◆第陸章 太陽の息吹
貴女のお名前を教えてください
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〜104【再始動】〜
数日後ー
炭治郎の折れた刀と、刃こぼれの酷かった伊之助の刀は、鋼鐵塚さん達が打ち直してくれたようで、その日輪刀が、今日返ってくるのだそうだ。
しばらく刀に触れていなかった2人は相当嬉しいようで、飛び跳ねながら彼等を出迎えたのだが
ドドドドと激しい地鳴りが響き近づいてくる物を見て、炭治郎の顔面が蒼白に変わる。
「よくも俺の刀をォォ..よくもォォォ」
この世の物とは思えない程地を這うような声色で、炭治郎に向かって刃物を突き立てる。
その後、問答無用で彼に丸1時間追いかけられていた。
少しかわいそうだったが、職人を怒らせるという事はこういう事なのだと。日向子も明日は我が身で肝に銘じることにした。
「伊之助の刀は、あなたが?」
「はい。私、鉄穴森と申します。」
鋼鐵塚よりかはいくらか大人しそうで紳士的な人だなぁという印象だ。
彼は二刀流の刀を打ったのは初めてだと言い光栄だと語る。
伊之助は無言で二本の刀を両手に持ち、おもむろに庭へ歩いて行った。
「伊之助?」
ようやく解放された炭治郎も不思議そうに彼の行動を見守っていた。すると、一同唖然とするような信じられない行動を取る。
なんと、せっかく鉄穴森が打ち直して綺麗な線だった刃を、石ころで削り取ったのだ。
それをみた鉄穴森が大激怒し、罵詈雑言 浴びせ今にも掴みかかろうとするのを炭治郎と日向子で必死に抑えた。
本人は満足そうだが、さすがにこれは伊之助が悪いよ...
後日
しのぶさんが順々に健康診断を行なってくれて、皆身体は完全に回復したようだ。
出発を明日に控えたその前夜、
日向子は前から気になっていた事を炭治郎に尋ねた。
「ねぇ炭治郎、十二鬼月と闘った夜の日、覚えてる?」
「あぁ、覚えてるよ。」
何か気になることでもあるのか?と聞かれ、日向子は彼が最後頚を斬るときに土壇場 で放ったあの技について追及した。
水の呼吸とはまた系統が違う呼吸..彼はそれを、ヒノカミ神楽と仮に名付けていた。
あれはよく、父さんが舞っていた神楽だ。
「詳しい事は、しのぶさんに聞いてもわからなかった。だから、炎柱の煉獄さんに聞こうと思ってる。炎の呼吸ともまた違うみたいなんだ。」
火の呼吸..
そうか
【日の呼吸】ともまた、別ものなのだろうか。
あの夜意識が朦朧としてたから、記憶も朧気だが、
何か似通ったものを感じたのは...日向子の気のせいだったのだろうか?
....
ーーーーー
〜105【炎柱】〜
蝶屋敷出発の日ー
思えば約1か月程の間もお世話になった。
ので、さすがに彼女達に別れを告げるのは辛いものがある。
長いようで短かったような不思議な感覚。
皆各々別れを惜しみ合い、次なる任務の場所へと炭治郎達は出発した。
辿り着いたのは、浅草を思わせるような街中だった。
人の数も多く、日向子はさすがに邪魔になると思い市女傘を背負う。
そして目の前には、見た事のない黒い重厚な物体が佇み、思わず感嘆の息を漏らした。
日向子は勿論、伊之助も炭治郎も汽車というのを見るのは初めてで、この正体がどういうものか知っているのは善逸だけだった。
伊之助達が、主だの守り神だのと聞かず、その対応に疲れ切った善逸が日向子へ助けを求める。
「日向子さーん、こいつらちっとも理解してくれないんだよぉぉ。何とか言ってくださいよぉ。」
そして日向子は固まった。
説明を求められても、いや..私もこんなの初めて見たし。
の癖に、長女気質が災いし放って置けないのだから仕方ない。日向子は任せてと胸を叩いた。
もーなる様になれ。
「2人とも!汽車っていうのはきっと、きっと...
