◆第漆章 香しき空へ消えぬ星屑
貴女のお名前を教えてください
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〜144【非人情な男】〜
ー善逸sideー
煉獄さんの家から戻ってきた炭治郎と日向子さんは、しのぶさんからこってりと絞られてそれはそれは可哀想なくらいだった。
収穫があったのかと思いきや、残念ながらこれといった情報も掴めないままだったようで、俺も何も言えなかった。
ただ、今俺達が出来ることは限られている。
煉獄さんの死を受け止めて、前へ進む。
それは、言わずとも互いに分かり合えていて、そりゃまだ単独任務は怖いししんどいけど、俺も足踏みしていられないなと思うのだ。
あ、でも禰豆子ちゃんと日向子さんの髪を一房ずつお守り代わりに持ち歩いているのは炭治郎には内密だ。
一度了承得る為にせがんだら物凄いどん引かれたので、日向子さんにお願いした。
それで善逸君が頑張れるならと一肌脱いでくれたのだ。
今は炭治郎と日向子さんがそれぞれ単独任務に出ている。もうそろそろ帰ってくるかなと思っていたその時だった。
「おいっ!竈門日向子はいるか!」
荒々しく敷地内に入ってきた、派手な額当てを身につけた筋肉隆々の男は、日向子さんの名前を叫んでいる。
無礼にも程がある奴だと思い伊之助と揃って表の様子を見ていた。
対応に出たのはアオイちゃんだ。
「宇随様、日向子さんは今任務に出ていますから不在です。柱のあなたが一体彼女に何用でしょうか?」
ーまじか..あいつ柱なのー
その事実に衝撃を受けた。伊之助はなんだあいつも強いのかと興奮して前に出て行こうとするので、全力で止めた。
さすがに事を荒げるのはまずいと本能が告げる。炭治郎も彼女もここにいないのは幸いしたが..
「ふーん、なら仕方ねぇか」
彼はそう言って、わらわらと集まってきていたなほちゃん達を見定めるように見つめる。
その後、信じられない行動を取ったのだ。
「え、きゃぁぁっ!!」
太い腕で軽々とアオイちゃんとなほちゃんをかっさらう様に持ち上げた。
「女の隊員が入用なんだ。こいつらには俺について来てもらう。本当なら竈門日向子が適任だと思ったんだが、居ねぇなら仕方ねぇしな。
そっちの継子のお前は胡蝶の許可がいるから厄介だ。」
そう言ってカナヲちゃんを指差した。あまりにも無情にそう言うものだから、どれだけこの人は人でなしなんだろうと
その時
「彼女達を離してください!」
門前には、このタイミングで帰還してしまった日向子さんが怒った様に仁王立ちで睨み付けていた。
その姿をみて、彼はニヤリと笑う。
「探したぞお前さん」
ーーーーー
〜145【心と銅貨と憧れ】〜
カナヲは目の前の光景を見て、ぐるぐると色んな思いが飛び交った。
ーアオイ達を無理やり連れて行こうとする柱、阻止しないとー
ー任務を受け合った、行かなくちゃー
ー先に師範にこの件を報告しないと駄目ー
ー竈門日向子が帰還した、彼女に状況を説明する、でもこの人も任務帰りで疲れてるかも..ー
そんな事を考えて頭が回らないうちに、宇随と日向子が話を展開させる。
「これはどう言う事でしょうか、宇随様。ご説明願います」
「任務だ。ちょうど女の隊員が必要なんだ。日向子、お前の事を探していた。
詳しい事は後で説明するから俺についてこい。」
「っ...わかりました。私がついていきますから、だから彼女達は解放してくださ
ひしっ
カナヲは宇随の隊服を握り引き留めた。その様子に、元来派手好きの宇随は苛々した様子でカナヲに対しキレ始める。
「なんだお前、何とか言えっての!地味な奴だなぁっ!」
日向子も加勢してアオイ達を引き寄せようと力を込めた。さすがに力では敵わないが、この狼藉 は許せない。
カナヲは隣で必死になってくれている日向子を見て、こんな状況にもかかわらず不思議な気持ちに満たされた。
人の為に、自分の心のままにこの人は今、行動を起こしている....言葉で訴えている。
目の色が、違う。
地味と言われる私とは全然違う。
ー私も、こうなりたい、と...ー
「女の子に何してるんだ!!手を離せっ!!」
任務から帰った炭治郎が、状況を目の当たりにして青筋を立てながらそう叫ぶ。
そこに日向子の姿を見つけると、より一層怒気を露わにした。
炭治郎のその様子に、宇随は片耳をほじる動作を見せた。
「くそ、ややこしいのが帰って来ちまったなぁ。お前が何と言おうとこいつと日向子は連れて行く。俺は上官だ、異議は認められない。
片方はあまり役立ちそうにないが..こんなんでも一応隊員だしな」
そう言う宇随に、炭治郎はキレ気味に反論する。
「俺はお前を柱とは認めない!日向子姉さんを連れて行くなら俺も行く!アオイちゃんは離せっ!人には人の事情があるんだから無意識につつき回さないでいただきたい!」
彼等と、それにそーだそーだと賛同する少女達を見て宇随は哀れんだ表情を浮かべる。
黙って見ていられない善逸と伊之助が両脇に参じた。
一歩も引かんとする強き眼差しを多方面から受け、ついに宇随は..
