◆第拾壱章 吊り合いゆく天秤
貴女のお名前を教えてください
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〜319【内密な関係】〜
お願いしますと勢いよく下げた頭を、恐る恐る上げて彼女の様子を伺い見る。しかし日向子はポカンとした表情で固まったまま動かない。
「...あの..何か言ってくれると....」
「っごめん!何かの夢みたいで、ちょっと頭が追いつかなかった。勿論ちゃんと聞いてたよ、聞いてた...」
彼女はすぐには首を縦に振らなかった。ひょっとして...駄目なのだろうか?そんな不安が過ぎった。
でも、まずは恋人として受け入れてもらわなければ、その先なんてないから。
ごめん日向子姉さん。両想いと確認出来た以上は俺、意地でも引く気はない。
「俺と恋人って関係にはなりたくないか?それとも今は駄目なのか?何か理由があるのなら、教えてくれないか。」
「違う、そうじゃないの!私の気持ちとしては炭治郎と..いつかそういう関係になりたいとは思うの。
ただ...周りから見ても私達は家族だったわけで、禰豆子もきっとそう思ってる。まだ人としての自我が戻らない禰豆子に、何て言ったらいいかなとか色々考えてて」
もじもじしながら日向子姉さんはそう語り出した。
彼女自身の気持ちが拒否しているわけではなくて、ホッとする。
ただ、そうか..。確かに今まで家族で、曲がりなりにも表向きには姉と弟という関係性だったのだから。いきなりの変化に動揺するのも、彼女の性格上無理はない。禰豆子は多分、俺が(名前)姉さんを想う気持ちが恋情だという事に気付いてなかったと思う。そうなると、色々と混乱を招くだろうか。
悩んだ末に、炭治郎はこう伝えた。
「じゃあ、周りには内密にしておこう」
「内密?..」
「うん。俺達が恋仲になった事は一切言わないでおこう。鬼舞辻無惨を倒し禰豆子を人に戻して、もしも二人生き残る事が出来たらその時、改めて公言すればいい。どうかな?」
「でも、炭治郎はそれでいいの?」
「あぁ。俺はただ...一つ我儘を聞いてくれるのなら、こうして二人でいる時だけは、構ってくれると嬉しいかな。」
我ながら凄く刺激的なお願いをしたかなぁと思ったけど、彼女は快く了承してくれた。
皆はもちろん、禰豆子にも俺達が恋仲になった事は内緒にして、二人きりの空間の時だけは恋人らしく振る舞って欲しいという約束まで漕ぎ着けた。自分で提案した話だけれど、何だかいけない関係みたいで、2人だけの秘密が出来たみたいで、凄く....
「炭治郎?」
「っ‼...いや..」
ーどうしよう、凄く興奮するかもしれないー
ーーーーー
〜320【甘美な口付け】〜
「えっと、じゃあ..不束者ですが、これから宜しくお願いします。」
「っはい、こちらこそ」
「慣れなかったら!今までと同じ感じでいいからね。私もそうだから」
「うん」
つい照れてしまい、お互い余所余所しい言い方になってしまった。実感が湧かないのは確かだ。さっき彼女は夢みたいだと称したが、俺もそう。
日向子姉さんと恋仲になれる日が来るなんて本当に
ー夢みたいだ...ー
「ね、そろそろ戻らないとまずいわ。就寝時間が近いから..誰か来るかもしれない。」
「あ、そっか...」
そう言われたが、このまま部屋に引き下がるのはちょっと切ない。せっかく恋仲になれたのに、全然物足りない。
女性は恋仲になったからと言って、別段今までと変わらないものなのだろうか?それとも日向子姉さんだから?
あれだけ顔を真っ赤にして照れていたのに、ちょっと淡白すぎやしないだろうか。
俺はこんなにも、もっと彼女と触れ合いたくてうずうずして仕方ないんだが...
