星詠み【side story】
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藤襲山での最終選抜を終え、鱗滝さんの家で日輪刀が来るまでの間、束の間の休息を取っていた時の事。
「隊服が来るんですか!」
炭治郎と日向子がわっと沸き立つと、彼は鬼殺隊の隊服について細かく説明をしてくれた。
何でも、鬼の爪等でも裂くことが困難な特殊な繊維でできている服で、これから刀を振るう隊士としては欠かす事が出来ない代物だと言う。
「裁縫係の前田まさおという者が、間もなくやって来るだろう。ただ...」
鱗滝はちらりと日向子の顔を見てこう言った。
「少々趣味が特殊でな。こればかりは、隊服が来てみないと何とも言えんが..」
2人は顔を見合わせて首を傾げる。そうこうしているうちに、ごめんくださいという声が外から聞こえてきた。
戸を開けると、丸メガネを指でくいっと上げて恭しくお辞儀をする男性が見えた。
「私、前田まさおと申します。竈門炭治郎君と、竈門日向子さんの隊服をこしらえて参りました。」
鱗滝さんが中へ招き入れると、彼は背負っていた大きな風呂敷を下ろし中身を取り出す。
男性物と女性物の隊服一式が現れ、寸法通りの自信作だと自慢気に豪語する。
「さぁさぁ!お二方、どうぞ試着なさってみてください!」
炭治郎と日向子はそれぞれ渡された隊服を持ち、彼女は引き戸で仕切られた隣の部屋へと向かう。
炭治郎は与えられた隊服に袖を通すと、驚く程ぴったりとした寸法に感嘆の息を漏らす。
着心地も申し分なく、これが彼の真骨頂なのかと思った。
その時
「嘘っ!!」
隣の部屋から日向子姉さんの叫び声が聞こえた。
さすがに戸を無断で開け放つ訳にもいかず、壁越しにどうしたと声を掛けると、動揺した彼女の匂いが鼻をついた。
ふと前田を見るとむふふと鼻息を荒くしており、鱗滝さんはやれやれと手で額を押さえている。嫌な予感がした。
「日向子姉さんっ着替え終わったのか?」
「....着た、けど。これは..これで良いんですか?前田さん!」
彼女がそう確認すると、とりあえずは見せてくれないとわかりませんと、いかにもわざとらしく戯ける。
渋々と言った様子で、引き戸から顔を出す日向子姉さんは恥ずかしそうに身を捩り、しばらく体を見せようとしなかったが、意を決してこちらに歩み出てきた姿を見て、炭治郎はがつんと殴られたような衝撃を受けた。
有り得ないくらい短い丈の履物から、すらりと伸びる白い脚や、大きく開いた胸元から露わになる柔肌に、意識せずとも目が釘付けとなってしまう。
なんて、なんて破廉恥な格好なんだろうか...
こんなやらしい召し物がこの世に存在していい筈がない。
ましてや日向子姉さんが着ているなんてっ
理性ではそう思うのだが、妙にドキドキと高鳴る鼓動に翻弄されてしまう。
彼女の柔肌を目の当たりにした事自体初めての事で、心の奥底では、歓喜している自分がいる事にふと気づいてしまった。
チカチカする視界を振り切るように、こんな事では駄目だと炭治郎は煩悩を祓う意味で、己の頭をガツンと思いきり殴った。
鱗滝さんや日向子姉さんも炭治郎の行動にびくりと肩を震わす。
じんじんと痛む頭の疼きを感じていたら、
次第に前田への激しい憎しみが沸沸と湧き上がってくる。
恥じらいに頬を染め、胸元と裾を必死に隠そうとする日向子姉さん。
その姿を頭から爪先まで舐め回すように見てうんうんと満足そうに頷く前田。
炭治郎の怒りがついに頂点に達する。
「いやぁーーっ完璧な寸法です!日向子さんもここまで着こなしてくださって、隊服も本望でしゃっ
目にも止まらぬ速さで前田が戸の外へ吹っ飛んでいき木の幹にがつんとぶち当たる。
彼をぶっ飛ばした張本人の炭治郎は、ビキビキと血管を浮き立たせながら、強く拳を握り締める。
誰が見ても般若の如くであった。
「日向子姉さんに、何て物を着せるんだ。
今すぐに、作り直せ。ゲス眼鏡。」
炭治郎から発せられている物とは思えないほど、地を這うような低い声色が辺りに響く。
前田は冷や汗を全身から吹き出させ、割れた眼鏡をくいっと持ち上げこう言った。
「喜んで。」
それから前田は嵐のように立ち去っていった。
元の袴を着て、ぽかんとした顔でその消えゆく背中を見ていた日向子は、恐る恐る炭治郎の様子を伺い見る。しかし、今はいたっていつもの彼だった。
「もうあんな隊服持ってこないだろうから大丈夫だ。安心してくれ。」
にこりと笑いかけてそう言う弟を見て、思わぬ一面を見てしまったと、出来る事なら見なかったことにしたいと溜息をつく日向子であった。
でも..彼のお陰であの破廉恥な隊服を着なくて済んだのはありがたかったな。
前田には申し訳ないが、色々と気になり過ぎてしまい、おちおち刀なんて振れないと思う。
「ありがとうね炭治郎。あんな格好で戦える気しなかったから。」
そう言うと彼は、仄かに頬を染めて一瞬置きこう話すのだ。
「あぁ、それもあるけど...。その、俺も目のやり場に困るんだ。」
