星詠み【side story】
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俺は、姉さんに言われたら嬉しいと思う言葉がたくさんある。
淡い恋情を彼女に抱いている俺にとっては、日向子姉さんから発せられる音一つ一つが喜びを生み出すものだけれど...
人間だから、俺にだって欲もある。
あわよくば彼女の口から聞きたい、たくさん聞きたい。
そんな言葉だって、もちろん中にはあるのだ。
ーーーー
まだ俺たちが雲取山に住んでいた頃、日向子姉さんは何かと下の子供達の世話を焼いてくれていたが、俺に対しても決まってこう言った。
「うん、可愛いよ炭治郎!」
笑顔を咲かせながら似合っているわと、手製の首巻きを回しながら彼女は満足げに微笑む。
そして俺は、またかと内心落ち込んでしまうのだ。
とにかく日向子姉さんは、長女であるが故か、俺が何をしても可愛いとしか褒めなかった。
そりゃあ下顎が埋まるくらい太く巻かれた首巻きや、目一杯綿が入り膨らんだ半纏を纏う俺は、彼女からしたら可愛いと愛でる対象であるのは仕方ないのかもしれないが...
ーちょっと、複雑だな....ー
何故残念に思うのか。理由は少し考えたら自ずと分かった。
可愛いと思われるってことは、要するに日向子姉さんからは異性として意識されていないということ。隔たれているこの垣根を飛び越えられないことを意味していたからだ。
武雄や茂達と同様の扱い。俺はそれだけでは満足出来なかった。
それからあの手この手で、彼女から一目置かれる為に頑張った。
彼女の代わりに重い薪や桶を持ち上げたり、日常的な動作は大人っぽさを演じてみたいと父親の姿を真似てみたりもした。
今振り返ってみれば、そんな頑張りも幼稚だったなと自分で自分に呆れ返るのだが、当時の俺は必死だった。
けど、そんな俺を見てもやっぱり日向子姉さんは可愛いねと淑やかに笑った。
身体的にも精神的にも、この年代の子供というのはどうしても女性の方が成長が早い。
いくら必死に足掻いてみたところで、追いつけやしなかった。
でもいつかは、彼女を大きく包み込めるくらい体も大きくなるだろうか?
安心して寄り添って貰えるくらい、精神に余裕が持てるだろうか?
守れると誓えるくらい強くなれるだろうか?
ー【自信を持って彼女に愛を捧げられる男に、俺はなれるんだろうか?】ー
彼女から褒められるならなんだって嬉しい。
でもやっぱり、可愛いよりかっこいいと言われる方が嬉しいし、好きだと言われた方がそれの何倍も嬉しいものだ。
そしてあれから数年の月日が経った。
成長期の俺達にとって、2年の月日はそれは目まぐるしいものだった。とりわけ俺は男子だったから、身長も伸びたし体付きも少しは男らしくなったと思う。
初めに自分の成長をそう実感したのは、彼女と並んで歩いた時。
しばらく顔を合わせていなかった彼女より、目線の位置も高くなっていたし、肩幅も思い切り包み込めそうなくらい広くなった。
ー日向子姉さんがとても小さく感じる..ー
ふとそう思った時、むず痒い衝動に苛まれた。
以前よりも更に、男と女というのを意識してしまってどぎまぎした。歳の差はあれども、身体的な変化は如実に表れていたから。
彼女の近くにいる時、一体何度手を伸ばしたくなったことか。思えばこの頃からだ。
だんだんと理性が効かなくなってきてしまったのは。
そんな俺の変化に比例してか、彼女の言動にも少しずつ変化が見られたような気がする。
日向子姉さんは、俺に対して可愛いという言葉を使わなくなったし、照れたり緊張したりする姿を見せる事も多くなった。彼女の心を揺さぶっているという手応えがあった。
それは俺にとってはとても喜ばしい事で、その心意を覗き見たくて仕方なかった。
ーもしかしたら、男として意識して貰えているのかもしれない..ー
そんな期待をしていた。あんまりおいたが過ぎると制されたが、多少の押しや絡みは嫌がられなかったから、俺はすこぶる気を良くする。
「日向子姉さん...」
彼女に触れたくてどうしようもなくなった時。
俺は甘えるように彼女の肩に頭をもたげ身を寄せる。もちろん、拒否の匂いがしない事をばっちり確認してからだ。
多分昔なら、可愛いねと頭を優しく撫でられ終わりだったろう。しかし今は違う。
ちょっぴり困ったように手を彷徨わせ、ピンと体を強張らせる日向子姉さん。
【あぁ、本当に可愛いなぁ..】
「炭治郎...離れてちょうだい」
「何でだ...?理由を答えてくれるまでは、離れない」
「っだって..」
彼女は少し言いづらそうに目を伏せる。
「こういうのはきっと..あんまりよくないわ。私も、貴方の為にも...。」
「俺の為ってなんだ、何で...よくないんだ?」
勿論彼女が言いたい事はおおよそ分かってはいたが、かまをかけるつもりでそう聞き返した。目線を強制的に交わらせるように顔を覗き込むと、驚いたように目を見開く日向子姉さん。
あぁ...そんな表情もとてもそそる。
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淡い恋情を彼女に抱いている俺にとっては、日向子姉さんから発せられる音一つ一つが喜びを生み出すものだけれど...
