◆第漆章 香しき空へ消えぬ星屑
貴女のお名前を教えてください
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〜168【鬼化の後退】〜
ー大切な物を守る為の力....私は全て失った
けれど貴女なら、きっと...ー
「っぅ..!」
あぁ、またあの声だ。
貴女は一体誰なの?何故私を知っているの?
【私は、貴女を知ってるの?】
禰豆子は息を上げながら長屋に足を踏み入れた。
ただ憎き敵を抹殺する為、ターゲットは絞られていた筈だったが
「ひっ!」
青白い顔で佇む女性が視界に入ると、紅い血の色を見た瞬間ドクリと体の奥底がざわつき、突如猛烈な飢えと喉の渇きが禰豆子を襲う。
それは飢えに飢えた獰猛 な獣さながらで、禰豆子は唸り声を上げながらその女性へと飛びかからんとした。
まさに間一髪のところで、炭治郎は禰豆子の牙に鞘を噛ませ彼女の体を押さえ込む。
「禰豆子っ!駄目だっ、辛抱するんだ禰豆子っ!」
ガァァァと獣のような声をあげる禰豆子。鬼になったばかりの時より酷い飢餓状態で、炭治郎の声など響いていない。
それどころか肉親の彼にすら怪我を負わせてしまう。とてつもない力を押さえ込むのに精一杯だ。
どうしたら、いいんだっ
眠らせるにも、尚も暴れて牙をガチガチ鞘に立てている状態では、沈める方法が思いつかない。
「っ日向子姉さんー!!」
炭治郎は縋る思いで日向子の名前を叫んだ。
下の兄弟が多かった竈門家は、よく母の代わりに日向子姉さんが面倒を見ていた。
彼女は、下の子達がぐずったり夜泣きをした時、あやすのがとても上手だったんだ。
日向子姉さんがおんぶして少し揺らせばたちまち赤ん坊は泣き止んだし、子守唄を歌えばすぐに眠りについた。
そんな様子を物心ついた時から側で見てきた炭治郎は、母親とはまた違うが、似通った尊敬の意を抱いていた。
お願いだ、禰豆子を寝かせてくれ...
その時、視界に揺れた白練色の髪の毛が炭治郎の頬を掠めた。
後ろから彼女は禰豆子を引き寄せる。そして、信じられない行動に出たのだ。
「日向子姉さん..やめっ、危ないから!!」
尚も激しく暴れ狂う禰豆子の口元に、自分の左腕を噛ませたのだ。鞘を噛ませたその上からだから、幸い引きちぎられそうな程ではないも、禰豆子の八重歯はぐさりと彼女の腕に刺さり、抉れる部分は抉られ、血を舐め取っている。
禰豆子にとって、鬼になってから初めての人肉。
大丈夫なのか?...
泣きそうな炭治郎を他所に、日向子は冷静な眼差しでこの行為を行なっていた。
すると、ある変化に気付いた。
「ぇ..鬼化が...後退している?」
ーーーーー
〜169【子守唄】〜
禰豆子の体を取り巻いていた枝葉模様が薄くなった。
まだグルルルと唸ってはいるものの、動きは炭治郎が制御出来るほどまで鈍っている。
日向子姉さんの血が..そうさせたのか?
鬼の禰豆子にとって、本来なら彼女の巫の血は悪影響のはずだったが、逆に互いに良い影響を与え合うものであると珠世さんは言っていた。
今回の、禰豆子の鬼化後退にもなんらかの効果があるのだろうか...
あぁ、それにしても..彼女の左腕は、見るに耐えない傷だ。ところによっては真皮の損傷も見受けられる。
止めようとした時、禰豆子が戻ってくるなら腕の一本や二本構わないと彼女は迷わず言った。
炭治郎はすぐ側にいる彼女の顔を見つめる。
那田蜘蛛山の時の、あの姿だ。
こんな時に何を考えてるんだろう俺は
彼女の、虹色のように輝く瞳が美しくて...
バキィィ!!