「あっそぅ。じゃあ一緒に来ていただこうかね」
彼はしらっとそう口にしたのだった。
ーーーーー
〜146【潜入役は誰だ】〜
炭治郎は、やけにあっさり引き下がる宇随に戸惑う。
どんな任務内容かわからないけれど、
無理やりか弱い女の子達を拐ってまで仕事をさせようという辺りを見ると、この男は絶対に信用ならない。
だから、日向子姉さんを連れて行くというなら、自らも一緒に行く事を条件に出した。
多分、彼女の事だからアオイ達を連れて行くと言われれば己の身を差し出す事は目に見えていたから。
幸い、善逸や伊之助も共に来てくれるという事で合計5人の大所帯で任務につくことになる。
それにしても...
「柱のこの人が自ら潜入しなきゃいけないような任務ってさ、やっぱりそれ相応だよな。」
善逸が額に汗を垂らしてそう炭治郎に耳打ちする。
確かにそうだ。
しかも、女性隊士が入用になる任務...
チラッと日向子姉さんの顔を見ると、やっぱり腑に落ちないという表情で、闊歩する宇随の背中を見つめている。
「で?どこ行くんだおっさん」
伊之助が背中で退屈そうに腕を回しながらそう問いかけると、彼はこう答えた。
「日本一色と欲に塗れたド派手な場所」
その言葉を聞いて、善逸はキュピンと閃いたようだ。
心なしか、匂いが色めきだったような
「鬼の棲む【遊郭】だよ」
ー遊郭ー
馴染みのない言葉に炭治郎は首を捻る。
どうやら伊之助も同様で頭の上にはてなマークを浮かべていた。
とかく物知りの善逸は興奮したように鼻息を荒くしており、日向子姉さんは...僅かに頬を染めて不安の匂いを発していた。
善逸に説明を仰ぐと、彼は興奮気味にこう答える。
「お前ら知らないの?本当に?遊郭ってのはさ....要は色街だよ。男が金をはたいて女と【遊ぶ】そういう大人の街だ」
所々表現を濁す善逸に、何となく言わんとしている事はわかった。
だから通りで...彼女の反応にも納得がいった。だから宇随さんは女性隊士を
待て
それは駄目じゃないか?
「花街までの道のりに、藤の花の家があるからそこで準備を整える。いいな?」
「ちょっといいですか!」
ズバッと手を上げて異議を申し立てる炭治郎。律儀に宇随は発言を許可した。
「男の俺達はともかく、まさか日向子姉さんにその役回りをさせる、なんて事を考えてないですよね?」
それを聞くと彼は、だからこいつにはバレたくなかったんだよなぁと頭を掻く。
「そのまさかだ。あぁ、勘違いすんじゃねぇぞ。日向子だけじゃない、自ら志願してきたお前らも人事じゃねぇからな。言ったろ?【俺に逆らうなよ】って」
ーーーーー
〜147【木の葉を隠すなら】〜
それは、どういうことなんだ?いや、そんな事よりも...
「嫁入り前の日向子姉さんにそんな事させられませんっ、そのつもりなら、今すぐ彼女は任務から外してください!」
「だぁから俺に逆らうなよって言ってんだろうが!こいつはそこそこ見目麗しい面してやがるし、従順そうだから情報搾取にはうってつけなんだよ」
宇随はそう言って日向子の肩をぐいと引き寄せた。
その様子を見てカンカンな炭治郎を善逸達が宥めるが、こうなった彼は誰にも止められないだろう。
ただ1人を除いては..
