◆第玖章 呼吸の歴史
貴女のお名前を教えてください
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〜234【いがみ合い】〜
「俺はもっと強くならないといけない。じゃないと、周りからどんどん、大切な人達が居なくなっていく...」
無一郎は眉根を寄せ少年を見据える。
「ほら、鍵よこして。自分の立場を弁えて行動しなよ。赤ん坊じゃないんだから。」
手の平を差し出し鍵を催促する彼に全く悪意は感じられなかった。もしかしたら、彼なりに今の鬼殺隊の現状を考えての行動なのかもしれない。
でも、彼のこの子に対する言動はあまりにも...
パァァンッ!
「...何してるの?」
炭治郎は無一郎を睨むように見つめる。
どうしても今の彼に対して伝えたい事があった。相手が柱だろうが関係ない。これは、人として持つべき配慮なのだから
一方その頃ー
日向子は鋼鐵塚さんと共に再びこの里を訪れていた。
数日かけてようやく炭治郎の刀を打ち終えた彼は、清々しい表情で刀を鞘に収めた。
「早く炭治郎に渡せるといいですね!きっと彼喜びます。また貴方に打ってもらえたって」
「...今回が最後だ。」
日向子がそう語り掛けると、彼はふいっと顔を背ける。ひょっとこのお面を被っていてもわかるのだ。彼は一見ぶっきらぼうに見えるが、案外照れ屋で甲斐性 がある。
村に続く林道を歩いていた時だった。
誰かが言い争っているような声が聞こえ、日向子は視線を向けた。
「!...炭治郎..と、無一郎君?」
日向子は咄嗟に鋼鐵塚さんの羽織を掴み、木の影に隠れて様子を伺った。
なんだと不機嫌そうに尋ねてくる鋼鐵塚さんは、多分彼等の事をあまりよく知らないだろう。
日向子にとっては絶対に鉢合わせを避けたい2人だった。
何故なら..
「剣士と刀鍛冶はお互いがお互いを必要としています!どちらかが偉いとか優先すべきとか無いんです。この子の了承を得られないのなら、引いてください!」
「..あのさぁ。別に過程の話はどうでもいいんだよ。その子が持ってるのは【戦闘訓練用】なんだろ?それなら鍵を渡さない意味がわからない。俺何か間違ってる?」
多分、絶対に馬が合わないから。
「全く、そんな聞き分けがないと日向子も手を焼いてるだろうね。」
「っな!今は彼女の事は関係ないだろう!」
「大有りだよ。炭治郎に日向子は任せられない。俺が貰うから」
「日向子姉さんは渡さない!」
「どの口が言うのさ、それ相応の実力つけてから言ってよね!」
両者いがみ合う展開に日向子は頭を抱えた。
あぁ...これだから会わせたくなかったんだ
ーーーーー
〜235【仲裁役】〜
「おい、あの2人....お前の事取り合ってないか?」
ひょっとこの面の奥から、じとっとした視線を感じ居た堪れなくなった日向子はずんずんと彼等に歩み寄って行った。
無一郎が手刀を振り上げようとした瞬間。ガシッと彼の腕を抑え、炭治郎と距離を引き離す。
「「っ!」」
「いい加減にしなさい2人共!」
思い切り眉を吊り上げた日向子の突然の登場に、驚きを隠せない炭治郎と無一郎。
そんな様子などお構いなしに大体の状況を悟った日向子は声を張り上げた。
「いい?何があっても暴力は駄目!ちゃんとお互いの言い分は聞き合ったの?そこの貴方もよ!」
ビシッと指を差されびくりと体を揺らした小鉄は、口ごたえする間も無くしゅんとなる。
無一郎も素直に腕を下ろして気まずそうに顔を逸らし、炭治郎も同様の表情を見せた。
ヒートアップした彼等がようやく落ち着きを取り戻したのを確認すると、転じて日向子は優しい声色で諭すように語り始める。
「隊員同士でぶつかり合っても仕方ないよ。無一郎君は戦闘用のカラクリ人形を借りたいのはわかるけど、もう少し言い方があるわ。
貴方は何故人形を貸したくないの?理由を私に教えて?炭治郎は熱くなりすぎよ、仲裁しようとしたならもう少し冷静にならなきゃ」
てきぱきとそう指摘された彼等は、誰もが日向子の気迫に圧倒されていたし、何より頭が上がらない事を悟った。
詳しく事情を聞きだした日向子はふぅむと考え込んだ。そして小鉄の方へと向き直る。
「小鉄君、そのカラクリ人形は代々受け継がれてきた形見で大切なのはよくわかるわ。でもね、先祖達の意思をよく考えてみて欲しいの。彼等は何故、この人形を作ったの?」
「...戦闘訓練用の為に作った。だから、本来の目的は剣士の訓練用です。」
「そうね、それなら無一郎君に貸してあげてくれないかな?それに万が一壊れたとしても、貴方ならきっとまた直せる。ずっとその人形を側で見守ってきたのよね?」
「!...はい。日向子様、ごめんなさい」
日向子が微笑みながら小鉄の頭をよしよしと宥めると、彼は急に従順な飼い犬に戻ったかのようにおとなしくなった。
凄い...