「っ!」
ガラガラと瓦礫が崩れた先からは、重度の火傷を負った帯鬼がこちらへと歩み寄ってくる。
焦げた匂い、禰豆子の返り血が爆ぜたものだ。
「よくもまぁやってくれたわね。物凄い癪に触るわ...ちょうどいい、3人まとめて居るうちに殺しておかないと」
まずい
すぐまた攻撃が来るぞ
どう構えるべきか考えていた時、いつの間にか現れた宇随さんがずいと額を寄せてきた。
「おい、これは竈門禰豆子じゃねーか。そっちの白いのは日向子か?...とにかく今の妹は戦闘にはいらねぇ。危険だ。抑えられてはいるみてぇだが、一度鬼化が進んだな。」
「あんた、柱ね?よかった、手間が省けたわ」
あぁん?と鬱陶しそうに宇随は墜姫を見やる。
「お前上弦の鬼じゃねぇだろ?弱すぎなんだよ。俺が探ってたのはお前じゃねぇ。」
それだけ言うと、彼は炭治郎達に禰豆子を眠らせ置いてこいと指示する。
墜姫は面倒臭そうにあしらわれた事に、びきりと青筋を立てたが、突如視界が斜めりそして気付く。
自分の頚が切られている事に
....
先程よりも随分大人しくなった禰豆子だったが、やはりこのまま放置しておけばまだ他の人間を襲いかねない。眠らせるしかないのだがその気配もない。
「...子守唄を歌ってあげよう。禰豆子が、昔大好きだった歌。」
日向子姉さんはそう言って禰豆子の背中を撫でながら穏やかな声色であやし始めた。炭治郎も一緒になって歌う。
すると、禰豆子は突然子供のようにしゃくり泣き始めた。
「大丈夫だよ。姉ちゃんと兄ちゃんが側に居るからね、安心してお眠り。禰豆子」
ーーーーー
〜170【鬼殺隊の切り札】〜
二人の声色を聞いていた禰豆子は、啜 り泣きながら徐々に縮んでいく。
やがてスゥスゥと規則正しい寝息を立てながら眠り込んだ。
その様子を見て、ほっと胸を撫で下ろす炭治郎と日向子。
「ありがとう日向子姉さん...俺1人じゃ、どうしたらいいかわからなかった」
「私は何も..でも良かった。あのまま禰豆子が戻らなくなっちゃうんじゃないかって怖くて。無我夢中だったから」
炭治郎は悲愴 な面持ちで、禰豆子に噛まれた左腕を見つめる。
側に転がり落ちていた竹筒を拾い、その紐で彼女の傷口をギュッと縛り上げた。
痛みに思わず声を上げる(名前)に、炭治郎は申し訳なさそうな目を向け、きゅっと唇を結ぶ。
「ごめん、辛抱してくれ日向子姉さん。この傷じゃ、出血が酷くて駄目だ。」
「..っありがとう。炭治郎」
鞘を噛ませていたからまだ良かったが、もしそれがなかったら、多分彼女の腕はズタズタに噛みちぎられていただろう。
考えただけでも恐ろしさに震える光景だ。
俺にとっては、勿論禰豆子も大事だが、日向子姉さんの事は本当に【特別】なんだ。
「日向子姉さん。今度こんな無茶したら、気絶させてでも止めるからな」
「えー...怖いなぁ」
あははと笑って受け流す彼女はわかっていないのだ。炭治郎が一体どれだけ寿命の縮む思いでいるかなど...
その時
バギャンと凄まじい音がして何かが屋根を突き破った。夜空に舞うそれは、何とも月夜に似つかわしくない物騒なもの。
ー鎌?ー
さっきの帯鬼とは武器が異なる。新手の鬼であれば、とんでもなく不利な状況だ。
宇随さんは大丈夫だろうか、早く加勢に行かなければ...
「おぉーい!俺が来たぞコラぁぁぁ!!頼りにしろ俺をーーって...誰だお前っ!!!」
後ろを振り向くと伊之助と善逸がこちらに向かって駆けてきた。しかし伊之助が髪の毛と瞳の色が変化した日向子を見て警戒し日輪刀を構える。
「待て伊之助!彼女は日向子姉さんだ。訳あってこの髪色だけど...とにかく時間がない。宇随さんに加勢してくれ!俺達は禰豆子を箱に戻してくるから」
「私は伊之助達と先に行く。この姿なら、宇随様に加勢できる」
「っ駄目だ、姉さんも俺と
「壱ノ型を使う」
炭治郎はわずかに瞳を揺らした。
壱ノ型...星の呼吸
ー【ありとあらゆる呼吸の増強効果】を秘めてると言われる呼吸の型ー
炭治郎はまだかつて、彼女の壱ノ型を見た事はない。
「時間がないのでしょう?迷っている暇はないよ」
ーーーーー
〜171【上弦の陸の正体】〜
「ちょっと待ちなさいよどこ行く気?!よくも私の頚を斬ったわね!ただじゃおかないから!」
ギャンギャンと犬が吠えるように喚き散らす墜姫に、宇随は呆れた様子で一瞥 し溜息を吐く。
「もうお前に用はねぇよ。地味に死にな」
それでもなお、私は強いだの数字を貰ったんだのと騒ぎ、ついには大声を上げて泣き始めてしまう始末だった。宇随は呆気に取られたが、徐々にある違和感を感じ警戒を強める。
ーこいつ、いつまで喋ってんだ?頚を切ったのに体が崩れねぇぞ...ー
彼女はヤケ糞気味で、ダンダンと激しく畳を叩きこう叫んだ。
「頚切られたぁぁ!頚切られちゃったお兄ちゃぁぁぁぁぁん!」
すると、墜姫の背中から何かがゆらりと這い出てきた。低く呻 るような声。
明らかに彼女とは別の人格の鬼だった。いや、そんなことよりも..
