幾光年恋したひ【side story】
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー善逸sideー
四限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、炭治郎はガタリと立ち上がる。
それはもう全身から幸せそうな音を鳴らして、意気揚々とリュックからランチョンマットに包まれた弁当を取り出した。
「昼だぞ善逸!伊之助!さぁ早く食べよう!」
炭治郎の背景には花畑が見えそうなくらい、それはもう蔓延の笑みを綻ばせていた。その様子を見た善逸はやれやれと肩を竦め溜め息を吐く。
「なっ、てめぇそんなに腹減ってんのかよ!負けねぇぞ!俺が一番に昼飯食らって一番に食い終わってやる!」
伊之助が妙な負けん気をみなぎらせているが、炭治郎は別に腹が物凄く減っててああ言ったわけではないと善逸は分かっていた。
ーあぁー...本当羨ましい奴ー
炭治郎が昼をこれ程楽しみにしている理由は、彼の姉である日向子さんの手製弁当を持参している日だからだ。
炭治郎の実家はパン屋なので、昼飯に手作りパンを持ってくる時は日常茶飯事である。そんな彼の健康を心配した日向子さんが、なんでも彼になるべくバランスの良い食事を取って欲しいと気遣い作ってくれるらしい。
炭治郎曰く
「姉さんも俺も実は米派なんだ。まぁパンはさ、日頃作って食べてるものだし正直飽きてはくるから。それで、一人分も二人分も変わらないからってたまにお弁当を作ってくれるんだよ、優しいよなぁ」
そんな盛大な惚気を、悪気なく面と向かって言われた俺の気持ちよ。
本人は無自覚だろうし、炭治郎が幸せそうならそれはそれで一向に構わないのだが、それでも思春期男子高校生として羨ましいものは羨ましいのだ。
弁当箱の中をちらりと覗くと、今日も今日とて美味しそうなおかずが沢山敷き詰められていた。
色合いや盛り方もちゃんと考えられてる手の込んだお弁当。これを朝の短時間でパパッと作ってしまうのだから凄い。間違いなく同年代の女子の中で、日向子さんのスペックの右に出る者はいないだろう。
美味しそうにぱくぱくとおかずを頬張る炭治郎。彼から発せられる音は本当に心地よくて、側で聞いてる俺もほっこりしてくる。
「お前さ、今の環境に感謝しろよな」
「ん?」
「好きな女の子の手作り弁当なんて、そうそうありつけるものじゃないんだから。お前くらいだぞ、ごく自然に堂々とそんな至高の品を机の上に広げられるのは」
そう言うと彼は一瞬きょとりとした後、好きな女の子の...とぼそり呟く。
そして、案の定ぶわりと頬を赤く染め上げた。
「...うん。確かにそうだな。善逸の言う通りだ」
炭治郎はへにゃりと笑う。まさかのピュア過ぎる反応に善逸はぱちぱち瞬きする。
「俺、家族って言うのもいかがなもんかなーって思ってたけど、考えてみたらこうして普段彼女の手作り弁当や料理を食べれるのも、休日も一緒にいれるのも、パンを作るのだって...家族じゃなきゃ出来ないもんな。」
「...だな。あぁーあ...俺だって禰豆子ちゃんの手作り弁当食べたいよ。」
善逸のぼやきに炭治郎は苦笑いを浮かべていると、伊之助が突然弁当箱に向かって箸を突いてきた為、咄嗟に炭治郎は回避する。
「な、いきなり何するんだ伊之助!!」
「その卵焼き美味そうだな。一つくれよ。3個もあるんだから一つくらいいいだろ?」
伊之助がにやりと笑みを浮かべてカチカチ箸を鳴らしながら強請る。しかし、炭治郎があげられないときっぱり拒否をすると、伊之助はケチケチするんじゃねぇと声を荒げた。
「そんなにお腹が空いてるならこっちの卵パンならやれる。でもこのお弁当は駄目だ!」
「はぁ?!」
どちらも一向に引かない為、さすがにこれ以上事が大きくならないよう善逸が割って入ろうと口を開いた時だった。
炭治郎がその場でガタリと立ち上がり、クラス中に響くような勢いでこう叫んだ。
「これは姉さんが俺の為に作ってくれた弁当だっ!!!」
クラスメイトの視線が一様に炭治郎へと向けられる。
昼休みのわいわいとした話し声が飛び交っていた中で、突如シーンとした空気に早変わりした教室。
ハッとした炭治郎はみるみる真っ赤になっていき、手で顔を覆いながらゆっくりと着席した。
しばらくしてまたいつもの賑やかな雰囲気に戻ったので、善逸は気にするなと炭治郎の肩に手を置く。
「うぅ...恥ずかしい。穴があったら入りたい」
「あー..察するよ、うん。伊之助も炭治郎嫌がってるんだから無理強いするなよな」
じとっとした視線を送れば、伊之助は意味わからねぇと首を傾げて炭治郎から受け取った卵パンに齧 りついた。
炭治郎の気持ちもわかる。俺だって禰豆子ちゃんが一所懸命作ってくれた弁当なら米粒一つだって残さず全部食べ切りたいし、誰かに分け与えたくはないから。
でも、卵焼き一つくらい優しい炭治郎ならくれるだろうって期待した伊之助の気持ちもわからなくもない。
恋愛なんて一切興味無さそうな伊之助にはわからないかな..
