◆第伍章 それぞれの想い
貴女のお名前を教えてください
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〜78【守り人】〜
人は
守り
助けるもの
傷付けない
絶対に
傷付けない
絶対にッー
禰豆子は思い切り顔を横に逸らした。
稀血の血液を目の前にしても、一切触れる事もなく。
誘惑に打ち勝った瞬間だった。
好戦的な態度を取っていた不死川や伊黒は、黙りこくってしまう。
瑠璃千代はほっとしたように、産屋敷の方へ向き直った。
「どうしたのかな?」
「稀血の瑠璃千代様の血を目の前にしても、襲う事をしませんでした。」
それを聞いた産屋敷は満足そうに、これで禰豆子が人を襲わない事が証明出来たと頷いた。
炭治郎は彼女に感謝しても仕切れない思いを抱く。
赤の他人の自分達に、皆どうしてそこまでしてくれるのだろう。
有り難い...今度は俺達が
その人達の助けにならなければ。
「炭治郎、それでもまだ禰豆子の事を快く思わない者も居るだろう。」
炭治郎はハッとして、すぐ様姿勢を正した。
彼は言う。
今度は、人々の為に戦える事を証明していきなさいと。鬼舞辻を倒す事。
それは炭治郎達の最大の目的の一つでもあるが、口先だけでは何の証明にもならない事を改めて実感した。
お館様に言われると、不思議と今までの自分が浅はかだったという気にさせられてしまう。
それと同時に、内から沸沸とやる気が漲 ってくるのだ。
このカリスマ性こそが...
彼が鬼殺隊の頂点に立つる所以 なのかもしれない。
「それから実弥、小芭内、あまり下の子に意地悪をしないこと」
彼に咎められた2人は、渋々といった様子で了承したのだった。
瑠璃千代は一礼するとこの場を去ろうとする。その背中へ産屋敷はこう伝えた。
「瑠璃千代殿、まさかあなたが来てくれるとは思わなかった。良かったのかい?私が言うのもなんだが、隠居生活もままならなくなってしまうのでは?」
産屋敷は時透と炭治郎にちらりと目線をやると、彼女にそう問いかける。
瑠璃千代は振り向き様ににこりと笑うと、ただこう発した。
「私の事は良いのです。それよりお館様、よい子供達に恵まれて羨ましい限りでございます。」
「っま!待ってくだっ」
炭治郎は彼女を呼び止めようと声を張り上げようとすると声が霞んでしまった。
那田蜘蛛山での戦闘から蓄積されている疲労が、しのぶの秘薬を持ってしても現れ始めている。
「竈門君は私の屋敷でお預かり致しましょう」
引き受け役を買って出たしのぶに後を任せるように、彼女は一瞥する。
「またいずれお話しましょう。竈門炭治郎君」
ーーーーー
〜79【星柱の継子】〜
しのぶの一声で炭治郎が連れて行かれた後、
厳粛に柱合会議が執り行われた。
禰豆子が人を襲わないという事は、先程、瑠璃千代が身をもって証明した。
そしてやはり話題に上がるのは日向子の事だ。
彼女の処遇に関しては柱の中でも2つに分かれる。
今まで通り鬼狩りとして任務に就かせるか?
はたまた本部に隔離し鬼舞辻達の手中から守るか?
「確かに竈門日向子を使って鬼舞辻をおびき寄せるのなら、今まで通り鬼と接点を持った方が良い。
だが、炭治郎が既にその役回りを担っている以上は無理に彼女を前線に送る必要もないのでは?」
「そうですね。彼女は壱ノ型を会得したと聞きます。ならばやはり、鬼殺隊としては本部に縛り付けてでも、守るべき価値がある。」
「でもでも、それだと志麻様の意向を完全に無視することにならないですか?日向子ちゃんも強くなっているし..