未だかつて宇随が感じた事のない程に、ビリビリと肌が痺れる威圧感をこの鬼からは感じる。本能が警報を鳴らす。
こいつはやばいと
頭で考える前に攻撃を放つ。しかし、ターゲットの鬼は忽然 と目の前から消えた。
...と思えば、気配を背後から感じる。
この一瞬で、やつは妹鬼を連れ宇随の攻撃を、息をするようにいとも簡単に避けたのだ。
反射速度が比じゃない
「顔は火傷かこれなぁ、顔は大事にしろな?せっかく可愛い顔に生まれたんだからなぁ」
ひぐひぐと嗚咽 を漏らしながら泣く妹を、あやすように呟く彼に、容赦なく宇随は背後より第二撃をかましにかかった。
妓夫太郎は邪魔するなと言わんばかりに憎しみの篭った目を向ける。
瞬間、バラバラと額当ての石が弾け飛び、血が滴り落ちる。
「へぇ..殺す気で斬ったけどなぁ。いいなぁお前」
まるで毒が刃から滲み出ているようなおどろおどろしい双鎌を構えて、彼は舐めつけるように宇随を見上げた。
間違いない...こいつこそが
ー【俺が探っていた鬼の正体】ー
さぁて
今夜はとんでもなく派手な祭りになりそうだと、宇随は武者震いしたのだった。
「つまり、今のきな子はやる奴だって事だな?よし!それなら話は早いぜ俺様についてこい!」
「うん!」
炭治郎が止める間も無くあれよという内に彼等は宇随さんの戦っている長屋へと走っていった。
後から善逸も続いていくが、寝ている状態にもかかわらず彼は炭治郎とすれ違いざまにこう耳打ちする。
「日向子さんは任せろ、禰豆子ちゃんを頼んだ。」
ーーーーー
ー大切な物を守る為の力....私は全て失った
けれど貴女なら、きっと...ー
「っぅ..!」
あぁ、またあの声だ。
貴女は一体誰なの?何故私を知っているの?
【私は、貴女を知ってるの?】
禰豆子は息を上げながら長屋に足を踏み入れた。
ただ憎き敵を抹殺する為、ターゲットは絞られていた筈だったが
「ひっ!」
青白い顔で佇む女性が視界に入ると、紅い血の色を見た瞬間ドクリと体の奥底がざわつき、突如猛烈な飢えと喉の渇きが禰豆子を襲う。
それは飢えに飢えた
まさに間一髪のところで、炭治郎は禰豆子の牙に鞘を噛ませ彼女の体を押さえ込む。
「禰豆子っ!駄目だっ、辛抱するんだ禰豆子っ!」
ガァァァと獣のような声をあげる禰豆子。鬼になったばかりの時より酷い飢餓状態で、炭治郎の声など響いていない。
それどころか肉親の彼にすら怪我を負わせてしまう。とてつもない力を押さえ込むのに精一杯だ。
どうしたら、いいんだっ
眠らせるにも、尚も暴れて牙をガチガチ鞘に立てている状態では、沈める方法が思いつかない。
「っ日向子姉さんー!!」
炭治郎は縋る思いで日向子の名前を叫んだ。
下の兄弟が多かった竈門家は、よく母の代わりに日向子姉さんが面倒を見ていた。
彼女は、下の子達がぐずったり夜泣きをした時、あやすのがとても上手だったんだ。
日向子姉さんがおんぶして少し揺らせばたちまち赤ん坊は泣き止んだし、子守唄を歌えばすぐに眠りについた。
そんな様子を物心ついた時から側で見てきた炭治郎は、母親とはまた違うが、似通った尊敬の意を抱いていた。
お願いだ、禰豆子を寝かせてくれ...
