◆第玖章 呼吸の歴史
貴女のお名前を教えてください
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〜226【鋼鐵塚の思い】〜
「ありがとうございます。知らなかった事もありました。この神社はそんな神聖な場所だったのですね。」
日向子は祠の方へと歩いていった。
「何をするつもりだ?」
「この岩戸を、開けてみようかと思いまして」
「無理だ。俺の先祖もありとあらゆる手を使って開けようと試みたらしいが、結果は皆同...」
鋼鐵塚は最後まで言い切る事なく不自然に言葉を切った。
信じられないという風に目を見開く。
それは、いとも簡単に日向子が岩の扉を開け放ったからだ。
「っ!」
驚いたのは開けた張本人でもある日向子も同様だった。多少力を込めたものの、特別呼吸を使ったわけでもない。
材質は硬い岩であるのにも、まるで立て付けの悪い雨戸を引く程度の重さしか感じられなかった。
「信じられん..。もう何百年も閉ざされていたんだぞ。」
目を瞬かせながらその光景を見ていた鋼鐵塚は、ふと日向子の日輪刀に目を止める。
「おい、日輪刀を抜け!早く!」
「え?!」
言われるがままに柄に手を伸ばし刀を抜き取ると、銀白色の日輪刀が煌々と発光しており、熱を帯びていた。まるでこの祠と共鳴するかのように、その存在を示していた。
この現象は一体?
「俺は夢でも見ているようだ...これで確信した。ついに、星が覚醒したんだ。日の呼吸が復活を遂げた。やはり竈門炭治郎の刀は...」
彼はうっとりとした表情を浮かべ日向子の日輪刀に手を添える。
何が何だかわからなかったが、これが、彼等刀鍛冶の一族の積年の願いだったのだろうか。
「竈門炭治郎の刀は黒色だったろう、俺は願っていた。いつかその黒が美しい赫色に輝く日を、そして日向子、お前の刀が銀白色で七色に輝く日もな。
お前は間違いなくヒノカミを宿した巫女の力を受け継いでいる。この岩戸を開け放ったのがその証拠となる。」
ー日の呼吸の復活ー
それは鉄珍様も仰っていた。
何だかとても、神聖な気持ちにさせられるようだ。何か、大きく事態が動いていくような予感がする。
日向子はなおも輝きを放つ己の日輪刀を見つめた。
「俺は炭治郎の刀を打つ。あいつはまだまだ呼吸に粗 がある未熟な剣士だ。
心底殺意が沸いた事もあった。
けどな..どんなにぼろ糞言われても、決まって俺に頭を下げる。また打って欲しいとな。炭治郎が日の呼吸の使い手であろうがなかろうが関係ない。俺は」
ーあいつに生きて欲しいから、最高の刀を打ってやりたいのさー
鋼鐵塚はそう笑って言った。
ーーーーー
〜227【禁断症状】〜
「んー悔しい、やっぱりなかなか体力戻らないなぁ」
1日でも早く任務復帰出来るように今までの遅れを取り戻そうとするも、思うように行かず炭治郎は歯噛みする。
つい昨日から伊之助も任務に出た。自分も時間を浪費してはいられない。
日向子姉さんからは音沙汰も無いが、日輪刀について何かわかっただろうか?
心配だ。
ー日輪刀...ー
「そう言えば、俺が眠っている間に刀届いてない?」
自分の刀の事をすっかり忘れており、なほにそう問う。すると彼女はぎくりと冷や汗を垂らし、助け舟を求めるように急須 を傾けているきよに視線を送った。
「...鋼鐵塚さんからお手紙は届いています。ご覧になります?」
「え...」
良からぬ内容の手紙だろうというのは、彼女達の反応を見れば明らかだった。
炭治郎は恐る恐る差し出された文を開くと、そこには呪いのような言葉がひたすらに書き連ねられていた。
まずい
そう直感的に思う。このままだと最悪刀を一生打ってもらえないなんて事になってしまうかもしれない。
それは、困ってしまう。
「今回は刃こぼれだけだったんだけどなぁ..。でも前に折ってしまってるし、うーん..」
どうしたものかと唸っていると、きよがこう提案してくれた。
「里に行ってみてはいかがですか?直接会って話してみた方が良いかと思います」
「里って、刀鍛冶の里?!行っていいの?」
ご存知だったんですか?と聞かれたが、つい先日、日向子姉さんが里長からの招待で向かった場所だから勿論よく覚えている。
一応お館様に許可を得た方がいいとのことだが、特に立ち入り自体を規制されているわけでは無いという。
てっきり、向こうから呼ばれない限りは足を踏み入れられない土地だとばかり思っていた。
でも、良かった。
ちょうど日向子姉さんがいる所だし、炭治郎としても願ったり叶ったりだ...