いとも簡単にこの場を収めてしまった。さすがは日向子姉さんだ。
それにしても...
彼女に撫でられている小鉄君が羨ましい。そりゃ大人気ない自分達が悪いけど。
炭治郎は羨ましそうにその様子を黙って見ていたが、それは無一郎も同様であった。
ーーーーー
〜236【縁壱零式】〜
「ほら、鍵だ」
小鉄君が鍵を無一郎に差し出した。
それを黙って受け取った彼が、少しぶすっとした態度であるのはこの際目を瞑る事にした。
一瞬日向子に目配せした後、そのままさっと姿を消した無一郎へ何か言いたげに炭治郎は口を開いたが、そのまま日向子へと向き直る。
「日向子姉さん..すまない。こんなつもりで間に入ったわけじゃなかったんだけど」
くだらない言い争いに日向子が怒っているか、或いは呆れているんじゃないかと思ってるんだろうか。
炭治郎は申し訳なさそうに項垂れる。
「炭治郎が何に怒ったのか、ちゃんとわかってるよ。だからもうそんな顔しないで?」
そう言えば彼はホッとしたように体を弛緩 させた。
「あの、日向子様はいつ里にお戻りになったんですか?俺、陽光山に向かったと聞いてました」
小鉄にそう問いかけられるまで、日向子は鋼鐵塚の存在をすっかり忘れておりハッとして振り返った。
その直後、ガキィィン!と大きな金属音が向こうから響いてきて、土煙が風に乗って僅かに流れてきた。
「!」
「あ、さっきの人がもう!」
こちらですと小鉄が2人を引き連れて向かった先には、既に無一郎が刀を抜刀し例の絡繰人形と相対していた。数日前に日向子が見た光景よりも数段激しい戦闘が繰り広げられていて、圧倒される。
ーこれが..彼の実力ー
「あれが、俺の祖先が作った戦闘用絡繰人形、【縁壱零式】です。」
「縁壱...?」
継国縁壱..日の呼吸の使い手だったと言われる剣士と同じ名前だ。
小鉄の話によると、実在した剣士を元に戦国時代に作り出された物らしい。恐らくその元になったというのが件 の剣士だろう。
日向子は妙に胸が騒ついた。
その人形と無一郎の姿が、不思議と重なって見える瞬間があった。
一方炭治郎も、この人形の容姿に見覚えがあった。どこで見たかはよく思い出せないけれど、知っている。
それに、無一郎の実力を目の当たりにしてぐっと口を噤 んでしまった。
「凄い..」
悔しいけれど、彼の技術は全てにおいて炭治郎を遥かに上回っていた。
俺よりも歳下で、背も低くて、男子にしては華奢な方である無一郎。
肉体的には一見不利に見えるのに、俺とどこが違うんだろう?
「やっぱり才能...なのかな」
「ソウヨ!アノ子は日ノ呼吸ノ使イ手の子孫ダカラネ!」
ーこれは、時透君の烏?ー
ーーーーー
〜237【醜い嫉妬】〜
「あ、銀子さんお久しぶり!」
銀子と呼ばれた烏は彼女の挨拶に答えるようにパタパタと頭の上に舞い降りた。
あれ...?いつの間に仲良くなって...