「炭治郎、私が情報搾取に適任なら、この任務やるよ。大丈夫!節操の無い客はとことん蹴散らすから」
妙にやる気の日向子を見て、ぐぬぬと己を抑え込む炭治郎。
蹴散らしたら意味ねぇよと文句垂れる宇随はさて置き...遊女として潜入する時点で、ある程度の警戒が必要だ。
炭治郎は深呼吸して、荒んだ心を落ち着かせた。
「わかりました...。その代わり、彼女には俺がついていてもいいですか?」
「え!お前女装する気?!」
こくりと本気で頷く炭治郎に、善逸は嘘だろと素っ頓狂な声をあげるが、お前もすんだぞと宇随にさらりと言われて絶望した眼差しを向ける。
「まじかよ...」
ようやく藤の花の家に到着した一行は、すぐさま作戦を練る事になった。
だがしかし...
「遊郭に潜入したら、まず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから」
宇随のその言葉を聞いて憤慨したのは善逸だ。
「ふざけないでいただきたい!あんたの個人的な嫁探しに部下を使うとはっ!」
どうやら善逸は、遊郭に彼の嫁候補を探させられるだけと思っているようだが、言っちゃ悪いが、いくらなんでもそんな茶番に果たして部下を使うだろうかと日向子は疑問に思う。
話を聞くと、やはり既に潜入している者がおり、定期連絡が途絶えたが為に宇随さん自らが出向くのだという。
何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いと踏んだようだ。
最も、その潜入者が彼のお嫁さんであり、3人もいた事実に関しては驚きを隠せなかったが...
気を取り直したように宇随が細かく状況を説明する。
「怪しい店は既に3つに絞ってある。お前達には、【内側】に潜入してもらう」
「ご入用の物をお持ちいたしました」
そこにタイミングよく家主が何やら奇妙な道具箱を持ってきた。
宇随がそれを受け取り中身をゴソゴソとひっくり返すと、女性物の着物や化粧道具が雪崩れてきた。
「よし、一丁やってやるか!」
ーーーーー
ー善逸sideー
煉獄さんの家から戻ってきた炭治郎と日向子さんは、しのぶさんからこってりと絞られてそれはそれは可哀想なくらいだった。
収穫があったのかと思いきや、残念ながらこれといった情報も掴めないままだったようで、俺も何も言えなかった。
ただ、今俺達が出来ることは限られている。
煉獄さんの死を受け止めて、前へ進む。
それは、言わずとも互いに分かり合えていて、そりゃまだ単独任務は怖いししんどいけど、俺も足踏みしていられないなと思うのだ。
あ、でも禰豆子ちゃんと日向子さんの髪を一房ずつお守り代わりに持ち歩いているのは炭治郎には内密だ。
一度了承得る為にせがんだら物凄いどん引かれたので、日向子さんにお願いした。
それで善逸君が頑張れるならと一肌脱いでくれたのだ。
今は炭治郎と日向子さんがそれぞれ単独任務に出ている。もうそろそろ帰ってくるかなと思っていたその時だった。
「おいっ!竈門日向子はいるか!」
荒々しく敷地内に入ってきた、派手な額当てを身につけた筋肉隆々の男は、日向子さんの名前を叫んでいる。
無礼にも程がある奴だと思い伊之助と揃って表の様子を見ていた。
対応に出たのはアオイちゃんだ。
「宇随様、日向子さんは今任務に出ていますから不在です。柱のあなたが一体彼女に何用でしょうか?」
ーまじか..あいつ柱なのー
その事実に衝撃を受けた。伊之助はなんだあいつも強いのかと興奮して前に出て行こうとするので、全力で止めた。
さすがに事を荒げるのはまずいと本能が告げる。炭治郎も彼女もここにいないのは幸いしたが..
