◆第拾弐章 暗雲を吹き払え
貴女のお名前を教えてください
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〜347【見透かされた所有欲】〜
「おはようございます!今日からお世話になります!」
炭治郎が大声を張ると、竹刀を肩に掛けた宇随とそれを取り囲む彼の妻達が一斉に振り返った。
「あらー!」
「きゃー!炭治郎君だ!」
「久しぶりだねぇ!」
きゃっきゃと騒ぎ立てながら思い切り手を振る須磨と冷静でありつつも再会の喜びを隠しきれないまきをと雛鶴。その後ろから元柱の宇随がにやりと口角をあげながら歩み寄ってきた。
「よぉ竈門!もう体はいいのか?お前また上弦とやり合ったんだってな、五体満足たぁ運の強ぇ奴だ。ここでなまった体存分に叩き起こしな!」
「はい!!頑張ります!!」
そんな自然なやりとりを行っている炭治郎を見て、周囲は驚いたように凝視していた。階級が上がっているとは言え、元柱相手にそんな砕けた会話をしている光景を見ればそう感じるのは当然だ。しかし、彼等は以前共闘を組んでおり命を預け合い助け合った仲である。炭治郎達にとってはごく当たり前の事であった。
「妹は鱗滝さんの所に預ける事にしたんだってな?」
「はい。禰豆子は稽古には参加出来ないですし、それに太陽を克服したので、鬼舞辻に狙われる可能性が高いと。お館様は狙ってくるとしたら鬼殺隊の本拠地であるここだと言っていたので、それなら鱗滝さんの所へ預けた方がまだ安全だと思ったんです。近くに居てやれないのは...辛いですけど」
「..なるほどなぁ、まぁ確かにそうだが」
何処か気落ちした炭治郎の調子を取り戻させる為、宇随はそうだと手を叩き話題を変える。
「日向子はどうだ?!あいつもかなり大怪我負ってたと聞いたが、近々稽古に参加するんだろう?」
「!はい、日向子姉さんももうすぐここに来ると思います。女性隊員も俺達と同じ訓練をこなすのはかなり大変そうですね、ここは圧倒的に男が多いですし。」
「....お前、もしかして日向子と何か進展あったか?」
「....」
唐突にそう聞かれた炭治郎は一瞬の間を置いた直後に、ぶわりと顔を赤くしたまま固まった。
「な、ななっ!....何でですかっ別に何も」
言葉ではそう言う炭治郎だが、気が動転した声色と、何より硬直した顔の筋肉とひん剥いた目玉が、明らかに(何でもない)わけがない事を示しており、宇随は呆れたように息を吐く。
「さっきのお前の顔...凄かったぞ。野郎だらけの溜まり場睨みつけて威嚇してた」
ー一見余裕そうな顔の裏でそういう顔する男はな、大抵ものにした女がいるもんだー
ーーーーー
〜348【暴露】〜
ー宇随sideー
(あー...野望な事聞いちまったなぁ..)
まず思ったのはそれだった。
勿論、揶揄 うつもりがあったわけではない。いや本当だ。
炭治郎の事は色んな意味で目にかけていたから、陰ながら彼の恋路も応援していた。
吉原での激闘で、推測は確証に変わった。
姉の日向子とは血が繋がっていないとは聞いていたが、まさか本当にほの字とは思わなんだ。
しかし炭治郎の目は本気だった。
男として、惚れた女を守り通したいという覚悟が見えたから、俺は奴が目覚めた際にこう言った。
「必ず日向子ものにしろよ」
それを聞いたあの炭治郎の反応と言ったら、湯気が出るんじゃないかと言うくらい顔を真っ赤にして照れまくっていたから、俺はもう腹から笑い出しそうになるくらい可笑しかった。
何でも協力してやるぞと、最後に頭をガシガシ掻いてやると、はにかんで嬉しそうにこう言った。
「ありがとうございます。宇随さんがついてくれたらとても心強いですね。なかなか...彼女は手強いので」
ー竈門日向子..ー
俺の彼女の印象も、最初と今とでは全く違う。
お淑やかで柔らかい雰囲気が印象的だったからか、すぐに恐怖や苦難から逃げ出してしまうような箱入り娘かと思った。ところがどっこい、力強い覚悟と信念を持っている。転んでもただでは起きないようなしたたかさ。
ーいい女だなぁ...ー
吉原で彼女に胸ぐらを掴まれた時、そんな場違いな事を思ったのはここだけの話にしておこう。炭治郎に知れたら後が怖い。
とにかくだ、これは惚れるわけだと思った。多分、俺が炭治郎の立場でも全く同じ想いを抱いただろう。
そして、【手強い】と炭治郎が称するのもよくわかる。日向子はちょっとやそっとじゃなかなか落ちないタイプの女だろう。
それなのに...