「無一郎君は継国一族っていう日の呼吸の末裔なんですって、私も鉄珍様から聞いて初めて知ったの」
へぇ、そうなんだ..というか
「そういえば日向子姉さん...時透君の事名前で呼んでたっけ?」
炭治郎にそう問いかけられた日向子はあーーと痛い所を突かれたように視線を逸らした。
「たまたま里に来た時に会って少し話をしただけだよ。別に彼とは何もないから」
ふーーんと面白くなさそうに口を尖らせる炭治郎は、嫉妬心からか声色や視線も心なしか不穏であった。
その場が凍りつく前に、慌てて日向子が話題を変えようと口を開くが、その前に炭治郎がこう呟く。
「でも日の呼吸じゃないんだね、使うの」
さすがにこの一言でピシッとその場の空気が張り詰めた。確実に苛ついている炭治郎は、無一郎に対して敵対心を隠そうとしない。
何ナノアンタ黙ンナサイヨ!と銀子が炭治郎に向かってバサバサと翼を煽ると、静かに佇んでいた日向子の鎹鴉が間に立ちはだかる。
しばらく烏言葉で言い合っていたが、銀子は呆れたように溜息を吐いた。
「全ク、人間ノ恋愛ッテ本当面倒ヨネ」
何がどうなっているんだと右往左往する小鉄が気の毒になってしまう。
この渦中に自分がいると思うと...複雑な気持ちだ。
どうにか、目の前でツンとしている彼の機嫌を治してあげないといけないのだけど
「炭治郎」
「....」
日向子が優しく彼の名前を呼ぶと、不機嫌そうな顔が僅かに緩んだ。
炭治郎は目頭に手の甲をあてがい、心を落ち着かせるようにはぁーーと意図的に長く息を吐いた。
「..駄目だな、ごめん。俺、凄く嫉妬してる。
時透君は才能もあって優れてて..俺より日向子姉さんを守れる実力があって、羨ましくて...恨めしいんだ。
日向子姉さんを取られると思うと、気が狂ってしまう。だからあまり親しい所は見たくなくて、それで...」
ごめんなさい
苦しそうに謝る炭治郎を見て、やっぱりこの真っ直ぐ過ぎる想いになかなか慣れず赤面してしまう。
彼は我慢強い性格だけど、限界に達すると途端に感情を爆発させてしまう節がある。
その辺はちょっと私と似ている。
「謝らないで?炭治郎の気持ちはちゃんとわかってるよ。わかってるから」
そう言って頭を撫でてやれば彼は人目も憚 らず日向子に抱きついた。
ーーーーー
「俺はもっと強くならないといけない。じゃないと、周りからどんどん、大切な人達が居なくなっていく...」
無一郎は眉根を寄せ少年を見据える。
「ほら、鍵よこして。自分の立場を弁えて行動しなよ。赤ん坊じゃないんだから。」
手の平を差し出し鍵を催促する彼に全く悪意は感じられなかった。もしかしたら、彼なりに今の鬼殺隊の現状を考えての行動なのかもしれない。
でも、彼のこの子に対する言動はあまりにも...
パァァンッ!
「...何してるの?」
炭治郎は無一郎を睨むように見つめる。
どうしても今の彼に対して伝えたい事があった。相手が柱だろうが関係ない。これは、人として持つべき配慮なのだから
一方その頃ー
日向子は鋼鐵塚さんと共に再びこの里を訪れていた。
数日かけてようやく炭治郎の刀を打ち終えた彼は、清々しい表情で刀を鞘に収めた。
「早く炭治郎に渡せるといいですね!きっと彼喜びます。また貴方に打ってもらえたって」
「...今回が最後だ。」
日向子がそう語り掛けると、彼はふいっと顔を背ける。ひょっとこのお面を被っていてもわかるのだ。彼は一見ぶっきらぼうに見えるが、案外照れ屋で
村に続く林道を歩いていた時だった。
誰かが言い争っているような声が聞こえ、日向子は視線を向けた。
「!...炭治郎..と、無一郎君?」
日向子は咄嗟に鋼鐵塚さんの羽織を掴み、木の影に隠れて様子を伺った。
なんだと不機嫌そうに尋ねてくる鋼鐵塚さんは、多分彼等の事をあまりよく知らないだろう。
日向子にとっては絶対に鉢合わせを避けたい2人だった。
何故なら..
