Chasing dreams
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あのあと、私たちはとめどなくあふれるお互いのこれまでを話して。
本音を言えばいつまでも帰りたくなかった。
だけど終電の時間が迫っていて、ギリギリまで話してたもんだから、駅まで走るハメになったりして、2人で笑って。
「また会おうね?電車、どっち方面?」
悲しいことに、反対方向…。
でも…あのころとはもう違う。
私たちは、もう子供じゃないから…自分たちの意思で会えるんだね。
「また会えてうれしい。またね、るんくん!」
そうして私たちは、それぞれの方向の電車に乗った。
約束もしなかったけど、“またね”の日は案外早く来た。
「おっ!ミヤじゃん!仕事上がり?お疲れさま!」
「るんくん!お疲れさま!」
あれから3日後、名刺ができた知らせとオーディションの話が来てるという連絡を受けて、バイト帰りに事務所に来た。
その帰り。
「そうだ、るんくん、私も名刺できたよ。ハイ、もらって!」
「おっ、いいね、ありがとう!」
へ〜、と裏表ペラペラめくりながらじっくり見て、るんくんは私の名刺を大事そうにカバンにしまう。
「あ、そうだ、ミヤ!メッセージアプリ友だちなろうぜ?アレって確か近くにいるとスマホ振るだけで繋がれるんだっけ?」
るんくんが嬉しそうにスマホを取り出す。
るんくんと連絡先交換できるの…嬉しい。
私もスマホを出して、メッセージアプリを呼び出す。
だけど…あ、あれ?
振り振りしても、なかなか繋がらない…。
「んー…繋がらないな。面倒だから俺の番号で探して?えーっと…」
教えられた番号で探すと、すぐにかわいい猫のアイコンと“あーるん。”の名前のアカウントが見つかる。
「いたいた♪友だち追加!」
⸺ピコン!
るんくんのスマホが鳴る。
「よし、追加っと」
⸺ピロリン♪
今度は私のスマホが鳴る。
「この電話番号…連絡先に追加していい?」
「おう!ミヤのも教えてよ!」
…えへへ、電話番号も交換しちゃった。
「この後時間あったらさ、少しだけ飲みに行かない?」
「うん、いいよ、行こう♪この前の話の続きも聞きたい」
男の人にお酒誘われたら気をつけて…って言うけど…るんくんなら大丈夫だよね?
まだまだ記憶が子供の頃のままだから、なんだかお酒を一緒に飲むって変な感じ。
「あんま飲むと声ガラガラになるから、一杯ね」
「うん」
あ…プロなんだなーやっぱり。
私より年齢も声の仕事も先輩なんだもんね。
歌い手と声優…道は少し違うけど、声で伝えたいお仕事。
私が幼い頃から憧れて願って辿った夢を、るんくんも変わらず自分の夢を追いかけて叶えたこと、すごく嬉しい。
同志…もちろんそれだけではない気持ちなんだけど…今は恋より夢を追いたいから…。
「ここだよ〜、お酒の種類も多いし、なにより食事が美味しいんだ!」
ハッ…ていうか、るんくん、彼女はいないのかな?
この様子だといないみたいだけど…。
流行りの洋風半個室居酒屋で、おしゃれなお店。
今はいなくても、彼女がいた時とかあって一緒に来たのかな?
…なんて、つい邪推してしまう。
「…念のため聞くけど…ミヤは彼氏とかいない…の?」
「へ?あ、いないいない!今までいたことないよー、ずっと夢を追いかけてたし!」
それにホントはるんくんのこと、ずっと想ってたから…とは、言えない。
「おぉ、そっか!よかった!俺もおんなじ。恋とか興味なかっ…たわけではないけど…まぁ俺モテないし」
「えーっ!みんな見る目がないよ!」
「だよね!こんなにいい男なのに〜」
まだ飲んでもないのに、場に酔ってきたのか、テンションが上がる。
いらないことまで言ってしまいそうなので、メニューをパラパラとめくってごまかしながら、適当にお料理をタッチパネルで注文する。
「るんくんはなに飲む?」
「んー…これ!お酒強くないから、うんと弱いやつで」
「あれ?そうなの?んじゃ私は…っと…」
2人分のお酒も注文して、この前の話の続きが始まる。
このまま時間が止まってしまえばいいのに…なんて…少しだけ思ってしまう。