春よ来い
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むくり。
上体を起こす。
朝、いつも通りに目が覚めた。
お酒って飲むと眠くなるんですねー。
部屋が微かに酒臭い。
窓に打ち付ける雨音に導かれて開く。
すると手の甲に数滴、パラパラと雨が落ちてきた。
「雨だー......やった!」
床が濡れるのですぐに閉める。
昨日の記憶が途中から曖昧になっている。
下で寝たとおもいましたけど、お二人のどちらかが運んでくれたんですね。
なんとなくキラーさんな気がします。
お肉の焼ける匂いー。
スゴい。
引き寄せられます。
「おはよう。
気分はどうだ。辛くないか?
食欲あるか?」
「食欲あります!元気ですー。
私、昨日途中で寝てしまいましたよね?
ちゃんと覚えてなくてすみません!
しかもベッドまで運んでもらっちゃって......」
ペコペコと頭を下げると後ろからキッドさんの溜め息が聞こえた。
「覚えてないのかよ!
すげぇめんどくさかったぜ」
「えっ!?」
「少しテンションが高かっただけだ。
潰れたのを運んだのは気にしなくていい。
俺がしたかったからそうしただけだ」
フライパンを返しているのだろう。
ジュージュー、ジャッジャッという焼ける音が機嫌良く聞こえる。
(あ、そうだ)
よっと小さく声を出して桶を外へ運ぶ。
「ちょっと雨水貯めるついでに浴びてきますねー」
「(浴びる?)気を付けてな」
大きな桶を並べる。
水は貴重だ。
いつ水入りの樽が手にはいるか分からないため、雨の日は極力水を貯めるようにしている。
雨浴びはその時必然的に体が濡れるのでいっそ浴びようという思考の切り替えの賜物である。
(心なしか体調も良くなりますしねー)
ひとりの時は全裸になるが、今回はお客さんがいるから着衣のまま。
(雨ぬるい......)
服が雨を吸って香りが濃くなる。
葉が水滴で弾けて高い音をならす。
水溜まりと桶に落ちた雨は水面を何度も小刻みに揺らす。
ピチョピチョポタポタサワサワピトン
音が全身を包み込む。
トトトトピンピンサーサーツー
こうしている間、ずれていた体の組成が綺麗に組み合わさる感覚がする。
雨のなかぼんやり脱力していると、前からキッドさんか、キラーさんが近づいてくる気配がする。
んー......と。
「キッドさん?」
「正解。
お前風邪引くぞ」
「雨浴びてるんです。
気持ちよくないですか?」
「(会話が成り立ってねぇ)服が張り付いて気持ち悪ぃよ......」
「ああ確かにー。
私もひとりの時は全裸ですねー」
なにやらじろじろ見られている気がする。
私変なこと言いましたか。
「いいから早く部屋入って着替えろ。
キラーが飯作って待ってんぞ」
「それは素敵なお話です。
すぐ帰りますー」
食事のことで思考が一杯になった私は桶のことをすっかり忘れていた。
食後にもう一回濡れますかーと思いながら取りに行こうとすると、キッドさんがすでに回収したと言ってくれました!
そんなに強い雨じゃなかったので満タンにはならなかったそうですがとてもありがたいです。
「ありがとうございますキッドさんー!」
「お前ほんと鈍くせぇ」
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