信じられない事に、あの夜からまだ1週間程度しか経っていないというのにもう彼女に会いたくて仕方ない。
顔が見たいし、声が聴きたくてたまらない、確実に禁断症状が出始めている。
我ながら堪え性が無い事に、炭治郎はひっそりとため息を吐いた。
ー翌日ー
里への道中は、完全なる守秘義務のもと案内された。
ようやく辿り着いた場所は、硫黄や鉄の匂いが立ち込めており、いかにも職人の里といったような所だった。凄い....
「ありがとうございました!!」
炭治郎は案内役の隠に丁寧に礼を言うと、里長の館へと足を向けた。
ーーーーー
〜228【里長の切なる願い】〜
「君が竈門炭治郎君やな。噂をすれば...いらっしゃいゆっくりしたってな?」
突然やって来た炭治郎を無我にすることなく、やけに上機嫌に話す里長の鉄珍様。炭治郎は丁寧にこう尋ねた。
「あの、鋼鐵塚さんを探しているのですが、どちらに居られますか?俺の刀鍛冶なんですが、日輪刀の修復をお願いしているんです。」
そう問うと、彼は申し訳なさそうにううむと唸った。
「蛍なんやけどな、今行方不明でワシらも探してるから堪忍してなぁ」
っ!
まさか、本人が行方不明になっているとは思わなかった。悠長な事で大丈夫なのか、もしかしたら事故に巻き込まれたんじゃないかと訊き返すと、昔から癇癪を起こすと行方をくらます癖があるので心配ないと言うが...
「俺が、刀をよく折ったり刃こぼれさせるから..嫌になってしまったんでしょうか?だとしたら、何て謝罪したらいいか、申し訳ありません」
畳につく勢いで頭を下げると、彼は首を横に振る。
「それは違う。折れる鈍 を作るあの子が悪いのや」
突如ビリビリと空気が震える感覚に炭治郎は息を飲んだ。場合によっては別の者を刀鍛冶にする可能性もあると言うので、深く落ちこむ。
鉄珍様はこう言うけれど、やはり自分の刀の扱いが不十分なせいで彼が咎められる事に責任を感じてしまう。
「まぁ、君がそこまで気負う必要はない。ゆっくり温泉にでも浸かって、英気を養うことの方が先決や」
「はい、ありがとうございます。あ、それと日向子姉...、竈門日向子がこの里にいると思うのですが、どこにいるかわかりますか?」
「あぁ、あの子なら今はこの里にはおらん。」
ここにいない?
「それはどういう...」
意味がよくわからずそう聞き返すと、彼女は陽光山へ向かったと言う。
何故今そこに行く必要があったのか?それは、彼女自身の探究の為であるらしかった。
陽光山の頂きには、かつてヒノカミ様が祀られていたという神社があり、その役割をその昔星詠みの巫女が担っていたという事実を聞かされた。
炭治郎自身も初めて耳にした事であった。
ー日の呼吸、そして巫一族との因果関係をー
「あの子が巫一族の末裔であるが故 や。故郷も本当の親も知らず、ある日いきなり運命を課せられて、自分自身の起源を知りたがっとる。不憫 な子や。
でも、今は君があの子の家族と聞いた」
側でどうか支えてやったってな?
