◆第捌章 渇求
貴女のお名前を教えてください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〜206【告白】〜
「俺は...物心ついた時から日向子姉さんの事、ただの家族だなんて思ってない。世話焼きで、可愛らしくて綺麗で、家族思いの優しい貴女を、ずっと1人の女性として見てたから。
血が繋がってない事は、昔父さんから教えられたけれど、俺は匂いで気付いてた。
日向子姉さんからは..俺達竈門家の人間とは全然違う匂いがしてたから。
家族だけどそうじゃない、だから何もおかしい事はない。そう思ったらもう...自分じゃ止められなかった」
炭治郎は、今までひた隠しにして来た想いを、一つ一つ彼女に曝け出していった。
それを一切軽蔑 せず、否定もせずに聞いてくれていた。
弟だから、姉だから
歳下だから、歳上だから
そんな物は関係ないという風に一切を振り払ってくれている。
炭治郎の全てを受け入れてくれているのだ。
全てを伝えたい、わかって欲しいと切に願っていたら言葉が止まらなかった。
日向子姉さんは、黙って炭治郎の言葉に耳を傾けてくれていた。
あぁ...優しい
「頭では分かってたんだ。この気持ちは早いところ蓋をして置かないと、じゃないと..取り返しのつかないところまで膨れ上がってしまって、貴女を困らせるって。
でも、出来なかった。
日向子姉さんと再会して、たくさんの思い出や記憶が蘇って来て...俺の中の記憶と変わらない、寧ろ更に魅力的になった貴女を見て、あぁ、やっぱり俺は...日向子姉さんの事が好きなんだって」
真剣な眼差しで彼女を見据える。
思えば初めて、面と向かって好きだと伝えた気がした。
心の中では、何度も何度も繰り返し発していた言葉だったのに、いざ言うのにはずっと躊躇 いがあったから。
でももういいんだよな。我慢しなくていいんだ。例え今、この瞬間だけと言われたとしても
構わない。俺は...
「日向子姉さん」
「....うん」
「竈門炭治郎は、日向子さんの事を心からお慕いしています」
ー1人の男として、目の前の彼女に愛を告げたいー
言った..
あぁ、早鐘のように鳴り響く心臓が痛い。多分顔は真っ赤になってる。
一世一代の告白が、こんな雰囲気もへったくれもない状態なのは残念だけど。
それでも、今連ねた言葉の数々に一切の嘘も曇りもない。
日向子姉さんは瞬き一つせず平然とした表情をしていたが、直後一気に顔を茹でタコのように真っ赤にして口をパクパクさせていた。
「...っ!」
「ぇっ...」
ちょっと待て
そんな可愛い反応するなんて聞いてないんだが
ーーーーー
〜207【戻りゆく天秤】〜
「..ぁ、あれ?...」
日向子は予想外の自分の反応に戸惑う。
こんな筈ではなかったのだけど、彼の想いに対して歳上らしく包容してあげようと思ってただけなのに。
彼があまりにも真っ直ぐで、揺るがぬ強い想いをぶつけてくるものだから、さすがの日向子も普通でいられなかった。
炭治郎の顔を直視出来ない。
どうしよう
どうしよう...
早く何か気の効いた事を言わないと。
じゃないと..
「ねぇ、日向子姉さん。そんな顔されたら俺、
...期待してしまうよ」
ぱしっと腕を掴み彼はそう言う。
切なそうに眉を寄せて、真っ直ぐに日向子を見つめていた。
「いいんだよな。もう我慢しなくて、この気持ちを制御しなくても、いいんだよな?
だって...俺達は家族だけど、血は繋がってないんだから、だから..貴女もそんな顔をするんだ。今、俺の事を異性として意識してくれてる」
あぁ..
情けないけどその通りだ。
昔と今は、違う。お互い成長した。
見て見ぬフリが出来たのは数年前までの話だ。
可愛い弟から、凛々しい弟へ
そして逞 しい、男の子へと
彼はいつの間にか目まぐるしい変化を遂げていた。
傾ききっていた天秤 が、少しずつだが平行に近付いていっている事を、
この時の日向子は知る由もない...
