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幾光年恋したひ
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〜24【後悔】〜
禰豆子はさり気無く家中を見て周り、兄のブレスレットを探したが何処にも落ちてはいなかった。やはり外で失くしてしまったのではと思う。
兄は大事な物でも絶えず身に付ける主義で、ひな姉のブレスレットに関しては、風呂や仕事以外は学校にも持って行ってたようだ。
だがキメツ学園は華美なアクセサリー禁止となってる為、バッグチャームにしていたみたいだけど...
そうなると何処で落としたのか追うのは難しいだろう。
「もう...お兄ちゃんたら、失くしたらこうなる事わかってるなら家に置いとけば良かったのに」
「何か失くしちゃったの?」
「そうなの。ひな姉から貰ったブレスレッ......ト..」
しまったと思っても時既に遅し。腰を屈めて机の下に潜っていた禰豆子は恐る恐る顔を上げると、姉が呆れ顔で佇んでいた。
「あ、その..」
「やっぱりね、怪しいと思ったわ。炭治郎は今それ探しに行ってるのね?」
「...っ」
有無を言わさぬ圧力を彼女から感じ、禰豆子は仕方なく経緯を暴露せざるを得なかった。
ーごめん、お兄ちゃん..ー
ーーーー
一方、炭治郎は元来た道と場所を辿っていた。
先程、栗花落先輩と会った公園。何かに引っ掛けたり衝撃を受けたとしたらこの辺かなとも思ったが、やはりそれらしいものは見つからない。
禰豆子の言う通り、こうも周りが暗くてはスマホのライトで照らせる範囲も限られてしまう。とても非効率だった。
「やっぱり無いか...」
ショック、なんてものじゃなかった。
あれは日向子姉さんが俺達竈門家の事を思って手作りしてくれた物だ。
あのブレスレットには俺の星座石であるパールがあしらわれているが、それは彼女の亡き実の母親の形見の一つで出来ている。俺にとっては勿論、彼女にとってもこの世に二つとない代物だ。
こんな事なら...失くすリスクを最小限にするべく家に保管して置くべきだったのだ。
「すまない..日向子姉さん」
とぼとぼとした足取りで歩いていると、ピロンとメールの通知音が鳴った。画面を見ると、それは日向子姉さんからのものだった。
【もう遅いから早く帰って来てね。ご飯出来てるよ】
メールにはそう書いてあった。これ以上心配をかけるわけにはいかない。帰ったら謝ろう...そう覚悟を決めて炭治郎は歩く速度を早めた。
家に着き玄関の戸を開けると、目の前には自分の帰りを待ち詫びていたかのように日向子姉さんが立っていた。
「お帰り炭治郎、ちょっといいかしら?」
ーーーーー
〜25【彼女の部屋】〜
ー炭治郎sideー
日向子姉さんは至っていつも通りの調子でそう言った。何を言われるか心当たりがあり過ぎてわからない。炭治郎は黙って彼女に従い二階に上がって行った。
「入って?」
「え...いや、でも」
入ってと促された目の前の部屋は日向子姉さんの私室だった。
そこは炭治郎にとって自由に足を踏み入る事の出来ない、家の中で唯一の禁断と言っていい空間だ。
本人からそう言われたとて、躊躇するのも無理はないだろう。
(好きな人の私室)に入るのに、意識しない男子高校生はいない。
「気にしないで、ちょっと話すだけだから」
半ば強制的に背中を押され、ついに彼女の部屋の中に足を踏み入れる事になった。
炭治郎は無意識のうちに周りをキョロキョロと見渡した。
久々に入った日向子姉さんの部屋は、彼女らしいシンプルな色合いでまとめられていて、物は綺麗に整理整頓されていたけど、ベッドに置いてある大きなぬいぐるみなんかはいかにも年相応の女子高生らしくて、可愛らしかった。
ーベッド...ー
「っ...」
思わず目を逸らす。ここで毎日彼女が寝てるんだと思うと、変な気分になってしまう。
あぁ...そういうの考えないようにする為に、拒否したのに。悶々としていると、日向子姉さんがくすりと笑った。
「ねぇ、もしかして緊張してるの?」
「!..そりゃあ勿論。入ったの久しぶりだし..」
「確かに。最後に私の部屋で遊んだの炭治郎が小学生の頃だったもんね。あ、ごめん。その辺座っていいよ」
彼女は自分のベッドに腰掛けながら、懐かしいなと微笑んでいた。怒っては無さそうだけど..一体何を俺に話したくてここに呼んだのだろう?