「ふーん、なら仕方ねぇか」
彼はそう言って、わらわらと集まってきていたなほちゃん達を見定めるように見つめる。
その後、信じられない行動を取ったのだ。
「え、きゃぁぁっ!!」
太い腕で軽々とアオイちゃんとなほちゃんをかっさらう様に持ち上げた。
「女の隊員が入用なんだ。こいつらには俺について来てもらう。本当なら竈門日向子が適任だと思ったんだが、居ねぇなら仕方ねぇしな。
そっちの継子のお前は胡蝶の許可がいるから厄介だ。」
そう言ってカナヲちゃんを指差した。あまりにも無情にそう言うものだから、どれだけこの人は人でなしなんだろうと
その時
「彼女達を離してください!」
門前には、このタイミングで帰還してしまった日向子さんが怒った様に仁王立ちで睨み付けていた。
その姿をみて、彼はニヤリと笑う。
「探したぞお前さん」
ーーーーー
〜145【心と銅貨と憧れ】〜
カナヲは目の前の光景を見て、ぐるぐると色んな思いが飛び交った。
ーアオイ達を無理やり連れて行こうとする柱、阻止しないとー
ー任務を受け合った、行かなくちゃー
ー先に師範にこの件を報告しないと駄目ー
ー竈門日向子が帰還した、彼女に状況を説明する、でもこの人も任務帰りで疲れてるかも..ー
そんな事を考えて頭が回らないうちに、宇随と日向子が話を展開させる。
「これはどう言う事でしょうか、宇随様。ご説明願います」
「任務だ。ちょうど女の隊員が必要なんだ。日向子、お前の事を探していた。
詳しい事は後で説明するから俺についてこい。」
「っ...わかりました。私がついていきますから、だから彼女達は解放してくださ
ひしっ
カナヲは宇随の隊服を握り引き留めた。その様子に、元来派手好きの宇随は苛々した様子でカナヲに対しキレ始める。
「なんだお前、何とか言えっての!地味な奴だなぁっ!」
日向子も加勢してアオイ達を引き寄せようと力を込めた。さすがに力では敵わないが、この
カナヲは隣で必死になってくれている日向子を見て、こんな状況にもかかわらず不思議な気持ちに満たされた。
人の為に、自分の心のままにこの人は今、行動を起こしている....言葉で訴えている。
目の色が、違う。
地味と言われる私とは全然違う。
ー私も、こうなりたい、と...ー
「女の子に何してるんだ!!手を離せっ!!」
任務から帰った炭治郎が、状況を目の当たりにして青筋を立てながらそう叫ぶ。
そこに日向子の姿を見つけると、より一層怒気を露わにした。
炭治郎のその様子に、宇随は片耳をほじる動作を見せた。
「くそ、ややこしいのが帰って来ちまったなぁ。お前が何と言おうとこいつと日向子は連れて行く。俺は上官だ、異議は認められない。
片方はあまり役立ちそうにないが..こんなんでも一応隊員だしな」
そう言う宇随に、炭治郎はキレ気味に反論する。
「俺はお前を柱とは認めない!日向子姉さんを連れて行くなら俺も行く!アオイちゃんは離せっ!人には人の事情があるんだから無意識につつき回さないでいただきたい!」
彼等と、それにそーだそーだと賛同する少女達を見て宇随は哀れんだ表情を浮かべる。
黙って見ていられない善逸と伊之助が両脇に参じた。
一歩も引かんとする強き眼差しを多方面から受け、ついに宇随は..
「あっそぅ。じゃあ一緒に来ていただこうかね」
彼はしらっとそう口にしたのだった。
ーーーーー
〜146【潜入役は誰だ】〜
炭治郎は、やけにあっさり引き下がる宇随に戸惑う。
どんな任務内容かわからないけれど、
無理やりか弱い女の子達を拐ってまで仕事をさせようという辺りを見ると、この男は絶対に信用ならない。
だから、日向子姉さんを連れて行くというなら、自らも一緒に行く事を条件に出した。
多分、彼女の事だからアオイ達を連れて行くと言われれば己の身を差し出す事は目に見えていたから。
幸い、善逸や伊之助も共に来てくれるという事で合計5人の大所帯で任務につくことになる。
それにしても...
「柱のこの人が自ら潜入しなきゃいけないような任務ってさ、やっぱりそれ相応だよな。」
善逸が額に汗を垂らしてそう炭治郎に耳打ちする。
確かにそうだ。
しかも、女性隊士が入用になる任務...
