Chasing dreams
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私は、ミヤ。
あれから、夢に向かって勉強もいっぱいして、レッスンも受けて。
大人になって、都会でひとり立ちして、オーディションたくさん受けて、なんとか事務所に所属させてもらえるようになった、声優…のたまご?
アルバイトで生活費を稼ぎながら、なんとか掴んだこのチャンス!
今日はその第一歩!
事務所に挨拶をする、その日がついに来た!
都会のビル群には少しは慣れたとはいえ、気を抜いているとやっぱりグッタリ疲れちゃう。
挨拶と面接を終えて、私は若干ヨタヨタしながら、事務所の玄関口へと歩く。
仕事の説明、書類書き、サンプルボイス収録、宣材写真撮影…。
プ…プロの世界ってすごいんだなぁ〜〜って、圧倒されちゃった。
はぁ…私やっていけるかな…。
なんだか少し不安になってきちゃった。
その時…
「ねぇキミ!大丈夫?」
背後から、男性とも女性ともつかない中性的な声が聞こえた。
ヨタヨタしてたから、心配されてる…?
「あっ、すみません!大丈夫で…………!」
言いながら振り向いた瞬間…
⸺えっ…
見覚えのある、赤い髪。
見覚えのある、面差し。
そして忘れもしない、左頬の…肉球型のほくろ。
きっと私は目を見開いて驚いていたけど、声の主も目を見開いて驚いていた。
「るんくん…?」
「え……?あ…っ!……ミヤ!?」
トクン…
心臓が、大きく跳ねる。
息も時間も一瞬止まって…
蘇る思い出。
アルバムがパラパラとめくられるように、鮮やかによみがえる。
わぁぁぁ!
「うわぁ!久しぶりだね、ミヤ!…あれから元気にしてた?」
「ああぁ…る、るんくんんん!」
声を絞り出しながら、私はジワジワと目頭が熱くなるのを感じた。
「あ…いや、な、泣かないで?ミヤ?ちょ…ここで泣かれるとマズイって!」
るんくんが手を取って、私をどこかへ案内する。
こんな…こんな大都会の真ん中で、るんくんに再会できるなんて…!
「どう?落ち着いた?」
「…うん、ありがとう」
ここは事務所内のカフェ。
薄暗くて、ここなら少しの涙くらいなら人からわからない。
るんくんが温かいココアを注文して持ってきてくれて。
私たちは隅っこの席に座った。
「ご、ごめんね、急に泣いちゃったりして。その…あんまりにも懐かしくて、それにビックリして…」
「ふふ、俺もビックリしたよ。まさかミヤも東京に出てきてて、しかもこうして同じ事務所の中で再会できるなんてさ!」
るんくんのやさしい微笑み。
変わってないなぁ、やさしいとこ…。
それに声も…少しは男の子っぽくなったけど、相変わらずのキレイな声。
聞けばるんくんは、半年前くらいからこの事務所に所属して“歌い手”として活動してるんだそうで。
動画サイトのチャンネルも持ってるんだって。
そっかぁ…アルバイト結構詰め込んでたから、動画サイトなんて久しく見てなかったよ。
「はい、これ、名刺ね」
差し出されたネームカードには、“あーるん。”の文字と、るんくんの写真。
「すごい…プロみたい…」
「いや、プロだから!」
「あ…ふふっ、ごめん!」
「あっはは!元気出てよかった!」
るんくんの夢が、叶ったんだなぁ…。
そう実感すれば、本当に素直にうれしくなる。
「まだまだ、夢の第一歩だよ。なんとか飛び込んだプロの世界は、本当にすごくてさ、でも俺、もっともっとがんばるんだ!」
おぉ…そっか、私が今日感じたように、やっぱりプロの世界は広くてすごいんだなぁ。
「私も、今日からがんばりたい!」
「うん、声優になる!って言ってたもんね。みたらしって名前でやってるんだね、いいね、素敵な名前だと思う」