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幾光年恋したひ
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〜40【キメツ学園文化祭開幕】〜
「にいちゃーん!」
「六太!皆も来てくれてありがとう!」
大好きな兄の姿を見るやいなや、末っ子の六太は母の手を離し一目散に駆け出した。
炭治郎は大きく手を広げてひしっと弟を抱きとめると、小さな頭を一撫でした。
「よーし!まずはやっぱり炭兄のクラス!お化け屋敷からだよなぁ!」
「えー?!私嫌だー!お兄ちゃんがお化け役で居るならまだ我慢するけど今休憩なんでしょ?私はねず姉のクラス行ってからひな姉のクラス回りたいー!」
お化け屋敷派の竹雄、茂。そして縁日・喫茶店派の花子、六太。綺麗に意見が別れた竈門家。母と父は仕方なく保護者として両者別れ、それぞれの子供達が興味のあるクラスに付き添う形となった。
今は禰豆子と日向子、伊之助と善逸はクラスの出し物の当番をしている為この場は不在。合間で抜け出せているのは炭治郎のみだ。
となると、やはり竹雄は兄を男性陣側に引き込もうと躍起になる。
「炭兄は当然こっちに来るよな?」
へへんと余裕の表情で兄に問いかける竹雄。しかし炭治郎は困ったように眉を下げると、こう返した。
「あー...俺は、花子達と回ろうかな」
まさかの発言に目を丸くして茫然とする竹雄達と、炭兄だってそりゃ自分のクラス以外見たいでしょうよと炭治郎の腕を引き寄せる花子。確かにそういうものかと二人顔を見合わせて潔く竹雄達は引いた。
「じゃあまた後でな!」
それぞれ反対方向に別れ、炭治郎達はまず中等部の校舎を目指す。普段歩き慣れた廊下や外通路も、1年の中で最大規模を誇るイベントとあって、何処かしこがお祭り仕様に飾られていた。道行く人々は皆一様に楽しそうな笑顔を綻ばせている。
そんな幸せな匂いに炭治郎は思わず口元が緩む。
「炭兄の当番は午後なの?」
「そうだよ」
「そう、じゃあ日向子のクラスでお昼食べたら丁度いいかしらね」
そんな母の提案に、炭治郎は思い切り首を縦に振った。竹雄達にはちょっと申し訳ないが、絶対こっちに来ようと心に決めていたのだ。
理由は、やはり日向子の接客姿を拝む為だった。
彼女のバイト先に遊びに行った事は何度かあって、その時のクラシカルで清楚な制服も綺麗だったけど、今回は若い子が好きそうな可愛らしい衣装を身に纏うと聞いていた。
ーどんな姿だろうか..何を着ても姉さんはきっと可愛いけどー
正直言うと、今日までそんなどうしようもない妄想ばかりしていたのだ。
ーーーーー
〜41【肩の荷を】〜
「あ!母さん達こっちこっち!」
禰豆子が担当していたのは輪投げの係。5歳未満だった六太は一番手前に引かれた線の前に立ち、姉達に見守られながら輪を放つ。すると見事に棒に輪が入り、六太は得意げにやったぁと飛び跳ねた。
「凄いなぁ六太!お前は輪投げの才能があるなぁ」
炭治郎に褒められると、六太は嬉しそうにえへへと笑っていた。縁日の遊具は特に幼い子供達に人気があるようで、やはり自分達のような家族連れが多かった。
「あれ、そう言えば禰豆子。無一郎君と同じクラスじゃなかったっけ?」
「うん、そうよ。でもついさっき交代しちゃったんだよ。今頃校内回ってるんじゃないかな?会えなくて残念だったね」
「...そうか」
せっかくなら挨拶したかったけれど、居ないなら仕方がないか...
ー無一郎君ー
彼とは仲良くなりたいと思うのだけど、少しだけ..不安要素もある。それはやはり日向子の事だった。
彼が彼女に恋愛感情を抱いているという根拠はないけど、もしそうなら...
