とある木の葉の小さな話
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「カムイ!リンネ!いらっしゃい」
シズネが庭で遊ぶ子どもたちに声をかけると、二人の子どもたちは ハーイと返事をしてこちらに駆けてくる。
「うわ〜〜〜!!」
目の前に並んだ銀髪の少年と黒髪の少女を交互に見て、ヤマトは感嘆の声を上げた。
「この子たちがカカシ先輩とシズネさんの.....大きくなったねぇ」
声も出ず感無量と言った様子のヤマトにカカシは お前 親戚のオジサンかよと突っ込み、シズネと目を合わせて苦笑した。
「カムイ リンネ、こちらがヤマトさんよ」
「よろしくね」
シズネに促されるように挨拶をする。改めてよく見ると、子どもたちはそれぞれまるで違う態度でヤマトを見つめていた。
もじもじとして頬を赤らめるのは弟のカムイ、それに対し姉のリンネは特に顔色も変えず落ち着いている。カカシに促されてヤマトへの挨拶を済ますと すぐにリンネがそばに来た。
「ねぇ、ヤマトはケッコンしてるの?」
ヤマトはまさかの質問にお茶を吹いた。
「こら!リンネ、悪いねーヤマト」
「ごめんなさいねぇ、この子 変にませちゃってて」
「い、いえ...」
「リンネ、呼び捨てしちゃダメだよ。ヤマトさんでしょ、ヤマトさん」
「だって 父さまのブカだったんでしょ?」
「部下って言うか仲間だよ。お前よりずーっと年上なんだ、きちんとしなさいよ」
「って言うか、父様...父様なんですねカカシ先輩」
ヤマトにそう突っ込まれるとカカシは苦い顔をしてシズネに助けを求めた。
「それが...綱手様の影響で。綱手様が孫のように面倒を見て下さるんだけど、六代目の子どもなら それ相応の呼び方をさせろって仰って...」
「ななるほど...」
綱手様にとってはシズネさんは子どもみたいなもので、そのお子さんが孫みたいなもの、それは確かに想像がつく。しかし、そんなに子ども好きだったとは。孫は特別って言うことなのか。簡単に聞いた限りでは あれこれ言うものの、二人には結局甘く何かと世話焼きに来るらしい。賭け事も辞めたと言うから驚きだ。
「ねぇ ヤマト!それでどうなの?ケッコンしてるの?してないの?」
「リンネ!」
「いや、い、いいですよ別に。僕は 結婚はしてないよ…?」
再びの襲撃にもめげず 笑顔を作ってそう答えると、リンネは急にパッと顔を明るくした。おっおお〜なかなか子どもらしくて可愛らしい、と思うや否や、
「ほんとう!?」とヤマトに飛び付いた。
「!!??」
「じゃあ、リンネとケッコンしてください!」
カカシは一瞬で凍りつき、ヤマトは思わぬ出来事に口はパクパク、目を白黒させる。
「ちょ、ちょ、リンネちゃん 何言ってるの!?カカシ先輩、シズネさん~〜」
このままじゃ殺されると慌てて助けを求めると、シズネさんがやれやれとリンネを引き剥がした。
「ヤマトさん〜本当にごめんなさいね、この子 年上の方に憧れていて...」
「母さま!わたし、ヤマトさまとケッコンしたい!!」
いやいやいや、本当 カカシ先輩に殺されるから!ヤマトはさっきから黙ったままカカシを見ることができず冷や汗が止まらない。幾ら5歳児とはいえ、やっぱりコレはまずい気がする。久しぶりに会ってコレか〜〜頭を抱えた時だった。
「ふぅん、リンネはなかなか見る目があるな。こいつはお爺様の力を戴いているからなぁ、誰かと違って堅実で体力もあるしな」
綱手がサクラとイスケと一緒に顔を出した。
「よう、ヤマト 元気だったか?」
「ヤマト隊長!お久しぶりです」
なんと有難いことに懐かしい顔の救世主が現れた。相変わらず元気ハツラツと言った綱手、すっかり母の顔になったサクラ。
