三十にして立つ
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はー。
一週間ってなげぇな。
リーベラを乗せて4日目。
船のあちこちで糸屑を見かけるようになった。
ったく誰だよ......ちゃんと掃除しろ。
「キッドーーーー!!」
キラーが騒々しい。
「リーベラが昨日から倉庫にこもりっきりだぞ!
どうするんだ!!
俺はどうしたら良いんだ!!」
女を船に乗せたら精神安定するかと思ったが、あんまかわんねぇな......。
「引きこもりたくなるくらいこの船のキャラクターが濃かったんだろ。
やっぱ無理なんじゃねぇか?」
「そんな訳あるか!
俺がオッケーな女だぞ!
今さらヒートやワイヤー、その他過激ファッションで動じるか!
そういえば一昨日リーベラの裸見たよな!?
その時に変なこと言って苛めてないよな?
姑みたいにイビったりしてないよな?
何もしてないよなぁ!?」
例によってどぱっとマスクの穴から汁を撒き散らすキラー。
裸っつったって、上は水着だったし下は鱗だぞ。
てかしっかり見てんな。
「してねぇよガキじゃあるまいし。
じゃあ見に行くか?」
本当に引きこもって腐ってんなら、何とかしなきゃな。
俺の夢のために。
──────
リーベラに使わせてる倉庫の側まできた。
扉の前では何人か船員がみえる。
「あいつら扉の前で何を......嫌がらせか!?」
「落ち着けよ。
仲間にそんなやついねぇよ」
あまりリーベラと接触するなという俺の言葉を、キラーは律儀に守っている。
離れた場所で待機するつもりのようだ。
仲間の一人に声をかける。
「どうした。
何かあったのか?」
「あ、お頭。
それがリーベラが破れた服とか外れたボタンとか直してくれるんすよ」
「おれ、名前刺繍してもらったっす!」
「おれなんか襟の裏に船のマーク縫ってもらったもんね」
次々に見せられる修繕跡や刺繍。
なるほど。
うめぇもんだ。
「しかもなんか良い匂いになって返ってくるんすよ!」
「おれらが洗うより柔らかくなるんで不思議なんすよね~」
仲間が綺麗になった服を嗅いだり、肌触りを堪能しているとドアが開いた。
「お待たせしたわね。
はい、これどうぞ。
......あら、船長さんこんにちは。
今まとめて繕い物してるんだけど、船長さんも何かあるかしら?」
あまり大きいと時間をいただくのだけれど......、というその手には絆創膏が貼ってある。
「あー......探してあとで持っていく。
俺のにもマークの刺繍いれてくれ」
「了解よ!
任せてちょうだい!」
めちゃくちゃ刺繍して欲しい訳じゃねぇけど、仲間が刺繍してもらってんのに、俺だけしてもらってないのは......なんか違うだろ。
まだ終わってないからといって倉庫に戻っていく。
そいつの髪や服には糸屑が無数についていた。
......最近船のあちこちに糸屑や布の切れ端が落ちてたのは、こいつがさっきの格好で歩き回ったせいか。
キラーのもとへ戻ると感激して嬉し泣きしているようだった。
「俺も絶対刺繍入れてもらう......!
《I🖤 リーベラ》って入れてもらう」
「それはやめとけ頼むから」
相棒の暴走はいつ止まるのか。
早く新世界行きてぇ。