◆第弐章 そして少年達は
貴女のお名前を教えてください
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〜22【耳飾りの男】〜
渾身 の一撃であったにも関わらず、その影はいとも簡単に刃を抑えると、日向子の体を蹴り飛ばした。
口の中に血の味が広がり、激しい痛みが全身を襲う。
闇の奥から、低く平坦な声が響く
「耳飾りの男は何処にいる」
雄叫びをあげながら竹雄もその男に向かって斧を振るうが、虚しくも首を掴み上げられた。
苦しそうにもがく彼の耳を引き千切らん勢いで掴むも、違うなと呟き心臓を一突きした。
おびただしい血が飛び散り、日向子の顔へ振りかかる。
酷く泣き叫ぶ花子と茂はうっとおしかったのか、目にも留まらぬ速さで殺めた。
倒れ込んだ状態のまま日向子は地獄の惨状を
焼き付けられる。
この男は..
人間じゃないのか。
やがてその男は、恐怖に足がすくみ声を失う六太と禰豆子に目を向けた。
やめて、これ以上私の、家族を殺さないで..
日向子は力を振り絞り服の上から男の足をひしと掴む。
彼は虫けらを見るような目で眼下の少女を見下ろした。
「生きてたのか」
「私の、家族をこれ以上殺さないで..
私はどうなってもいいから」
息も絶え絶えにそう発する。
男の顔をその時初めてまともに見た。
蛇のような鋭く紅い眼光が、全身を射抜くような感覚。この世の生き物ではないようだ...。
「そうか、ならお望み通り死ぬといい」
その男が彼女の顔に触れた瞬間。
接触した部位が僅かに黄金色の輝きを放った。
生肉の焦げたような匂いが立ち上り、男は己の手の平を見つめる。
「ほう...面白い」
「っ!..」
男は拾い上げた斧の柄で日向子の首を打つ。
その瞬間世界が回り、日向子はそこで意識を手離した...。
彼は背広に忍び込ませていた上質なグローブを手につけると、彼女を軽々しく抱き上げた。
残された禰豆子は目をキツく瞑ると、意を決したように六太を守るようにかき抱き、外へと駆け出す。
しかし、男は日向子を担いだまま瞬時に後を追い背中から強烈な蹴りを入れた。
苦悶 の声を上げて彼女は倒れ込む。
前髪を荒々しく掴み上げると、彼は問うた。
「耳飾りの男はどこだ?ここにいる事はわかっている、答えろ。さもなくば殺す」
禰豆子は彼の殺気に怯む事なく、キッと目を吊り上げる。耳飾りの男と言われれば、十中八九兄のことであろうが、真実を伝えるなと本能が訴える。
「知らない!耳飾りの男なんてここにはいないわ!姉さんを離して!」
「...問うただけ無駄か」
男がそう呟くと、新たに血飛沫が舞った
ーーーーー
〜23【異形の正体】〜
身体中の鈍い痛みと気持ち悪さで目が覚めた日向子は茫然 とした。
縛り上げられた手足は柱に括り付けられて身動きが取れない。
貧血のような朦朧 とした意識の中、辺りを見渡せば物理的法則を完全に無視した、薄暗い歪んだ空間が広がっている。
ベンッ
何処からか琵琶の音が聞こえた。
ここは何処なのだ..
禰豆子と六太は、どうなったろうか。
突然やって来て家族を惨殺したあの男は何者?
