星詠み【side story】
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俺は今日向子姉さんに髪を梳 かされている。
きっかけは多分、禰豆子が髪を結われてるのを側で見ていて、俺が羨んでその様子を見ていたから。炭治郎もしてあげようか?と彼女の方から声を掛けてもらったのだ。
最初は自分で出来ると遠慮したが、この先またとないチャンスかもしれない事に気付き、お言葉に甘える事にした。
「炭治郎の髪の毛は綺麗だね。赤みがかってて、光に反射するときらきらしてる」
「っ...ぁ..そうかな」
「そうだよ」
不意に耳元で自分の髪を褒められ動揺した炭治郎は、そんなまごついた返事しかできず恥ずかしさに身を縮こませた。
つむじから流れるような動作で何度も木櫛を当てられる感覚と、時折彼女の指が耳に当たる感触がくすぐったくも心地良くて、自然と目尻がとろんと下がる。
ー気持ちいい..ー
「ねぇ炭治郎」
「..何?」
「昔から思ってたんだけど、炭治郎の癖毛って何だか猫みたいで、可愛いね。わしゃわしゃしたくなるって言うか」
「!」
したくなると言いつつ既に彼女は炭治郎の髪を指で掬っては流しを繰り返しており、その度にぴょこぴょこと跳ねる毛先を面白がって、愛おしそうに眺めていた。
一方の炭治郎はと言うと、体を硬直させ完全に彼女にされるがまま、じわじわと顔に熱が集まっていくのに必死で耐えていた。
彼女に体の一部が触れられているというだけでも心臓が跳ねる思いなのに、
こんなにされては...
「もっ..もういいだろ!」
「あ、ごめんごめんつい。せっかく櫛で梳かしたのにね。今度はちゃんと結うからさ」
へらりと笑いながら彼女は炭治郎の髪の毛をまとめにかかると、いつもと同じ位置に小さい尻尾を結い上げた。その出来に満足気ににこりと笑う彼女には、俺の気持ちなんてこれっぽっちも届いていないのだろう。
髪の毛なんて感触も何も伝わる筈がないのに。
貴女に触れられる箇所一つ一つが、熱を帯びているかのように熱い..
それは、今も尚ドキドキと脈打つ鼓動のせいか?それとも俺の単なる妄想のせいなのか...
当時はそんな自分の状況にさえ戸惑いを隠せないでいた。
ーーー
あれから数年、多少長かった髪の毛は綺麗さっぱり切り上げた。特別伸ばしていた訳じゃないし、鬼殺の任務に支障をきたす為、切った事を後悔しているわけではないが、時折あの頃の記憶を思い出しては懐かしむ。
ーもう、あんな風に触れてくれないだろうなぁ..
そんな機会もないしー
あの頃は結えるだけの長さだったから、そして何より俺が幼い子供だったからだ。
彼女にとって、俺は【世話を焼くべき対象】だった。
今は色々あってお互い成長もしたし、何となくだが、甲斐甲斐しい世話はもうされなくなったなぁと感じる。
別に、世話されたいとかいう訳じゃないけど..もうあの頃のように素直に甘える口実も無くなってしまったかと思うと
ー少しだけ寂しい..ー
今、以前と同じ様な光景を目にしている。
禰豆子の髪の毛を日向子姉さんが丁寧に梳かしていて、妹は気持ち良さそうにうとうと舟を漕いでいた。
「禰豆子、眠たかったら寝ちゃっていいからね」
「むー...」
そんな和やかな光景を、炭治郎は一人頬杖をつきながら見つめていた。
禰豆子も歳にして既に14だが、鬼となり子供返りしたせいか、あの頃の光景にとても酷似していた。
羨ましそうに指をくわえながら見ていた、あの時の気持ちを、思い出してしまった。
(いいなぁ...禰豆子ばっかりずるい。
俺も日向子さんに、触れられたいよ)
そんな欲求を抱えていると、不意に彼女がこちらへ視線をよこした。
無意識に日向子姉さんの顔をまじまじ見ていたらしく当然目が合う。どきりとした。
あぁ..まずい
見てたのバレて..