馬車みたいに人を乗せて動くもので」
いい線行ってるよ日向子さんと善逸がハートを飛ばす。
けれど、伊之助がじゃあ何で動くんだよ、やっぱ生きてるんだろ?と質問した。
何で動く?馬車は馬が引っ張るから..えーと
「なんか、特別な...神様の力とかで!」
「ごめん違うよ。でも閃 いたって顔可愛いなぁご馳走さまです」
善逸物知りだなぁと炭治郎が感心すると、お前らが知らなさ過ぎるのとすぐさま切り返す。
そんな矢先に伊之助が汽車に頭突きをかますものだから、もうその場はパニックだ。
「何してる貴様ら!!」
ピーと笛を吹かせながら駅員が走ってくる。
そして刀を所持しているのがバレてしまい、危うく警察沙汰になりそうになった。
だから言わんこっちゃないと善逸は彼等をその場から引き連り出した
彼等、鬼殺隊は政府の非公認組織である為、騒ぎになれば銃刀法違反になる可能性が極めて高い。
ので、街中へ潜入する際は最新の注意を払わなきゃだし、隠という組織が存在するのもその為だ。
「まぁ、そういう事だから刀は隠した方がいいな。伊之助お前は服着ろ服!丸見え!!」
ようやく汽車の中に移動した一行は、手頃な座席を探し歩く途中、炭治郎の鼻で煉獄さんを辿る。
すると、やけに大量に駅弁当を食らい美味いと高々に連呼する男性を発見した。
ーーーーー
〜106【ヒノカミ神楽の正体】〜
派手な出立、目力の強い瞳、この匂い
紛れもなく、彼は炎柱の煉獄杏寿郎だ。
「あのー..」
そろーっと話しかけると、彼はくるっと横を振り向いた。なんやらかんやらでようやく会話に漕ぎ着ける事が出来た。
ヒノカミ神楽について聞いてみたが、彼の知識を持ってしても生まれてこの方聞いたことがないという。
早々に話を終いにされそうだったので、慌てて食い下がる。助け舟を出したのは日向子だった。
「では、日の神との関連はないという事でしょうか?
もしあるなら..日の呼吸と何か繋がりがあるんじゃないかと思って」
そう問いかけると、煉獄は彼女をじっと見つめてこう答えた。
「関連も何もほんとに神楽については知らないのだ。ただ、今の時点では無関係という断言も出来んな。
要するに前代未聞 なのだ。
最も、今となっては全ての呼吸が基本の呼吸で成り立ち派生すら存在するのが現状だ。
溝口少年のそれも、大方その類ではないかと俺は見ている」
「..そうですか」
少し、淡い期待をしてしまった。
炭治郎のヒノカミ神楽が、日の呼吸だったら良かったのにと思った。
確かに日の呼吸は途絶えた。
我々巫一族と同じ運命を辿ったのだから。
「溝口少年、君の刀は何色だ?」
黒刀だと答えると、やはり珍しい色だというのは確からしく、煉獄さんでもどの系統を極めればいいのか分かりかねると言う。
「だが心配するな!俺の継子になれば面倒を見てやる!もう安心だ!時に日向子君は、時透の誘いを受けたか?」
それを聞いて炭治郎も気になっていたんだとばかりに日向子を見つめる。
「煉獄様まで知ってたんですか?」
「あいつが君の件を皆に報告した際に、継子にするから手出しするなとそう言っていた。あれは間違いなく俺達に対する牽制 だったな!」
はははと高々に笑う煉獄、炭治郎が待ちきれないとばかりに日向子の答えを急いた。
「それで、継子になったのか?日向子姉さん」
「いや、丁重にお断りしたよ。誘いは勿論ありがたかったけれどね」
そうか、と安堵した様にため息を吐く炭治郎。
こんな様子だから、どさくさに紛れて告白されたという話は、言わない方が得策だろうなと日向子はぼんやり思った。
動き出した汽車に興奮した伊之助は、列車から降りて競争する等と言い始めた。
「危険だぞ!いつ鬼が出るかわからないからな」
煉獄のその一言を聞いて、善逸は眩暈を覚えていた。
ーーーーー
〜107【無限列車】〜
ー先頭車両ー
ゴゴゴゴと石炭を燃やして機械が轟 く中、1人の影が恍惚とした表情で立ち尽くしていた。
すっかり辺りは宵闇に包まれて、絶好の
夢見日和だー...
