸ちゃんにお兄ちゃんになってなんて言ってないでしょ」
「は?お前が妹だって言うんだったらそうなるだろうが」
「私は妹になってあげるって言っただけだよ」
「.....いつまでもそんなこと言ってると本当に男が寄って来ないぞ」
「別に要らないからいいよ」
「ナズナが良くても俺が困るんだ。.....これでもそれなりに責任感じてんだよ。だからどこでも勝手に行ってくれって言ってるの」
「木ノ葉丸ちゃんはどこに行っちゃうのよ」
「.....は?」
「私がどこかに行ったら、木ノ葉丸ちゃんもどこかに行くつもり?私の知らない誰かの所に行っちゃうの?」
「何言ってんだ?...俺の話じゃないだろ。だいたいなんでそんな怒ってんだよ」
「だって嫌なんだもん」
「何が」
「約束破るのが」
「はぁぁぁぁぁぁ??.....わっかんないなぁ...」
ナズナに俺の気持ちなんか到底解らないんだろうな。もう、突き放して冷たくするしかないんだ。俺はバカだから今よりもっとお前を傷付けるかもしれないのに。
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