その時、視界に揺れた白練色の髪の毛が炭治郎の頬を掠めた。
後ろから彼女は禰豆子を引き寄せる。そして、信じられない行動に出たのだ。
「日向子姉さん..やめっ、危ないから!!」
尚も激しく暴れ狂う禰豆子の口元に、自分の左腕を噛ませたのだ。鞘を噛ませたその上からだから、幸い引きちぎられそうな程ではないも、禰豆子の八重歯はぐさりと彼女の腕に刺さり、抉れる部分は抉られ、血を舐め取っている。
禰豆子にとって、鬼になってから初めての人肉。
大丈夫なのか?...
泣きそうな炭治郎を他所に、日向子は冷静な眼差しでこの行為を行なっていた。
すると、ある変化に気付いた。
「ぇ..鬼化が...後退している?」
ーーーーー
〜169【子守唄】〜
禰豆子の体を取り巻いていた枝葉模様が薄くなった。
まだグルルルと唸ってはいるものの、動きは炭治郎が制御出来るほどまで鈍っている。
日向子姉さんの血が..そうさせたのか?
鬼の禰豆子にとって、本来なら彼女の巫の血は悪影響のはずだったが、逆に互いに良い影響を与え合うものであると珠世さんは言っていた。
今回の、禰豆子の鬼化後退にもなんらかの効果があるのだろうか...
あぁ、それにしても..彼女の左腕は、見るに耐えない傷だ。ところによっては真皮の損傷も見受けられる。
止めようとした時、禰豆子が戻ってくるなら腕の一本や二本構わないと彼女は迷わず言った。
炭治郎はすぐ側にいる彼女の顔を見つめる。
那田蜘蛛山の時の、あの姿だ。
こんな時に何を考えてるんだろう俺は
彼女の、虹色のように輝く瞳が美しくて...
バキィィ!!
「っ!」
ガラガラと瓦礫が崩れた先からは、重度の火傷を負った帯鬼がこちらへと歩み寄ってくる。
焦げた匂い、禰豆子の返り血が爆ぜたものだ。
「よくもまぁやってくれたわね。物凄い癪に触るわ...ちょうどいい、3人まとめて居るうちに殺しておかないと」
まずい
すぐまた攻撃が来るぞ
どう構えるべきか考えていた時、いつの間にか現れた宇随さんがずいと額を寄せてきた。
「おい、これは竈門禰豆子じゃねーか。そっちの白いのは日向子か?...とにかく今の妹は戦闘にはいらねぇ。危険だ。抑えられてはいるみてぇだが、一度鬼化が進んだな。」
「あんた、柱ね?よかった、手間が省けたわ」
あぁん?と鬱陶しそうに宇随は墜姫を見やる。
「お前上弦の鬼じゃねぇだろ?弱すぎなんだよ。俺が探ってたのはお前じゃねぇ。」
それだけ言うと、彼は炭治郎達に禰豆子を眠らせ置いてこいと指示する。
墜姫は面倒臭そうにあしらわれた事に、びきりと青筋を立てたが、突如視界が斜めりそして気付く。
自分の頚が切られている事に
....
先程よりも随分大人しくなった禰豆子だったが、やはりこのまま放置しておけばまだ他の人間を襲いかねない。眠らせるしかないのだがその気配もない。
「...子守唄を歌ってあげよう。禰豆子が、昔大好きだった歌。」
日向子姉さんはそう言って禰豆子の背中を撫でながら穏やかな声色であやし始めた。炭治郎も一緒になって歌う。
すると、禰豆子は突然子供のようにしゃくり泣き始めた。
「大丈夫だよ。姉ちゃんと兄ちゃんが側に居るからね、安心してお眠り。禰豆子」
ーーーーー
〜170【鬼殺隊の切り札】〜
二人の声色を聞いていた禰豆子は、
やがてスゥスゥと規則正しい寝息を立てながら眠り込んだ。
その様子を見て、ほっと胸を撫で下ろす炭治郎と日向子。
「ありがとう日向子姉さん...俺1人じゃ、どうしたらいいかわからなかった」
「私は何も..でも良かった。あのまま禰豆子が戻らなくなっちゃうんじゃないかって怖くて。無我夢中だったから」
炭治郎は
側に転がり落ちていた竹筒を拾い、その紐で彼女の傷口をギュッと縛り上げた。
痛みに思わず声を上げる(名前)に、炭治郎は申し訳なさそうな目を向け、きゅっと唇を結ぶ。
「ごめん、辛抱してくれ日向子姉さん。この傷じゃ、出血が酷くて駄目だ。」
「..っありがとう。炭治郎」
鞘を噛ませていたからまだ良かったが、もしそれがなかったら、多分彼女の腕はズタズタに噛みちぎられていただろう。
考えただけでも恐ろしさに震える光景だ。
俺にとっては、勿論禰豆子も大事だが、日向子姉さんの事は本当に【特別】なんだ。
「日向子姉さん。今度こんな無茶したら、気絶させてでも止めるからな」
「えー...怖いなぁ」
あははと笑って受け流す彼女はわかっていないのだ。炭治郎が一体どれだけ寿命の縮む思いでいるかなど...
