◆第陸章 太陽の息吹
貴女のお名前を教えてください
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〜144【家族への憧れ】〜
「日向子姉さん...俺は、匂いに敏感だから。
すまない、分かってしまうんだけど。
何を思ってるのか、俺に話してくれないか?今寂しいのは、何でなんだ。」
彼女は一瞬驚いたようにこちらを見たが、やがて観念したようにゆっくりと心の内を曝け出し始めた。
「炭治郎には、嘘はつけないね。
ほんの、ほんのちょっぴりね...私の本当の親はどんな人だったのかなぁって、思った。まだ生きてるのかも死んでいるのかも、わからないけれどね。
勿論、竈門家に拾われたのはとっても幸せな事だと思っているけれど、血縁の絆って..少し憧れはあるかなぁ。」
彼女が溢した思いは、いたって当たり前の素直な感情だった。
血を分けた妹が今も生きている炭治郎には、多分分かってあげられない。
今までひた隠しにしていたのは、こういう思いを抱く事が炭治郎達に申し訳ないという気持ちがあったのだろう。話辛かったのだろう。
彼女は、そういう人だ。
胸が張り裂けそうだ
あぁ、どうにか
彼女の心の内を軽くしてあげたいのに
俺が...
「そっか。話してくれて..ありがとう。日向子姉さん。」
炭治郎はその場で座り方を正し、彼女に向き直る。
「姉さんの本当のご両親、俺が探すよ。今まで、気付かなくて申し訳なかった。きっと、この日本の何処かで生きてる。俺はそう信じてる。
それに..いつか日向子姉さんも、結婚して子を産めば..あなたの家族が出来るから。」
そう言えば、彼女はありがとうと微笑んで言った。
本音を言うならば
日向子姉さんを、どこの馬の骨ともわからない男に嫁がせる気など微塵もなく、
それどころか
いつか、自分こそが彼女を妻に迎えられたら
なんて、やましい想いを抱いてしまうのだから
救いようがない。
今のご時世で果たして婚姻が成り立つのかとか、日向子姉さんの気持ちを、現時点では完全に無視しているなとか、そもそもの問題はあるけれど、炭治郎の思いは、昔から変わらない。
そんな炭治郎の思いを知ってか知らずか、彼女はこう語る。
「炭治郎も、本当に心の底から、この人だと思った人と、一緒になれる事を願うよ。」
日向子姉さん
それは、どういう意味なんだ?
俺は、まだ希望を捨てないでいていいのか。
あなたを好きでいても...許されるという事なのか。
「そろそろ戻ろうか?あんまり外にいると、また体調拗らせてしまうから」
よっと立ち上がり踵を返そうとする後ろ姿を、炭治郎は呼び止めた。
ーーーーー
〜145【殺し文句】〜
「俺は..待ち続けていてもいいですか?」
こういう聞き方はずるいのかもしれない。
でも、紛れもなくこれは炭治郎の切なる願いであり、ある意味での譲歩であった。
いつかでも構わない。彼女の心が傾いてくれるまで。俺は長男だから...我慢出来る。耐えて見せる。
しばらくの沈黙の後、彼女は口を開いた。
その言葉は、炭治郎の心をいとも簡単に抉るような一言だったのだ。
「...私が諦めて欲しいとお願いすれば、あなたは諦めてくれるの?」
ー例えばー
そんな軽い気持ちで日向子は炭治郎にそう問うた。
未だに..それどころか、日を追うごとに炭治郎に対する自分の気持ちがどういうものなのか分からなくなっていった。
そんな最中でも、彼の気持ちは度々痛い程に伝わってくる。しかし、炭治郎自身もある意味一線を引いてくれているのだと思っていた。
だから、別におちょくるつもりでも試すわけでもなく、ただ純粋にそう聞いたのだが、後悔した。
炭治郎はうすら涙を浮かべて、悲しそうに日向子を見上げたのだ。
「..っ....炭治郎。ごめ、ごめん。そんなつもりは..」
泣かすつもりなど、なかった。
日向子がオロオロと狼狽ていると、彼は浴衣の袖で目元を拭うと、こう答えた。
「貴女が、貴女自信の心が、嫌だと言うなら..俺は、引き下がると思う。けど、本音でなければ俺は、諦めない。それくらい俺だって、本気です。貴女以外、考えられない。」
強い眼差しでそう言われれば、日向子も何も言えない。こんなにも真っ直ぐで強い想いを向けられてしまえば...
