自己中な心配性は君が好き
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友達が夢中になっている雑誌の表紙に目をやる。
『この春♡大好きな人ともっとラブラブになれるお勧めデート』
(...うーん...)
「ん?何?ツバメも興味ある?」
「う、うーん?そうだね...ないと言えば嘘になる」
「何よーそれなら遠慮しないでほら、一緒に見よ」
そういうと友達はバッと机の上に雑誌を広げた。
「ほらココ見てみて」
「ん?」
「公園デート!ボート!お弁当!ピクニック!!」
「ええええー何かそれは私しないかも...」
「そうなの?お手軽で気楽で良くない?行き慣れた場所でも案外楽しいよ〜」
「何だろう〜私と木ノ葉丸だと何かイメージ湧かない〜」
「えー?そんな事ないよーほら、お手手繋いでー♪...ってあれ?なんか公園で戯れてそう.....」
「でしょ」
「あーなるほどそういう事?」
「私たちにラブラブとかあるのかな、ほんと...」
だって、手だってまだ繋いでないですから!お手手繋いでー♪なんてまだ夢ですから!
「いやいや、だってちゃんと付き合ってるでしょ!二人きりになれば…ね、それなりにねぇ?」
「いや、別にいつも楽しいんだけどね、そういう意味ではたぶんラブラブなんだけど…」
「ってーーおい!!」
頭に軽い衝撃...いや、優しい温もり。この掌は。
「...木ノ葉丸」
見上げると彼が不貞腐れた顔で隣に立っている。いつの間に。
「お前なー他人様に何話してんだコレ」
頭に乗せられた掌が私の頭をわしゃわしゃと掻き回す。
「やだーちょっと止めて!まだ仕事残ってるんだから!」
「へーへー」
ぷいと木ノ葉丸から顔を逸らして髪の毛を整えていると友達がニヤニヤとこちらを見ていた。
「オレ、今日は遅くなるから」
「え...」
「あとこれは先輩が目通しとけって、二人に」
そういうと木ノ葉丸は書類を私と友達に向けて差し出した。
「ていうか、え...って何だコレ?何かあったっけ今日...?」
私の口から零れた一言。木ノ葉丸はちゃんと拾ってくれた。別に大した事じゃないのに無性に恥ずかしくて嬉しい。
「ううん、何でもないよ」
本当に何でもなくてただ寂しかっただけなんて、ちゃんと気にかけてくれた木ノ葉丸には言えない。友達の前だし尚更ムリ!
「そっか?ならいいけど」
「うん、資料ありがとね」
「おう、じゃあまたな」
軽く手をあげると木ノ葉丸は背を向けてさっさと行ってしまった。
「ちょっと!ツバメ、友達の前でそんなに別れを惜しまないでよ」
「そんなんじゃないよー」
「嘘ばっかりーもう何を悩んでるんだか、ラブラブじゃない」
「ん.....」
本当は結構びっくりした。ああいう風に頭を撫でたり髪を掻き回したり...された事なんてたぶん初めてだった。密かに心臓がバクバクで、だからちょっと突っぱねてしまった。木ノ葉丸は平気だったのかな、子どもっぽい自分が情けない。
**********
友達から借りて来た雑誌。パラりパラり捲りながら、思うのはずっと木ノ葉丸。
我ながらなかなか重症だ。今日みたいに触れられると、嬉しいのに恥ずかしくて心臓はバクバク...で、後から振り返ると今みたいにぽや〜んとしてしまう。
まだ乾いていない髪の先を摘んでみる。撫でられた頭、一瞬洗うのためらったし。いや、大丈夫、絶対また撫でてくれる...って、そうじゃなくて!こういうの...なんて言うんだろう。
(今日は夜会えなかった分、このまま浸って寝ちゃお)
雑誌をしまい、ゴロリと布団に寝転んで。すぐにまた跳ね起きる。
(嘘...あれ?嘘だ...でも...でもでも...)