炭治郎はと言うと、再び鎌首をもたげる欲に襲われ戸惑っていた。
彼女から発せられる匂いを嗅ぐと、一気に持っていかれそうになる。
今の彼女の匂いは、炭治郎にとってはさながら媚薬 のようだった。
これは恐らく、物理的に解放されないと治らない熱だと思う。現に己の体の兆候はとっくに気付いていた。
そりゃ2ヶ月近くも昏睡状態だったのだから当然と言えば当然だけれど...
先程彼女を襲いそうになったのも、このせいかと炭治郎は内心頭を抱えた。
「...わかった。これからはちゃんと、貴方の事1人の男の子として尊重するから。だから...
さっきみたいにいきなり手を出されるのは驚いてしまうので、やめて欲しい..です」
炭治郎はぎくりと肩を揺らす。
ほのかに頬を染めて、困ったような顔で視線を逸らす日向子姉さん。
炭治郎の気配を察知したのか否かはわからないが、完全に釘を刺された形となった。
これでは、意地でも手を出すわけにはいかなくなった...
「さ..さっきは本当に申し訳なかった。怖がらせてしまってすまない。姉さんの嫌がる事はもうしないから」
もう..しないから
しちゃいけないから
ーーーーー
〜208【必然か偶然か】〜
「...ただ...」
「?」
これだけは言わせてくれとばかりに、炭治郎は手の平にぐっと力を込めた。
「申し訳ないけど...気持ちを伝えたからそれで満足ですって程、俺聞き分けは良くないかもしれない。日向子姉さんは勘違いしているようだけど俺にも人並みに、欲はあるよ。だからいつか、貴女を振り向かせるから」
そう
好きな人に振り向いて欲しいと思うのは当たり前。あわよくば、俺と同じ想いを抱いて欲しい。
そうすれば、彼女にとっての【嫌な事】じゃなくなる筈だ。そんな日が来るのを、俺はもうずっと心待ちにしている。
だからこれからは
「本気出すから、俺」
「...っ」
あぁ、理性的であると自負しておきながら、
実際の俺という人間は、こんなにも動物的な一面が強かったのか。
こと彼女に関して言えば、我慢しきれるという保証がないのは明白だった。
ーだからもう待つだけはやめたー
その動機は単純
【すぐにでも日向子姉さんが欲しい】
「と..」
「?」
「とりあえずお盆片付けてくるね!!」
ガタリと立ち上がり目の前の盆を引っ掴む彼女を見て、炭治郎は唖然とした。
そのまま後ろに振り返り去っていこうとするので、慌てて呼び止める。
一瞬無言の気まずい空気が流れたが、口を開いたのは日向子姉さんからだった。
「実を言うとね...色恋沙汰は今はやめようって思ってた。禰豆子を人間に戻して、無惨を倒し鬼を滅して、いつか普通の女性として安心して生きられる世の中になってから、そういうのは考えようって。
じゃないと辛いだけだろうなーって。これ以上大切な人を作ってしまったら、私は..こういうご時世、いつ何時何があるかわからないから」
彼女は振り向く。
どこか憂いを帯びた眼差しで、炭治郎にこう告げた。
「でも..炭治郎はそんなに待てないんだよね?これは否定じゃない、確認なんだ」
炭治郎はしばらく考えた後、こくりと頷いた。
そっかと呟いた日向子姉さんは、どこか納得したように目を閉じる。
「じゃあ、私は炭治郎の気持ちを受け止める努力をしないとね」
炭治郎
言ったら怒られるだろうけど、貴方は私以外の女の子を好いた方がきっといいと思う。
姉でも鬼殺隊でもなく、普通の可愛らしい街娘と恋に落ちたほうが【その方が】人並みの幸せを掴めるよ。
炭治郎にはそれが向いてる。
でも、貴方が私でいいと言うのなら。
それはきっと、何か意味があるのかもしれない。
ーーーーー
〜209【とんでもない炭治郎だ】〜
彼女はお休みなさいと言って部屋を去っていった。
残された炭治郎は、長い溜息を吐きながらボスリと枕に頭をつける。
これは、彼女と進展出来たという事で良いのだろうか?長年抱え込んできた狂おしい程の恋情は、ちゃんと伝えられた。
後は、もっと
もっと俺の事を意識してくれれば...