【俺と無一郎君はライバルって事になるよな】
元来平和主義の炭治郎にとっては、かなりキツいものがある。ただでさえ彼女を好いている男は多いから取られないように必死なのに。
お祭り気分の雰囲気の中、炭治郎は一人唇を噛み締めた。そんな時、禰豆子がちょいちょいと制服の袖を引っ張る。
「!」
「お兄ちゃんどうしたの?なんだかさっきから険しい顔してるけど...何かあった?」
心配そうに眉を下げる妹に、何でもないと慌てて目の前で手を振った。
「大丈夫だ!ごめんな」
「ねぇねぇ兄ちゃんあのヨーヨー欲しい!」
今度は六太が炭治郎の脚の裾をくいくいと引っ張り、ヨーヨープールを指差した。よーし!じゃあ兄ちゃんが取ってやるぞ!と意気込んで腕まくりをして末っ子の弟と共にプールに向かっていった兄の背中を、禰豆子は不思議そうに見つめていた。
「うん。今はいつものお兄ちゃんだ..」
たまに、本当にたまにだけど。兄は、何かに悩んでいるというか、上の空な時がある。
兄はそういうの、あまり悟らせないからその原因は私もいまいちわからない。
でも大家族の長兄というのは、多分私達が想像する以上に色んな物を抱えているに違いないから、だから私は
ー少しでもお兄ちゃんの肩の荷を軽くしてあげたいなぁー
そう...昔から思っているのだ。
ーーーーー
〜42【期待したくなる】〜
「ねぇねぇ!次ひな姉のクラス行こうよ!」
「そうね、炭治郎も時間が限られてるしそろそろ行きましょうか?」
一通り禰豆子のクラスの出し物を遊びきった一同は、いよいよ姉のクラスへと足を向ける。禰豆子もちょうど昼休憩を取るらしく、合流して一緒に向かった。
花子に背中を押された炭治郎も、ようやく彼女の可愛い姿が拝めると思うと、表には出さなくとも内心わくわくが止まらなかった。
日向子のクラス。蓬 組の前へとやってくると、学生らしいポップな飾り付けが目に入った。
「次の方中へどうぞー!」
「っ!」
彼女の姿を見つけると、ひな姉っ!と六太と花子は真っ先に飛び出していく。
ふっと目線をこちらに向けた日向子姉さんはぱぁっと笑顔を綻ばせてぶんぶん手を振っていた。
ーか....
可愛いっ...!!ー
彼女の格好を頭から爪先までまじまじと見ると、ピンクと白の市松模様で出来た着物の上にフリルがあしらわれたエプロンを身につけていた。
スカートは今時らしいデザインでミニ丈仕様になっている。
いつもはポニーテールかハーフアップにしてる髪の毛は耳の下あたりでツインテールにされており、普段の彼女の落ち着いた雰囲気と幼さの残るギャップがなんとも言えない。
「お姉ちゃん似合ってる、可愛いよ!ね?お兄ちゃん」
「へ?!あ、あぁ!凄く可愛い...です」
いきなり禰豆子にそうふられた炭治郎は、顔を真っ赤にしつつも懸命に褒め言葉を紡ぐ。
動揺したり緊張したりする時に彼女に対してたまに出てしまう敬語。
妹達の前ではあまりこんな余裕のない姿は見せない為、花子がははーんといかにもわざとらしく顎に指をかけてこう言った。
「炭兄、さてはいつもと違うひな姉見て照れてるんでしょー」
「!!」
こういう時ばかりはわかりやすく顔に出る自分の性格を呪いたくなる。
完全に図星だった炭治郎は、否定も肯定もできずただただ耳まで真っ赤にした顔を俯かせるしかなかった。
「こら花子。あんまりお兄ちゃんを揶揄 わないの」
状況を察した母がやんわり花子を叱ったが、花子は少々納得のいかない様子ではーいと返す。
炭治郎はちらりと目線を上げた。するとあの日向子姉さんが、少し頬を染めている姿が視界の端に映り、どきりとする。
ただ、褒められたのが嬉しかっただけかもしれないけど...