彼はそう炭治郎にお願いをしたのだった。
ーーーーー
〜229【炭治郎と恋柱】〜
炭治郎はてくてくと温泉に続く道を歩いていた。頭の中は、先程鉄珍様に言われた日向子姉さんの事。
彼女はきっと、俺が思っている以上に日の呼吸の事も巫一族の事も知りたがっていたんだ。
それらを解明する事で、自分のルーツを確かめたかったに違いない。
自分という存在を形作る遺伝子が、古代よりどう作られてきたのか。
そりゃそうだ...藤の花邸の時もそうだった。
彼女からした少し寂しそうな匂いを思い出し、炭治郎はぐっと眉を寄せた。
「俺が...側で支えてあげないと」
彼女の心が折れてしまわないように、俺よりもずっと日向子姉さんの方が辛いに決まってるんだから。
それなのに、滅多に弱音を吐かず周囲に笑顔を向けるのだから、本当に健気な人だ。
俺が言えた義理じゃないけど、そんなに頑張らなくてもいいのに...
もっと..彼女に頼られる存在になりたい
「あ!炭治郎くんだ!炭治郎くーーんっ!」
「!」
前方を見ると甘露寺さんがパタパタと駆け下りて来るのが見えた。
まろびでそうな乳房に気付き、内心ドキッとしながら慌てて指摘する。
そんなパニックを起こしてたから気付かなかった。
彼女の拳にびきりと青筋が立っている事に
ヒュン
軽く空を切ると共に眼前に迫った拳をすんでのところで炭治郎は避けた。
「っひ!」
ガンッ!と勢いよく地面に彼女の拳が突き当たると、その周囲が陥没しその威力が凄まじいものであったのを物語る。
出会い頭に突然何をするんだこの人はっ...
さぁっと顔を青くしながら、恐る恐る彼女に呼びかけた。すると蜜璃はゆっくり体制を戻して炭治郎に向き直る。
「炭治郎君、あなた日向子ちゃんの事本気で好きなの?!」
「っ?!」
思い掛けずそんな事を言われて、ぶわりと顔が熱くなる。
意図が全く読めず即答出来ないでいると、ずいっと顔を近づけなおも真剣な眼差しを向けてきた。
「どうなの、答えて?」
「っす、好きです!!!本気で!!!」
真っ赤になりながら促されるままにそう大声で告白すれば、蜜璃は満足気に口角を上げた。
「それならいいわ!ごめんなさいね突然殴ろうとしちゃって、体がついね?」
申し訳なさそうに手を合わせてペコペコしていたかと思えば、急にそういえば聞いてよーと泣き出す彼女を見て、炭治郎は目が点になる思いだった。
あれ?
なんで甘露寺さんは俺が日向子姉さんの事を好きだと知ってたんだろう。
もしかして、結構周囲にバレている?...
ーーーーー
「ありがとうございます。知らなかった事もありました。この神社はそんな神聖な場所だったのですね。」
日向子は祠の方へと歩いていった。
「何をするつもりだ?」
「この岩戸を、開けてみようかと思いまして」
「無理だ。俺の先祖もありとあらゆる手を使って開けようと試みたらしいが、結果は皆同...」
鋼鐵塚は最後まで言い切る事なく不自然に言葉を切った。
信じられないという風に目を見開く。
それは、いとも簡単に日向子が岩の扉を開け放ったからだ。
「っ!」
驚いたのは開けた張本人でもある日向子も同様だった。多少力を込めたものの、特別呼吸を使ったわけでもない。
材質は硬い岩であるのにも、まるで立て付けの悪い雨戸を引く程度の重さしか感じられなかった。
「信じられん..。もう何百年も閉ざされていたんだぞ。」
目を瞬かせながらその光景を見ていた鋼鐵塚は、ふと日向子の日輪刀に目を止める。
「おい、日輪刀を抜け!早く!」
「え?!」
言われるがままに柄に手を伸ばし刀を抜き取ると、銀白色の日輪刀が煌々と発光しており、熱を帯びていた。まるでこの祠と共鳴するかのように、その存在を示していた。
この現象は一体?