妙な高揚感が炭治郎を包み込む。
諦めが悪いのは俺の専売特許だ。
真っ直ぐで嘘のない気持ちだから、何度だって言える。いくらだって伝えよう。
そして、俺の事をたくさん考えて欲しい
俺は拗 らせ過ぎたのかな。
日向子姉さんを象 るものなら、どんなものでも欲しいと思ってしまう。
彼女の瞳には常に自分を映していたい
思考は俺でいっぱいにしたい
一喜一憂、一挙一動全て俺が独り占めしたい
善逸が聞けば、さすがに狂ってると言うかもしれないけれど
「仕方ないんだ...仕方ない」
だって俺にだって止められないんだよ。
炭治郎は都合よく解釈させ、残り香さえも逃すまいと肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
彼女の日溜りのような笑顔を頭に思い浮かべる。
日向子姉さん....許してください
ー翌日ー
日向子は目覚めると、今更ながら昨夜の出来事は夢だったんじゃないかと思い返す。ふと時計を見ると既に巳の刻である事に気づき慌てて身支度を整えた。
「あぁ日向子さん!おはようございます。申し訳無いのですがこれを炭治郎さんの部屋へお願いします。今手が離せなくて」
アオイさんから渡されたのは上下の寝着だった。
「今朝方、炭治郎さんに湯浴みを許可したのですが、うっかり代えの服をお渡しするのを忘れてまして」
「あ、わかりました」
そう言うことならと快く引き受ける。
けれど、昨夜の出来事が紛れもなく現実である、と言うのは彼の部屋を訪れて、改めて思い知らされたのだ。
コンコンとノックをすると中からどうぞと言う声が聞こえたのを確認し扉を開ける。
彼は日向子の姿を見るやいなやあからさまに目を見開いたけど、すぐににこやかな笑みを浮かべて彼女を招き入れた。
「これ、代えの服だってアオイさんから預かったよ」
「あぁ、ありがとう」
彼は服を手に取ると、ぷつりとボタンを外し始めた。
「ちょ...着替えるなら言ってよ!私出てくから」
慌てて制する日向子を見て、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべこう呟くのだった。
「へぇ、意識してくれるんだな?」
その言葉を聞いて日向子はくらりと目眩がした。
ーーーーー
「俺は...物心ついた時から日向子姉さんの事、ただの家族だなんて思ってない。世話焼きで、可愛らしくて綺麗で、家族思いの優しい貴女を、ずっと1人の女性として見てたから。
血が繋がってない事は、昔父さんから教えられたけれど、俺は匂いで気付いてた。
日向子姉さんからは..俺達竈門家の人間とは全然違う匂いがしてたから。
家族だけどそうじゃない、だから何もおかしい事はない。そう思ったらもう...自分じゃ止められなかった」
炭治郎は、今までひた隠しにして来た想いを、一つ一つ彼女に曝け出していった。
それを一切
弟だから、姉だから
歳下だから、歳上だから
そんな物は関係ないという風に一切を振り払ってくれている。
炭治郎の全てを受け入れてくれているのだ。
全てを伝えたい、わかって欲しいと切に願っていたら言葉が止まらなかった。
日向子姉さんは、黙って炭治郎の言葉に耳を傾けてくれていた。
あぁ...優しい
「頭では分かってたんだ。この気持ちは早いところ蓋をして置かないと、じゃないと..取り返しのつかないところまで膨れ上がってしまって、貴女を困らせるって。
でも、出来なかった。
日向子姉さんと再会して、たくさんの思い出や記憶が蘇って来て...俺の中の記憶と変わらない、寧ろ更に魅力的になった貴女を見て、あぁ、やっぱり俺は...日向子姉さんの事が好きなんだって」
真剣な眼差しで彼女を見据える。
思えば初めて、面と向かって好きだと伝えた気がした。
心の中では、何度も何度も繰り返し発していた言葉だったのに、いざ言うのにはずっと
でももういいんだよな。我慢しなくていいんだ。例え今、この瞬間だけと言われたとしても
構わない。俺は...
「日向子姉さん」
「....うん」
「竈門炭治郎は、日向子さんの事を心からお慕いしています」
ー1人の男として、目の前の彼女に愛を告げたいー
言った..
