Chasing dreams
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「ほらー!るんくん!走って〜!」
「わぁぁ!なんでこんなことにー!」
結局また話が盛り上がりすぎて、終電ダッシュ…。
るんくんとの時間はあっという間過ぎて、走りながらもなんだか名残惜しい。
「ほらほらー!電車来ちゃうよ〜!急いでー!」
「ミヤ…体力あるね…俺はもうダメだー…」
「ちょ…あきらめないっ!」
なんだろう、この体育会系のノリ。
るんくんの家の方向の電車の方が早いから、私は慌ててしまう。
だけど…
⸺……番線、発車しまーす!
無情にも、電車はあと少しのところで行ってしまった…。
「あ……」
「ああぁ…るんくんの終電が……」
目的を見失った私たちは、その場にヘナヘナとへたり込む。
えっと……え?これ…どうすれば……?
「ハハ…楽しかった時間の代償かぁぁ…」
「るんくん…えっと…あ…歩いて帰れ…る距離ではないよね、やっぱ。タクシー?」
「あ、ないない、そんなお金ないって、アハハ」
「アハハじゃないよ!どーすんの!」
「うーん…まぁ、ネカフェでも行くか…そうだなぁ…」
うーん…このまま置いて帰るの、心配だなぁ…。
こんなこと…言ったら引くかな…?でも……!
「…うち……来る?」
「へ?」
るんくん、ビックリしてる。
そりゃそうか、ひとり暮らしの女性に部屋に来る?なんて言われたら…。
「いやいや!ダメでしょ、アウトでしょ!いくら彼氏いないからって、彼氏じゃない男呼んだりしちゃダメでしょ!ミヤは警戒心がなさすぎだよ!心配だなぁ!」
なんか逆に心配されてるけど…
「るんくんなら、大丈夫でしょ?」
「ううっ…そんなピュアな目で見ないで…」
るんくんなら大丈夫……うん…………。
⸺なにがあっても、大丈夫……
「うち、友だち来た時用におふとんもあるし、ちゃんと寝られるから…」
「ミヤ……」
結局押し切って、るんくんを連れてきちゃった。
駅から5分の、オートロックマンション。
お家賃は高いけど、親が心配だからと初期費用を出してくれたので、住むことになった部屋。
「わ、さすが…すごいとこに住んでるね」
「散らかってるけど、ごめんね」
ロックを解除してエントランスをくぐって、部屋までエレベーターで上がる。
きっと…なんにもないはず。
なのに、さっきから少しだけ、胸がドキドキしてる。
私…騙されてる?
でも、それでもいい…。
⸺るんくんのこと、ずっとずっと、好きだったから…。
ガチャン!
派手な音がして、ドアの鍵が開く。
るんくんは、なんだかもう眠そう。
「ほ、ほんとにあがっていいの?」
「いいよいいよ、うちに泊まればお金節約できるじゃん」
「いや…うん…まぁ……」
るんくんのお財布事情は知らないけど、タクシーを渋って帰らないくらいには持ち合わせてないってわかる。
それにプロとはいえ駆け出しの歌い手、そんなに多くもらえてるとは思えなかった。
私も一応プロにはなれたけど、バイトはまだやめられないしね。
「おじゃましまーす…」
「どうぞ♪」
明かりをつけて、るんくんを招き入れる。
えっと…歯ブラシ出してあげて…お風呂の準備し…て……
いらないことを考えてしまって、思わず首を振る。
「歯ブラシ出すねー?あと、お風呂入るでしょ?るんくん?」
「んー……ねむ…………」
座り込んだるんくんは、コクコクと船を漕ぐようにまどろむ。
「こらー、せめて歯くらいは磨きなさーい!」
「うぃ…」
半分夢の世界へ行ってしまってるるんくんを起こして、洗面所へ案内する。
その間にじゃあ、おふとん敷くか。
前に地元にいる友だちが遊びに来てくれた時に一度使っただけだから、きれいだしね。
ふぅ、役に立ってよかったな。
洗面所に様子を見に行くと、ウトウトしながらも頑張って起きて歯を磨いてる。
ふふ、なんか子供みたい。
そんなことを思いながら、私も歯磨きセットを取って、歯を磨く。
けして広くはないけど、狭くもない部屋。
「ミヤ…本当にありがとう」
「ううん、こちらこそ…」
「ん…?俺…なにかしたっけ?ミヤに」
「…あのね、るんくんは知らないだろうけど、私はるんくんがいたから、ずっと夢を追って来れたんだよ?あの日…私と出会ってくれてありがとう。私にチカラをくれてありがとう!」
「ミヤ……それなら俺だって…本当に心の底から歌を歌いたい、歌で人に思いを伝えたいって思えるようになったの、ミヤのおかげだからね?ありがとう!」
「るんくん……」