魘夢は両手を広げて夜風を切る。
「さて...始めるか。でもその為には」
やっぱりあの子は邪魔だなぁ
一方
炭治郎達はと言うと、鬼がこの汽車内に出るという事実を聞いた善逸がぎゃあぎゃあ騒ぎ出していた。
炭治郎自身も詳しい事は烏からも何も聞いていなくて、指令が出る前に駅に来たのは、【いつでも気配を察知したら定刻に出る列車に乗り込めるように】
という意味だったのだなぁと思った。
その時
母親を求めて泣き叫ぶ
六太くらいの年齢の男の子が車内を歩いていた。
それに気付いた日向子姉さんが優しくその子に語りかける。
「坊やどうしたの?迷子になっちゃったの?」
すると男の子は嗚咽を漏らしながらこくんと頷いた。
「お姉ちゃん..母ちゃん一緒に探してっ」
縋るような眼差しでそう言う男の子の頭を、彼女は撫でた。その光景を見た炭治郎は、まるで姉さんが六太を宥めている昔を思い出して、微笑ましい気持ちになる。
「勿論だよ。母ちゃん一緒に探そうか。坊やは最初どの辺りの車両に乗ったの?」
そう聞くと男の子は後方車両を指差すので、日向子姉さんは少しの間外すねと言う。
しかし、いつ鬼が出るかわからない状況で女性の日向子姉さん1人を別行動にさせるのはどうだろうかと炭治郎は考えた。
「やっぱり俺も一緒に」
すると、男の子はひしっと日向子姉さんの隊服の裾を掴む。どうやら、炭治郎は警戒されているようだ。
なんだか凄く、ショックだ...
結局彼女1人で送り出す事になってしまった。
善逸は、何あの子生意気と悪態をついていたけど、まぁ幼い子というのは正直だから仕方ない。
日向子は男の子に手を引かれるがままに後方車両を進むも、その子の母親は見つからない。
そしてやけに..眠り込んでいる人が多いような気が、時間帯も時間帯だし、考えすぎか?
ふと男の子が立ち止まった先を見ると、数人の子供達が疲れ切った覇気のない眼差しでこちらを見つめていた。
「よく出来たねあんた。これであの人にいい夢を見せて貰えるよ。母ちゃんに会えるよ」
あんたと呼ばれたのは先程の迷子の男の子で、彼はとてとてと向こう側についた。
まさか..
嵌 められた。
でもこの子達の気配は人間、どういう
「あいつらと引き離せばそれでいい」
数日後ー
炭治郎の折れた刀と、刃こぼれの酷かった伊之助の刀は、鋼鐵塚さん達が打ち直してくれたようで、その日輪刀が、今日返ってくるのだそうだ。
しばらく刀に触れていなかった2人は相当嬉しいようで、飛び跳ねながら彼等を出迎えたのだが
ドドドドと激しい地鳴りが響き近づいてくる物を見て、炭治郎の顔面が蒼白に変わる。
「よくも俺の刀をォォ..よくもォォォ」
この世の物とは思えない程地を這うような声色で、炭治郎に向かって刃物を突き立てる。
その後、問答無用で彼に丸1時間追いかけられていた。
少しかわいそうだったが、職人を怒らせるという事はこういう事なのだと。日向子も明日は我が身で肝に銘じることにした。
「伊之助の刀は、あなたが?」
「はい。私、鉄穴森と申します。」
鋼鐵塚よりかはいくらか大人しそうで紳士的な人だなぁという印象だ。
彼は二刀流の刀を打ったのは初めてだと言い光栄だと語る。
伊之助は無言で二本の刀を両手に持ち、おもむろに庭へ歩いて行った。
「伊之助?」
ようやく解放された炭治郎も不思議そうに彼の行動を見守っていた。すると、一同唖然とするような信じられない行動を取る。
なんと、せっかく鉄穴森が打ち直して綺麗な線だった刃を、石ころで削り取ったのだ。
それをみた鉄穴森が大激怒し、
本人は満足そうだが、さすがにこれは伊之助が悪いよ...