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藤襲山での最終選抜を終え、鱗滝さんの家で日輪刀が来るまでの間、束の間の休息を取っていた時の事。
「隊服が来るんですか!」
炭治郎と日向子がわっと沸き立つと、彼は鬼殺隊の隊服について細かく説明をしてくれた。
何でも、鬼の爪等でも裂くことが困難な特殊な繊維でできている服で、これから刀を振るう隊士としては欠かす事が出来ない代物だと言う。
「裁縫係の前田まさおという者が、間もなくやって来るだろう。ただ...」
鱗滝はちらりと日向子の顔を見てこう言った。
「少々趣味が特殊でな。こればかりは、隊服が来てみないと何とも言えんが..」
2人は顔を見合わせて首を傾げる。そうこうしているうちに、ごめんくださいという声が外から聞こえてきた。
戸を開けると、丸メガネを指でくいっと上げて恭しくお辞儀をする男性が見えた。
「私、前田まさおと申します。竈門炭治郎君と、竈門日向子さんの隊服をこしらえて参りました。」
鱗滝さんが中へ招き入れると、彼は背負っていた大きな風呂敷を下ろし中身を取り出す。
男性物と女性物の隊服一式が現れ、寸法通りの自信作だと自慢気に豪語する。
「さぁさぁ!お二方、どうぞ試着なさってみてください!」
炭治郎と日向子はそれぞれ渡された隊服を持ち、彼女は引き戸で仕切られた隣の部屋へと向かう。
炭治郎は与えられた隊服に袖を通すと、驚く程ぴったりとした寸法に感嘆の息を漏らす。
着心地も申し分なく、これが彼の真骨頂なのかと思った。
その時
「嘘っ!!」
隣の部屋から日向子姉さんの叫び声が聞こえた。
さすがに戸を無断で開け放つ訳にもいかず、壁越しにどうしたと声を掛けると、動揺した彼女の匂いが鼻をついた。
ふと前田を見るとむふふと鼻息を荒くしており、鱗滝さんはやれやれと手で額を押さえている。嫌な予感がした。
「日向子姉さんっ着替え終わったのか?」
「....着た、けど。これは..これで良いんですか?前田さん!」
彼女がそう確認すると、とりあえずは見せてくれないとわかりませんと、いかにもわざとらしく戯ける。
渋々と言った様子で、引き戸から顔を出す日向子姉さんは恥ずかしそうに身を捩り、しばらく体を見せようとしなかったが、意を決してこちらに歩み出てきた姿を見て、炭治郎はがつんと殴られたような衝撃を受けた。
有り得ないくらい短い丈の履物から、すらりと伸びる白い脚や、大きく開いた胸元から露わになる柔肌に、意識せずとも目が釘付けとなってしまう。
なんて、なんて破廉恥な格好なんだろうか...
こんなやらしい召し物がこの世に存在していい筈がない。
ましてや日向子姉さんが着ているなんてっ
理性ではそう思うのだが、妙にドキドキと高鳴る鼓動に翻弄されてしまう。
彼女の柔肌を目の当たりにした事自体初めての事で、心の奥底では、歓喜している自分がいる事にふと気づいてしまった。
チカチカする視界を振り切るように、こんな事では駄目だと炭治郎は煩悩を祓う意味で、己の頭をガツンと思いきり殴った。
鱗滝さんや日向子姉さんも炭治郎の行動にびくりと肩を震わす。
じんじんと痛む頭の疼きを感じていたら、
次第に前田への激しい憎しみが沸沸と湧き上がってくる。
恥じらいに頬を染め、胸元と裾を必死に隠そうとする日向子姉さん。
その姿を頭から爪先まで舐め回すように見てうんうんと満足そうに頷く前田。
炭治郎の怒りがついに頂点に達する。
「いやぁーーっ完璧な寸法です!日向子さんもここまで着こなしてくださって、隊服も本望でしゃっ
目にも止まらぬ速さで前田が戸の外へ吹っ飛んでいき木の幹にがつんとぶち当たる。
彼をぶっ飛ばした張本人の炭治郎は、ビキビキと血管を浮き立たせながら、強く拳を握り締める。
誰が見ても般若の如くであった。
「日向子姉さんに、何て物を着せるんだ。
今すぐに、作り直せ。ゲス眼鏡。」
炭治郎から発せられている物とは思えないほど、地を這うような低い声色が辺りに響く。
前田は冷や汗を全身から吹き出させ、割れた眼鏡をくいっと持ち上げこう言った。
「喜んで。」
それから前田は嵐のように立ち去っていった。
元の袴を着て、ぽかんとした顔でその消えゆく背中を見ていた日向子は、恐る恐る炭治郎の様子を伺い見る。しかし、今はいたっていつもの彼だった。
「もうあんな隊服持ってこないだろうから大丈夫だ。安心してくれ。」
にこりと笑いかけてそう言う弟を見て、思わぬ一面を見てしまったと、出来る事なら見なかったことにしたいと溜息をつく日向子であった。
でも..彼のお陰であの破廉恥な隊服を着なくて済んだのはありがたかったな。
前田には申し訳ないが、色々と気になり過ぎてしまい、おちおち刀なんて振れないと思う。
「ありがとうね炭治郎。あんな格好で戦える気しなかったから。」
そう言うと彼は、仄かに頬を染めて一瞬置きこう話すのだ。
「あぁ、それもあるけど...。その、俺も目のやり場に困るんだ。」
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