何でもブレスレットの件は、俺からちゃんと彼女に話さなければ..
そう思いぎゅっと拳を握り締めた時、日向子姉さんが口を開いた。
「炭治郎。私は別に、ブレスレットを失くしたこと怒ってないわよ」
「!」
気づいてたのか..
咄嗟に炭治郎はその場で膝をつき頭を下げた。
「ごめん!色々探したんだけど見つからなくて、大事にしてたのに..」
その状況を見て、彼女は驚いたように目を丸くしていたが、もう大丈夫だと安心させるようにこう続けた。
「いいの。そんな風に縛りたくてあげたものじゃないわ。そんなに大事にしてくれてたのは素直に嬉しいよ。でも、遅くに一人で外を歩き回るなんてもうしないでね?男の子でも何があるかわからないんだから。ブレスレットより、炭治郎の方が私は大事だもの」
ーーーーー
〜26【勘違い】〜
(ブレスレットより、炭治郎の方が私は大事だもの)...
きっと日向子姉さんにとっては、それ程深い意味も無く言った言葉なのだろうが、俺にとっては、強く心を揺さぶる一言だった。
不意打ち過ぎて、顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかる。
彼女が気に掛けてくれていたのは俺だった。それは、日向子姉さんの寛容で心優しい人柄の表れだ。
ーやめてくれ...そんな思わせぶりな事言われたら、間に受けてしまう、自分の都合の良いように解釈してしまうからー
そんな炭治郎の葛藤などつゆ知らず、彼女は話はそれだけよと言って立ち上がった。
「さ、お腹空いたでしょ?リビング行こうか」
炭治郎の真横を日向子が通った時、咄嗟に彼女の手首に手を伸ばし引き留めた。
当然相手は不思議そうな顔で振り向く。
「炭治郎?」
「日向子姉さんは優し過ぎるよ。俺が言うのも何だけど、もっと怒ってもいいと思う。じゃないと..」
「?」
炭治郎はバッと思いきり顔を上げてこう叫んだ。
「勘違いされるぞ俺みたいな奴にっ!」
日向子は鳩が豆鉄砲を食らったかのようにぱちくりと瞬きした。
顔を真っ赤にしてそう叫ぶやいなや、炭治郎は部屋を出てバタバタと階段を駆け下りて行った。
残された日向子はと言うと、何が起きたのか未だに状況を飲み込めずにいた。
ーあんな炭治郎..初めて見たー
いつもの彼は、大家族の長男らしく基本和 やかで落ち着いた雰囲気を纏い、滅多な事では動じないタイプという印象があった。
そんな彼が、頬を紅潮させながら大声で叫ぶという行為自体が珍しい。
【ところで、勘違い...とは何を指した言葉?】
日向子は腕を組んでうーんと唸った。もっと怒らないと、物を失くすなどの行為が簡単に許されるものだと勘違いしてしまうと、そういう事が言いたかったのだろうか?