本当に両想いにでもなったと言うなら、相当炭治郎は頑張ったのだろうし、日向子の根負けという形ならよく受け入れたものだと思う。
姉弟とか、使命や運命だとか、そんなしがらみ俺から見ればクソ喰らえだが、彼女達にとってみればきっと簡単な問題ではなかった筈なのだから
「宇随さんには敵わないですね。全部、ご指摘の通りです。っどうか、誰にも言わないでくれませんか?日向子さんとは、この関係は内密にしようって事になってるので。俺ってやっぱり顔に出やすいんですかね....気をつけないと」
彼は観念したように肩を落とすと、諸々を正直に認めたのだった。
ーーーーー
〜349【男同士】〜
「そうか...わかった。まぁー兎にも角にもめでたい事には変わりねぇな!ところで...」
【どうやって口説いた?】
によによ笑みを浮かべながら宇随は炭治郎の耳元でそっと問いかける。さすがに勘弁してくれといった様子で彼は宇随を睨み上げた。
「あの、面白がってますよね宇随さん」
「あははは!冗談だよ冗談!んな怖い顔すんなって。さて、気を取り直して修行すんぞー!」
バシンと勢いよく背中を叩かれた炭治郎は、指導者の顔に変わった彼を見て慌てて姿勢を正す。
何をずっとこそこそ喋ってたんですかー?とぷくり頬を膨らませながら駆け寄って来る須磨に、彼は男同士の話だと器用にあしらっていた。
「おーしお前らぁ!休憩は終わりだぞー!これからこの山道を往復五十周だ気抜くなよ!!」
パンパンと手を叩いた宇随を見て、あちらこちらから絶望の匂いが漂ってくる中、炭治郎は気を引き締めて己の拳をにぎりしめた。
この柱稽古に全力で挑み、少しでも力をつけなければ...遅かれ早かれやって来る最終局面を乗り越え、また大好きな人達との平和な暮らしを取り戻す。
日向子さん...
ー俺が必ず、貴女を守り抜いて見せますー
ーーーーー
宇随さんの元で稽古を始めて数日が経過した頃、
持ち前の明るい性格ですっかり他の隊士達とも打ち解けた炭治郎。今日も厳しい稽古を乗り越えたその夜、彼等は輪になって雑談しあっていた。
「竈門ー...お前本当すげぇな。元柱のあの血反吐吐くような稽古をニコニコ笑顔でこなすなんてさ」
「俺達とは全然体の出来が違うんだなぁー」
先輩隊士達に褒められて照れ臭くなった炭治郎は、そんなに大層な事じゃないと謙遜して見せる。
「そんな、俺なんてまだまだですよ。今までは色んな人に助けられて運良く生き残っただけで。俺自身もっと強くならないと」
「ふーん..そっか。まぁ頑張ろうぜ!こうして会ったのも何かの縁だからな。話は変わるけど、これだけ厳しい修行してると何かこう...干からびるよな」
あー..わかるわかる。そうちらほら賛同する者が現れるが、炭治郎はなんのこっちゃと言った様に首を傾げた。
「干からびるって何がですか?」
「何がって..ここは娯楽がないだろ?唯一の楽しみと言えば元柱の嫁さん達を眺める事くらいだけど、あんま見ると竹刀でぶっ叩かれそうで怖ぇからさー」
炭治郎は何となく蚊帳の外で彼らの雑談を聴いていた。男が集まればこのような話題に発展するのは必然か..
ーーーーー
〜350【許されぬ牽制】〜
(うーん...ちょっと入りづらい)
止める者がいない、咎 める者もいないのをいいことに、話は段々とエスカレートし、それこそ下ネタや色話の方向へと走っていく。
ずっと娯楽や息抜きをお預けされてひたすら修行に明け暮れているのだから、雑談で盛り上がるくらいは許されるだろうという考えなのだろうが...
