三十にして立つ
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海底散歩中に見つけた大きめのズボンに足を通す。
そして同じく海底散歩中に見つけたスニーカーを履く。
何度も鏡をみて、人魚には見えないことを確認する。
「わぉ...!
遂に穿けたわ!
ちょっと大きいけど、これくらいじゃないと鱗が見えちゃうわね!
うん、おっけー!!」
「ということでマダム。
私シャボンディ諸島へ行ってくるわ!」
「そうかい、どうせ止めても聞かないんだろう。
気をつけていっといで」
「やっほーぅ!」
体が濡れないように全身シャボンに包まれて浮いていく。
ああ楽しみだなぁ!
とりあえずもう少し可愛い服が欲しいな。
地上へ出たらショッピングしよう!
ぽよん。
ちょうどいい場所へ出たようだ。
誰もいない。
中から針でシャボンを突き刺すとぱちんと弾けた。
二足歩行での初・上・陸!
とてつもなく素晴らしい!快挙だ!
体が喜びにうち震える。
しかし喜んでばかりもいられない。
若い人魚ほどではないが、年増の人魚だって狙われる。
身を守るために鍛えてはいるが、いかんせん人間の強さがわからない。
狡猾で狂暴凶悪、そんな人間に見つかったら洒落にならない。
辺りを警戒しながらショップまで無事にたどり着き、目当ての服を何着か購入。
一組だけその場でタグを切ってもらい着替える。
カーキのカーゴパンツにトゲつきブーツ、ダメージ加工のシャツにライダースジャケットという、人類が想像するであろう人魚のイメージの真逆なファッションで人の目を欺く。
いやー私賢いわ。
心なしか強くなった気がするし...、これまで遊ばずがむしゃらに働いてきた甲斐があったなぁ。
問題は一人だと少し寂しいということだ。
ベンチに腰掛けながらシャボンディアイスを味わうと、歩き回って火照った体が冷えていく。
すぐに食べ終えてしまって、次は何処へ行こうかと考えていると人が近づいてきた。
「おねーさん1人?
良かったら俺等と遊ばない?」
!!ナンパだ!!
「あー...いや、人を待ってますんで」
スカート穿いてなくてもナンパされるんだ...知らなかった。
「そんなこと言わずにさぁ。
さっきからずっと1人じゃん?
こっちも女の子いなくてつまんないし、ちょっと付き合ってよー」
ねっ?と語尾にハートをつけながら話す男にげんなりする。
(うーどうしよ...別に暇だしついていってもいいけど...残念ながらタイプの男が1人もいないわ...)
悪目立ちしたくないので、仕方なくついていくかと腰をあげようとしたそのとき。
「すまない。待たせたな」