密かにそう悶々とした気持ちを燻らせていたが、我慢出来る気がしなくて、駄目元で強請ることにした。
「日向子さん」
「ん?」
「口吸いしたい、してもいい?」
「っ......ん..一回だけなら」
許可が出た瞬間、炭治郎は迷わず彼女の唇に吸い付いた。柔らかい感触と、時折漏れる吐息がとても艶やかで蕩けそうになる。
俺は日向子姉さんとの口吸いが好きだ
心臓はどきどきと鳴り止まないのに、身体はふわふわ天に昂るような感覚がして、凄く気持ちが良くて安心する。
この時が永遠に終わらなければいいのにと思う。もうこれからは、思う存分この唇を堪能出来るのだと思うと、俺だけの特権なのだと思うと歓喜に打ち震える。
彼女の体を抱き寄せて、一回だけと言われたのにもかかわらず、唇を離すことが出来ずにいた。
「は....っ...日向子さん、好き。」
「っ..ん...」
「大好きです..」
「待って..もうっ..」
舌を入れたくなる衝動を何とか堪えて、止む無く唇を離した。この想いはまだ全然伝えきれてない。こんなものじゃないんだ。
でもこれ以上無理はさせられないから、今は...
「すまない、体大丈夫か?」
「大丈夫..」
はぁぁと気持ちを落ち着かせるように息を吐く。ふと以前口吸い痕をつけた箇所に目が止まる。当然だが、もうすっかり消えて元の白い肌が映えていた。
改めて思っても、やっぱりここに刻み込んでいたい欲求が自分の中にあった。
【甘い所有の印を】
ーーーーー
〜321【デコルテへの意味】〜
そっと首筋を撫でると、まだするのかとばかりに睨んできた。そんな顔も可愛く見えてしまうのだが、俺はおかしいのだろうか。
「日向子さん。口吸い痕をつけたいのだけど、どこならいい?」
「え?」
前に無意識につけてしまった首筋は、隊服なら隠れるが、病衣や浴衣だと際どい所だった。
甘露寺さんにバレた時は彼女が...温泉に入ってた時だったから致し方ないけど。普通に生活しててバレる所だとさすがにまずいだろうと思う。
まぁ、それ以前に痕をつけること事態許してくれるかどうかだが。
でも、個人的には物凄く付けたい。
俺が付けたものが、彼女の体に刻まれていると思うだけで、独占欲が満たされるような気がするのだ。
「ね...お願いだ。俺の物だっていう証を、貴女の体に残したいんだ。本当にこれで最後にするから」
縋るように彼女を見つめると観念したのか、真っ赤な顔でこくり頷いた。
「でも首はバレそうだから駄目よ。」
「足は?」
「まだ着替えさせて貰ってるから駄目」
「んー..お腹、はまだ包帯巻いてるのか。じゃあ、背中とか胸元...とか」
「そうだね....待って、ここで脱がなきゃいけないの?」
何てこと言うのだと、胸元を両腕で押さえて炭治郎と距離を取る日向子。慌ててそんなつもりは無かったと否定する。本当にそうなのだ。でも、見えない所となるとその二つ以外なかなかないではないか。
「なぁ..サラシ巻いてるよな?」
「巻いてる..けど」
「わかった。少し俺に任せてくれ。大丈夫、日向子さんが嫌な事はしないよ」
炭治郎はゆっくりと彼女の身体をベッドへ寝かせる。そしてそのまま病衣の第一ボタンを、ぷつりと解いた。
「っ!」
「大丈夫」
狼狽する日向子を宥めるように右手で優しく頭を撫でる。
「俺の我儘ですまない。怖かったら少しだけ目閉じててくれ。」
そう言うと日向子は切なそうに瞳を揺らし、その目をゆっくりと閉じた。緊張した匂いが伝わってくる。
当たり前か、こんなに無防備な姿を曝け出しているのだから..
ボタンを外した事で、少しシャツを広げれば胸元の上部が露わになった。両鎖骨と...胸の中心がちょうど交差する所より、少し下部。
すっと透き通るような肌を撫でるとぴくりと反応する。
既に荒くなり始めている息遣いがバレないよう慎重に、ゆっくりと狙った場所へと唇を這わせていく。
「ぁ....」
あぁ..
そんな可愛い声、出さないでくれ
ーーーーー
〜322【所有の証】〜
いちいち可愛らしい反応をするので理性を保つのが容易じゃない。俺は長男で我慢強い方だけど、こればかりは本当に怖いのだ。
優しくしたい...大事にしたいんだ...だからっ
ー耐えろ、俺..ー
唇を押しつけて空気の隙間を無くすと、一点に集中し吸い上げる。声には出さないものの、彼女からは一瞬だけ痛がった匂いがした。
頃合いを見計らい唇を離せば、彼女の白い肌に映える、赤くうっ血した痕がくっきりと残った。その出来栄えに、彼は満足気に微笑む。
誰にも見られないようなデリケートな部位への口吸い痕。
俺達だけの秘事 。
俺だけの日向子さん....