藤襲山の鬼を全滅させたのでしょう?成長速度は目まぐるしいと思います。私は今まで通り鬼殺隊士として活躍させてあげたほうがいいのかなと」
議論は平行線を辿る。
そんな中、時透が手を上げ意見を口にした。
「瑠璃千代様は、彼女の意思を尊重して欲しいと言っていた。だから、竈門日向子が目を覚ましたら僕が彼女の意思を確認する。
親方様、それでどうでしょうか。」
取り乱した様子は一切なく、いつもの掴めない無一郎だった。
周りの柱達は特に否定もせずに、産屋敷の方を見つめた。彼はゆっくりと頷く。
「構わないよ。私もそれが一番良いと思うからね。」
産屋敷が賛成した以上は、他の者はこの件に関しては何も触れる事は出来ない。
全ては、日向子が目覚めた時に決まる事となった。
その後、会議は紆余曲折 ありつつも滞りなく進行していく。
柱合会議が解散となる際、産屋敷は時透にその場に残るように言い渡す。
「無一郎、一応忠告しておくが、
私情はあまり挟まない事。わかってるね?」
時透は冷静沈着にこう返した。
「無論そのつもりです。
僕は柱です。もう彼女の【継子】ではない。
竈門日向子の事も、然るべき対応をしますので、ご心配為さらず。」
「そうか..それならいい。さて、しのぶ?そういう事だから、彼女が目覚めたら無一郎に知らせてあげて」
気付かれていたのですかと、しのぶは罰が悪そうに垣根の奥から現れた。
「そんな目をしないでください
時透さん。皆思う事は同じなのですから」
ーーーーー
〜80【後悔の苛み】〜
「ごめんくださいませー」
玄関でいくら声をかけても返答がなく、恐る恐る庭の方へ出向くと人影があった。
蝶に囲まれ微笑みを称える少女はただこちらを見つめる。
「継子様だ。名前は確か..栗花落カナヲ様」
聞くと継子というのは、柱が育てる才能を秘めた剣士とのことで、まだ若いけれど相当手練なのだろうなと思う。
けれど..何だろう。あまり感情が感じられないからか、不思議な感覚だ。
大声で話しかけて来たアオイとは対照的だった。
屋敷の中に通されると、善逸が何やら騒いでおり、看護の子達が手を焼いていた。
目立った外傷こそないが、極端に短い手等を見ると、鬼と対峙したのだろうという事はわかった。
あんなに駄々をこねていたのに..
「善逸!大丈夫か?怪我をしたのか?山に入ってきてくれたんだな..」
炭治郎が話し掛けると善逸はひしと泣き付いた。
「伊之助と村田さんは?それから..あぁ、善逸はまだ会ったことないかもしれないけれど..」
「日向子様ならお隣の部屋です!まだ意識が戻っていないのですから、いくら別部屋だとしてもどうぞ、お・し・ず・か・に!」
アオイは口籠っていた炭治郎を手助けするようにそう告げた。
最後の方は善逸に対して皮肉を込めて語尾を強めると、キビキビとした様子で去って行こうとする。
「あ、待ってください!
意識が戻らないって..彼女は無事なんですか?
面会は厳しいですか?」
炭治郎に呼び止められた彼女は、彼を一瞥 しこう答えた。
「勿論、命に別状はありません!今は容体も落ち着いていますから。意識が戻るまで面会は..本来認められませんが、特別に炭治郎さんは許可しましょう。
その代わり!あなたが自力で動けるようになってからです。それまではご自分の治療に専念してください。あなたも重症のうちなのですよ?」
それだけマシンガンのように捲し立てるとアオイは部屋を後にした。
「なぁ炭治郎。日向子さんて..お前のお姉さんだろ?
別行動してるんだとは言ってたけど、あの山にいたのか?」
善逸がなるだけ柔らかい声色でそう問いかける。炭治郎からは、恐ろしく悲しい音と、切ない音が聞こえてきたから...