チラッと日向子姉さんの顔を見ると、やっぱり腑に落ちないという表情で、闊歩する宇随の背中を見つめている。
「で?どこ行くんだおっさん」
伊之助が背中で退屈そうに腕を回しながらそう問いかけると、彼はこう答えた。
「日本一色と欲に塗れたド派手な場所」
その言葉を聞いて、善逸はキュピンと閃いたようだ。
心なしか、匂いが色めきだったような
「鬼の棲む【遊郭】だよ」
ー遊郭ー
馴染みのない言葉に炭治郎は首を捻る。
どうやら伊之助も同様で頭の上にはてなマークを浮かべていた。
とかく物知りの善逸は興奮したように鼻息を荒くしており、日向子姉さんは...僅かに頬を染めて不安の匂いを発していた。
善逸に説明を仰ぐと、彼は興奮気味にこう答える。
「お前ら知らないの?本当に?遊郭ってのはさ....要は色街だよ。男が金をはたいて女と【遊ぶ】そういう大人の街だ」
所々表現を濁す善逸に、何となく言わんとしている事はわかった。
だから通りで...彼女の反応にも納得がいった。だから宇随さんは女性隊士を
待て
それは駄目じゃないか?
「花街までの道のりに、藤の花の家があるからそこで準備を整える。いいな?」
「ちょっといいですか!」
ズバッと手を上げて異議を申し立てる炭治郎。律儀に宇随は発言を許可した。
「男の俺達はともかく、まさか日向子姉さんにその役回りをさせる、なんて事を考えてないですよね?」
それを聞くと彼は、だからこいつにはバレたくなかったんだよなぁと頭を掻く。
「そのまさかだ。あぁ、勘違いすんじゃねぇぞ。日向子だけじゃない、自ら志願してきたお前らも人事じゃねぇからな。言ったろ?【俺に逆らうなよ】って」
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〜147【木の葉を隠すなら】〜
それは、どういうことなんだ?いや、そんな事よりも...
「嫁入り前の日向子姉さんにそんな事させられませんっ、そのつもりなら、今すぐ彼女は任務から外してください!」
「だぁから俺に逆らうなよって言ってんだろうが!こいつはそこそこ見目麗しい面してやがるし、従順そうだから情報搾取にはうってつけなんだよ」
宇随はそう言って日向子の肩をぐいと引き寄せた。
その様子を見てカンカンな炭治郎を善逸達が宥めるが、こうなった彼は誰にも止められないだろう。
ただ1人を除いては..
「炭治郎、私が情報搾取に適任なら、この任務やるよ。大丈夫!節操の無い客はとことん蹴散らすから」
妙にやる気の日向子を見て、ぐぬぬと己を抑え込む炭治郎。
蹴散らしたら意味ねぇよと文句垂れる宇随はさて置き...遊女として潜入する時点で、ある程度の警戒が必要だ。
炭治郎は深呼吸して、荒んだ心を落ち着かせた。
「わかりました...。その代わり、彼女には俺がついていてもいいですか?」
「え!お前女装する気?!」
こくりと本気で頷く炭治郎に、善逸は嘘だろと素っ頓狂な声をあげるが、お前もすんだぞと宇随にさらりと言われて絶望した眼差しを向ける。
「まじかよ...」
ようやく藤の花の家に到着した一行は、すぐさま作戦を練る事になった。
だがしかし...
「遊郭に潜入したら、まず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから」
宇随のその言葉を聞いて憤慨したのは善逸だ。
「ふざけないでいただきたい!あんたの個人的な嫁探しに部下を使うとはっ!」
どうやら善逸は、遊郭に彼の嫁候補を探させられるだけと思っているようだが、言っちゃ悪いが、いくらなんでもそんな茶番に果たして部下を使うだろうかと日向子は疑問に思う。
話を聞くと、やはり既に潜入している者がおり、定期連絡が途絶えたが為に宇随さん自らが出向くのだという。
何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いと踏んだようだ。
最も、その潜入者が彼のお嫁さんであり、3人もいた事実に関しては驚きを隠せなかったが...
気を取り直したように宇随が細かく状況を説明する。
「怪しい店は既に3つに絞ってある。お前達には、【内側】に潜入してもらう」
「ご入用の物をお持ちいたしました」
そこにタイミングよく家主が何やら奇妙な道具箱を持ってきた。
宇随がそれを受け取り中身をゴソゴソとひっくり返すと、女性物の着物や化粧道具が雪崩れてきた。
「よし、一丁やってやるか!」
ーーーーー