「炭治郎..。あんまり、そういうこと他の子に言わない方がいいよ。」
「日向子姉さん以外にこんな事言わない」
心外だと言うように眉を吊り上げきっぱりとそう告げる。そういう所だよ..とは言えず、込み上げる感情の行き場を失った。
「何で..何であなたは私をそこまで、わかんないよ」
何がきっかけだったのか。
炭治郎を特別扱いしてきた事もないし、こんなに慕われる意味がわからない。
半ばやけになりそう聞くと、彼は当然のようにこう答えた。
「全てです。貴女の全てに、どうしようもなく惹かれる。」
もう、駄目だ。
日向子はそう悟り、私はもう寝るからと押し付けるように言うと部屋へ戻って行った。
鳴り止まない鼓動に頭を抱える。
あんな殺し文句、どこで覚えてきたのやら。
明日から彼と普通に接せられるだろうか...
ーーーーー
〜146【帰還】〜
結局
昨夜はほとんど寝れずに朝を迎えた炭治郎は、
人知れず長い溜息を吐いた。
朝餉の時も、日向子姉さんは余所余所しくて
あまり炭治郎と顔を合わせようとはしてくれなかった。
けれど、前に避けられていた時とは少し違う。
彼女から香る匂いは【拒否】ではない。
湯呑みを受け渡す際に僅かに指が触れ合った時、あからさまにびくりとして何でもない風を装う、そんな様子を見て、炭治郎はむず痒い気持ちになる。
ー少しは、意識してくれているのかなー...
そう期待せずにはいられないのだ。
彼女から弟としてではなく、男として見られる事への歓びが、炭治郎の心を安定させる。
彼女はどうも押しに弱い性質があるようだ。
あまり困らせないようにというのは念頭においているけれども、少しずつでいい
日向子姉さんをその気にさせられたらいいのに...
なんて、贅沢な欲望だろうか。
世話になった若夫婦とその子供に丁寧に礼を言うと、2人は藤の花邸を後にした。
もう少しで蝶屋敷というところまで差し掛かった時、目の前の光景に炭治郎は絶望する。
見ると、どす黒いオーラを纏った鋼鐵塚さんが以前よりも刃物を増やして待ち構えていた。
そう言えば、炭治郎は刀を鬼に投げ刺した為、柄諸共失くしてしまったと聞いた。
「貴様ぁぁぁ!!!刀を失くすとはどういう料簡だぁぁぁ!!」
奇声をあげながら向かってくる彼から死に物狂いで逃げる炭治郎を見て、前にも目の当たりにした光景に乾いた笑いが漏れた。
「日向子さんっ!!」
「!善逸君..」
ひしと抱きついて来る彼は心配したよと泣きべそをかきながら顔をぐりぐり押しつけてきた。
宥めるように頭をよしよしと撫でると、ずびっと鼻を啜り日向子を仰ぎ見る。
「何もありませんでしたか?置き手紙は見ましたけど、一晩帰ってこないから...。
炭治郎は見ての通り日輪刀持ってなくて丸腰だし、禰豆子ちゃんも居ないし、全く...女の子を危険に晒すなんて、とんでもねぇ炭治郎だ」
「ちょっと予定外の事が起きてね、ごめんなさい心配かけて。ところで胡蝶様、怒ってらした?..」
恐る恐るそう尋ねると、善逸はこの世の終わりというような表情でがくがく震え始めた。
「はい、それはもう...。覚悟はしといた方がいいと思います。」
彼の様子を見て日向子も恐怖からつられるように身体が震え出す。
傷も癒えぬうちに抜け出した事に対して、相当おかんむりである事は予想していたが、案の定らしい。
ーーーーー
「日向子姉さん...俺は、匂いに敏感だから。
すまない、分かってしまうんだけど。
何を思ってるのか、俺に話してくれないか?今寂しいのは、何でなんだ。」
彼女は一瞬驚いたようにこちらを見たが、やがて観念したようにゆっくりと心の内を曝け出し始めた。
「炭治郎には、嘘はつけないね。
ほんの、ほんのちょっぴりね...私の本当の親はどんな人だったのかなぁって、思った。まだ生きてるのかも死んでいるのかも、わからないけれどね。
勿論、竈門家に拾われたのはとっても幸せな事だと思っているけれど、血縁の絆って..少し憧れはあるかなぁ。」
彼女が溢した思いは、いたって当たり前の素直な感情だった。
血を分けた妹が今も生きている炭治郎には、多分分かってあげられない。
今までひた隠しにしていたのは、こういう思いを抱く事が炭治郎達に申し訳ないという気持ちがあったのだろう。話辛かったのだろう。
彼女は、そういう人だ。
胸が張り裂けそうだ
あぁ、どうにか
彼女の心の内を軽くしてあげたいのに
俺が...