思い出すと酷い吐き気に襲われた。
自分の体を見ると血で濡れている
過呼吸になりそうな最悪な状況で、
奴は現れた。
「気がついたか。」
前方を見ると、
薄ら笑いを浮かべているあの男と目が合う。
どんな化け物かと思ったら、見た目は普通の人間で、高価そうな背広とコートを纏った20代半ば程の端正な男だった。
「..妹達は..あなたは、誰..」
そう問いかけたが、相手にはして貰えず
男は笑みを深めるばかりだった。
「耳飾りの男はまたその内探す事にしよう。
思わぬ収穫があったからな..。鳴女」
「御意」
ベベンッと再度琵琶の音が鳴り響いたかと思えば、
再び空間が歪み、目の前にとても人間とは言い難い異形の生物が現れた。
あまりにも非現実過ぎて夢なのではないかと思ってしまう。いっその事夢であってくれと思うが、
今もなお全身を蝕むような痛みがそれを否定する。
「無残様..これは一体」
異形の生物が酷く怯えた様子で、無惨という男に問いかけた。
すると彼は日向子の血を採取したという注射針を取り出して、その生物に乱暴に打ち込んだ。
すると暫くして、断末魔を上げながらボロボロと体が崩れ去っていくのだった。
やはりそうかと呟き、彼はその結果に満足の行く表情を見せた。訳がわからなかったが、一つわかるのはこの男は狂っているという事。
「素晴らしい。まるで太陽に灼 かれたようだ。彼は下弦だった、それでもここまでとはな。
もしかしたら青い彼岸花に近しい存在であるかもしれない。それに【これはいい餌】になる。」
彼は独りでにそうほくそ笑むと、日向子に対して殺すには惜しいと言い、また別の異形を呼び出した。
「黒死牟、この娘の世話をしろ。死なすなよ。後は任せる」
黒死牟と呼ばれた六つ目の生物は、御意と短く答えると、無惨は颯爽 と姿を消した。
残された日向子は恐る恐る六つ目に尋ねる。
「あなた達は何」
すると彼は日向子を一瞥すると
静かに答えたのだった。
「鬼だ」
ーーーーー
〜24【囚われの巫女】〜
幼い頃、父に言われた言葉を思い出した。
鬼は夜な夜な現れ、人を喰らうモノだと...
迷信だと思っていたのに
「抵抗しようとは思わない事だ。
無惨様はお前が何処にいても、手に取るように居場所がわかる。害する存在と判断されればすぐさま殺せる。」
六つ目の鬼はそう日向子に忠告する。
「死なすなとの命だが、何故だかお前に無惨様の血が効かぬ。全く、鬼に出来ないのは厄介この上ない。」
鬼に出来ない。
それは、通常は人を鬼に変える事が可能ということなのか。日向子は身の毛がよだつ思いだった。
鬼にされないのは幸いだ。
日向子は瀕死の怪我を負いながらも、ここを抜け出す心算だった。
自害するつもりは元よりない。
禰豆子達の安否が心配だし、炭治郎の行方も。
鬼達が言う事でわかったのは、
【彼等は炭治郎を探している事と、私自身が彼等にとってイレギュラーな存在であり、生かして置く理由があるようだ】
という事だ
後者については不幸中の幸いであり、
奴らの目を掻い潜り、抜け出す方法を
探そうと日向子は決めた。
昨夜目の当たりにした、天と地程の力の差。
今まで普通の人間として過ごして来た自分がサシで敵う相手ではない。
何か..
何か方法はないのだろうか。
そんな事を巡らせている時だった。
「やぁ黒死牟。その子が噂の青い彼岸花ちゃんかい?」
新たに現れたのは、道化師のような素っ頓狂な仕草が特徴の鬼だった。
彼は舐めまわすように日向子を見て、不思議そうに首を傾げる。
「変な子だねぇ。こんなに血塗れで、美味しそうな筈なのに..ちっとも食いたいと思わない。この子本当に人間?」
「童磨..勝手が過ぎるぞ。無惨様はお許しではない。それに、青い彼岸花とはまだ限らない。」
それは失敬と言って両手をあげる素振りを見せると、ちょっと気になって見に来ただけさと笑った。
日向子は手足が震える。
殺す対象のみならず、人間は鬼の捕食対象にもなり得るという事実に。
だが、日向子は気力を保ち童磨という鬼に鋭い視線を向けた。それに彼は何故か気分をよくしたらしい。
「いいねぇその目。俺は好きだなぁ。こんなにも弱くてちっぽけで可哀想な存在の癖に、俺たちに歯向かうような眼差し。
女の子にしては珍しい男勝りな子だね。
あぁでも、顔はよく見たら可愛いや。
おっと、わかってるさ黒死牟そんな怖い目で見ないでくれ」
あぁ、こんな殺人鬼達がはびこる場所など、
早く抜け出したいのに体が動かない
ーーーーー
〜25【星詠みの一族】〜
「あの娘の様子はどうだ、黒死牟。」
無惨は古書のページに手をかけながら一瞥する事なくそう問いかける。
日向子が捕らえられてから約2ヶ月あまりが過ぎた時、傷が癒えた頃を見計らい無惨は目付役を言い渡した黒死牟を呼び出した。
黒死牟は無惨から問いかけられた答えのみを淡々と答える。
「傷は概ね癒えたよう。もう絶命の心配もない筈です。念の為逃亡を図らぬよう、仮死状態にしてあります。」
無惨はそうかと呟きパタリと本を閉じると、
嬉々 として薄ら笑いを浮かべた。
「何故あの娘が私の血をもってしても鬼にならないのか。
物理的に接触した際に肉が灼けるのか。
その理由を、この2ヶ月間調べていたのだ..そしてある仮説に辿り着いた。
あの娘は、星詠みの一族の末裔なのではないか。」
黒死牟はその単語を聞いた瞬間、明らかな反応を見せる。
「星詠みの一族..」
黒死牟にとって、忌々しい過去に他ならない。
遠い昔の因縁の記憶。
裏切りの記憶。
この時代に生き残りがいる筈はない。
何故なら星詠みの一族は
継国家の衰退と共に、滅びたのだから...