ーこういう反応を見ると、どうしても期待したくなってしまうんだー
ーーーーー
〜43【複雑怪奇】〜
「あら?日向子、ご家族いらっしゃったのね」
「あ!しのぶちゃんだー!」
「ふふ、こんにちはー」
奥から声をかけてきたのは、日向子姉さんの親友でありたまに家にも遊びに来てくれていた胡蝶先輩。
にこにこと優しく接してくれる彼女には、六太達もよく懐いており、ちゃん付けで呼ぶくらい親しみを持っている。彼女は母にぺこりと頭を下げると、すっと炭治郎へと目線を移した。
「!、あ...この間はブレスレット、栗花落先輩が拾ってくださったって聞いて、ありがとうございました。苗字が違ったから気付かなかったけど、日向子姉さんから後で、お二人はご家族で一緒に住んでるって聞いて」
「あぁ、その件なら見つかって本当に良かったですね。炭治郎君。寧ろお礼を言いたいのは私の方よ。ありがとう」
「?」
「ふふ、今は分からなくて大丈夫です。日向子、あっちのテーブル私が変わるね」
「いいの?ありがとうしのぶ!」
胡蝶先輩は姉さんと俺たちを気遣ってそう言ってくれた。とてもありがたい配慮で花子や六太達も喜んでいたが、炭治郎はさっき胡蝶先輩が言っていたありがとうの意味がよく分からず、首を捻っていた。
ーどういう意味なんだろう?ー
「そういうわけで、ごめんね無一郎君。せっかく来てくれたんだけど、家族皆来たから私あっちのテーブル行かせてもらうね」
え...
日向子姉さんが申し訳なさそうに手を合わせている先を見ると、ショックを受けた様に固まっている無一郎君の姿が目に入った。
隣はお兄さんだろうか?彼と瓜二つの顔が、呆れた様子で苦笑いしながら目線を逸らしていた。
「そんな..そっか....」
残念そうに眉を下げる無一郎君と不意に視線がかち合った。まるで日向子姉さんを横取りしたような展開になってしまった為、少し気まずい気持ちを覚える。
下の子達はまだそんな空気もわからない歳なので、嬉しそうに姉さんが案内したテーブルの一角に向かっていった。
「私オムライス!」
「僕もー!」
着席するやいなや、子供達は事前に決めていたらしい食べたいメニューを各々口にする。
「お兄ちゃんは?」
「!あ...じゃあ俺も」
禰豆子にメニューを寄せられて咄嗟にそう答えた。
しかしやはり気になるのは無一郎君達が座っているテーブル。彼の明らかに落胆した様子を見て、炭治郎は思う。
ーあの時の違和感はやっぱり、気のせいじゃないのかもしれないと..ー
ーーーーー
「にいちゃーん!」
「六太!皆も来てくれてありがとう!」
大好きな兄の姿を見るやいなや、末っ子の六太は母の手を離し一目散に駆け出した。
炭治郎は大きく手を広げてひしっと弟を抱きとめると、小さな頭を一撫でした。
「よーし!まずはやっぱり炭兄のクラス!お化け屋敷からだよなぁ!」
「えー?!私嫌だー!お兄ちゃんがお化け役で居るならまだ我慢するけど今休憩なんでしょ?私はねず姉のクラス行ってからひな姉のクラス回りたいー!」
お化け屋敷派の竹雄、茂。そして縁日・喫茶店派の花子、六太。綺麗に意見が別れた竈門家。母と父は仕方なく保護者として両者別れ、それぞれの子供達が興味のあるクラスに付き添う形となった。
今は禰豆子と日向子、伊之助と善逸はクラスの出し物の当番をしている為この場は不在。合間で抜け出せているのは炭治郎のみだ。
となると、やはり竹雄は兄を男性陣側に引き込もうと躍起になる。
「炭兄は当然こっちに来るよな?」
へへんと余裕の表情で兄に問いかける竹雄。しかし炭治郎は困ったように眉を下げると、こう返した。
「あー...俺は、花子達と回ろうかな」
まさかの発言に目を丸くして茫然とする竹雄達と、炭兄だってそりゃ自分のクラス以外見たいでしょうよと炭治郎の腕を引き寄せる花子。確かにそういうものかと二人顔を見合わせて潔く竹雄達は引いた。
「じゃあまた後でな!」