その時
バギャンと凄まじい音がして何かが屋根を突き破った。夜空に舞うそれは、何とも月夜に似つかわしくない物騒なもの。
ー鎌?ー
さっきの帯鬼とは武器が異なる。新手の鬼であれば、とんでもなく不利な状況だ。
宇随さんは大丈夫だろうか、早く加勢に行かなければ...
「おぉーい!俺が来たぞコラぁぁぁ!!頼りにしろ俺をーーって...誰だお前っ!!!」
後ろを振り向くと伊之助と善逸がこちらに向かって駆けてきた。しかし伊之助が髪の毛と瞳の色が変化した日向子を見て警戒し日輪刀を構える。
「待て伊之助!彼女は日向子姉さんだ。訳あってこの髪色だけど...とにかく時間がない。宇随さんに加勢してくれ!俺達は禰豆子を箱に戻してくるから」
「私は伊之助達と先に行く。この姿なら、宇随様に加勢できる」
「っ駄目だ、姉さんも俺と
「壱ノ型を使う」
炭治郎はわずかに瞳を揺らした。
壱ノ型...星の呼吸
ー【ありとあらゆる呼吸の増強効果】を秘めてると言われる呼吸の型ー
炭治郎はまだかつて、彼女の壱ノ型を見た事はない。
「時間がないのでしょう?迷っている暇はないよ」
ーーーーー
〜171【上弦の陸の正体】〜
「ちょっと待ちなさいよどこ行く気?!よくも私の頚を斬ったわね!ただじゃおかないから!」
ギャンギャンと犬が吠えるように喚き散らす墜姫に、宇随は呆れた様子で
「もうお前に用はねぇよ。地味に死にな」
それでもなお、私は強いだの数字を貰ったんだのと騒ぎ、ついには大声を上げて泣き始めてしまう始末だった。宇随は呆気に取られたが、徐々にある違和感を感じ警戒を強める。
ーこいつ、いつまで喋ってんだ?頚を切ったのに体が崩れねぇぞ...ー
彼女はヤケ糞気味で、ダンダンと激しく畳を叩きこう叫んだ。
「頚切られたぁぁ!頚切られちゃったお兄ちゃぁぁぁぁぁん!」
すると、墜姫の背中から何かがゆらりと這い出てきた。低く
明らかに彼女とは別の人格の鬼だった。いや、そんなことよりも..
未だかつて宇随が感じた事のない程に、ビリビリと肌が痺れる威圧感をこの鬼からは感じる。本能が警報を鳴らす。
こいつはやばいと
頭で考える前に攻撃を放つ。しかし、ターゲットの鬼は
...と思えば、気配を背後から感じる。
この一瞬で、やつは妹鬼を連れ宇随の攻撃を、息をするようにいとも簡単に避けたのだ。
反射速度が比じゃない
「顔は火傷かこれなぁ、顔は大事にしろな?せっかく可愛い顔に生まれたんだからなぁ」
ひぐひぐと
妓夫太郎は邪魔するなと言わんばかりに憎しみの篭った目を向ける。
瞬間、バラバラと額当ての石が弾け飛び、血が滴り落ちる。
「へぇ..殺す気で斬ったけどなぁ。いいなぁお前」
まるで毒が刃から滲み出ているようなおどろおどろしい双鎌を構えて、彼は舐めつけるように宇随を見上げた。
間違いない...こいつこそが
ー【俺が探っていた鬼の正体】ー
さぁて
今夜はとんでもなく派手な祭りになりそうだと、宇随は武者震いしたのだった。
「つまり、今のきな子はやる奴だって事だな?よし!それなら話は早いぜ俺様についてこい!」
「うん!」
炭治郎が止める間も無くあれよという内に彼等は宇随さんの戦っている長屋へと走っていった。
後から善逸も続いていくが、寝ている状態にもかかわらず彼は炭治郎とすれ違いざまにこう耳打ちする。
「日向子さんは任せろ、禰豆子ちゃんを頼んだ。」
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