「後から助けにやってきてくれたんだ。戦闘中だったからあまり話も出来ないまま、こんなことになってしまったけれど。
いつも日向子姉さんが助けに現れてくれるんだ。情けないな..」
すると隣でむくりと伊之助が起き上がる。
「きな子..俺のせいだ」
ーーーーー
〜81【溢れて落ちそうな】〜
「俺のせいで、きな子はやられた..。
しのぶから聞いたんだ。あいつは俺を..」
ただでさえ意気消沈していた伊之助だったのに、彼女の名前を聞くや否や更に落ち込みを見せる伊之助に、もはや笑いを通り越して善逸は焦る。
「お前のせいって、なんでだよ。俺がいない間に何があったのか説明してくれよ!」
1人状況が掴めない善逸は炭治郎に説明を急いた。
炭治郎はゆっくりと話し出す。
「伊之助のせいじゃない。俺も、気付いてたんだ。
彼女のあの型は回復だけに特化したものじゃなかったって事は。だから..責任は俺にもあるよ。気にするな伊之助」
炭治郎は善逸に、何故日向子がここまでの重症を負ってしまったのか、鬼との戦闘の様子を細かく説明したし、善逸もまた体験を説明した。
今更ながら思うが、お互いよく生きて戻れたなと思う。
柱の2人が助けに来てくれなかったら、本当に今こうして話も出来ていなかっただろう。
「とりあえずさ、今は休んで回復させなきゃだな。日向子さんの事も、辛いだろうけどさ。まずはそこからだよ、今の俺達は」
伊之助も炭治郎も、善逸の意見に賛同した。
日向子姉さん..。
この壁の向こうに居るんだ。
ちゃんと生きてる。
身体が癒えたら必ず逢いに行くから。
それまで、姉さんも頑張ってください。
炭治郎はそう祈った。
数日経つと、全身筋肉痛であれだけ痛んだ体も、
杖をつきながらなら生活が送れる程度に回復した。アオイの許可も得て、炭治郎は今彼女の部屋の前にいる。
コンコン
ノックをしてみる。返事はない。
それはそうだ。まだ彼女は目覚めていない...
ゆっくりとドアを開けると、窓際近くのベッドに横たわっている姿を見つけた。
外傷もいくらか負っていたから、所々に包帯やらガーゼやらがくっついている。
痛々しい。珠世邸での戦闘の記憶が不意に蘇る。
あの時も、彼女を守り切れず、傷ついた日向子姉さんをベッドの横で見つめていた。
ー彼女の巫の異能は、私達の呼吸以上に体に負荷がかかっているようですー..
しのぶさんはそう言っていた。
姉さんは、加減はできるようになったし異能は極力使わないようにすると言っていた。
代償を理解していたからだ。
このままだと、彼女の肉体はいずれ耐え切れなくなってしまうのではないかという恐怖。
なんで、日向子姉さんじゃなきゃいけなかったのだろう。
命運を背負う立場が、何も日向子姉さんじゃなくても良かったじゃないか
..神様
ーーーーー
人は
守り
助けるもの
傷付けない
絶対に
傷付けない
絶対にッー
禰豆子は思い切り顔を横に逸らした。
稀血の血液を目の前にしても、一切触れる事もなく。
誘惑に打ち勝った瞬間だった。
好戦的な態度を取っていた不死川や伊黒は、黙りこくってしまう。
瑠璃千代はほっとしたように、産屋敷の方へ向き直った。
「どうしたのかな?」
「稀血の瑠璃千代様の血を目の前にしても、襲う事をしませんでした。」
それを聞いた産屋敷は満足そうに、これで禰豆子が人を襲わない事が証明出来たと頷いた。
炭治郎は彼女に感謝しても仕切れない思いを抱く。
赤の他人の自分達に、皆どうしてそこまでしてくれるのだろう。
有り難い...今度は俺達が
その人達の助けにならなければ。
「炭治郎、それでもまだ禰豆子の事を快く思わない者も居るだろう。」
炭治郎はハッとして、すぐ様姿勢を正した。
彼は言う。
今度は、人々の為に戦える事を証明していきなさいと。鬼舞辻を倒す事。
それは炭治郎達の最大の目的の一つでもあるが、口先だけでは何の証明にもならない事を改めて実感した。
お館様に言われると、不思議と今までの自分が浅はかだったという気にさせられてしまう。
それと同時に、内から沸沸とやる気が
このカリスマ性こそが...