「俺は夢でも見ているようだ...これで確信した。ついに、星が覚醒したんだ。日の呼吸が復活を遂げた。やはり竈門炭治郎の刀は...」
彼はうっとりとした表情を浮かべ日向子の日輪刀に手を添える。
何が何だかわからなかったが、これが、彼等刀鍛冶の一族の積年の願いだったのだろうか。
「竈門炭治郎の刀は黒色だったろう、俺は願っていた。いつかその黒が美しい赫色に輝く日を、そして日向子、お前の刀が銀白色で七色に輝く日もな。
お前は間違いなくヒノカミを宿した巫女の力を受け継いでいる。この岩戸を開け放ったのがその証拠となる。」
ー日の呼吸の復活ー
それは鉄珍様も仰っていた。
何だかとても、神聖な気持ちにさせられるようだ。何か、大きく事態が動いていくような予感がする。
日向子はなおも輝きを放つ己の日輪刀を見つめた。
「俺は炭治郎の刀を打つ。あいつはまだまだ呼吸に
心底殺意が沸いた事もあった。
けどな..どんなにぼろ糞言われても、決まって俺に頭を下げる。また打って欲しいとな。炭治郎が日の呼吸の使い手であろうがなかろうが関係ない。俺は」
ーあいつに生きて欲しいから、最高の刀を打ってやりたいのさー
鋼鐵塚はそう笑って言った。
ーーーーー
〜227【禁断症状】〜
「んー悔しい、やっぱりなかなか体力戻らないなぁ」
1日でも早く任務復帰出来るように今までの遅れを取り戻そうとするも、思うように行かず炭治郎は歯噛みする。
つい昨日から伊之助も任務に出た。自分も時間を浪費してはいられない。
日向子姉さんからは音沙汰も無いが、日輪刀について何かわかっただろうか?
心配だ。
ー日輪刀...ー
「そう言えば、俺が眠っている間に刀届いてない?」
自分の刀の事をすっかり忘れており、なほにそう問う。すると彼女はぎくりと冷や汗を垂らし、助け舟を求めるように
「...鋼鐵塚さんからお手紙は届いています。ご覧になります?」
「え...」
良からぬ内容の手紙だろうというのは、彼女達の反応を見れば明らかだった。
炭治郎は恐る恐る差し出された文を開くと、そこには呪いのような言葉がひたすらに書き連ねられていた。
まずい
そう直感的に思う。このままだと最悪刀を一生打ってもらえないなんて事になってしまうかもしれない。
それは、困ってしまう。
「今回は刃こぼれだけだったんだけどなぁ..。でも前に折ってしまってるし、うーん..」
どうしたものかと唸っていると、きよがこう提案してくれた。
「里に行ってみてはいかがですか?直接会って話してみた方が良いかと思います」
「里って、刀鍛冶の里?!行っていいの?」
ご存知だったんですか?と聞かれたが、つい先日、日向子姉さんが里長からの招待で向かった場所だから勿論よく覚えている。
一応お館様に許可を得た方がいいとのことだが、特に立ち入り自体を規制されているわけでは無いという。
てっきり、向こうから呼ばれない限りは足を踏み入れられない土地だとばかり思っていた。
でも、良かった。
ちょうど日向子姉さんがいる所だし、炭治郎としても願ったり叶ったりだ...
信じられない事に、あの夜からまだ1週間程度しか経っていないというのにもう彼女に会いたくて仕方ない。
顔が見たいし、声が聴きたくてたまらない、確実に禁断症状が出始めている。
我ながら堪え性が無い事に、炭治郎はひっそりとため息を吐いた。
ー翌日ー
里への道中は、完全なる守秘義務のもと案内された。
ようやく辿り着いた場所は、硫黄や鉄の匂いが立ち込めており、いかにも職人の里といったような所だった。凄い....
「ありがとうございました!!」
炭治郎は案内役の隠に丁寧に礼を言うと、里長の館へと足を向けた。
ーーーーー
〜228【里長の切なる願い】〜
「君が竈門炭治郎君やな。噂をすれば...いらっしゃいゆっくりしたってな?」
突然やって来た炭治郎を無我にすることなく、やけに上機嫌に話す里長の鉄珍様。炭治郎は丁寧にこう尋ねた。
「あの、鋼鐵塚さんを探しているのですが、どちらに居られますか?俺の刀鍛冶なんですが、日輪刀の修復をお願いしているんです。」
そう問うと、彼は申し訳なさそうにううむと唸った。
「蛍なんやけどな、今行方不明でワシらも探してるから堪忍してなぁ」
っ!
まさか、本人が行方不明になっているとは思わなかった。悠長な事で大丈夫なのか、もしかしたら事故に巻き込まれたんじゃないかと訊き返すと、昔から癇癪を起こすと行方をくらます癖があるので心配ないと言うが...