「炭治郎」
「ぅあ...はい」
「おいで」
彼女はくすりと笑みを溢しながら炭治郎に向かって手招きをする。気付けば禰豆子は夢の中で彼女の膝を枕に横になっていた。
一瞬戸惑ったが、体は自然と動いていて、魔香に吸い寄せられるかのように日向子の元へと近付いていく。
気付けば彼女の前で腰を下ろし、施しを乞うかのように見上げていた。
その訴えを汲み取ったのかは定かではないが、彼女は如何にも自然な手付きで、炭治郎の頭に手を乗せると、ゆっくり往復するように撫でる。
何を言うでもなく、ただただ優しげに目を細めて彼女はその行為を続けた。
暖かな温もり、鼻腔を擽る日溜りの香り、全てが懐かしく愛おしかった。
ーああ...やっぱり日向子姉さんの温もりは落ち着く、いつまででもこうしていたい..ー
自分もまた禰豆子と同様に、彼女のお膝元に飛び込みたい衝動を抑えつつ、欲は言わずぐっと堪えている時だった。
「髪の毛、自分で切ったの?」
「うん。鬼殺隊に入るなら、邪魔かなぁと思って。最終選別前に自分で切ったんだ」
「そうなの...炭治郎は器用ね。よく仕上がってるけど、所々不揃いな部分があるから少し揃えましょうか?」
「...日向子姉さんがやってくれるのか?」
「もちろん。炭治郎が私で良けれ
「是非お願いしますっ!」
あまりの嬉しさに、つい彼女が言葉を言い終える前に食い気味に被せてしまった。
隠しようのない喜びが全身から溢れ、炭治郎は蔓延の笑みでやったぁと呟く。
ベタな喜びを顕にする弟に驚いた表情を見せつつも、彼女もまたはにかむような笑顔を見せた。
「じゃあハサミ借りてくるね。」
突然やって来た予想外の好機に、にやけが止まらなかった。
ー日向子姉さんにまた触れて貰えるー
それが叶うならどんな形でも良かった。禰豆子のように膝枕をして貰うとかそんな烏滸 がましい我儘はとてもじゃないが言えない。
ただ日向子姉さんの温もりが貰えて、優しさに触れられるなら..それで十分。
シャキ、シャキと単調な音が響く。
彼女が櫛を引いては毛先にハサミを入れて、パラパラと毛が落ちる事の繰り返しが続いた。
ただ...されていて厄介な事が一つだけあった。
「ッ....」
びくんと体が震えそうになるのを必死に耐え忍ぶ。日向子姉さんが時折、耳や首に張り付いてしまった細かい毛を指で払ったり、息を吹き掛けたりしてくるためだ。
何回かされた後、このままでは不味い事になると悟った炭治郎はとうとう根をあげた。
「あの...日向子姉さん」
「ん?」
「その、そういう風にされると擽 ったくて敵わない。それに..何か変な気分に...」
後半はボソボソとした声の調子で、精一杯今の状況を訴えた。
(変な気分)と遠回しな表現をしたけれど、率直に言えば、彼女に対し劣情が湧き上がってしまった。
そんな自分に炭治郎は激しく自己嫌悪する。
ただ善意でやってくれてる行為をこんな風に捉えてしまうなんて最低だ。
でも、日向子姉さんも日向子姉さんだ。
彼女は全くその気無しにやってるのかもしれないけど、年頃の男なら誰だって反応してしまうに決まっている。
弟だから油断してる?何とも思わないだろうと高を括ってるのか?
もしそうなら改めさせる必要がある。
日向子姉さんは、もう少し警戒心という物を覚えた方がいい。俺の理性があるうちはいいけど、それが擦り切れたら...
ー何されても、どうなっても知らないー
炭治郎が言わんとする事が伝わったのか、彼女は途端に気まずそうに手を引っ込めてごめんと謝罪した。
「ごめんなさい。私全然気付かなくて」
「ううん。俺の方こそ、このくらいで意識してしまって...すみません」
何故か敬語で炭治郎はそう返してしまった。
そのせいか、その後何とも言えないおかしな空気になってしまい、穴があったら入りたいような、まだこのままドキドキした気持ちでいたいような複雑な思いだった。
それからは一切肌触れることなく、勿論息を吹きかける事もなくなった。彼女は仕上げにとりかかり一気に作業を終わらせるとそそくさと片付けに入る。
「炭治郎先に湯貰っておいで。細かい毛洗い落とさないとね。チクチク痛いでしょ?」
そう言って日向子は炭治郎の背中を押す。
少し彼女の表情を省みると、僅かに頬を染めているようにも見えた。
可愛らしい。俺にああ言われて、少しは意識してくれたって事か?