「もしこの仮説が正しければ、我々鬼の凶器となり得る。生かす理由はないが、青い彼岸花であれば失う訳にはいかない。
あの娘の血を使ってもう少し実験を続ける。私は...太陽克服の為なら手段を選ばな」
無惨が話の途中で不自然に言葉を切る。
そして、どういうことだと血を這うような声で発したかと思えば突然黒死牟の身体を無惨の手が貫いた。
ゴフッと口から血が滴る。
突然の出来事に黒死牟は何か失態を犯しただろうかと思考を巡らせた。
「無惨...様...如何された」
そう問いかけると彼は身体中に青筋を立てて怒りの剣幕で捲 し立てた。
「あの娘の生命反応が無くなった!!
貴様よもや殺したのではあるまいな」
「..私はそんな、滅相 もない。命令通りに生かしたまで..逃亡も自害も出来た筈は..」
「いきなり反応がなくなる等あり得ん。
監視が甘かったのではないか?
この無限城内は私の庭だ。他の鬼は私の許可無しでは踏み入ることすら許されない。
今は私とお前しかいないのだから」
無惨は黒死牟を投げ捨てると、
すぐ様鳴女を呼び出した。
「あの娘をここへ連れてこい!」
そう命令するが、鳴女は大量の冷や汗を垂らしてそれが..と口籠 る。
「申し訳ありません無惨様。無限城はおろか、この日本のどこにも、あの娘の屍すら見つかりませぬ...」
ーーーーー
口の中に血の味が広がり、激しい痛みが全身を襲う。
闇の奥から、低く平坦な声が響く
「耳飾りの男は何処にいる」
雄叫びをあげながら竹雄もその男に向かって斧を振るうが、虚しくも首を掴み上げられた。
苦しそうにもがく彼の耳を引き千切らん勢いで掴むも、違うなと呟き心臓を一突きした。
おびただしい血が飛び散り、日向子の顔へ振りかかる。
酷く泣き叫ぶ花子と茂はうっとおしかったのか、目にも留まらぬ速さで殺めた。
倒れ込んだ状態のまま日向子は地獄の惨状を
焼き付けられる。
この男は..
人間じゃないのか。
やがてその男は、恐怖に足がすくみ声を失う六太と禰豆子に目を向けた。
やめて、これ以上私の、家族を殺さないで..
日向子は力を振り絞り服の上から男の足をひしと掴む。
彼は虫けらを見るような目で眼下の少女を見下ろした。
「生きてたのか」
「私の、家族をこれ以上殺さないで..