ーはぁ..この二人の親友って、大変だなぁ...ー
善逸は人知れずそうぼやくのだった。
ーーーーー
四限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、炭治郎はガタリと立ち上がる。
それはもう全身から幸せそうな音を鳴らして、意気揚々とリュックからランチョンマットに包まれた弁当を取り出した。
「昼だぞ善逸!伊之助!さぁ早く食べよう!」
炭治郎の背景には花畑が見えそうなくらい、それはもう蔓延の笑みを綻ばせていた。その様子を見た善逸はやれやれと肩を竦め溜め息を吐く。
「なっ、てめぇそんなに腹減ってんのかよ!負けねぇぞ!俺が一番に昼飯食らって一番に食い終わってやる!」
伊之助が妙な負けん気をみなぎらせているが、炭治郎は別に腹が物凄く減っててああ言ったわけではないと善逸は分かっていた。
ーあぁー...本当羨ましい奴ー
炭治郎が昼をこれ程楽しみにしている理由は、彼の姉である日向子さんの手製弁当を持参している日だからだ。
炭治郎の実家はパン屋なので、昼飯に手作りパンを持ってくる時は日常茶飯事である。そんな彼の健康を心配した日向子さんが、なんでも彼になるべくバランスの良い食事を取って欲しいと気遣い作ってくれるらしい。
炭治郎曰く
「姉さんも俺も実は米派なんだ。まぁパンはさ、日頃作って食べてるものだし正直飽きてはくるから。それで、一人分も二人分も変わらないからってたまにお弁当を作ってくれるんだよ、優しいよなぁ」
そんな盛大な惚気を、悪気なく面と向かって言われた俺の気持ちよ。
本人は無自覚だろうし、炭治郎が幸せそうならそれはそれで一向に構わないのだが、それでも思春期男子高校生として羨ましいものは羨ましいのだ。
弁当箱の中をちらりと覗くと、今日も今日とて美味しそうなおかずが沢山敷き詰められていた。
色合いや盛り方もちゃんと考えられてる手の込んだお弁当。これを朝の短時間でパパッと作ってしまうのだから凄い。間違いなく同年代の女子の中で、日向子さんのスペックの右に出る者はいないだろう。
美味しそうにぱくぱくとおかずを頬張る炭治郎。彼から発せられる音は本当に心地よくて、側で聞いてる俺もほっこりしてくる。
「お前さ、今の環境に感謝しろよな」
「ん?」
「好きな女の子の手作り弁当なんて、そうそうありつけるものじゃないんだから。お前くらいだぞ、ごく自然に堂々とそんな至高の品を机の上に広げられるのは」
そう言うと彼は一瞬きょとりとした後、好きな女の子の...とぼそり呟く。
そして、案の定ぶわりと頬を赤く染め上げた。
「...うん。確かにそうだな。善逸の言う通りだ」
炭治郎はへにゃりと笑う。まさかのピュア過ぎる反応に善逸はぱちぱち瞬きする。
「俺、家族って言うのもいかがなもんかなーって思ってたけど、考えてみたらこうして普段彼女の手作り弁当や料理を食べれるのも、休日も一緒にいれるのも、パンを作るのだって...家族じゃなきゃ出来ないもんな。」
「...だな。あぁーあ...俺だって禰豆子ちゃんの手作り弁当食べたいよ。」
善逸のぼやきに炭治郎は苦笑いを浮かべていると、伊之助が突然弁当箱に向かって箸を突いてきた為、咄嗟に炭治郎は回避する。
「な、いきなり何するんだ伊之助!!」
「その卵焼き美味そうだな。一つくれよ。3個もあるんだから一つくらいいいだろ?」
伊之助がにやりと笑みを浮かべてカチカチ箸を鳴らしながら強請る。しかし、炭治郎があげられないときっぱり拒否をすると、伊之助はケチケチするんじゃねぇと声を荒げた。
「そんなにお腹が空いてるならこっちの卵パンならやれる。でもこのお弁当は駄目だ!」
「はぁ?!」
どちらも一向に引かない為、さすがにこれ以上事が大きくならないよう善逸が割って入ろうと口を開いた時だった。
炭治郎がその場でガタリと立ち上がり、クラス中に響くような勢いでこう叫んだ。
「これは姉さんが俺の為に作ってくれた弁当だっ!!!」
クラスメイトの視線が一様に炭治郎へと向けられる。
昼休みのわいわいとした話し声が飛び交っていた中で、突如シーンとした空気に早変わりした教室。
ハッとした炭治郎はみるみる真っ赤になっていき、手で顔を覆いながらゆっくりと着席した。
しばらくしてまたいつもの賑やかな雰囲気に戻ったので、善逸は気にするなと炭治郎の肩に手を置く。
「うぅ...恥ずかしい。穴があったら入りたい」
「あー..察するよ、うん。伊之助も炭治郎嫌がってるんだから無理強いするなよな」
じとっとした視線を送れば、伊之助は意味わからねぇと首を傾げて炭治郎から受け取った卵パンに
炭治郎の気持ちもわかる。俺だって禰豆子ちゃんが一所懸命作ってくれた弁当なら米粒一つだって残さず全部食べ切りたいし、誰かに分け与えたくはないから。
でも、卵焼き一つくらい優しい炭治郎ならくれるだろうって期待した伊之助の気持ちもわからなくもない。
恋愛なんて一切興味無さそうな伊之助にはわからないかな..
ーはぁ..この二人の親友って、大変だなぁ...ー
善逸は人知れずそうぼやくのだった。
ーーーーー
1/6ページ