ーだとしたら、嬉しいー
「日向子姉さん」
「何?」
「髪の毛ありがとう。また切ってくれるか?俺、実は日向子姉さんに髪弄ってもらうの、昔から大好きなんだ。何だか凄く、癒されるから」
にこりと笑いかけてそう言えば、彼女は一瞬目を丸くしたものの、勿論だと微笑み返してくれた。
ーあぁ..早く髪の毛、伸びないかなぁー
炭治郎は密かにそう願った。
きっかけは多分、禰豆子が髪を結われてるのを側で見ていて、俺が羨んでその様子を見ていたから。炭治郎もしてあげようか?と彼女の方から声を掛けてもらったのだ。
最初は自分で出来ると遠慮したが、この先またとないチャンスかもしれない事に気付き、お言葉に甘える事にした。
「炭治郎の髪の毛は綺麗だね。赤みがかってて、光に反射するときらきらしてる」
「っ...ぁ..そうかな」
「そうだよ」
不意に耳元で自分の髪を褒められ動揺した炭治郎は、そんなまごついた返事しかできず恥ずかしさに身を縮こませた。
つむじから流れるような動作で何度も木櫛を当てられる感覚と、時折彼女の指が耳に当たる感触がくすぐったくも心地良くて、自然と目尻がとろんと下がる。
ー気持ちいい..ー
「ねぇ炭治郎」
「..何?」
「昔から思ってたんだけど、炭治郎の癖毛って何だか猫みたいで、可愛いね。わしゃわしゃしたくなるって言うか」
「!」
したくなると言いつつ既に彼女は炭治郎の髪を指で掬っては流しを繰り返しており、その度にぴょこぴょこと跳ねる毛先を面白がって、愛おしそうに眺めていた。
一方の炭治郎はと言うと、体を硬直させ完全に彼女にされるがまま、じわじわと顔に熱が集まっていくのに必死で耐えていた。
彼女に体の一部が触れられているというだけでも心臓が跳ねる思いなのに、
こんなにされては...
「もっ..もういいだろ!」
「あ、ごめんごめんつい。せっかく櫛で梳かしたのにね。今度はちゃんと結うからさ」
へらりと笑いながら彼女は炭治郎の髪の毛をまとめにかかると、いつもと同じ位置に小さい尻尾を結い上げた。その出来に満足気ににこりと笑う彼女には、俺の気持ちなんてこれっぽっちも届いていないのだろう。
髪の毛なんて感触も何も伝わる筈がないのに。
貴女に触れられる箇所一つ一つが、熱を帯びているかのように熱い..
それは、今も尚ドキドキと脈打つ鼓動のせいか?それとも俺の単なる妄想のせいなのか...
当時はそんな自分の状況にさえ戸惑いを隠せないでいた。
ーーー
あれから数年、多少長かった髪の毛は綺麗さっぱり切り上げた。特別伸ばしていた訳じゃないし、鬼殺の任務に支障をきたす為、切った事を後悔しているわけではないが、時折あの頃の記憶を思い出しては懐かしむ。
ーもう、あんな風に触れてくれないだろうなぁ..
そんな機会もないしー
あの頃は結えるだけの長さだったから、そして何より俺が幼い子供だったからだ。
彼女にとって、俺は【世話を焼くべき対象】だった。
今は色々あってお互い成長もしたし、何となくだが、甲斐甲斐しい世話はもうされなくなったなぁと感じる。
別に、世話されたいとかいう訳じゃないけど..もうあの頃のように素直に甘える口実も無くなってしまったかと思うと
ー少しだけ寂しい..ー
今、以前と同じ様な光景を目にしている。
禰豆子の髪の毛を日向子姉さんが丁寧に梳かしていて、妹は気持ち良さそうにうとうと舟を漕いでいた。
「禰豆子、眠たかったら寝ちゃっていいからね」
「むー...」
そんな和やかな光景を、炭治郎は一人頬杖をつきながら見つめていた。
禰豆子も歳にして既に14だが、鬼となり子供返りしたせいか、あの頃の光景にとても酷似していた。
羨ましそうに指をくわえながら見ていた、あの時の気持ちを、思い出してしまった。
(いいなぁ...禰豆子ばっかりずるい。
俺も日向子さんに、触れられたいよ)
そんな欲求を抱えていると、不意に彼女がこちらへ視線をよこした。
無意識に日向子姉さんの顔をまじまじ見ていたらしく当然目が合う。どきりとした。
あぁ..まずい
見てたのバレて..