私はどうなってもいいから」
息も絶え絶えにそう発する。
男の顔をその時初めてまともに見た。
蛇のような鋭く紅い眼光が、全身を射抜くような感覚。この世の生き物ではないようだ...。
「そうか、ならお望み通り死ぬといい」
その男が彼女の顔に触れた瞬間。
接触した部位が僅かに黄金色の輝きを放った。
生肉の焦げたような匂いが立ち上り、男は己の手の平を見つめる。
「ほう...面白い」
「っ!..」
男は拾い上げた斧の柄で日向子の首を打つ。
その瞬間世界が回り、日向子はそこで意識を手離した...。
彼は背広に忍び込ませていた上質なグローブを手につけると、彼女を軽々しく抱き上げた。
残された禰豆子は目をキツく瞑ると、意を決したように六太を守るようにかき抱き、外へと駆け出す。
しかし、男は日向子を担いだまま瞬時に後を追い背中から強烈な蹴りを入れた。
前髪を荒々しく掴み上げると、彼は問うた。
「耳飾りの男はどこだ?ここにいる事はわかっている、答えろ。さもなくば殺す」
禰豆子は彼の殺気に怯む事なく、キッと目を吊り上げる。耳飾りの男と言われれば、十中八九兄のことであろうが、真実を伝えるなと本能が訴える。
「知らない!耳飾りの男なんてここにはいないわ!姉さんを離して!」
「...問うただけ無駄か」
男がそう呟くと、新たに血飛沫が舞った
ーーーーー
〜23【異形の正体】〜
身体中の鈍い痛みと気持ち悪さで目が覚めた日向子は
縛り上げられた手足は柱に括り付けられて身動きが取れない。
貧血のような
ベンッ
何処からか琵琶の音が聞こえた。
ここは何処なのだ..
禰豆子と六太は、どうなったろうか。
突然やって来て家族を惨殺したあの男は何者?
思い出すと酷い吐き気に襲われた。
自分の体を見ると血で濡れている
過呼吸になりそうな最悪な状況で、
奴は現れた。
「気がついたか。」
前方を見ると、
薄ら笑いを浮かべているあの男と目が合う。
どんな化け物かと思ったら、見た目は普通の人間で、高価そうな背広とコートを纏った20代半ば程の端正な男だった。
「..妹達は..あなたは、誰..」
そう問いかけたが、相手にはして貰えず
男は笑みを深めるばかりだった。
「耳飾りの男はまたその内探す事にしよう。
思わぬ収穫があったからな..。鳴女」
「御意」
ベベンッと再度琵琶の音が鳴り響いたかと思えば、
再び空間が歪み、目の前にとても人間とは言い難い異形の生物が現れた。
あまりにも非現実過ぎて夢なのではないかと思ってしまう。いっその事夢であってくれと思うが、
今もなお全身を蝕むような痛みがそれを否定する。
「無残様..これは一体」
異形の生物が酷く怯えた様子で、無惨という男に問いかけた。
すると彼は日向子の血を採取したという注射針を取り出して、その生物に乱暴に打ち込んだ。
すると暫くして、断末魔を上げながらボロボロと体が崩れ去っていくのだった。
やはりそうかと呟き、彼はその結果に満足の行く表情を見せた。訳がわからなかったが、一つわかるのはこの男は狂っているという事。
「素晴らしい。まるで太陽に
もしかしたら青い彼岸花に近しい存在であるかもしれない。それに【これはいい餌】になる。」
彼は独りでにそうほくそ笑むと、日向子に対して殺すには惜しいと言い、また別の異形を呼び出した。
「黒死牟、この娘の世話をしろ。死なすなよ。後は任せる」
黒死牟と呼ばれた六つ目の生物は、御意と短く答えると、無惨は
残された日向子は恐る恐る六つ目に尋ねる。
「あなた達は何」
すると彼は日向子を一瞥すると
静かに答えたのだった。
「鬼だ」
ーーーーー
〜24【囚われの巫女】〜
幼い頃、父に言われた言葉を思い出した。
鬼は夜な夜な現れ、人を喰らうモノだと...
迷信だと思っていたのに
「抵抗しようとは思わない事だ。
無惨様はお前が何処にいても、手に取るように居場所がわかる。害する存在と判断されればすぐさま殺せる。」
六つ目の鬼はそう日向子に忠告する。
「死なすなとの命だが、何故だかお前に無惨様の血が効かぬ。全く、鬼に出来ないのは厄介この上ない。」
鬼に出来ない。
それは、通常は人を鬼に変える事が可能ということなのか。日向子は身の毛がよだつ思いだった。
鬼にされないのは幸いだ。
日向子は瀕死の怪我を負いながらも、ここを抜け出す心算だった。
自害するつもりは元よりない。
禰豆子達の安否が心配だし、炭治郎の行方も。
鬼達が言う事でわかったのは、
【彼等は炭治郎を探している事と、私自身が彼等にとってイレギュラーな存在であり、生かして置く理由があるようだ】
という事だ
後者については不幸中の幸いであり、
奴らの目を掻い潜り、抜け出す方法を
探そうと日向子は決めた。
昨夜目の当たりにした、天と地程の力の差。
今まで普通の人間として過ごして来た自分がサシで敵う相手ではない。
何か..