それぞれ反対方向に別れ、炭治郎達はまず中等部の校舎を目指す。普段歩き慣れた廊下や外通路も、1年の中で最大規模を誇るイベントとあって、何処かしこがお祭り仕様に飾られていた。道行く人々は皆一様に楽しそうな笑顔を綻ばせている。
そんな幸せな匂いに炭治郎は思わず口元が緩む。
「炭兄の当番は午後なの?」
「そうだよ」
「そう、じゃあ日向子のクラスでお昼食べたら丁度いいかしらね」
そんな母の提案に、炭治郎は思い切り首を縦に振った。竹雄達にはちょっと申し訳ないが、絶対こっちに来ようと心に決めていたのだ。
理由は、やはり日向子の接客姿を拝む為だった。
彼女のバイト先に遊びに行った事は何度かあって、その時のクラシカルで清楚な制服も綺麗だったけど、今回は若い子が好きそうな可愛らしい衣装を身に纏うと聞いていた。
ーどんな姿だろうか..何を着ても姉さんはきっと可愛いけどー
正直言うと、今日までそんなどうしようもない妄想ばかりしていたのだ。
ーーーーー
〜41【肩の荷を】〜
「あ!母さん達こっちこっち!」
禰豆子が担当していたのは輪投げの係。5歳未満だった六太は一番手前に引かれた線の前に立ち、姉達に見守られながら輪を放つ。すると見事に棒に輪が入り、六太は得意げにやったぁと飛び跳ねた。
「凄いなぁ六太!お前は輪投げの才能があるなぁ」
炭治郎に褒められると、六太は嬉しそうにえへへと笑っていた。縁日の遊具は特に幼い子供達に人気があるようで、やはり自分達のような家族連れが多かった。
「あれ、そう言えば禰豆子。無一郎君と同じクラスじゃなかったっけ?」
「うん、そうよ。でもついさっき交代しちゃったんだよ。今頃校内回ってるんじゃないかな?会えなくて残念だったね」
「...そうか」
せっかくなら挨拶したかったけれど、居ないなら仕方がないか...
ー無一郎君ー
彼とは仲良くなりたいと思うのだけど、少しだけ..不安要素もある。それはやはり日向子の事だった。
彼が彼女に恋愛感情を抱いているという根拠はないけど、もしそうなら...
【俺と無一郎君はライバルって事になるよな】
元来平和主義の炭治郎にとっては、かなりキツいものがある。ただでさえ彼女を好いている男は多いから取られないように必死なのに。
お祭り気分の雰囲気の中、炭治郎は一人唇を噛み締めた。そんな時、禰豆子がちょいちょいと制服の袖を引っ張る。
「!」
「お兄ちゃんどうしたの?なんだかさっきから険しい顔してるけど...何かあった?」
心配そうに眉を下げる妹に、何でもないと慌てて目の前で手を振った。
「大丈夫だ!ごめんな」
「ねぇねぇ兄ちゃんあのヨーヨー欲しい!」
今度は六太が炭治郎の脚の裾をくいくいと引っ張り、ヨーヨープールを指差した。よーし!じゃあ兄ちゃんが取ってやるぞ!と意気込んで腕まくりをして末っ子の弟と共にプールに向かっていった兄の背中を、禰豆子は不思議そうに見つめていた。
「うん。今はいつものお兄ちゃんだ..」
たまに、本当にたまにだけど。兄は、何かに悩んでいるというか、上の空な時がある。
兄はそういうの、あまり悟らせないからその原因は私もいまいちわからない。
でも大家族の長兄というのは、多分私達が想像する以上に色んな物を抱えているに違いないから、だから私は
ー少しでもお兄ちゃんの肩の荷を軽くしてあげたいなぁー
そう...昔から思っているのだ。
ーーーーー
〜42【期待したくなる】〜
「ねぇねぇ!次ひな姉のクラス行こうよ!」
「そうね、炭治郎も時間が限られてるしそろそろ行きましょうか?」
一通り禰豆子のクラスの出し物を遊びきった一同は、いよいよ姉のクラスへと足を向ける。禰豆子もちょうど昼休憩を取るらしく、合流して一緒に向かった。
花子に背中を押された炭治郎も、ようやく彼女の可愛い姿が拝めると思うと、表には出さなくとも内心わくわくが止まらなかった。
日向子のクラス。
「次の方中へどうぞー!」
「っ!」
彼女の姿を見つけると、ひな姉っ!と六太と花子は真っ先に飛び出していく。
ふっと目線をこちらに向けた日向子姉さんはぱぁっと笑顔を綻ばせてぶんぶん手を振っていた。
ーか....