「イスケ君も5歳だったかな?これはまたサスケにそっくりだ!」
「こいつの溺愛っぷりったら目も当てられないぞ」
綱手がおかしそうに笑うとサクラは「もーやめてくださいよ!」と顔を真っ赤にする。
「カムイ君はやっぱりカカシ先輩にそっくりですねぇ、昔を思い出しちゃうなぁ」
「お前 俺のそんな小さい頃なんて知らないでしょ」
カカシの機嫌はそう簡単には治りそうもないが、いつもの調子が戻って来たようで ヤマトはホッとする。
「見た目はさておき、カムイのあの引っ込み思案は困ったもんだねぇ、あたしは心配でしょーがないよ」
「ええ、本当にそれは...まあまだ5歳ですから ゆっくり自信をつけてあげられたらと思っているんですが」
「男なら、カカシやサスケくらい無愛想な方が好き勝手できて楽かもしれんがな」
「.......」
同時に苦い顔をするカカシとサクラにも構わず 綱手の話は終わらない。 「とはいえ、あれがまた可愛いんだ」と言って綱手は嬉しそうに外で遊び始めた子どもたちを眺めた。
「それにしても、さっきはびっくりしましたよ!ヤマト隊長と結婚だなんて...今日初めて会ったんですよね?」
「あはは...本当 リンネのオジ様好きにも困っちゃうわ」
オジ様好き...その台詞に ヤマトは何気に傷付いたけれど、リンネからの好意は素直に嬉しかった。なんと言ってもカカシの大事な娘だ。その子に無事に好かれたのを素直に嬉しいと思う。
「前は木ノ葉丸くんにも言ってませんでしたっけ」
「そうなのよ〜 何故だか結構優秀な方ばかり目がいくらしくて、誰でもいいって訳ではないみたいなんだけれどね」
「木ノ葉丸くん、懐かれてかなり喜んでましたよね」
「そう言えばアイツはまだ結婚してなかったな...もう30過ぎただろう」
ああやばい、この流れはまずい、ヤマトは思わず身構えた。
「おい、ヤマト、お前はどうなんだ?四十も過ぎて すっかり中年じゃないか。いい加減 身を固めてくれんとあたしも三代目に顔向けできないよ」
きたーーー 綱手と会うと何だかんだで結局 毎回この話を持ち出されるのだ。コチトラ 好きで独り身な訳がない。結婚できないのには列記とした理由がある。相手がいない時間もない そもそも今の任務地じゃ余裕がない、これに尽きるのだ。
「そー言われましても...出会いも時間もないもんで」
「あたしはお前を買ってたんだよ、だからシズネにアタックしろと何度も言ったのに…」
「「「えええええ!!!!!」」」
カカシ シズネ サクラの絶叫がコダマする。
「ち ちょっっと綱手様!!何を仰るんですか!!」
「何だい今更 そうおかしな話じゃないだろ、シズネにはあたしがそれ相応の相手を見つけてやるつもりだったんだ。それに、ヤマトは里にとってもあたしにとっても やはり特別な人間だからな…二人ともより近くに置いておきたかったんだよ」
終わりを呟くように言うと 綱手は手にした酒を一息で飲み干した。
「ヤマト、いい相手が見つかったらさっさと身を固めるんだよ。任務地なんて あたしの権限でいくらでも替えてやる。もし何か面倒な事があったっていちいち気にするな、そこの六代目がなんとでもするさ」
「綱手様 飲み過ぎですよ」
サクラがそっと声をかけると、綱手は柔らかく微笑んで 少し休ませて貰おうか、と席を立ち奥の部屋へと引き上げた。シズネがその後を追う。
こんな気分は初めてかもしれない。生まれて初めて 結婚 そんな漠然とした生ぬるい夢が ぽんっと 頭に湧いている。庭では大切な人の子どもたちが楽しげに遊んでいる。なんてほんわか温かい。ヤマトはこの束の間の休息をじっくりと味わおう、そう思うのだった。