その後輩にご用心
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「僕がしてきた事は間違いじゃなかったってことですね...」
ポツリと感慨深そうにヤマトが言う。何だろう、意味深な。
「.......何が?」
「ええと.....また、気持ち悪いって思われるかもしれませんが.....前にツグミ先輩が友達と話していたのを聞いたんです〝一目惚れなんて信用できない〟って言っていたのを」
〝お互いをよく知って少しずつ距離が...〟だの〝焦らないでちゃんと好きって思えて...〟だの、奥手な自分に言い聞かせるように言った少女趣味な台詞の数々。私よりはっきり覚えてるとか恥ずかし過ぎだから!
「だからですね、僕はまず自分を知って貰わなくてはと思って、ツグミ先輩とお近付きになる計画を立てた訳です」
「僕と先輩には殆ど接点がなくて近付くのは難儀でしたが、ちょくちょく話し掛けるようになった僕をツグミ先輩は煙たがらずに受け入れてくれて、凄く凄く嬉しかった」
もしかして私は策略にハマったのかな。だけど、私がそう望んだからヤマトなりに私に合わせて気長に寄り添ってくれた、あの穏やかな楽しい時間、その事実が私を簡単に丸め込む。
「一目惚れとまでは言いませんけど、何回か任務で一緒になる度に気になって目で追うようになって、気付いたらもう好きなっていました」
「.....えっ.....えっ.....あの」
「最初は女らしくない人だって思ったんです。ちょっと口が悪いし大雑把な所があって、でも笑うと可愛くて素っ気ないようでいて面倒見が良くてお人好しで、本当は少女漫画みたいな恋を夢見てて、さっきは間抜けだとか世間知らずだなんて言いましたけどそれだって本当は可愛い.....」
「って、ちょっと、言わなくてもいいから!そういうの、今言わなくてもいいから!」
「.....そう、ですか?」
「そうなの!何でも言えばいいってものじゃないの」
「はい」
「.....でも言わなきゃ伝わらないことだってあるんだからね」
「はい」
「これからは気になることがあるなら直接聞いて。勘違いなんてして欲しくないし、すれ違うのは嫌だから。.....私もそうする」
「はい」
〝はい〟と口数少なく返ってくるのが不思議と通じ合って染み込んで行く気がする。
「僕も...約束します」
.
.
.
「ツグミ先輩」
顔を上げるとヤマトの真剣な眼とぶつかる。
「改めて言わせてください」
いつの間にか両掌がヤマトのそれと繋がっていて、距離が近い。
「僕はツグミ先輩が好きです。僕と付き合ってくれませんか.....僕の、彼女になってくれませんか」
繋がる手から伝わる緊張と熱で身体は痺れたみたいに動かない。胸だけがパンクしそうに激しくなって苦しい、俯いたまま声が出ない。
「.....ぁい」
やっと出たのはか細い声...猛烈に恥ずかしくて咄嗟に手を離して顔を覆う。ああ、もうヤダ死にたい!どうしよう、反応がない、伝わってない?あ、手振りほどいちゃったから?.....不安過ぎてそっとヤマトの様子を伺う.......
「.....反則です、ツグミ先輩、可愛すぎ」
口元に手当てたヤマトの顔は真っ赤に染まってる。たぶん私も史上最高に真っ赤なんだろうけど、まさかヤマトもこういう顔をするなんて。
「.....でも、そういう所も好きです」
「そ、そういう所?」
「.....言わせます?」
「いっいいです、結構です!」
「あはは、そういう話はこれから幾らでもできますからね、今まで我慢してきた分ゆっくりじっくり伝えます」
「いえ、結構です.....」
「ダメですよ、こんなもんじゃ僕の好きという気持ちはまだまだ伝えきれません。続きは....ま、おいおいという事で」
「おいおい....」
「覚悟しておいてくださいね」
そう言ってめちゃくちゃ嬉しそうに企むような笑顔をする。私もそういう所が好きなのかもしれないね、たぶん。
.
.
.
「ああ、ああ.....」
お互いに余韻に浸り、大人しくなったと思ったヤマトが急に頭を抱えてワナワナと震える。
「えっ...どうしたの!?」
「いえ、明日の任務どうしようかと思って.....僕大丈夫でしょうか、色々と...ああ!何かしでかさないかな、幸せ過ぎて今ちょっとヤバいです、任務でもツグミ先輩と一緒に居られるなんて!だって彼女ですよ?ああ...浮かれてます、これは本当にまずいかも.....」
何事かと思えばこれは。頭を抱えて顔は青ざめたり赤くしたり百面相してる。嘘でしょ、もう可愛くて可愛過ぎる、嘘みたい。
「.....ぷ」
「え!ちょっ先輩、何笑ってるんですか!?笑い事じゃないですよ、僕は真面目に悩んでるんですよ!ツグミ先輩は平気なんですか!?」
「.....わかんないけど、そこまでテンパらなくても良くない?」
「ええええーーそうですか?だってずっと一緒なんですよ?だけど仕事なんですよ?ツグミ先輩ちょっと冷たくないですか?」
「.....じゃあ、別れる?」
「はっ!ぅええ!?」
「さっきの告白もその前も丸ごと全部忘れようか?そしたらスッキリさっぱり仕事一筋だよ」
「.........」
「.....ん?」
「僕を想う余りのちょっぴり意地悪なツグミ先輩も嫌いじゃないです」
「えっ」
「僕が不甲斐ないばかりにこんな可愛い嘘を付かせてしまい、すみません、ごめんなさい、僕が間違ってました、猛省します」
「.....ああ、そう、解ってくれればいいけどね...まあ確かに恥ずかしいとは思うよ、でもね、心強いんじゃないかなぁーなんてね、そんな甘いものじゃないよね.....」
「大丈夫です、きっちりきっかり、公私を分けてみせます。いつも以上に完璧にやり遂げますし、明日までにシュミレーション仕上げときますんで、ご心配なく。ツグミ先輩には不便はかけません、僕にお任せください!」
はう.....
〝僕にお任せください〟にキュンときた。はい、全てお任せします、と言うしかない。にしても持ち直して良かった。急にキリッと引き締めた感じ、そういうの格好いいねなんて言ったらまた気が抜けるかな?だから今は言わないけど。
私も気が向いたら教えてあげるね
それは、ま.....おいおいと言う事で。
終
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