年齢的にもまだまだ青い炭治郎からしたら、なんとも居た堪れない場だった。
ーこの人達凄いなぁ..まぁ、成人してる人ばかりだしなー
各々なかなか刺激的な経験をお持ちの様だ。仄かに頬を染めて素知らぬふりをしていると、唐突に輪の中の一人が炭治郎へ話を振ってきた。
「あ!そう言えば明日から日向子さん来るんだろう?
」
「!」
「あーー竈門の姉貴だって言ってたな」
「それが俺一回会ったことあるんだけどさ、すげー美人なんだよ。いい意味で鬼殺隊っぽくないというか...下手したら女学校に通うお嬢様みたいな?そんな感じだな。」
「へぇー!それは早く会ってみたいなぁ、年いくつかな?」
あっという間に話は日向子に関する事でもちきりになってしまった。
美人だの器量よしだのと、彼女に関する噂は好印象なものばかりで炭治郎自身鼻が高い気持ちもあるにはあったが...
「今年18歳になるのかぁ...良いなぁ。なぁ竈門、彼女恋人とかいるのか?」
「もし居なかったら俺もアタックしようかな。やっぱ可愛い彼女欲しいよなぁ」
....っ
正直言うと、【苛々 して仕方ない】
「残念ですけど、日向子姉さんは恋人居ますよ。誰かは教えられませんが、だから姉さんの事は諦めてください」
なるべく棘の無い言い方を意識したが、やはり少し言葉の節々に不穏が入り混じってしまった。
それを聞いた彼等は、まじかよとあからさまに残念そうに項垂れる。
これ以上話すことはないと考えた炭治郎はすくりと立ち上がり暇をする。
しばらく歩いた先で、月夜を仰ぐ様に見上げる。
正確には、あれ以上あの場に居続けると、彼等に対し不自然な牽制 をしてしまいそうで怖かったのだ。
彼女は俺の恋人だと、渡しはしないぞと。
そう声を大にして言えたらどんなに気持ちよかっただろうか。
けれど、それは口が裂けても言えない。そういう約束なんだ。
(落ち着け.....落ち着くんだ)
炭治郎は己の心を落ち着かせるように深呼吸した。
ーーーーー
「おはようございます!今日からお世話になります!」
炭治郎が大声を張ると、竹刀を肩に掛けた宇随とそれを取り囲む彼の妻達が一斉に振り返った。
「あらー!」
「きゃー!炭治郎君だ!」
「久しぶりだねぇ!」
きゃっきゃと騒ぎ立てながら思い切り手を振る須磨と冷静でありつつも再会の喜びを隠しきれないまきをと雛鶴。その後ろから元柱の宇随がにやりと口角をあげながら歩み寄ってきた。
「よぉ竈門!もう体はいいのか?お前また上弦とやり合ったんだってな、五体満足たぁ運の強ぇ奴だ。ここでなまった体存分に叩き起こしな!」
「はい!!頑張ります!!」
そんな自然なやりとりを行っている炭治郎を見て、周囲は驚いたように凝視していた。階級が上がっているとは言え、元柱相手にそんな砕けた会話をしている光景を見ればそう感じるのは当然だ。しかし、彼等は以前共闘を組んでおり命を預け合い助け合った仲である。炭治郎達にとってはごく当たり前の事であった。
「妹は鱗滝さんの所に預ける事にしたんだってな?」
「はい。禰豆子は稽古には参加出来ないですし、それに太陽を克服したので、鬼舞辻に狙われる可能性が高いと。お館様は狙ってくるとしたら鬼殺隊の本拠地であるここだと言っていたので、それなら鱗滝さんの所へ預けた方がまだ安全だと思ったんです。近くに居てやれないのは...辛いですけど」
「..なるほどなぁ、まぁ確かにそうだが」
何処か気落ちした炭治郎の調子を取り戻させる為、宇随はそうだと手を叩き話題を変える。
「日向子はどうだ?!あいつもかなり大怪我負ってたと聞いたが、近々稽古に参加するんだろう?」
「!はい、日向子姉さんももうすぐここに来ると思います。女性隊員も俺達と同じ訓練をこなすのはかなり大変そうですね、ここは圧倒的に男が多いですし。」
「....お前、もしかして日向子と何か進展あったか?」
「....」
唐突にそう聞かれた炭治郎は一瞬の間を置いた直後に、ぶわりと顔を赤くしたまま固まった。
「な、ななっ!....何でですかっ別に何も」
言葉ではそう言う炭治郎だが、気が動転した声色と、何より硬直した顔の筋肉とひん剥いた目玉が、明らかに(何でもない)わけがない事を示しており、宇随は呆れたように息を吐く。
「さっきのお前の顔...凄かったぞ。野郎だらけの溜まり場睨みつけて威嚇してた」
ー一見余裕そうな顔の裏でそういう顔する男はな、大抵ものにした女がいるもんだー
ーーーーー
〜348【暴露】〜
ー宇随sideー
(あー...野望な事聞いちまったなぁ..)