ゾクリと身体の芯が震えた。少し狂気じみているかもしれないが、【彼女を手に入れられた】という証を目の前にして、興奮しきっている自分がいる。
鏡で自分の胸元を見る度に、彼女は今日の出来事を思い出すだろう。
もしも消えてしまったら、また付けてあげような。
もう手離したりしない
鬱血痕をひと舐めすると、炭治郎はゆっくりと彼女から己の体を引き剥がした。
「終わったよ日向子さん。俺の我儘、聞いてくれてありがとう。あぁ、本当はもっと色んなことを話したかったんだが...また今度。何か辛い事や悩み事があったら、俺に遠慮なく話してくれ。俺はいつでも貴女の味方だから」
「..炭治郎、ありがとう。ねぇ、その呼び方。これからは日向子さんなの?」
「んー..だって恋人同士になれたのに、姉さんはどうかなって。でも皆の前ではちゃんと今まで通り呼ぶから!だから2人きりの時は、許してください。この際だから言うけど、俺はずっと前から姉さんって呼ぶのには抵抗あったよ。」
「そうだったの?」
「そうだよ。だってその頃からずっと異性として好いてたんだから」
炭治郎が当たり前のようにさらりと言えば、日向子は、ぁ、ぅ..とか言葉にならない声を出して頬を赤く染めた。
「気付いてなかった?」
「...何となく気付いてたけど、改めて面と向かって言われると」
日向子のそんな初々しい反応を見てどきりとする。
彼女のこのような顔を見るとつい意地悪をしたくなってしまう。だって、いつも自分より余裕のある彼女が、押されてあたふたしたり不意打ちで照れたりするのは、凄く可愛らしいから
ーあぁでも..いい加減戻らないと見つかってしまうなー
「じゃあ戻るよ。また会いにくるから」
名残惜しそうにそう囁くと、怪我治ってからにしてくれと怒られた。
ーーーーー
お願いしますと勢いよく下げた頭を、恐る恐る上げて彼女の様子を伺い見る。しかし日向子はポカンとした表情で固まったまま動かない。
「...あの..何か言ってくれると....」
「っごめん!何かの夢みたいで、ちょっと頭が追いつかなかった。勿論ちゃんと聞いてたよ、聞いてた...」
彼女はすぐには首を縦に振らなかった。ひょっとして...駄目なのだろうか?そんな不安が過ぎった。
でも、まずは恋人として受け入れてもらわなければ、その先なんてないから。
ごめん日向子姉さん。両想いと確認出来た以上は俺、意地でも引く気はない。
「俺と恋人って関係にはなりたくないか?それとも今は駄目なのか?何か理由があるのなら、教えてくれないか。」
「違う、そうじゃないの!私の気持ちとしては炭治郎と..いつかそういう関係になりたいとは思うの。
ただ...周りから見ても私達は家族だったわけで、禰豆子もきっとそう思ってる。まだ人としての自我が戻らない禰豆子に、何て言ったらいいかなとか色々考えてて」
もじもじしながら日向子姉さんはそう語り出した。
彼女自身の気持ちが拒否しているわけではなくて、ホッとする。
ただ、そうか..。確かに今まで家族で、曲がりなりにも表向きには姉と弟という関係性だったのだから。いきなりの変化に動揺するのも、彼女の性格上無理はない。禰豆子は多分、俺が(名前)姉さんを想う気持ちが恋情だという事に気付いてなかったと思う。そうなると、色々と混乱を招くだろうか。
悩んだ末に、炭治郎はこう伝えた。
「じゃあ、周りには内密にしておこう」
「内密?..」
「うん。俺達が恋仲になった事は一切言わないでおこう。鬼舞辻無惨を倒し禰豆子を人に戻して、もしも二人生き残る事が出来たらその時、改めて公言すればいい。どうかな?」
「でも、炭治郎はそれでいいの?」
「あぁ。俺はただ...一つ我儘を聞いてくれるのなら、こうして二人でいる時だけは、構ってくれると嬉しいかな。」
我ながら凄く刺激的なお願いをしたかなぁと思ったけど、彼女は快く了承してくれた。
皆はもちろん、禰豆子にも俺達が恋仲になった事は内緒にして、二人きりの空間の時だけは恋人らしく振る舞って欲しいという約束まで漕ぎ着けた。自分で提案した話だけれど、何だかいけない関係みたいで、2人だけの秘密が出来たみたいで、凄く....