人間だから、俺にだって欲もある。
あわよくば彼女の口から聞きたい、たくさん聞きたい。
そんな言葉だって、もちろん中にはあるのだ。
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まだ俺たちが雲取山に住んでいた頃、日向子姉さんは何かと下の子供達の世話を焼いてくれていたが、俺に対しても決まってこう言った。
「うん、可愛いよ炭治郎!」
笑顔を咲かせながら似合っているわと、手製の首巻きを回しながら彼女は満足げに微笑む。
そして俺は、またかと内心落ち込んでしまうのだ。
とにかく日向子姉さんは、長女であるが故か、俺が何をしても可愛いとしか褒めなかった。
そりゃあ下顎が埋まるくらい太く巻かれた首巻きや、目一杯綿が入り膨らんだ半纏を纏う俺は、彼女からしたら可愛いと愛でる対象であるのは仕方ないのかもしれないが...
ーちょっと、複雑だな....ー
何故残念に思うのか。理由は少し考えたら自ずと分かった。
可愛いと思われるってことは、要するに日向子姉さんからは異性として意識されていないということ。隔たれているこの垣根を飛び越えられないことを意味していたからだ。
武雄や茂達と同様の扱い。俺はそれだけでは満足出来なかった。
それからあの手この手で、彼女から一目置かれる為に頑張った。
彼女の代わりに重い薪や桶を持ち上げたり、日常的な動作は大人っぽさを演じてみたいと父親の姿を真似てみたりもした。
今振り返ってみれば、そんな頑張りも幼稚だったなと自分で自分に呆れ返るのだが、当時の俺は必死だった。
けど、そんな俺を見てもやっぱり日向子姉さんは可愛いねと淑やかに笑った。
身体的にも精神的にも、この年代の子供というのはどうしても女性の方が成長が早い。
いくら必死に足掻いてみたところで、追いつけやしなかった。
でもいつかは、彼女を大きく包み込めるくらい体も大きくなるだろうか?
安心して寄り添って貰えるくらい、精神に余裕が持てるだろうか?
守れると誓えるくらい強くなれるだろうか?
ー【自信を持って彼女に愛を捧げられる男に、俺はなれるんだろうか?】ー
彼女から褒められるならなんだって嬉しい。
でもやっぱり、可愛いよりかっこいいと言われる方が嬉しいし、好きだと言われた方がそれの何倍も嬉しいものだ。
そしてあれから数年の月日が経った。
成長期の俺達にとって、2年の月日はそれは目まぐるしいものだった。とりわけ俺は男子だったから、身長も伸びたし体付きも少しは男らしくなったと思う。
初めに自分の成長をそう実感したのは、彼女と並んで歩いた時。
しばらく顔を合わせていなかった彼女より、目線の位置も高くなっていたし、肩幅も思い切り包み込めそうなくらい広くなった。
ー日向子姉さんがとても小さく感じる..ー
ふとそう思った時、むず痒い衝動に苛まれた。
以前よりも更に、男と女というのを意識してしまってどぎまぎした。歳の差はあれども、身体的な変化は如実に表れていたから。
彼女の近くにいる時、一体何度手を伸ばしたくなったことか。思えばこの頃からだ。
だんだんと理性が効かなくなってきてしまったのは。
そんな俺の変化に比例してか、彼女の言動にも少しずつ変化が見られたような気がする。
日向子姉さんは、俺に対して可愛いという言葉を使わなくなったし、照れたり緊張したりする姿を見せる事も多くなった。彼女の心を揺さぶっているという手応えがあった。
それは俺にとってはとても喜ばしい事で、その心意を覗き見たくて仕方なかった。
ーもしかしたら、男として意識して貰えているのかもしれない..ー
そんな期待をしていた。あんまりおいたが過ぎると制されたが、多少の押しや絡みは嫌がられなかったから、俺はすこぶる気を良くする。
「日向子姉さん...」
彼女に触れたくてどうしようもなくなった時。
俺は甘えるように彼女の肩に頭をもたげ身を寄せる。もちろん、拒否の匂いがしない事をばっちり確認してからだ。
多分昔なら、可愛いねと頭を優しく撫でられ終わりだったろう。しかし今は違う。
ちょっぴり困ったように手を彷徨わせ、ピンと体を強張らせる日向子姉さん。
【あぁ、本当に可愛いなぁ..】
「炭治郎...離れてちょうだい」
「何でだ...?理由を答えてくれるまでは、離れない」
「っだって..」
彼女は少し言いづらそうに目を伏せる。
「こういうのはきっと..あんまりよくないわ。私も、貴方の為にも...。」
「俺の為ってなんだ、何で...よくないんだ?」
勿論彼女が言いたい事はおおよそ分かってはいたが、かまをかけるつもりでそう聞き返した。目線を強制的に交わらせるように顔を覗き込むと、驚いたように目を見開く日向子姉さん。
あぁ...そんな表情もとてもそそる。
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