あぁ、早鐘のように鳴り響く心臓が痛い。多分顔は真っ赤になってる。
一世一代の告白が、こんな雰囲気もへったくれもない状態なのは残念だけど。
それでも、今連ねた言葉の数々に一切の嘘も曇りもない。
日向子姉さんは瞬き一つせず平然とした表情をしていたが、直後一気に顔を茹でタコのように真っ赤にして口をパクパクさせていた。
「...っ!」
「ぇっ...」
ちょっと待て
そんな可愛い反応するなんて聞いてないんだが
ーーーーー
〜207【戻りゆく天秤】〜
「..ぁ、あれ?...」
日向子は予想外の自分の反応に戸惑う。
こんな筈ではなかったのだけど、彼の想いに対して歳上らしく包容してあげようと思ってただけなのに。
彼があまりにも真っ直ぐで、揺るがぬ強い想いをぶつけてくるものだから、さすがの日向子も普通でいられなかった。
炭治郎の顔を直視出来ない。
どうしよう
どうしよう...
早く何か気の効いた事を言わないと。
じゃないと..
「ねぇ、日向子姉さん。そんな顔されたら俺、
...期待してしまうよ」
ぱしっと腕を掴み彼はそう言う。
切なそうに眉を寄せて、真っ直ぐに日向子を見つめていた。
「いいんだよな。もう我慢しなくて、この気持ちを制御しなくても、いいんだよな?
だって...俺達は家族だけど、血は繋がってないんだから、だから..貴女もそんな顔をするんだ。今、俺の事を異性として意識してくれてる」
あぁ..
情けないけどその通りだ。
昔と今は、違う。お互い成長した。
見て見ぬフリが出来たのは数年前までの話だ。
可愛い弟から、凛々しい弟へ
そして
彼はいつの間にか目まぐるしい変化を遂げていた。
傾ききっていた
この時の日向子は知る由もない...
炭治郎はと言うと、再び鎌首をもたげる欲に襲われ戸惑っていた。
彼女から発せられる匂いを嗅ぐと、一気に持っていかれそうになる。
今の彼女の匂いは、炭治郎にとってはさながら
これは恐らく、物理的に解放されないと治らない熱だと思う。現に己の体の兆候はとっくに気付いていた。
そりゃ2ヶ月近くも昏睡状態だったのだから当然と言えば当然だけれど...
先程彼女を襲いそうになったのも、このせいかと炭治郎は内心頭を抱えた。
「...わかった。これからはちゃんと、貴方の事1人の男の子として尊重するから。だから...
さっきみたいにいきなり手を出されるのは驚いてしまうので、やめて欲しい..です」
炭治郎はぎくりと肩を揺らす。
ほのかに頬を染めて、困ったような顔で視線を逸らす日向子姉さん。
炭治郎の気配を察知したのか否かはわからないが、完全に釘を刺された形となった。
これでは、意地でも手を出すわけにはいかなくなった...