カーテンをそっと避けると、ベランダに木ノ葉丸が立っていた。慌てて窓を開ける。
「よっ...」
珍しく神妙な顔付きで木ノ葉丸が片手を挙げた。
「あの、急に...遅くにごめんな...あと...寝てるかもと思って、ベランダから...ごめん」
木ノ葉丸がボソボソと謝る仕草。いつもと全然違う。
「ううん、大丈夫.....」
「.....もう寝てた?」
さっきまで考えていた人が目の前に居る。しかもちょっと予想してなかったシチュエーション。直視出来なくて、返事の代わりに俯いて頭を振った。
「髪、跳ねてるぞ」
「へ.....」
小さく吹き出した声がして、慌てて顔を上げたら、思ったより近くに木ノ葉丸の顔。跳ねてるらしい部分を面白そうにポンポンと撫でて、目が合う。
「うっ...」
(う?)
謎の一言を発すると木ノ葉丸はほんのり甘かった表情を急に堅く難しい顔に変えた。
「あーあの、昼間さ、別れ際 ツバメ何か言いたそうだったからちょっと気になってさ。まだ起きてたら話せるかなぁと思って.....いやでも時間的にも場所的にも色々アウトだなコレ...やっぱり良くないよな...バカだなオレ...」
木ノ葉丸はその場にへたりとしゃがみ込んでしまった。自分から来たくせに言うだけ言って一人で凹んでしまった。普段なら見られない、背の高い木ノ葉丸の頭、髪の毛、つむじ。ちょっと情けない格好のはずなのにどれもが触れたくなるくらい愛しい。
「そんな事ないよ.....私、寝てなくて良かったって思ってるのに」
「...嫌、じゃないのか」
「嫌な訳ないでしょ...それに私のせいだし」
「別にツバメのせいじゃないだろ」
「だって私を心配して来てくれたんでしょ?」
「.....そう、だけど、そうじゃないって言うか。オレが理由もわかんないで勝手に気にして、それ解消しに来ただけだし...やっぱり自己中だろ」
「そういうの、自己中って言うの?でも、私の事で自己中って何かちょっと嬉しいかも」
しゃがんでそう本音を漏らすと、木ノ葉丸はやっと顔を上げる。目が合うとフッと笑う。
「何だよソレ、変な奴だな」
「...少しの時間でも会えてラッキー、だよ」
「.....ふ、ふうん、そーかよ」
不思議と普段なら言えそうもない本音が言葉になって行く。すごく心地良い。
「...あのね」
「ん?」
「昼間、言いそびれたの」
「何だ、やっぱり何かあるのか?」
「いや、あの...やっぱりいざとなるとこれは言いにくいな!ななななしにして貰っていいかな」
「は?何だよそれ!めちゃくちゃ気になるだろうが、今更止めるな」
「全然大した事じゃないからね?きっと呆れると思うけど、怒らないでね...?」
「...わ解った」
「さ...」
「...さ?」
「寂しい...って言いたかったの」
「...は...」
「だから、寂しいって思ってつい...友達が居たからそれ以上言えなくて...でも木ノ葉丸、ちゃんと気にしてくれたからすごく嬉しかった...い、以上ですっ」
「.....」
「ああ〜何だかさっきから嬉しいとか寂しいとか、私、本当子どもみたいだね!恥ずかし...」
顔を覆ってしまおうとしたのに、それは叶わなかった。いつの間にか木ノ葉丸が私の手を掴んでいて、見上げて行くとその真剣過ぎる眼差しとぶつかる。ビクともしそうにない掌と強い眼差し、これは。
「...あの、呆れた...?」
「なっ何でだよ!違うよ、そうじゃないだろコレ...」
「これ...?」
ぐいと引っ張られて手首が解放されたと思ったら、ぎゅっと締め付けられた感覚。目の前は見慣れたベストの色。でも温もりも匂いも少し窮屈なのも初めての感覚。
「.....好きだ」
ボソリとくぐもった声が耳だけじゃなく、木ノ葉丸と触れ合った身体中に響いて熱くなる。泣きそうで心臓が苦しいのに、私の掌は木ノ葉丸にしがみついてる。
「.....うん、知ってる」
「...ってなぁ...それも絶対違うだろ、私もって言うトコだぞ」
「あっ...ぁぁ...そか.....」
「.....」
「...わ、私も好き、大好き...」
「おっ前な...勝手に盛るな」
「だって本当だもん.....」
今なら何度でも言ってしまいそう。照れ臭いけどくすぐったくて歯がゆくて焦れったい。木ノ葉丸はやっぱり特別な人なのだ。
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