彼が鬼殺隊の頂点に立つる
「それから実弥、小芭内、あまり下の子に意地悪をしないこと」
彼に咎められた2人は、渋々といった様子で了承したのだった。
瑠璃千代は一礼するとこの場を去ろうとする。その背中へ産屋敷はこう伝えた。
「瑠璃千代殿、まさかあなたが来てくれるとは思わなかった。良かったのかい?私が言うのもなんだが、隠居生活もままならなくなってしまうのでは?」
産屋敷は時透と炭治郎にちらりと目線をやると、彼女にそう問いかける。
瑠璃千代は振り向き様ににこりと笑うと、ただこう発した。
「私の事は良いのです。それよりお館様、よい子供達に恵まれて羨ましい限りでございます。」
「っま!待ってくだっ」
炭治郎は彼女を呼び止めようと声を張り上げようとすると声が霞んでしまった。
那田蜘蛛山での戦闘から蓄積されている疲労が、しのぶの秘薬を持ってしても現れ始めている。
「竈門君は私の屋敷でお預かり致しましょう」
引き受け役を買って出たしのぶに後を任せるように、彼女は一瞥する。
「またいずれお話しましょう。竈門炭治郎君」
ーーーーー
〜79【星柱の継子】〜
しのぶの一声で炭治郎が連れて行かれた後、
厳粛に柱合会議が執り行われた。
禰豆子が人を襲わないという事は、先程、瑠璃千代が身をもって証明した。
そしてやはり話題に上がるのは日向子の事だ。
彼女の処遇に関しては柱の中でも2つに分かれる。
今まで通り鬼狩りとして任務に就かせるか?
はたまた本部に隔離し鬼舞辻達の手中から守るか?
「確かに竈門日向子を使って鬼舞辻をおびき寄せるのなら、今まで通り鬼と接点を持った方が良い。
だが、炭治郎が既にその役回りを担っている以上は無理に彼女を前線に送る必要もないのでは?」
「そうですね。彼女は壱ノ型を会得したと聞きます。ならばやはり、鬼殺隊としては本部に縛り付けてでも、守るべき価値がある。」
「でもでも、それだと志麻様の意向を完全に無視することにならないですか?日向子ちゃんも強くなっているし..
藤襲山の鬼を全滅させたのでしょう?成長速度は目まぐるしいと思います。私は今まで通り鬼殺隊士として活躍させてあげたほうがいいのかなと」
議論は平行線を辿る。
そんな中、時透が手を上げ意見を口にした。
「瑠璃千代様は、彼女の意思を尊重して欲しいと言っていた。だから、竈門日向子が目を覚ましたら僕が彼女の意思を確認する。
親方様、それでどうでしょうか。」
取り乱した様子は一切なく、いつもの掴めない無一郎だった。
周りの柱達は特に否定もせずに、産屋敷の方を見つめた。彼はゆっくりと頷く。
「構わないよ。私もそれが一番良いと思うからね。」
産屋敷が賛成した以上は、他の者はこの件に関しては何も触れる事は出来ない。
全ては、日向子が目覚めた時に決まる事となった。
その後、会議は
柱合会議が解散となる際、産屋敷は時透にその場に残るように言い渡す。
「無一郎、一応忠告しておくが、
私情はあまり挟まない事。わかってるね?」
時透は冷静沈着にこう返した。
「無論そのつもりです。
僕は柱です。もう彼女の【継子】ではない。
竈門日向子の事も、然るべき対応をしますので、ご心配為さらず。」
「そうか..それならいい。さて、しのぶ?そういう事だから、彼女が目覚めたら無一郎に知らせてあげて」
気付かれていたのですかと、しのぶは罰が悪そうに垣根の奥から現れた。
「そんな目をしないでください
時透さん。皆思う事は同じなのですから」
ーーーーー
〜80【後悔の苛み】〜
「ごめんくださいませー」
玄関でいくら声をかけても返答がなく、恐る恐る庭の方へ出向くと人影があった。
蝶に囲まれ微笑みを称える少女はただこちらを見つめる。
「継子様だ。名前は確か..栗花落カナヲ様」
聞くと継子というのは、柱が育てる才能を秘めた剣士とのことで、まだ若いけれど相当手練なのだろうなと思う。
けれど..何だろう。あまり感情が感じられないからか、不思議な感覚だ。
大声で話しかけて来たアオイとは対照的だった。
屋敷の中に通されると、善逸が何やら騒いでおり、看護の子達が手を焼いていた。
目立った外傷こそないが、極端に短い手等を見ると、鬼と対峙したのだろうという事はわかった。
あんなに駄々をこねていたのに..