「そっか。話してくれて..ありがとう。日向子姉さん。」
炭治郎はその場で座り方を正し、彼女に向き直る。
「姉さんの本当のご両親、俺が探すよ。今まで、気付かなくて申し訳なかった。きっと、この日本の何処かで生きてる。俺はそう信じてる。
それに..いつか日向子姉さんも、結婚して子を産めば..あなたの家族が出来るから。」
そう言えば、彼女はありがとうと微笑んで言った。
本音を言うならば
日向子姉さんを、どこの馬の骨ともわからない男に嫁がせる気など微塵もなく、
それどころか
いつか、自分こそが彼女を妻に迎えられたら
なんて、やましい想いを抱いてしまうのだから
救いようがない。
今のご時世で果たして婚姻が成り立つのかとか、日向子姉さんの気持ちを、現時点では完全に無視しているなとか、そもそもの問題はあるけれど、炭治郎の思いは、昔から変わらない。
そんな炭治郎の思いを知ってか知らずか、彼女はこう語る。
「炭治郎も、本当に心の底から、この人だと思った人と、一緒になれる事を願うよ。」
日向子姉さん
それは、どういう意味なんだ?
俺は、まだ希望を捨てないでいていいのか。
あなたを好きでいても...許されるという事なのか。
「そろそろ戻ろうか?あんまり外にいると、また体調拗らせてしまうから」
よっと立ち上がり踵を返そうとする後ろ姿を、炭治郎は呼び止めた。
ーーーーー
〜145【殺し文句】〜
「俺は..待ち続けていてもいいですか?」
こういう聞き方はずるいのかもしれない。
でも、紛れもなくこれは炭治郎の切なる願いであり、ある意味での譲歩であった。
いつかでも構わない。彼女の心が傾いてくれるまで。俺は長男だから...我慢出来る。耐えて見せる。
しばらくの沈黙の後、彼女は口を開いた。
その言葉は、炭治郎の心をいとも簡単に抉るような一言だったのだ。
「...私が諦めて欲しいとお願いすれば、あなたは諦めてくれるの?」
ー例えばー
そんな軽い気持ちで日向子は炭治郎にそう問うた。
未だに..それどころか、日を追うごとに炭治郎に対する自分の気持ちがどういうものなのか分からなくなっていった。
そんな最中でも、彼の気持ちは度々痛い程に伝わってくる。しかし、炭治郎自身もある意味一線を引いてくれているのだと思っていた。
だから、別におちょくるつもりでも試すわけでもなく、ただ純粋にそう聞いたのだが、後悔した。
炭治郎はうすら涙を浮かべて、悲しそうに日向子を見上げたのだ。
「..っ....炭治郎。ごめ、ごめん。そんなつもりは..」
泣かすつもりなど、なかった。
日向子がオロオロと狼狽ていると、彼は浴衣の袖で目元を拭うと、こう答えた。
「貴女が、貴女自信の心が、嫌だと言うなら..俺は、引き下がると思う。けど、本音でなければ俺は、諦めない。それくらい俺だって、本気です。貴女以外、考えられない。」
強い眼差しでそう言われれば、日向子も何も言えない。こんなにも真っ直ぐで強い想いを向けられてしまえば...