うん、真面目な彼ならあり得るかもしれない。
ただ、個人的には本当に怒っていないし、何より彼自身が反省して落ち込んでいるならそこまで叱る意味もない。
私がメールを送らなければ、多分まだ外を探し回っていたことだろう。私にとってはそれで充分だ。
「同じブレスレット、また作ってあげようかな」
ふふと笑みを溢しながら、日向子もまた自室を後にした。
ーーーー
竹「炭兄...なんか顔赤くない?熱あるんじゃないの?」
花「本当だー。早く寝た方がいいよ」
炭「...あー..これは違う、大丈夫だありがとう」
ーーーーー
禰豆子はさり気無く家中を見て周り、兄のブレスレットを探したが何処にも落ちてはいなかった。やはり外で失くしてしまったのではと思う。
兄は大事な物でも絶えず身に付ける主義で、ひな姉のブレスレットに関しては、風呂や仕事以外は学校にも持って行ってたようだ。
だがキメツ学園は華美なアクセサリー禁止となってる為、バッグチャームにしていたみたいだけど...
そうなると何処で落としたのか追うのは難しいだろう。
「もう...お兄ちゃんたら、失くしたらこうなる事わかってるなら家に置いとけば良かったのに」
「何か失くしちゃったの?」
「そうなの。ひな姉から貰ったブレスレッ......ト..」
しまったと思っても時既に遅し。腰を屈めて机の下に潜っていた禰豆子は恐る恐る顔を上げると、姉が呆れ顔で佇んでいた。
「あ、その..」
「やっぱりね、怪しいと思ったわ。炭治郎は今それ探しに行ってるのね?」
「...っ」
有無を言わさぬ圧力を彼女から感じ、禰豆子は仕方なく経緯を暴露せざるを得なかった。
ーごめん、お兄ちゃん..ー
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一方、炭治郎は元来た道と場所を辿っていた。
先程、栗花落先輩と会った公園。何かに引っ掛けたり衝撃を受けたとしたらこの辺かなとも思ったが、やはりそれらしいものは見つからない。
禰豆子の言う通り、こうも周りが暗くてはスマホのライトで照らせる範囲も限られてしまう。とても非効率だった。
「やっぱり無いか...」
ショック、なんてものじゃなかった。
あれは日向子姉さんが俺達竈門家の事を思って手作りしてくれた物だ。
あのブレスレットには俺の星座石であるパールがあしらわれているが、それは彼女の亡き実の母親の形見の一つで出来ている。俺にとっては勿論、彼女にとってもこの世に二つとない代物だ。
こんな事なら...失くすリスクを最小限にするべく家に保管して置くべきだったのだ。
「すまない..日向子姉さん」
とぼとぼとした足取りで歩いていると、ピロンとメールの通知音が鳴った。画面を見ると、それは日向子姉さんからのものだった。
【もう遅いから早く帰って来てね。ご飯出来てるよ】
メールにはそう書いてあった。これ以上心配をかけるわけにはいかない。帰ったら謝ろう...そう覚悟を決めて炭治郎は歩く速度を早めた。
家に着き玄関の戸を開けると、目の前には自分の帰りを待ち詫びていたかのように日向子姉さんが立っていた。
「お帰り炭治郎、ちょっといいかしら?」
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〜25【彼女の部屋】〜
ー炭治郎sideー
日向子姉さんは至っていつも通りの調子でそう言った。何を言われるか心当たりがあり過ぎてわからない。炭治郎は黙って彼女に従い二階に上がって行った。
「入って?」
「え...いや、でも」
入ってと促された目の前の部屋は日向子姉さんの私室だった。
そこは炭治郎にとって自由に足を踏み入る事の出来ない、家の中で唯一の禁断と言っていい空間だ。
本人からそう言われたとて、躊躇するのも無理はないだろう。
(好きな人の私室)に入るのに、意識しない男子高校生はいない。
「気にしないで、ちょっと話すだけだから」
半ば強制的に背中を押され、ついに彼女の部屋の中に足を踏み入れる事になった。
炭治郎は無意識のうちに周りをキョロキョロと見渡した。
久々に入った日向子姉さんの部屋は、彼女らしいシンプルな色合いでまとめられていて、物は綺麗に整理整頓されていたけど、ベッドに置いてある大きなぬいぐるみなんかはいかにも年相応の女子高生らしくて、可愛らしかった。
ーベッド...ー
「っ...」
思わず目を逸らす。ここで毎日彼女が寝てるんだと思うと、変な気分になってしまう。
あぁ...そういうの考えないようにする為に、拒否したのに。悶々としていると、日向子姉さんがくすりと笑った。
「ねぇ、もしかして緊張してるの?」
「!..そりゃあ勿論。入ったの久しぶりだし..」
「確かに。最後に私の部屋で遊んだの炭治郎が小学生の頃だったもんね。あ、ごめん。その辺座っていいよ」
彼女は自分のベッドに腰掛けながら、懐かしいなと微笑んでいた。怒っては無さそうだけど..一体何を俺に話したくてここに呼んだのだろう?
