すごいよ!バジルさん!
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町に着いてからはトントン拍子に話が進んだ。
花屋さんに住み込みで働けることになったのだ。
ついてるなー!
「本当にありがとうございます!」
「なぁに......私も店の手伝いをしてくれる子がほしかったのさ。
たすかるよ......ヒッヒッ」
この少し怪しいお婆さん──ダナさんは、この町で一番古い花屋さんの店主らしい。
町でキョロキョロして、完全なる不審者の私に声をかけてくれた親切なお婆さんだ。
町を案内してもらいつつ、お店へ向かう。
ダナさんは色んなお店に顔が利くらしく、行く先々で紹介してもらった。
寂れているなんて言ってごめんなさい。
訂正します。
町も人もとても良いところです。
恩を返すために今日から頑張るぞ!!
店に着き意気込んだとたん、雨が降りだした。
その雨はだんだん強烈なものになり、それに比例するように風もでてきた。
バケツをひっくり返したようなとはこの事かと、急な変わりように気分が落ち込む。
「これは嵐になるね...。
残念だけど今日は店じまいだよ。
手伝っておくれ」
自然には勝てないからね。仕方ないね。
しかし、夜になっても天気は一向に回復しない。
「このままじゃあ温室が水に浸かってしまうねぇ......」
「この町はいつもこんなふうに急に天気が変わるんですか?」
もしそうだとしたら、何か対策を練らないと。
あまり慌てた様子のないお婆さんに、これがいつも通りなのかと錯覚する。
「いや、ないね。
長く生きているがね、この町この島の気候は、それはまぁ穏やかなもんさ。
......お前さんこの町に入るとき、何か悪いものを連れてこなかったかい?」
「えっ......!?」
お婆さんの眼光が怪しく光った──気がした。
何も連れてきてませんけど!?
「......ヒッヒッ!
冗談さ!
えらく真に受けるね?」
先程の鋭い眼光はなんだったのか、悪戯っ子のような笑顔をみせるダナさん。
お茶目か?おぉん?
「も、もう......やめてくださいよー!」
とは言ったものの、やはり引っかかる。
悪いもの────私が連れてきたかもしれない悪いものと言えば一つしかない。
《バジル・ホーキンス》
まさかカードの結果に背いて上陸してたり......?
いやー......ないでしょう。
でも絶対とは言い切れない。
なんだか頭の後ろ側がソワソワするような、得たいの知れないものに胸を掻き立てられるような感じがする。
体が外に出たがっている。
こんな豪雨のなか外に出るなんて危険すぎるのに、体を止められない!
「すみません!
ちょっと......気になることがあるので、外行ってきます!」
「お前さんなら大丈夫だとは思うけどねぇ......まぁいいさ行っといで」
ランタンはこれ、傘はそこ、カッパはそこだよと教えてもらって、勢い良く外に飛び出す。
「行ってきまーす!!」
ドアの向こうはどしゃ降りの雨。
傘に穴が空くんじゃないかと思うくらい強く打ち付けてくる。
数メートル先も見えず、傘もカッパも全然役に立たない。
それでも町を歩き続ける。
悪いものが本当に船長──バジル・ホーキンスだとは限らないのに。
真っ暗な中をひたすらさ迷う。
雨音が強くて、自分の足音が聞こえない。
服が、靴が、水を吸って重たい。
体温が下がってきて意識が朦朧とする。
これ以上は危険だ。
花屋の場所が分からなくなる前に引き返したほうがいいかもしれない。
そう思い、足を止める。
結局、何も、収穫なかったな......。
「もどろ......」
「ティナ......」
「うっわぁぁああああああ!!??
え!?せ、せせせせせんちょ!?
なん、なんで、っはぁ何でここに!?」
必要以上に驚いた私に構わず、何も言わずに力無く倒れ込んできた船長。
お、重いっ!!
なんとか受け止め、背中に腕を回すとうなり声が聞こえた。
まさかと思いランタンで照らすと、雨とは違う、色のついた赤黒い──??
????
「............ち、血ーーーーーー!??」
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