まず思ったのはそれだった。
勿論、
炭治郎の事は色んな意味で目にかけていたから、陰ながら彼の恋路も応援していた。
吉原での激闘で、推測は確証に変わった。
姉の日向子とは血が繋がっていないとは聞いていたが、まさか本当にほの字とは思わなんだ。
しかし炭治郎の目は本気だった。
男として、惚れた女を守り通したいという覚悟が見えたから、俺は奴が目覚めた際にこう言った。
「必ず日向子ものにしろよ」
それを聞いたあの炭治郎の反応と言ったら、湯気が出るんじゃないかと言うくらい顔を真っ赤にして照れまくっていたから、俺はもう腹から笑い出しそうになるくらい可笑しかった。
何でも協力してやるぞと、最後に頭をガシガシ掻いてやると、はにかんで嬉しそうにこう言った。
「ありがとうございます。宇随さんがついてくれたらとても心強いですね。なかなか...彼女は手強いので」
ー竈門日向子..ー
俺の彼女の印象も、最初と今とでは全く違う。
お淑やかで柔らかい雰囲気が印象的だったからか、すぐに恐怖や苦難から逃げ出してしまうような箱入り娘かと思った。ところがどっこい、力強い覚悟と信念を持っている。転んでもただでは起きないようなしたたかさ。
ーいい女だなぁ...ー
吉原で彼女に胸ぐらを掴まれた時、そんな場違いな事を思ったのはここだけの話にしておこう。炭治郎に知れたら後が怖い。
とにかくだ、これは惚れるわけだと思った。多分、俺が炭治郎の立場でも全く同じ想いを抱いただろう。
そして、【手強い】と炭治郎が称するのもよくわかる。日向子はちょっとやそっとじゃなかなか落ちないタイプの女だろう。
それなのに...
本当に両想いにでもなったと言うなら、相当炭治郎は頑張ったのだろうし、日向子の根負けという形ならよく受け入れたものだと思う。
姉弟とか、使命や運命だとか、そんなしがらみ俺から見ればクソ喰らえだが、彼女達にとってみればきっと簡単な問題ではなかった筈なのだから
「宇随さんには敵わないですね。全部、ご指摘の通りです。っどうか、誰にも言わないでくれませんか?日向子さんとは、この関係は内密にしようって事になってるので。俺ってやっぱり顔に出やすいんですかね....気をつけないと」
彼は観念したように肩を落とすと、諸々を正直に認めたのだった。
ーーーーー
〜349【男同士】〜
「そうか...わかった。まぁー兎にも角にもめでたい事には変わりねぇな!ところで...」
【どうやって口説いた?】
によによ笑みを浮かべながら宇随は炭治郎の耳元でそっと問いかける。さすがに勘弁してくれといった様子で彼は宇随を睨み上げた。
「あの、面白がってますよね宇随さん」
「あははは!冗談だよ冗談!んな怖い顔すんなって。さて、気を取り直して修行すんぞー!」
バシンと勢いよく背中を叩かれた炭治郎は、指導者の顔に変わった彼を見て慌てて姿勢を正す。
何をずっとこそこそ喋ってたんですかー?とぷくり頬を膨らませながら駆け寄って来る須磨に、彼は男同士の話だと器用にあしらっていた。
「おーしお前らぁ!休憩は終わりだぞー!これからこの山道を往復五十周だ気抜くなよ!!」
パンパンと手を叩いた宇随を見て、あちらこちらから絶望の匂いが漂ってくる中、炭治郎は気を引き締めて己の拳をにぎりしめた。
この柱稽古に全力で挑み、少しでも力をつけなければ...遅かれ早かれやって来る最終局面を乗り越え、また大好きな人達との平和な暮らしを取り戻す。
日向子さん...