後日
しのぶさんが順々に健康診断を行なってくれて、皆身体は完全に回復したようだ。
出発を明日に控えたその前夜、
日向子は前から気になっていた事を炭治郎に尋ねた。
「ねぇ炭治郎、十二鬼月と闘った夜の日、覚えてる?」
「あぁ、覚えてるよ。」
何か気になることでもあるのか?と聞かれ、日向子は彼が最後頚を斬るときに
水の呼吸とはまた系統が違う呼吸..彼はそれを、ヒノカミ神楽と仮に名付けていた。
あれはよく、父さんが舞っていた神楽だ。
「詳しい事は、しのぶさんに聞いてもわからなかった。だから、炎柱の煉獄さんに聞こうと思ってる。炎の呼吸ともまた違うみたいなんだ。」
火の呼吸..
そうか
【日の呼吸】ともまた、別ものなのだろうか。
あの夜意識が朦朧としてたから、記憶も朧気だが、
何か似通ったものを感じたのは...日向子の気のせいだったのだろうか?
....
ーーーーー
〜105【炎柱】〜
蝶屋敷出発の日ー
思えば約1か月程の間もお世話になった。
ので、さすがに彼女達に別れを告げるのは辛いものがある。
長いようで短かったような不思議な感覚。
皆各々別れを惜しみ合い、次なる任務の場所へと炭治郎達は出発した。
辿り着いたのは、浅草を思わせるような街中だった。
人の数も多く、日向子はさすがに邪魔になると思い市女傘を背負う。
そして目の前には、見た事のない黒い重厚な物体が佇み、思わず感嘆の息を漏らした。
日向子は勿論、伊之助も炭治郎も汽車というのを見るのは初めてで、この正体がどういうものか知っているのは善逸だけだった。
伊之助達が、主だの守り神だのと聞かず、その対応に疲れ切った善逸が日向子へ助けを求める。
「日向子さーん、こいつらちっとも理解してくれないんだよぉぉ。何とか言ってくださいよぉ。」
そして日向子は固まった。
説明を求められても、いや..私もこんなの初めて見たし。
の癖に、長女気質が災いし放って置けないのだから仕方ない。日向子は任せてと胸を叩いた。
もーなる様になれ。
「2人とも!汽車っていうのはきっと、きっと...
馬車みたいに人を乗せて動くもので」
いい線行ってるよ日向子さんと善逸がハートを飛ばす。
けれど、伊之助がじゃあ何で動くんだよ、やっぱ生きてるんだろ?と質問した。
何で動く?馬車は馬が引っ張るから..えーと
「なんか、特別な...神様の力とかで!」
「ごめん違うよ。でも
善逸物知りだなぁと炭治郎が感心すると、お前らが知らなさ過ぎるのとすぐさま切り返す。
そんな矢先に伊之助が汽車に頭突きをかますものだから、もうその場はパニックだ。
「何してる貴様ら!!」
ピーと笛を吹かせながら駅員が走ってくる。
そして刀を所持しているのがバレてしまい、危うく警察沙汰になりそうになった。
だから言わんこっちゃないと善逸は彼等をその場から引き連り出した
彼等、鬼殺隊は政府の非公認組織である為、騒ぎになれば銃刀法違反になる可能性が極めて高い。
ので、街中へ潜入する際は最新の注意を払わなきゃだし、隠という組織が存在するのもその為だ。
「まぁ、そういう事だから刀は隠した方がいいな。伊之助お前は服着ろ服!丸見え!!」
ようやく汽車の中に移動した一行は、手頃な座席を探し歩く途中、炭治郎の鼻で煉獄さんを辿る。
すると、やけに大量に駅弁当を食らい美味いと高々に連呼する男性を発見した。
ーーーーー
〜106【ヒノカミ神楽の正体】〜
派手な出立、目力の強い瞳、この匂い
紛れもなく、彼は炎柱の煉獄杏寿郎だ。
「あのー..」
そろーっと話しかけると、彼はくるっと横を振り向いた。なんやらかんやらでようやく会話に漕ぎ着ける事が出来た。
ヒノカミ神楽について聞いてみたが、彼の知識を持ってしても生まれてこの方聞いたことがないという。
早々に話を終いにされそうだったので、慌てて食い下がる。助け舟を出したのは日向子だった。
「では、日の神との関連はないという事でしょうか?