「俺が、刀をよく折ったり刃こぼれさせるから..嫌になってしまったんでしょうか?だとしたら、何て謝罪したらいいか、申し訳ありません」
畳につく勢いで頭を下げると、彼は首を横に振る。
「それは違う。折れる
突如ビリビリと空気が震える感覚に炭治郎は息を飲んだ。場合によっては別の者を刀鍛冶にする可能性もあると言うので、深く落ちこむ。
鉄珍様はこう言うけれど、やはり自分の刀の扱いが不十分なせいで彼が咎められる事に責任を感じてしまう。
「まぁ、君がそこまで気負う必要はない。ゆっくり温泉にでも浸かって、英気を養うことの方が先決や」
「はい、ありがとうございます。あ、それと日向子姉...、竈門日向子がこの里にいると思うのですが、どこにいるかわかりますか?」
「あぁ、あの子なら今はこの里にはおらん。」
ここにいない?
「それはどういう...」
意味がよくわからずそう聞き返すと、彼女は陽光山へ向かったと言う。
何故今そこに行く必要があったのか?それは、彼女自身の探究の為であるらしかった。
陽光山の頂きには、かつてヒノカミ様が祀られていたという神社があり、その役割をその昔星詠みの巫女が担っていたという事実を聞かされた。
炭治郎自身も初めて耳にした事であった。
ー日の呼吸、そして巫一族との因果関係をー
「あの子が巫一族の末裔であるが
でも、今は君があの子の家族と聞いた」
側でどうか支えてやったってな?
彼はそう炭治郎にお願いをしたのだった。
ーーーーー
〜229【炭治郎と恋柱】〜
炭治郎はてくてくと温泉に続く道を歩いていた。頭の中は、先程鉄珍様に言われた日向子姉さんの事。
彼女はきっと、俺が思っている以上に日の呼吸の事も巫一族の事も知りたがっていたんだ。
それらを解明する事で、自分のルーツを確かめたかったに違いない。
自分という存在を形作る遺伝子が、古代よりどう作られてきたのか。
そりゃそうだ...藤の花邸の時もそうだった。
彼女からした少し寂しそうな匂いを思い出し、炭治郎はぐっと眉を寄せた。
「俺が...側で支えてあげないと」
彼女の心が折れてしまわないように、俺よりもずっと日向子姉さんの方が辛いに決まってるんだから。
それなのに、滅多に弱音を吐かず周囲に笑顔を向けるのだから、本当に健気な人だ。
俺が言えた義理じゃないけど、そんなに頑張らなくてもいいのに...
もっと..彼女に頼られる存在になりたい
「あ!炭治郎くんだ!炭治郎くーーんっ!」
「!」
前方を見ると甘露寺さんがパタパタと駆け下りて来るのが見えた。
まろびでそうな乳房に気付き、内心ドキッとしながら慌てて指摘する。
そんなパニックを起こしてたから気付かなかった。
彼女の拳にびきりと青筋が立っている事に
ヒュン
軽く空を切ると共に眼前に迫った拳をすんでのところで炭治郎は避けた。
「っひ!」
ガンッ!と勢いよく地面に彼女の拳が突き当たると、その周囲が陥没しその威力が凄まじいものであったのを物語る。
出会い頭に突然何をするんだこの人はっ...
さぁっと顔を青くしながら、恐る恐る彼女に呼びかけた。すると蜜璃はゆっくり体制を戻して炭治郎に向き直る。
「炭治郎君、あなた日向子ちゃんの事本気で好きなの?!」
「っ?!」
思い掛けずそんな事を言われて、ぶわりと顔が熱くなる。
意図が全く読めず即答出来ないでいると、ずいっと顔を近づけなおも真剣な眼差しを向けてきた。
「どうなの、答えて?」
「っす、好きです!!!本気で!!!」
真っ赤になりながら促されるままにそう大声で告白すれば、蜜璃は満足気に口角を上げた。
「それならいいわ!ごめんなさいね突然殴ろうとしちゃって、体がついね?」
申し訳なさそうに手を合わせてペコペコしていたかと思えば、急にそういえば聞いてよーと泣き出す彼女を見て、炭治郎は目が点になる思いだった。
あれ?
なんで甘露寺さんは俺が日向子姉さんの事を好きだと知ってたんだろう。
もしかして、結構周囲にバレている?...
ーーーーー