「炭治郎」
「ぅあ...はい」
「おいで」
彼女はくすりと笑みを溢しながら炭治郎に向かって手招きをする。気付けば禰豆子は夢の中で彼女の膝を枕に横になっていた。
一瞬戸惑ったが、体は自然と動いていて、魔香に吸い寄せられるかのように日向子の元へと近付いていく。
気付けば彼女の前で腰を下ろし、施しを乞うかのように見上げていた。
その訴えを汲み取ったのかは定かではないが、彼女は如何にも自然な手付きで、炭治郎の頭に手を乗せると、ゆっくり往復するように撫でる。
何を言うでもなく、ただただ優しげに目を細めて彼女はその行為を続けた。
暖かな温もり、鼻腔を擽る日溜りの香り、全てが懐かしく愛おしかった。
ーああ...やっぱり日向子姉さんの温もりは落ち着く、いつまででもこうしていたい..ー
自分もまた禰豆子と同様に、彼女のお膝元に飛び込みたい衝動を抑えつつ、欲は言わずぐっと堪えている時だった。
「髪の毛、自分で切ったの?」
「うん。鬼殺隊に入るなら、邪魔かなぁと思って。最終選別前に自分で切ったんだ」
「そうなの...炭治郎は器用ね。よく仕上がってるけど、所々不揃いな部分があるから少し揃えましょうか?」
「...日向子姉さんがやってくれるのか?」
「もちろん。炭治郎が私で良けれ
「是非お願いしますっ!」
あまりの嬉しさに、つい彼女が言葉を言い終える前に食い気味に被せてしまった。
隠しようのない喜びが全身から溢れ、炭治郎は蔓延の笑みでやったぁと呟く。
ベタな喜びを顕にする弟に驚いた表情を見せつつも、彼女もまたはにかむような笑顔を見せた。
「じゃあハサミ借りてくるね。」
突然やって来た予想外の好機に、にやけが止まらなかった。
ー日向子姉さんにまた触れて貰えるー
それが叶うならどんな形でも良かった。禰豆子のように膝枕をして貰うとかそんな
ただ日向子姉さんの温もりが貰えて、優しさに触れられるなら..それで十分。
シャキ、シャキと単調な音が響く。
彼女が櫛を引いては毛先にハサミを入れて、パラパラと毛が落ちる事の繰り返しが続いた。
ただ...されていて厄介な事が一つだけあった。
「ッ....」
びくんと体が震えそうになるのを必死に耐え忍ぶ。日向子姉さんが時折、耳や首に張り付いてしまった細かい毛を指で払ったり、息を吹き掛けたりしてくるためだ。
何回かされた後、このままでは不味い事になると悟った炭治郎はとうとう根をあげた。
「あの...日向子姉さん」
「ん?」
「その、そういう風にされると
後半はボソボソとした声の調子で、精一杯今の状況を訴えた。
(変な気分)と遠回しな表現をしたけれど、率直に言えば、彼女に対し劣情が湧き上がってしまった。
そんな自分に炭治郎は激しく自己嫌悪する。
ただ善意でやってくれてる行為をこんな風に捉えてしまうなんて最低だ。
でも、日向子姉さんも日向子姉さんだ。
彼女は全くその気無しにやってるのかもしれないけど、年頃の男なら誰だって反応してしまうに決まっている。
弟だから油断してる?何とも思わないだろうと高を括ってるのか?
もしそうなら改めさせる必要がある。
日向子姉さんは、もう少し警戒心という物を覚えた方がいい。俺の理性があるうちはいいけど、それが擦り切れたら...
ー何されても、どうなっても知らないー
炭治郎が言わんとする事が伝わったのか、彼女は途端に気まずそうに手を引っ込めてごめんと謝罪した。
「ごめんなさい。私全然気付かなくて」
「ううん。俺の方こそ、このくらいで意識してしまって...すみません」
何故か敬語で炭治郎はそう返してしまった。
そのせいか、その後何とも言えないおかしな空気になってしまい、穴があったら入りたいような、まだこのままドキドキした気持ちでいたいような複雑な思いだった。
それからは一切肌触れることなく、勿論息を吹きかける事もなくなった。彼女は仕上げにとりかかり一気に作業を終わらせるとそそくさと片付けに入る。
「炭治郎先に湯貰っておいで。細かい毛洗い落とさないとね。チクチク痛いでしょ?」
そう言って日向子は炭治郎の背中を押す。
少し彼女の表情を省みると、僅かに頬を染めているようにも見えた。
可愛らしい。俺にああ言われて、少しは意識してくれたって事か?
ーだとしたら、嬉しいー
「日向子姉さん」
「何?」
「髪の毛ありがとう。また切ってくれるか?俺、実は日向子姉さんに髪弄ってもらうの、昔から大好きなんだ。何だか凄く、癒されるから」
にこりと笑いかけてそう言えば、彼女は一瞬目を丸くしたものの、勿論だと微笑み返してくれた。
ーあぁ..早く髪の毛、伸びないかなぁー
炭治郎は密かにそう願った。