「剣士と刀鍛冶はお互いがお互いを必要としています!どちらかが偉いとか優先すべきとか無いんです。この子の了承を得られないのなら、引いてください!」
「..あのさぁ。別に過程の話はどうでもいいんだよ。その子が持ってるのは【戦闘訓練用】なんだろ?それなら鍵を渡さない意味がわからない。俺何か間違ってる?」
多分、絶対に馬が合わないから。
「全く、そんな聞き分けがないと日向子も手を焼いてるだろうね。」
「っな!今は彼女の事は関係ないだろう!」
「大有りだよ。炭治郎に日向子は任せられない。俺が貰うから」
「日向子姉さんは渡さない!」
「どの口が言うのさ、それ相応の実力つけてから言ってよね!」
両者いがみ合う展開に日向子は頭を抱えた。
あぁ...これだから会わせたくなかったんだ
ーーーーー
〜235【仲裁役】〜
「おい、あの2人....お前の事取り合ってないか?」
ひょっとこの面の奥から、じとっとした視線を感じ居た堪れなくなった日向子はずんずんと彼等に歩み寄って行った。
無一郎が手刀を振り上げようとした瞬間。ガシッと彼の腕を抑え、炭治郎と距離を引き離す。
「「っ!」」
「いい加減にしなさい2人共!」
思い切り眉を吊り上げた日向子の突然の登場に、驚きを隠せない炭治郎と無一郎。
そんな様子などお構いなしに大体の状況を悟った日向子は声を張り上げた。
「いい?何があっても暴力は駄目!ちゃんとお互いの言い分は聞き合ったの?そこの貴方もよ!」
ビシッと指を差されびくりと体を揺らした小鉄は、口ごたえする間も無くしゅんとなる。
無一郎も素直に腕を下ろして気まずそうに顔を逸らし、炭治郎も同様の表情を見せた。
ヒートアップした彼等がようやく落ち着きを取り戻したのを確認すると、転じて日向子は優しい声色で諭すように語り始める。
「隊員同士でぶつかり合っても仕方ないよ。無一郎君は戦闘用のカラクリ人形を借りたいのはわかるけど、もう少し言い方があるわ。
貴方は何故人形を貸したくないの?理由を私に教えて?炭治郎は熱くなりすぎよ、仲裁しようとしたならもう少し冷静にならなきゃ」
てきぱきとそう指摘された彼等は、誰もが日向子の気迫に圧倒されていたし、何より頭が上がらない事を悟った。
詳しく事情を聞きだした日向子はふぅむと考え込んだ。そして小鉄の方へと向き直る。
「小鉄君、そのカラクリ人形は代々受け継がれてきた形見で大切なのはよくわかるわ。でもね、先祖達の意思をよく考えてみて欲しいの。彼等は何故、この人形を作ったの?」
「...戦闘訓練用の為に作った。だから、本来の目的は剣士の訓練用です。」
「そうね、それなら無一郎君に貸してあげてくれないかな?それに万が一壊れたとしても、貴方ならきっとまた直せる。ずっとその人形を側で見守ってきたのよね?」
「!...はい。日向子様、ごめんなさい」
日向子が微笑みながら小鉄の頭をよしよしと宥めると、彼は急に従順な飼い犬に戻ったかのようにおとなしくなった。
凄い...
いとも簡単にこの場を収めてしまった。さすがは日向子姉さんだ。
それにしても...
