三十にして立つ
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アイス食べたい。
あのシャボンディアイス......美味しかったなぁ。
はぁ~......。
ここはマダムシャーリーのマーメイドカフェ。
スタッフルームの長机に頭だけを乗せて、ずーんと椅子に座っている私。
ああ仕事したくない......。
「どうしたのリーベラちん。
元気ないね?」
名前に“ちん”をつけて呼ぶ彼女。
この子......仮に“チン”さんが雇われたらどうするんだろ......。
チンち[ゲフンゲフン]。
「ケイミーちゃーん......」
(いけないいけない。
この子なら平然と言い放つわ)
机に伏せたまま首だけ彼女の方に向ける。
「いやね、やっぱり一人は寂しかったのよー!」
同僚のケイミーちゃんに、昨日の話をする。
足で立って上陸したこと。
いつもは着ない服を着て、気持ちが強くなったこと。
ショッピングして買い食いして休憩してたらナンパされたこと。
キラーさんという海賊さんに助けられたこと。
キラーさんと別れた後、全人魚、魚人の憧れと言っても過言ではないシャボンティパークへ行ったこと。
例え一人でも楽しめる自信があったわ。
現にアトラクションに乗るまでの時間も乗ってからもずっと胸がドキドキしていて、とても素晴らしかったもの。
カチューシャも買ってポップコーンだってなんか可愛いやつに入れて貰ったし。
すごく浮かれていたのよ。
でもふと周りを見ると一人で来てる人なんて私くらいで、みんなカップルだったり友達同士だったりファミリーだったりで、急に心細くなっちゃってね......。
「それで帰ってきてからずっと沈んでいたのかい」
「マダム......」
いつの間にこちらへ...珍しく水晶玉なんて持って。
「そのキラーってボーヤに頼んで一緒に遊んでもらえばよかったじゃないか?」
彼氏役してくれたんだろう?とマダムが首をかしげ、面白そうに笑う。
うぅ......。
「マダムの意地悪。
いくら私でもそんなことできませんよ...人探してるって言ってましたし......。
第一彼は海賊で、一緒にいてばれたらあっという間に人間屋ですよ!」
そうだろうねと眉を下げてこちらを見るマダム。
「でも第一声が “嫌” じゃないんだね」
「? 嫌、じゃないですけど...?」
なんでもないよと言ってお店の方へまた戻っていった。
頬をほんのりピンクにさせて輝きの増した目で私とマダムのやり取りを見ていたケイミーちゃんは、拳を握った両腕をブンブン降りながら興奮ぎみに話した。
「......リーベラちん!
その人ここに来るんじゃない!?」
「へ......?」
「海賊なんでしょ?
マリージョアには行けないから、絶対この島に来るよ!!」
良かったね!また会えるね!と嬉しそうにはしゃぐ彼女に口角をひきつらせる。
私は全然会いたくないわよ?
人魚だって上手く隠したのに、ここじゃバレちゃうかも知れないじゃない!
まぁこの島に上陸しても?
連絡手段なんてないし、会わない確率の方が高いんだから。
いつも通りにしてれば大丈夫でしょ。
会わない会わない。
会わないわよ!!