もしあるなら..日の呼吸と何か繋がりがあるんじゃないかと思って」
そう問いかけると、煉獄は彼女をじっと見つめてこう答えた。
「関連も何もほんとに神楽については知らないのだ。ただ、今の時点では無関係という断言も出来んな。
要するに前代
最も、今となっては全ての呼吸が基本の呼吸で成り立ち派生すら存在するのが現状だ。
溝口少年のそれも、大方その類ではないかと俺は見ている」
「..そうですか」
少し、淡い期待をしてしまった。
炭治郎のヒノカミ神楽が、日の呼吸だったら良かったのにと思った。
確かに日の呼吸は途絶えた。
我々巫一族と同じ運命を辿ったのだから。
「溝口少年、君の刀は何色だ?」
黒刀だと答えると、やはり珍しい色だというのは確からしく、煉獄さんでもどの系統を極めればいいのか分かりかねると言う。
「だが心配するな!俺の継子になれば面倒を見てやる!もう安心だ!時に日向子君は、時透の誘いを受けたか?」
それを聞いて炭治郎も気になっていたんだとばかりに日向子を見つめる。
「煉獄様まで知ってたんですか?」
「あいつが君の件を皆に報告した際に、継子にするから手出しするなとそう言っていた。あれは間違いなく俺達に対する
はははと高々に笑う煉獄、炭治郎が待ちきれないとばかりに日向子の答えを急いた。
「それで、継子になったのか?日向子姉さん」
「いや、丁重にお断りしたよ。誘いは勿論ありがたかったけれどね」
そうか、と安堵した様にため息を吐く炭治郎。
こんな様子だから、どさくさに紛れて告白されたという話は、言わない方が得策だろうなと日向子はぼんやり思った。
動き出した汽車に興奮した伊之助は、列車から降りて競争する等と言い始めた。
「危険だぞ!いつ鬼が出るかわからないからな」
煉獄のその一言を聞いて、善逸は眩暈を覚えていた。
ーーーーー
〜107【無限列車】〜
ー先頭車両ー
ゴゴゴゴと石炭を燃やして機械が
すっかり辺りは宵闇に包まれて、絶好の
夢見日和だー...
魘夢は両手を広げて夜風を切る。
「さて...始めるか。でもその為には」
やっぱりあの子は邪魔だなぁ
一方
炭治郎達はと言うと、鬼がこの汽車内に出るという事実を聞いた善逸がぎゃあぎゃあ騒ぎ出していた。
炭治郎自身も詳しい事は烏からも何も聞いていなくて、指令が出る前に駅に来たのは、【いつでも気配を察知したら定刻に出る列車に乗り込めるように】
という意味だったのだなぁと思った。
その時
母親を求めて泣き叫ぶ
六太くらいの年齢の男の子が車内を歩いていた。
それに気付いた日向子姉さんが優しくその子に語りかける。
「坊やどうしたの?迷子になっちゃったの?」
すると男の子は嗚咽を漏らしながらこくんと頷いた。
「お姉ちゃん..母ちゃん一緒に探してっ」
縋るような眼差しでそう言う男の子の頭を、彼女は撫でた。その光景を見た炭治郎は、まるで姉さんが六太を宥めている昔を思い出して、微笑ましい気持ちになる。
「勿論だよ。母ちゃん一緒に探そうか。坊やは最初どの辺りの車両に乗ったの?」
そう聞くと男の子は後方車両を指差すので、日向子姉さんは少しの間外すねと言う。
しかし、いつ鬼が出るかわからない状況で女性の日向子姉さん1人を別行動にさせるのはどうだろうかと炭治郎は考えた。
「やっぱり俺も一緒に」
すると、男の子はひしっと日向子姉さんの隊服の裾を掴む。どうやら、炭治郎は警戒されているようだ。
なんだか凄く、ショックだ...
結局彼女1人で送り出す事になってしまった。
善逸は、何あの子生意気と悪態をついていたけど、まぁ幼い子というのは正直だから仕方ない。
日向子は男の子に手を引かれるがままに後方車両を進むも、その子の母親は見つからない。
そしてやけに..眠り込んでいる人が多いような気が、時間帯も時間帯だし、考えすぎか?
ふと男の子が立ち止まった先を見ると、数人の子供達が疲れ切った覇気のない眼差しでこちらを見つめていた。
「よく出来たねあんた。これであの人にいい夢を見せて貰えるよ。母ちゃんに会えるよ」
あんたと呼ばれたのは先程の迷子の男の子で、彼はとてとてと向こう側についた。
まさか..
でもこの子達の気配は人間、どういう
「あいつらと引き離せばそれでいい」