何か方法はないのだろうか。
そんな事を巡らせている時だった。
「やぁ黒死牟。その子が噂の青い彼岸花ちゃんかい?」
新たに現れたのは、道化師のような素っ頓狂な仕草が特徴の鬼だった。
彼は舐めまわすように日向子を見て、不思議そうに首を傾げる。
「変な子だねぇ。こんなに血塗れで、美味しそうな筈なのに..ちっとも食いたいと思わない。この子本当に人間?」
「童磨..勝手が過ぎるぞ。無惨様はお許しではない。それに、青い彼岸花とはまだ限らない。」
それは失敬と言って両手をあげる素振りを見せると、ちょっと気になって見に来ただけさと笑った。
日向子は手足が震える。
殺す対象のみならず、人間は鬼の捕食対象にもなり得るという事実に。
だが、日向子は気力を保ち童磨という鬼に鋭い視線を向けた。それに彼は何故か気分をよくしたらしい。
「いいねぇその目。俺は好きだなぁ。こんなにも弱くてちっぽけで可哀想な存在の癖に、俺たちに歯向かうような眼差し。
女の子にしては珍しい男勝りな子だね。
あぁでも、顔はよく見たら可愛いや。
おっと、わかってるさ黒死牟そんな怖い目で見ないでくれ」
あぁ、こんな殺人鬼達がはびこる場所など、
早く抜け出したいのに体が動かない
ーーーーー
〜25【星詠みの一族】〜
「あの娘の様子はどうだ、黒死牟。」
無惨は古書のページに手をかけながら一瞥する事なくそう問いかける。
日向子が捕らえられてから約2ヶ月あまりが過ぎた時、傷が癒えた頃を見計らい無惨は目付役を言い渡した黒死牟を呼び出した。
黒死牟は無惨から問いかけられた答えのみを淡々と答える。
「傷は概ね癒えたよう。もう絶命の心配もない筈です。念の為逃亡を図らぬよう、仮死状態にしてあります。」
無惨はそうかと呟きパタリと本を閉じると、
「何故あの娘が私の血をもってしても鬼にならないのか。
物理的に接触した際に肉が灼けるのか。
その理由を、この2ヶ月間調べていたのだ..そしてある仮説に辿り着いた。
あの娘は、星詠みの一族の末裔なのではないか。」
黒死牟はその単語を聞いた瞬間、明らかな反応を見せる。
「星詠みの一族..」
黒死牟にとって、忌々しい過去に他ならない。
遠い昔の因縁の記憶。
裏切りの記憶。
この時代に生き残りがいる筈はない。
何故なら星詠みの一族は
継国家の衰退と共に、滅びたのだから...
「もしこの仮説が正しければ、我々鬼の凶器となり得る。生かす理由はないが、青い彼岸花であれば失う訳にはいかない。
あの娘の血を使ってもう少し実験を続ける。私は...太陽克服の為なら手段を選ばな」
無惨が話の途中で不自然に言葉を切る。
そして、どういうことだと血を這うような声で発したかと思えば突然黒死牟の身体を無惨の手が貫いた。
ゴフッと口から血が滴る。
突然の出来事に黒死牟は何か失態を犯しただろうかと思考を巡らせた。
「無惨...様...如何された」
そう問いかけると彼は身体中に青筋を立てて怒りの剣幕で
「あの娘の生命反応が無くなった!!
貴様よもや殺したのではあるまいな」
「..私はそんな、
「いきなり反応がなくなる等あり得ん。
監視が甘かったのではないか?
この無限城内は私の庭だ。他の鬼は私の許可無しでは踏み入ることすら許されない。
今は私とお前しかいないのだから」
無惨は黒死牟を投げ捨てると、
すぐ様鳴女を呼び出した。
「あの娘をここへ連れてこい!」
そう命令するが、鳴女は大量の冷や汗を垂らしてそれが..と口
「申し訳ありません無惨様。無限城はおろか、この日本のどこにも、あの娘の屍すら見つかりませぬ...」
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