彼女に撫でられている小鉄君が羨ましい。そりゃ大人気ない自分達が悪いけど。
炭治郎は羨ましそうにその様子を黙って見ていたが、それは無一郎も同様であった。
ーーーーー
〜236【縁壱零式】〜
「ほら、鍵だ」
小鉄君が鍵を無一郎に差し出した。
それを黙って受け取った彼が、少しぶすっとした態度であるのはこの際目を瞑る事にした。
一瞬日向子に目配せした後、そのままさっと姿を消した無一郎へ何か言いたげに炭治郎は口を開いたが、そのまま日向子へと向き直る。
「日向子姉さん..すまない。こんなつもりで間に入ったわけじゃなかったんだけど」
くだらない言い争いに日向子が怒っているか、或いは呆れているんじゃないかと思ってるんだろうか。
炭治郎は申し訳なさそうに項垂れる。
「炭治郎が何に怒ったのか、ちゃんとわかってるよ。だからもうそんな顔しないで?」
そう言えば彼はホッとしたように体を
「あの、日向子様はいつ里にお戻りになったんですか?俺、陽光山に向かったと聞いてました」
小鉄にそう問いかけられるまで、日向子は鋼鐵塚の存在をすっかり忘れておりハッとして振り返った。
その直後、ガキィィン!と大きな金属音が向こうから響いてきて、土煙が風に乗って僅かに流れてきた。
「!」
「あ、さっきの人がもう!」
こちらですと小鉄が2人を引き連れて向かった先には、既に無一郎が刀を抜刀し例の絡繰人形と相対していた。数日前に日向子が見た光景よりも数段激しい戦闘が繰り広げられていて、圧倒される。
ーこれが..彼の実力ー
「あれが、俺の祖先が作った戦闘用絡繰人形、【縁壱零式】です。」
「縁壱...?」
継国縁壱..日の呼吸の使い手だったと言われる剣士と同じ名前だ。
小鉄の話によると、実在した剣士を元に戦国時代に作り出された物らしい。恐らくその元になったというのが
日向子は妙に胸が騒ついた。
その人形と無一郎の姿が、不思議と重なって見える瞬間があった。
一方炭治郎も、この人形の容姿に見覚えがあった。どこで見たかはよく思い出せないけれど、知っている。
それに、無一郎の実力を目の当たりにしてぐっと口を
「凄い..」
悔しいけれど、彼の技術は全てにおいて炭治郎を遥かに上回っていた。
俺よりも歳下で、背も低くて、男子にしては華奢な方である無一郎。
肉体的には一見不利に見えるのに、俺とどこが違うんだろう?
「やっぱり才能...なのかな」
「ソウヨ!アノ子は日ノ呼吸ノ使イ手の子孫ダカラネ!」
ーこれは、時透君の烏?ー
ーーーーー
〜237【醜い嫉妬】〜
「あ、銀子さんお久しぶり!」
銀子と呼ばれた烏は彼女の挨拶に答えるようにパタパタと頭の上に舞い降りた。
あれ...?いつの間に仲良くなって...
「無一郎君は継国一族っていう日の呼吸の末裔なんですって、私も鉄珍様から聞いて初めて知ったの」
へぇ、そうなんだ..というか
「そういえば日向子姉さん...時透君の事名前で呼んでたっけ?」
炭治郎にそう問いかけられた日向子はあーーと痛い所を突かれたように視線を逸らした。
「たまたま里に来た時に会って少し話をしただけだよ。別に彼とは何もないから」
ふーーんと面白くなさそうに口を尖らせる炭治郎は、嫉妬心からか声色や視線も心なしか不穏であった。
その場が凍りつく前に、慌てて日向子が話題を変えようと口を開くが、その前に炭治郎がこう呟く。
「でも日の呼吸じゃないんだね、使うの」
さすがにこの一言でピシッとその場の空気が張り詰めた。確実に苛ついている炭治郎は、無一郎に対して敵対心を隠そうとしない。
何ナノアンタ黙ンナサイヨ!と銀子が炭治郎に向かってバサバサと翼を煽ると、静かに佇んでいた日向子の鎹鴉が間に立ちはだかる。
しばらく烏言葉で言い合っていたが、銀子は呆れたように溜息を吐いた。
「全ク、人間ノ恋愛ッテ本当面倒ヨネ」
何がどうなっているんだと右往左往する小鉄が気の毒になってしまう。
この渦中に自分がいると思うと...複雑な気持ちだ。
どうにか、目の前でツンとしている彼の機嫌を治してあげないといけないのだけど
「炭治郎」
「....」
日向子が優しく彼の名前を呼ぶと、不機嫌そうな顔が僅かに緩んだ。
炭治郎は目頭に手の甲をあてがい、心を落ち着かせるようにはぁーーと意図的に長く息を吐いた。
「..駄目だな、ごめん。俺、凄く嫉妬してる。
時透君は才能もあって優れてて..俺より日向子姉さんを守れる実力があって、羨ましくて...恨めしいんだ。
日向子姉さんを取られると思うと、気が狂ってしまう。だからあまり親しい所は見たくなくて、それで...」
ごめんなさい
苦しそうに謝る炭治郎を見て、やっぱりこの真っ直ぐ過ぎる想いになかなか慣れず赤面してしまう。
彼は我慢強い性格だけど、限界に達すると途端に感情を爆発させてしまう節がある。
その辺はちょっと私と似ている。
「謝らないで?炭治郎の気持ちはちゃんとわかってるよ。わかってるから」
そう言って頭を撫でてやれば彼は人目も
ーーーーー