「善逸!大丈夫か?怪我をしたのか?山に入ってきてくれたんだな..」
炭治郎が話し掛けると善逸はひしと泣き付いた。
「伊之助と村田さんは?それから..あぁ、善逸はまだ会ったことないかもしれないけれど..」
「日向子様ならお隣の部屋です!まだ意識が戻っていないのですから、いくら別部屋だとしてもどうぞ、お・し・ず・か・に!」
アオイは口籠っていた炭治郎を手助けするようにそう告げた。
最後の方は善逸に対して皮肉を込めて語尾を強めると、キビキビとした様子で去って行こうとする。
「あ、待ってください!
意識が戻らないって..彼女は無事なんですか?
面会は厳しいですか?」
炭治郎に呼び止められた彼女は、彼を
「勿論、命に別状はありません!今は容体も落ち着いていますから。意識が戻るまで面会は..本来認められませんが、特別に炭治郎さんは許可しましょう。
その代わり!あなたが自力で動けるようになってからです。それまではご自分の治療に専念してください。あなたも重症のうちなのですよ?」
それだけマシンガンのように捲し立てるとアオイは部屋を後にした。
「なぁ炭治郎。日向子さんて..お前のお姉さんだろ?
別行動してるんだとは言ってたけど、あの山にいたのか?」
善逸がなるだけ柔らかい声色でそう問いかける。炭治郎からは、恐ろしく悲しい音と、切ない音が聞こえてきたから...
「後から助けにやってきてくれたんだ。戦闘中だったからあまり話も出来ないまま、こんなことになってしまったけれど。
いつも日向子姉さんが助けに現れてくれるんだ。情けないな..」
すると隣でむくりと伊之助が起き上がる。
「きな子..俺のせいだ」
ーーーーー
〜81【溢れて落ちそうな】〜
「俺のせいで、きな子はやられた..。
しのぶから聞いたんだ。あいつは俺を..」
ただでさえ意気消沈していた伊之助だったのに、彼女の名前を聞くや否や更に落ち込みを見せる伊之助に、もはや笑いを通り越して善逸は焦る。
「お前のせいって、なんでだよ。俺がいない間に何があったのか説明してくれよ!」
1人状況が掴めない善逸は炭治郎に説明を急いた。
炭治郎はゆっくりと話し出す。
「伊之助のせいじゃない。俺も、気付いてたんだ。
彼女のあの型は回復だけに特化したものじゃなかったって事は。だから..責任は俺にもあるよ。気にするな伊之助」
炭治郎は善逸に、何故日向子がここまでの重症を負ってしまったのか、鬼との戦闘の様子を細かく説明したし、善逸もまた体験を説明した。
今更ながら思うが、お互いよく生きて戻れたなと思う。
柱の2人が助けに来てくれなかったら、本当に今こうして話も出来ていなかっただろう。
「とりあえずさ、今は休んで回復させなきゃだな。日向子さんの事も、辛いだろうけどさ。まずはそこからだよ、今の俺達は」
伊之助も炭治郎も、善逸の意見に賛同した。
日向子姉さん..。
この壁の向こうに居るんだ。
ちゃんと生きてる。
身体が癒えたら必ず逢いに行くから。
それまで、姉さんも頑張ってください。
炭治郎はそう祈った。
数日経つと、全身筋肉痛であれだけ痛んだ体も、
杖をつきながらなら生活が送れる程度に回復した。アオイの許可も得て、炭治郎は今彼女の部屋の前にいる。
コンコン
ノックをしてみる。返事はない。
それはそうだ。まだ彼女は目覚めていない...
ゆっくりとドアを開けると、窓際近くのベッドに横たわっている姿を見つけた。
外傷もいくらか負っていたから、所々に包帯やらガーゼやらがくっついている。
痛々しい。珠世邸での戦闘の記憶が不意に蘇る。
あの時も、彼女を守り切れず、傷ついた日向子姉さんをベッドの横で見つめていた。
ー彼女の巫の異能は、私達の呼吸以上に体に負荷がかかっているようですー..
しのぶさんはそう言っていた。
姉さんは、加減はできるようになったし異能は極力使わないようにすると言っていた。
代償を理解していたからだ。
このままだと、彼女の肉体はいずれ耐え切れなくなってしまうのではないかという恐怖。
なんで、日向子姉さんじゃなきゃいけなかったのだろう。
命運を背負う立場が、何も日向子姉さんじゃなくても良かったじゃないか
..神様
ーーーーー