「炭治郎..。あんまり、そういうこと他の子に言わない方がいいよ。」
「日向子姉さん以外にこんな事言わない」
心外だと言うように眉を吊り上げきっぱりとそう告げる。そういう所だよ..とは言えず、込み上げる感情の行き場を失った。
「何で..何であなたは私をそこまで、わかんないよ」
何がきっかけだったのか。
炭治郎を特別扱いしてきた事もないし、こんなに慕われる意味がわからない。
半ばやけになりそう聞くと、彼は当然のようにこう答えた。
「全てです。貴女の全てに、どうしようもなく惹かれる。」
もう、駄目だ。
日向子はそう悟り、私はもう寝るからと押し付けるように言うと部屋へ戻って行った。
鳴り止まない鼓動に頭を抱える。
あんな殺し文句、どこで覚えてきたのやら。
明日から彼と普通に接せられるだろうか...
ーーーーー
〜146【帰還】〜
結局
昨夜はほとんど寝れずに朝を迎えた炭治郎は、
人知れず長い溜息を吐いた。
朝餉の時も、日向子姉さんは余所余所しくて
あまり炭治郎と顔を合わせようとはしてくれなかった。
けれど、前に避けられていた時とは少し違う。
彼女から香る匂いは【拒否】ではない。
湯呑みを受け渡す際に僅かに指が触れ合った時、あからさまにびくりとして何でもない風を装う、そんな様子を見て、炭治郎はむず痒い気持ちになる。
ー少しは、意識してくれているのかなー...
そう期待せずにはいられないのだ。
彼女から弟としてではなく、男として見られる事への歓びが、炭治郎の心を安定させる。
彼女はどうも押しに弱い性質があるようだ。
あまり困らせないようにというのは念頭においているけれども、少しずつでいい
日向子姉さんをその気にさせられたらいいのに...
なんて、贅沢な欲望だろうか。
世話になった若夫婦とその子供に丁寧に礼を言うと、2人は藤の花邸を後にした。
もう少しで蝶屋敷というところまで差し掛かった時、目の前の光景に炭治郎は絶望する。
見ると、どす黒いオーラを纏った鋼鐵塚さんが以前よりも刃物を増やして待ち構えていた。
そう言えば、炭治郎は刀を鬼に投げ刺した為、柄諸共失くしてしまったと聞いた。
「貴様ぁぁぁ!!!刀を失くすとはどういう料簡だぁぁぁ!!」
奇声をあげながら向かってくる彼から死に物狂いで逃げる炭治郎を見て、前にも目の当たりにした光景に乾いた笑いが漏れた。
「日向子さんっ!!」
「!善逸君..」
ひしと抱きついて来る彼は心配したよと泣きべそをかきながら顔をぐりぐり押しつけてきた。
宥めるように頭をよしよしと撫でると、ずびっと鼻を啜り日向子を仰ぎ見る。
「何もありませんでしたか?置き手紙は見ましたけど、一晩帰ってこないから...。
炭治郎は見ての通り日輪刀持ってなくて丸腰だし、禰豆子ちゃんも居ないし、全く...女の子を危険に晒すなんて、とんでもねぇ炭治郎だ」
「ちょっと予定外の事が起きてね、ごめんなさい心配かけて。ところで胡蝶様、怒ってらした?..」
恐る恐るそう尋ねると、善逸はこの世の終わりというような表情でがくがく震え始めた。
「はい、それはもう...。覚悟はしといた方がいいと思います。」
彼の様子を見て日向子も恐怖からつられるように身体が震え出す。
傷も癒えぬうちに抜け出した事に対して、相当おかんむりである事は予想していたが、案の定らしい。
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