春よ来い
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初めて食べたチャーハンに感動してつい食べ過ぎてしまいました。
お腹苦しい......。
キラーさんの食器洗いを手伝う。
リズムよく、キラーさんから受け取った食器を落とさないようにタオルで拭く。
このコンビネーション......キッドさんにも負けてません!
「イエインはこの島で本当に一人で住んでいるのか?」
「そうですよー」
「何でだよ」
少し後ろからキッドさんが疑問をぶつける。
拭いた食器を片付けてほしい。
「何でって......何ででしょう?」
「俺らが知るかよ」
「んーまぁ色々あるんですよー」
話すと長くなるので適当に流す。
キッドさんもキラーさんも、しつこく追求してこないから大好きだ。
「ああそうだ。
話は変わるんだが......倉庫に酒が大量にあったんだ。
あれ飲めるのか?」
漂着物の樽や瓶は水やジュースだったらありがたく頂戴して、アルコール達は飲まずに倉庫にまとめて放置していた。
お酒は怖いからダメだと止められているので、溜まっていく一方だ。
「私は飲まないのでよかったらお二人で飲んであげてくださいー!」
そう。
私は二人で飲んでと言ったのだ。
いつの間にか私にグラスを押し付けるキッドさん。
顔が赤いし、声も大きいですよ。
これがアルコールの力......!
確かに恐ろしい。
「飲め飲め!」
「え、遠慮しますー......」
「キッド、無理強いするな」
「ちょっとぐらい大丈夫だろ」
「だって、飲んじゃダメだって......お兄さんが、ぁああ強引......」
受け取ってしまったグラスの口を手で塞いで注げないようにする。
折角渡したグラスを奪い取るキッドさん。
どうやら中身を注いでから渡す作戦に切り替えたようだ。
「兄がいるのか?」
「いえ、血は繋がってなくて、えと......」
「そいつが飲むなって言ったのか!
ずいぶん堅物だなぁ!」
早くとらないと落とすぞと脅されて、まんまとグラスを受け取ってしまう。
まあ、飲まなければいいのだ。
最悪飲んだふりしよう。
「こんな旨いもん飲めねぇなんてかわいそうになぁ!
まぁ子供はジュースでも飲んでな!」
「こ、子供じゃないですー!
私!19ですよー!
それにこれお酒ですよね!?」
「「......嘘だろ」」
わー息ぴったり、じゃない!
「キラーさんまで!?
ひどいです!」
「てっきり14、5かと......」
「おれも」
私ってばそんなに幼く見えますでしょうか。
確かに皆さんの声は頭二つ分以上高いところから聞こえてきますけど......。
「19なら尚更遠慮することねぇよ。
これは大人になるための儀式だぜ!
キラーも!
イエインの酒初体験に乾杯!!」
「乾杯」
「か、かんぱーい......」
グラスのなかでちゃぷちゃぷ揺れる液体。
香りで目の奥がじんと痺れる。
これを飲めば大人に......。
でもお兄さんとの約束が......。
「一口飲んでダメそうなら止めておいたらいいだろう」
確かに......こういうのは勢いが大事ですよね。
黙ってればばれないですし。
そう、これは大人になるための儀式......。
ぐいっと中身を呷る。
「いい飲みっぷりじゃねぇか!」
「そんな一気に......大丈夫か?」
うう......苦い。
美味しくないー。
キッドさんの嘘つき!
「大丈夫、です......けどー。
ちょっと苦いですー......」
「そうか。
......ああ、こっちのほうが甘くて飲みやすいかもしれない」
甘いお酒もあるのですね。
キラーさんが言うならそうなのかも知れません。
「んーいただきますー............ほんとだー!
甘くてお花の香りがしますー!」
「俺たちは甘い酒は飲まないからこれはイエイン専用だ。
よかったな」
「そりゃあ取り合いにならなくていいな。
キラー、なんか肴くれ」
甘いお酒ってこんなに美味しいのですね!
なにも怖がることなかったです。
三人で注いで注がれて時間が流れる。
ふわふわふわふわ。
こんなにも楽しいのは初めてです。
二人ともずっといてくれたら良いのに。