何でもブレスレットの件は、俺からちゃんと彼女に話さなければ..
そう思いぎゅっと拳を握り締めた時、日向子姉さんが口を開いた。
「炭治郎。私は別に、ブレスレットを失くしたこと怒ってないわよ」
「!」
気づいてたのか..
咄嗟に炭治郎はその場で膝をつき頭を下げた。
「ごめん!色々探したんだけど見つからなくて、大事にしてたのに..」
その状況を見て、彼女は驚いたように目を丸くしていたが、もう大丈夫だと安心させるようにこう続けた。
「いいの。そんな風に縛りたくてあげたものじゃないわ。そんなに大事にしてくれてたのは素直に嬉しいよ。でも、遅くに一人で外を歩き回るなんてもうしないでね?男の子でも何があるかわからないんだから。ブレスレットより、炭治郎の方が私は大事だもの」
ーーーーー
〜26【勘違い】〜
(ブレスレットより、炭治郎の方が私は大事だもの)...
きっと日向子姉さんにとっては、それ程深い意味も無く言った言葉なのだろうが、俺にとっては、強く心を揺さぶる一言だった。
不意打ち過ぎて、顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかる。
彼女が気に掛けてくれていたのは俺だった。それは、日向子姉さんの寛容で心優しい人柄の表れだ。
ーやめてくれ...そんな思わせぶりな事言われたら、間に受けてしまう、自分の都合の良いように解釈してしまうからー
そんな炭治郎の葛藤などつゆ知らず、彼女は話はそれだけよと言って立ち上がった。
「さ、お腹空いたでしょ?リビング行こうか」
炭治郎の真横を日向子が通った時、咄嗟に彼女の手首に手を伸ばし引き留めた。
当然相手は不思議そうな顔で振り向く。
「炭治郎?」
「日向子姉さんは優し過ぎるよ。俺が言うのも何だけど、もっと怒ってもいいと思う。じゃないと..」
「?」
炭治郎はバッと思いきり顔を上げてこう叫んだ。
「勘違いされるぞ俺みたいな奴にっ!」
日向子は鳩が豆鉄砲を食らったかのようにぱちくりと瞬きした。
顔を真っ赤にしてそう叫ぶやいなや、炭治郎は部屋を出てバタバタと階段を駆け下りて行った。
残された日向子はと言うと、何が起きたのか未だに状況を飲み込めずにいた。
ーあんな炭治郎..初めて見たー
いつもの彼は、大家族の長男らしく基本
そんな彼が、頬を紅潮させながら大声で叫ぶという行為自体が珍しい。
【ところで、勘違い...とは何を指した言葉?】
日向子は腕を組んでうーんと唸った。もっと怒らないと、物を失くすなどの行為が簡単に許されるものだと勘違いしてしまうと、そういう事が言いたかったのだろうか?
うん、真面目な彼ならあり得るかもしれない。
ただ、個人的には本当に怒っていないし、何より彼自身が反省して落ち込んでいるならそこまで叱る意味もない。
私がメールを送らなければ、多分まだ外を探し回っていたことだろう。私にとってはそれで充分だ。
「同じブレスレット、また作ってあげようかな」
ふふと笑みを溢しながら、日向子もまた自室を後にした。
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竹「炭兄...なんか顔赤くない?熱あるんじゃないの?」
花「本当だー。早く寝た方がいいよ」
炭「...あー..これは違う、大丈夫だありがとう」
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