ー俺が必ず、貴女を守り抜いて見せますー
ーーーーー
宇随さんの元で稽古を始めて数日が経過した頃、
持ち前の明るい性格ですっかり他の隊士達とも打ち解けた炭治郎。今日も厳しい稽古を乗り越えたその夜、彼等は輪になって雑談しあっていた。
「竈門ー...お前本当すげぇな。元柱のあの血反吐吐くような稽古をニコニコ笑顔でこなすなんてさ」
「俺達とは全然体の出来が違うんだなぁー」
先輩隊士達に褒められて照れ臭くなった炭治郎は、そんなに大層な事じゃないと謙遜して見せる。
「そんな、俺なんてまだまだですよ。今までは色んな人に助けられて運良く生き残っただけで。俺自身もっと強くならないと」
「ふーん..そっか。まぁ頑張ろうぜ!こうして会ったのも何かの縁だからな。話は変わるけど、これだけ厳しい修行してると何かこう...干からびるよな」
あー..わかるわかる。そうちらほら賛同する者が現れるが、炭治郎はなんのこっちゃと言った様に首を傾げた。
「干からびるって何がですか?」
「何がって..ここは娯楽がないだろ?唯一の楽しみと言えば元柱の嫁さん達を眺める事くらいだけど、あんま見ると竹刀でぶっ叩かれそうで怖ぇからさー」
炭治郎は何となく蚊帳の外で彼らの雑談を聴いていた。男が集まればこのような話題に発展するのは必然か..
ーーーーー
〜350【許されぬ牽制】〜
(うーん...ちょっと入りづらい)
止める者がいない、
ずっと娯楽や息抜きをお預けされてひたすら修行に明け暮れているのだから、雑談で盛り上がるくらいは許されるだろうという考えなのだろうが...
年齢的にもまだまだ青い炭治郎からしたら、なんとも居た堪れない場だった。
ーこの人達凄いなぁ..まぁ、成人してる人ばかりだしなー
各々なかなか刺激的な経験をお持ちの様だ。仄かに頬を染めて素知らぬふりをしていると、唐突に輪の中の一人が炭治郎へ話を振ってきた。
「あ!そう言えば明日から日向子さん来るんだろう?
」
「!」
「あーー竈門の姉貴だって言ってたな」
「それが俺一回会ったことあるんだけどさ、すげー美人なんだよ。いい意味で鬼殺隊っぽくないというか...下手したら女学校に通うお嬢様みたいな?そんな感じだな。」
「へぇー!それは早く会ってみたいなぁ、年いくつかな?」
あっという間に話は日向子に関する事でもちきりになってしまった。
美人だの器量よしだのと、彼女に関する噂は好印象なものばかりで炭治郎自身鼻が高い気持ちもあるにはあったが...
「今年18歳になるのかぁ...良いなぁ。なぁ竈門、彼女恋人とかいるのか?」
「もし居なかったら俺もアタックしようかな。やっぱ可愛い彼女欲しいよなぁ」
....っ
正直言うと、【
「残念ですけど、日向子姉さんは恋人居ますよ。誰かは教えられませんが、だから姉さんの事は諦めてください」
なるべく棘の無い言い方を意識したが、やはり少し言葉の節々に不穏が入り混じってしまった。
それを聞いた彼等は、まじかよとあからさまに残念そうに項垂れる。
これ以上話すことはないと考えた炭治郎はすくりと立ち上がり暇をする。
しばらく歩いた先で、月夜を仰ぐ様に見上げる。
正確には、あれ以上あの場に居続けると、彼等に対し不自然な
彼女は俺の恋人だと、渡しはしないぞと。
そう声を大にして言えたらどんなに気持ちよかっただろうか。
けれど、それは口が裂けても言えない。そういう約束なんだ。
(落ち着け.....落ち着くんだ)
炭治郎は己の心を落ち着かせるように深呼吸した。
ーーーーー