Chasing dreams
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それはまだ私が小学生だったころ。
⸺声優になりたい
…思い描いていた夢。
だけど友だちはみんな、そんな私の夢を笑って…。
悲しくて、一人、公園の隅の木の下で泣いていた。
「どうしてこんなところで泣いているの?」
不意に聞こえた声。
声の方を見上げると、そこには一人の男の子の姿。
桜舞う一面ピンク色の世界に、鮮やかに咲く赤い髪。
左頬に、小さな肉球型のほくろ。
「あ…えっと…」
「俺は…………っていうんだ、あーるんって呼んでよ!」
しゃがみ込んで、私に目線を合わせてくれる。
やさしい人…
それが第一印象だった。
あーるんくんは、そのあと私の話を真剣に聞いてくれて。
「俺にも、夢があるんだ!」
キラキラした目で、語ってくれた。
笑ったりバカにしたりせず、私の夢を聞いてくれて応援してくれて。
私もまた彼の“歌手になりたい”という夢を応援したくて。
⸺絶対にお互い夢を叶えようね!
あの日、誓ったこと。
あーるんくんは、私より一つ年上で。
同じ小学校だったものの、家はお互い反対方向だったから、もっぱら話すのは学校の中で。
あの日はたまたま友だちの家に遊びに行った帰りだったらしくて、そんな時私の泣く声を聞いて声をかけてくれたらしい。
運命…? なんて、少し思っちゃう、夢見るお年頃。
思えばそれは、淡い恋心だったのかもしれない。
それだけに、彼が親の仕事の都合で引っ越すと聞いた時、胸が張り裂けそうだった。
「手紙書くから!これは俺の新しい住所」
猫の形の可愛らしいメモ用紙には、遠くの知らない街の名前。
るんくんが遠くに行っちゃう…悲しくて、こらえていたのに涙があふれちゃう。
「ミヤは泣き虫だなぁ…」
肩をポンポンと叩く、やさしい手。
ただただ、悲しくてさみしくて、でもその想いが「好き」という感情だなんて、まだ知らなくて。
結局、想いを伝えられないまま、離れ離れになってしまった。
手紙もはじめこそ頻繁に交わしていたけれど、中学高校と上がるうちにお互い忙しくなってしまって、途切れてしまってそれっきり。
いつの間にか、思い出に変わっていた。
ただ時折思い出すのは、出会った時のこと。
ぼんやりと思い出す、甘い思い出…。