「炭治郎?」
「っ‼...いや..」
ーどうしよう、凄く興奮するかもしれないー
ーーーーー
〜320【甘美な口付け】〜
「えっと、じゃあ..不束者ですが、これから宜しくお願いします。」
「っはい、こちらこそ」
「慣れなかったら!今までと同じ感じでいいからね。私もそうだから」
「うん」
つい照れてしまい、お互い余所余所しい言い方になってしまった。実感が湧かないのは確かだ。さっき彼女は夢みたいだと称したが、俺もそう。
日向子姉さんと恋仲になれる日が来るなんて本当に
ー夢みたいだ...ー
「ね、そろそろ戻らないとまずいわ。就寝時間が近いから..誰か来るかもしれない。」
「あ、そっか...」
そう言われたが、このまま部屋に引き下がるのはちょっと切ない。せっかく恋仲になれたのに、全然物足りない。
女性は恋仲になったからと言って、別段今までと変わらないものなのだろうか?それとも日向子姉さんだから?
あれだけ顔を真っ赤にして照れていたのに、ちょっと淡白すぎやしないだろうか。
俺はこんなにも、もっと彼女と触れ合いたくてうずうずして仕方ないんだが...
密かにそう悶々とした気持ちを燻らせていたが、我慢出来る気がしなくて、駄目元で強請ることにした。
「日向子さん」
「ん?」
「口吸いしたい、してもいい?」
「っ......ん..一回だけなら」
許可が出た瞬間、炭治郎は迷わず彼女の唇に吸い付いた。柔らかい感触と、時折漏れる吐息がとても艶やかで蕩けそうになる。
俺は日向子姉さんとの口吸いが好きだ
心臓はどきどきと鳴り止まないのに、身体はふわふわ天に昂るような感覚がして、凄く気持ちが良くて安心する。
この時が永遠に終わらなければいいのにと思う。もうこれからは、思う存分この唇を堪能出来るのだと思うと、俺だけの特権なのだと思うと歓喜に打ち震える。
彼女の体を抱き寄せて、一回だけと言われたのにもかかわらず、唇を離すことが出来ずにいた。
「は....っ...日向子さん、好き。」
「っ..ん...」
「大好きです..」
「待って..もうっ..」
舌を入れたくなる衝動を何とか堪えて、止む無く唇を離した。この想いはまだ全然伝えきれてない。こんなものじゃないんだ。
でもこれ以上無理はさせられないから、今は...
「すまない、体大丈夫か?」
「大丈夫..」
はぁぁと気持ちを落ち着かせるように息を吐く。ふと以前口吸い痕をつけた箇所に目が止まる。当然だが、もうすっかり消えて元の白い肌が映えていた。
改めて思っても、やっぱりここに刻み込んでいたい欲求が自分の中にあった。
【甘い所有の印を】
ーーーーー
〜321【デコルテへの意味】〜
そっと首筋を撫でると、まだするのかとばかりに睨んできた。そんな顔も可愛く見えてしまうのだが、俺はおかしいのだろうか。
「日向子さん。口吸い痕をつけたいのだけど、どこならいい?」
「え?」
前に無意識につけてしまった首筋は、隊服なら隠れるが、病衣や浴衣だと際どい所だった。
甘露寺さんにバレた時は彼女が...温泉に入ってた時だったから致し方ないけど。普通に生活しててバレる所だとさすがにまずいだろうと思う。
まぁ、それ以前に痕をつけること事態許してくれるかどうかだが。
でも、個人的には物凄く付けたい。
俺が付けたものが、彼女の体に刻まれていると思うだけで、独占欲が満たされるような気がするのだ。
「ね...お願いだ。俺の物だっていう証を、貴女の体に残したいんだ。本当にこれで最後にするから」
縋るように彼女を見つめると観念したのか、真っ赤な顔でこくり頷いた。
「でも首はバレそうだから駄目よ。」
「足は?」
「まだ着替えさせて貰ってるから駄目」
「んー..お腹、はまだ包帯巻いてるのか。じゃあ、背中とか胸元...とか」
「そうだね....待って、ここで脱がなきゃいけないの?」
何てこと言うのだと、胸元を両腕で押さえて炭治郎と距離を取る日向子。慌ててそんなつもりは無かったと否定する。本当にそうなのだ。でも、見えない所となるとその二つ以外なかなかないではないか。
「なぁ..サラシ巻いてるよな?」
「巻いてる..けど」
「わかった。少し俺に任せてくれ。大丈夫、日向子さんが嫌な事はしないよ」
炭治郎はゆっくりと彼女の身体をベッドへ寝かせる。そしてそのまま病衣の第一ボタンを、ぷつりと解いた。
「っ!」
「大丈夫」
狼狽する日向子を宥めるように右手で優しく頭を撫でる。
「俺の我儘ですまない。怖かったら少しだけ目閉じててくれ。」
そう言うと日向子は切なそうに瞳を揺らし、その目をゆっくりと閉じた。緊張した匂いが伝わってくる。
当たり前か、こんなに無防備な姿を曝け出しているのだから..