「さ..さっきは本当に申し訳なかった。怖がらせてしまってすまない。姉さんの嫌がる事はもうしないから」
もう..しないから
しちゃいけないから
ーーーーー
〜208【必然か偶然か】〜
「...ただ...」
「?」
これだけは言わせてくれとばかりに、炭治郎は手の平にぐっと力を込めた。
「申し訳ないけど...気持ちを伝えたからそれで満足ですって程、俺聞き分けは良くないかもしれない。日向子姉さんは勘違いしているようだけど俺にも人並みに、欲はあるよ。だからいつか、貴女を振り向かせるから」
そう
好きな人に振り向いて欲しいと思うのは当たり前。あわよくば、俺と同じ想いを抱いて欲しい。
そうすれば、彼女にとっての【嫌な事】じゃなくなる筈だ。そんな日が来るのを、俺はもうずっと心待ちにしている。
だからこれからは
「本気出すから、俺」
「...っ」
あぁ、理性的であると自負しておきながら、
実際の俺という人間は、こんなにも動物的な一面が強かったのか。
こと彼女に関して言えば、我慢しきれるという保証がないのは明白だった。
ーだからもう待つだけはやめたー
その動機は単純
【すぐにでも日向子姉さんが欲しい】
「と..」
「?」
「とりあえずお盆片付けてくるね!!」
ガタリと立ち上がり目の前の盆を引っ掴む彼女を見て、炭治郎は唖然とした。
そのまま後ろに振り返り去っていこうとするので、慌てて呼び止める。
一瞬無言の気まずい空気が流れたが、口を開いたのは日向子姉さんからだった。
「実を言うとね...色恋沙汰は今はやめようって思ってた。禰豆子を人間に戻して、無惨を倒し鬼を滅して、いつか普通の女性として安心して生きられる世の中になってから、そういうのは考えようって。
じゃないと辛いだけだろうなーって。これ以上大切な人を作ってしまったら、私は..こういうご時世、いつ何時何があるかわからないから」
彼女は振り向く。
どこか憂いを帯びた眼差しで、炭治郎にこう告げた。
「でも..炭治郎はそんなに待てないんだよね?これは否定じゃない、確認なんだ」
炭治郎はしばらく考えた後、こくりと頷いた。
そっかと呟いた日向子姉さんは、どこか納得したように目を閉じる。
「じゃあ、私は炭治郎の気持ちを受け止める努力をしないとね」
炭治郎
言ったら怒られるだろうけど、貴方は私以外の女の子を好いた方がきっといいと思う。
姉でも鬼殺隊でもなく、普通の可愛らしい街娘と恋に落ちたほうが【その方が】人並みの幸せを掴めるよ。
炭治郎にはそれが向いてる。
でも、貴方が私でいいと言うのなら。
それはきっと、何か意味があるのかもしれない。
ーーーーー
〜209【とんでもない炭治郎だ】〜
彼女はお休みなさいと言って部屋を去っていった。
残された炭治郎は、長い溜息を吐きながらボスリと枕に頭をつける。
これは、彼女と進展出来たという事で良いのだろうか?長年抱え込んできた狂おしい程の恋情は、ちゃんと伝えられた。
後は、もっと
もっと俺の事を意識してくれれば...
妙な高揚感が炭治郎を包み込む。
諦めが悪いのは俺の専売特許だ。
真っ直ぐで嘘のない気持ちだから、何度だって言える。いくらだって伝えよう。
そして、俺の事をたくさん考えて欲しい
俺は
日向子姉さんを
彼女の瞳には常に自分を映していたい
思考は俺でいっぱいにしたい
一喜一憂、一挙一動全て俺が独り占めしたい
善逸が聞けば、さすがに狂ってると言うかもしれないけれど
「仕方ないんだ...仕方ない」
だって俺にだって止められないんだよ。
炭治郎は都合よく解釈させ、残り香さえも逃すまいと肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
彼女の日溜りのような笑顔を頭に思い浮かべる。
日向子姉さん....許してください
ー翌日ー
日向子は目覚めると、今更ながら昨夜の出来事は夢だったんじゃないかと思い返す。ふと時計を見ると既に巳の刻である事に気づき慌てて身支度を整えた。
「あぁ日向子さん!おはようございます。申し訳無いのですがこれを炭治郎さんの部屋へお願いします。今手が離せなくて」
アオイさんから渡されたのは上下の寝着だった。
「今朝方、炭治郎さんに湯浴みを許可したのですが、うっかり代えの服をお渡しするのを忘れてまして」
「あ、わかりました」
そう言うことならと快く引き受ける。
けれど、昨夜の出来事が紛れもなく現実である、と言うのは彼の部屋を訪れて、改めて思い知らされたのだ。
コンコンとノックをすると中からどうぞと言う声が聞こえたのを確認し扉を開ける。
彼は日向子の姿を見るやいなやあからさまに目を見開いたけど、すぐににこやかな笑みを浮かべて彼女を招き入れた。
「これ、代えの服だってアオイさんから預かったよ」
「あぁ、ありがとう」
彼は服を手に取ると、ぷつりとボタンを外し始めた。
「ちょ...着替えるなら言ってよ!私出てくから」
慌てて制する日向子を見て、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべこう呟くのだった。
「へぇ、意識してくれるんだな?」
その言葉を聞いて日向子はくらりと目眩がした。
ーーーーー