学パロ
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近くのショッピングモールにて
「バジル君、こっちー」
同級生と比べるとずいぶん背の高い彼に声をかける。
「すまない、待ったか?」
「ううん。 今来たところだから」
なんてありきたりな会話を交わして店内へ。
4、5人で遊んだことはあるけど、2人で出掛けるのはこれが初めてだ。
入り口から入ってすぐにペットショップがある。
どうやらバジル君はここに用があるみたい。
「み、みて......天使がいっぱい......。
わんちゃんもねこちゃんもみんな可愛いね......!」
コロコロと可愛らしい子犬や子猫が、客に愛想を振り撒いたり興味無さげに寝たりしている。
「ああ、だが家の猫が一番可愛い」
「ねこちゃんいるの? 私猫大好き! 写真ある?」
得意気にスッ......と見せられたスマホのフォルダには猫がいっぱい。
「か、かわいい......!
いいなぁ、いいなぁ!」
「......よかったら今度家に来るか?」
「!!!! 行く! 良いの!?
冗談じゃない!?」
「俺は冗談は嫌いだ。
ファウストも喜ぶ、と思う」
「ファウストちゃんっていうの~......楽しみ!」
店内をうろつく。
目にとまったのはねこちゃんなら目の色を変えると言うNyaoみゅ~る。
様々な味が売られている。
これほどまでに味を細分化する必要はあるのかと感じてしまうくらいには多い。
「ファウストちゃんはこれ好き?」
一番オーソドックスであろう、Nyaoみゅ~るマグロ味を指差してみる。
「いや、魚より鳥が好きだ。 あとホタテ」
正解はNyaoみゅ~るとりささみ味とホタテ味だったようだ。
「なるほどー。
どれでも良いって訳じゃないんだ......」
結局バジル君は安い猫じゃらしを買って店を出た。
「これが一番食いつくんだ」と彼は言っていた。
小腹が空いた私達はフードコートでたい焼きとみたらし団子でひと休みしてから、雑貨屋さんによったり本屋さんに寄ったりした。
途中CDショップの前でユースタス君とキラー君とスクラッチメン君と会った。
三人とも気持ち悪いくらいニヤニヤしてたし、バジル君はそんな三人を呪い殺すんじゃないかと思うくらい睨み付けてたし、どうなることかとひやひやした。
特に喧嘩になることもなく、三人とはそこでさよならした。
去り際にユースタス君が「頑張れよ」とバジル君に言ってた気がするけど、聞き間違いかな。
だって頑張れってどう言うこと。
私と過ごすのが大変だとでも言うのか。
失礼しちゃうわ。
一通りみてまわり41アイスを買って、帰るまでベンチで時間を潰すことにした。
たい焼きとみたらし団子食べたんだけどなぁ。
お腹空いちゃうんだよね。
「アイス美味しー」
「そうだな」
バジル君のも美味しそう。
じーーーー。
「なんだ」
「......バジル君のも食べてみたいなぁって。
ちょっと味見させて?」
固まるバジル君。
やっぱり駄目かな。
卑しいやつって思われたかも!
「分かった。 全部やる」
「え、いいの? 全然減ってないけど」
「いい」
「ふーん......あ、これも美味しい!」
自分で買った分とありがたく頂いた分、交互に食べていたら隣から視線を感じる。
バジル君めっちゃ見てくる。
「あの......そんなに見られると食べづらいよ。
やっぱり食べたかったんじゃ......ハッ!?
もしかして私のも食べたかった?」
それならそうと言ってよー。
はい、あ~ん。
差し出したスプーンを前に、再び固まるバジル君。
「? 溶けちゃうよ?」
何故固まったのか分からず首をかしげる。
食べたかったんじゃないのか。
数秒後ため息をつかれた。
彼は差し出されたスプーンを受け取り、少し溶けたアイスを口にした。
スプーンをカップに戻したあとぐったりと頭を下げ、またため息をついた。
「口に合わなかった?」
「いや、うまいが......疲れた」
「あー、結構歩いたもんね。
もっと食べる?」
「いや、もう本当に、いっぱいだ」
ご馳走さまと言った彼はスマホを取り出し、いかにファウストが可愛いかを唐突に熱弁し始めた。
いきなりで驚いたし、バジル君の表情は変わらないけど、なんとなく......なんとな~く、楽しそうだと思った。
こっちも楽しくなっちゃうな。
彼をここまでメロメロにしてしまうなんて、どれ程可愛いんだろう。
お家にお邪魔するの楽しみだなぁ。
「今日も楽しかったよー!」
「ああ......最後にひとついいか」
どうしたどうした。
何かと会話を促す。
「今日誕生日なんだ」
「..................誰の??」
「俺の」
「............バジル君の?」
さらっと告げられたのは衝撃の事実。
「な、な、な、なんでもっと早く言ってくれないの!?
もう帰らなきゃいけないのに!!
あ! お、おめでとう!!」
「ありがとう」
「どうしよう! 私あげられるもの何もないよ!」
「別に何か欲しくて教えた訳じゃない」
「で、でも......」
何か出来ないかと頭を悩ませる私。
「......どうしてもと言うなら、ひとつ頼みたいことがある」
「何々!? 私にできることなら!」
クッキー焼いて明日持っていこうかと考えていたところで、本人から助け船が。
でも私に頼みたいことってなんだろう。
バジル君はなにやら緊張した面持ちで言い淀んでいる。
「その......これからは名前で呼んでくれないか」
「名前?」
「嫌ならいいが......」
バジル君の下の名前?
「ほーきんす君?」
彼の頬に赤みが差したように見えた。
満足そうだ。
「え、これだけでいいの?」
「ああ」
「ホーキンス君......ふふ、私に頼み事って言うから何かと思ったら、お願いがささやかだね。
そうだ、私のことも下の名前で呼んでいいよ!」
「リオさん」
「さん付けくすぐったい! 呼び捨てでいいよ~」
「リオ......ならリオも呼び捨てでいい」
「ホーキンスって?」
2回頷いた彼を微笑ましく思う。
「呼び方変えただけなのに、さっきよりも仲良くなった気がするね」
「そうだな」
「明日からも、学校でも名前でいい?」
「勿論だ。 俺もそうする」
「じゃあ、また明日学校でね!」
「また明日」
手を振って別れた。
ホーキンスも小さく手を振ってくれて、私はなんだか嬉しくなった。
帰ったらクッキーを焼いて、明日彼に渡そう。
9月9日はまだまだ暑くて、いつもなら帰ってすぐぐったりしてしまうけど、今なら何枚でも焼ける気がした。
(ホーキンス......ホーキンスかぁ......ふふ、変な感じ)
(デートに間接キスに互いに名前呼び......家に呼ぶ理由も作ったし、最高の誕生日だったな......)