可愛いっ...!!ー
彼女の格好を頭から爪先までまじまじと見ると、ピンクと白の市松模様で出来た着物の上にフリルがあしらわれたエプロンを身につけていた。
スカートは今時らしいデザインでミニ丈仕様になっている。
いつもはポニーテールかハーフアップにしてる髪の毛は耳の下あたりでツインテールにされており、普段の彼女の落ち着いた雰囲気と幼さの残るギャップがなんとも言えない。
「お姉ちゃん似合ってる、可愛いよ!ね?お兄ちゃん」
「へ?!あ、あぁ!凄く可愛い...です」
いきなり禰豆子にそうふられた炭治郎は、顔を真っ赤にしつつも懸命に褒め言葉を紡ぐ。
動揺したり緊張したりする時に彼女に対してたまに出てしまう敬語。
妹達の前ではあまりこんな余裕のない姿は見せない為、花子がははーんといかにもわざとらしく顎に指をかけてこう言った。
「炭兄、さてはいつもと違うひな姉見て照れてるんでしょー」
「!!」
こういう時ばかりはわかりやすく顔に出る自分の性格を呪いたくなる。
完全に図星だった炭治郎は、否定も肯定もできずただただ耳まで真っ赤にした顔を俯かせるしかなかった。
「こら花子。あんまりお兄ちゃんを
状況を察した母がやんわり花子を叱ったが、花子は少々納得のいかない様子ではーいと返す。
炭治郎はちらりと目線を上げた。するとあの日向子姉さんが、少し頬を染めている姿が視界の端に映り、どきりとする。
ただ、褒められたのが嬉しかっただけかもしれないけど...
ーこういう反応を見ると、どうしても期待したくなってしまうんだー
ーーーーー
〜43【複雑怪奇】〜
「あら?日向子、ご家族いらっしゃったのね」
「あ!しのぶちゃんだー!」
「ふふ、こんにちはー」
奥から声をかけてきたのは、日向子姉さんの親友でありたまに家にも遊びに来てくれていた胡蝶先輩。
にこにこと優しく接してくれる彼女には、六太達もよく懐いており、ちゃん付けで呼ぶくらい親しみを持っている。彼女は母にぺこりと頭を下げると、すっと炭治郎へと目線を移した。
「!、あ...この間はブレスレット、栗花落先輩が拾ってくださったって聞いて、ありがとうございました。苗字が違ったから気付かなかったけど、日向子姉さんから後で、お二人はご家族で一緒に住んでるって聞いて」
「あぁ、その件なら見つかって本当に良かったですね。炭治郎君。寧ろお礼を言いたいのは私の方よ。ありがとう」
「?」
「ふふ、今は分からなくて大丈夫です。日向子、あっちのテーブル私が変わるね」
「いいの?ありがとうしのぶ!」
胡蝶先輩は姉さんと俺たちを気遣ってそう言ってくれた。とてもありがたい配慮で花子や六太達も喜んでいたが、炭治郎はさっき胡蝶先輩が言っていたありがとうの意味がよく分からず、首を捻っていた。
ーどういう意味なんだろう?ー
「そういうわけで、ごめんね無一郎君。せっかく来てくれたんだけど、家族皆来たから私あっちのテーブル行かせてもらうね」
え...
日向子姉さんが申し訳なさそうに手を合わせている先を見ると、ショックを受けた様に固まっている無一郎君の姿が目に入った。
隣はお兄さんだろうか?彼と瓜二つの顔が、呆れた様子で苦笑いしながら目線を逸らしていた。
「そんな..そっか....」
残念そうに眉を下げる無一郎君と不意に視線がかち合った。まるで日向子姉さんを横取りしたような展開になってしまった為、少し気まずい気持ちを覚える。
下の子達はまだそんな空気もわからない歳なので、嬉しそうに姉さんが案内したテーブルの一角に向かっていった。
「私オムライス!」
「僕もー!」
着席するやいなや、子供達は事前に決めていたらしい食べたいメニューを各々口にする。
「お兄ちゃんは?」
「!あ...じゃあ俺も」
禰豆子にメニューを寄せられて咄嗟にそう答えた。
しかしやはり気になるのは無一郎君達が座っているテーブル。彼の明らかに落胆した様子を見て、炭治郎は思う。
ーあの時の違和感はやっぱり、気のせいじゃないのかもしれないと..ー
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