ボタンを外した事で、少しシャツを広げれば胸元の上部が露わになった。両鎖骨と...胸の中心がちょうど交差する所より、少し下部。
すっと透き通るような肌を撫でるとぴくりと反応する。
既に荒くなり始めている息遣いがバレないよう慎重に、ゆっくりと狙った場所へと唇を這わせていく。
「ぁ....」
あぁ..
そんな可愛い声、出さないでくれ
ーーーーー
〜322【所有の証】〜
いちいち可愛らしい反応をするので理性を保つのが容易じゃない。俺は長男で我慢強い方だけど、こればかりは本当に怖いのだ。
優しくしたい...大事にしたいんだ...だからっ
ー耐えろ、俺..ー
唇を押しつけて空気の隙間を無くすと、一点に集中し吸い上げる。声には出さないものの、彼女からは一瞬だけ痛がった匂いがした。
頃合いを見計らい唇を離せば、彼女の白い肌に映える、赤くうっ血した痕がくっきりと残った。その出来栄えに、彼は満足気に微笑む。
誰にも見られないようなデリケートな部位への口吸い痕。
俺達だけの
俺だけの日向子さん....
ゾクリと身体の芯が震えた。少し狂気じみているかもしれないが、【彼女を手に入れられた】という証を目の前にして、興奮しきっている自分がいる。
鏡で自分の胸元を見る度に、彼女は今日の出来事を思い出すだろう。
もしも消えてしまったら、また付けてあげような。
もう手離したりしない
鬱血痕をひと舐めすると、炭治郎はゆっくりと彼女から己の体を引き剥がした。
「終わったよ日向子さん。俺の我儘、聞いてくれてありがとう。あぁ、本当はもっと色んなことを話したかったんだが...また今度。何か辛い事や悩み事があったら、俺に遠慮なく話してくれ。俺はいつでも貴女の味方だから」
「..炭治郎、ありがとう。ねぇ、その呼び方。これからは日向子さんなの?」
「んー..だって恋人同士になれたのに、姉さんはどうかなって。でも皆の前ではちゃんと今まで通り呼ぶから!だから2人きりの時は、許してください。この際だから言うけど、俺はずっと前から姉さんって呼ぶのには抵抗あったよ。」
「そうだったの?」
「そうだよ。だってその頃からずっと異性として好いてたんだから」
炭治郎が当たり前のようにさらりと言えば、日向子は、ぁ、ぅ..とか言葉にならない声を出して頬を赤く染めた。
「気付いてなかった?」
「...何となく気付いてたけど、改めて面と向かって言われると」
日向子のそんな初々しい反応を見てどきりとする。
彼女のこのような顔を見るとつい意地悪をしたくなってしまう。だって、いつも自分より余裕のある彼女が、押されてあたふたしたり不意打ちで照れたりするのは、凄く可愛らしいから
ーあぁでも..いい加減戻らないと見つかってしまうなー
「じゃあ戻るよ。また会いにくるから」
名残惜しそうにそう囁くと、怪我治ってからにしてくれと怒られた。
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