◆第肆章 下弦に泣く浮き世
貴女のお名前を教えてください
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〜67【真白の日輪刀】〜
馬鹿な..十二鬼月である俺の糸が
金属さえいとも簡単に切断し数多の人間を葬 ってきた。
それが全く通用しないだと、塁はギリと唇を噛んだ。
あの方が、抹殺せよに通達を変えたのも頷ける。彼女は危険分子だ。我々鬼にとっての。
「君を家族にするのはやめだ。殺す。その奥の妹だけ渡して貰う。」
ヒュンと空を切る音と共に抱き抱えていた筈の禰豆子の感触が無くなる。少年の方を見ると彼は無理やり禰豆子を抱き留めていた。
「さぁ、もう奪ったよ。後は君達2人を、殺すだけだ」
炭治郎が駆け出そうとした時、日向子が哀れみをもった眼差しで最終警告を言い渡す。
「思い出せないのなら、仕方ない。
私達は奪われない為に闘うわ。」
炭治郎は戸惑う。匂いは日向子姉さんなんだ。自我も失っていない。
けれど、あんなに怪我も負っていたし、恐らく巫の異能を使ったのだろう。立っているのがやっと筈だ。
なのに、この状態はどういう事なのだろうか。
初めて目の当たりにした変化に、彼女の状態が全くわからない。
日向子姉さん、ごめん..
あの時俺は、伊之助の怪我を治した時から、おおよそ気付いていたんだ。なのに
気付かせないような素振りをしたあなたを見て、止められなかった。
結果、無理をさせてしまった。
何があっても守ると誓った人だったのに
日向子は刀を再度抜刀した。
その刀は真白に輝き、僅かな光の加減で様々な色に変化し光っていた。
まるで太陽光そのもの。
美しい刀身だった。
「炭治郎」
「!」
日向子は炭治郎に耳打ちした。
彼はぎゅっと刀の柄を握り締める。
塁を見る目の色が変わった。
彼等は何かをしでかす気でいると悟る。
ダッと走り出す炭治郎を近付かせまいと累は糸でガードした。
彼女を殺す前に、まずはこの男を葬る方が手っ取り早い。
「っ!邪魔だよ!!」
男の方にターゲットを絞りきれない。日向子は塁の行動範囲を抑制するように立ち回る。
一息つく暇もない。この女に通常の糸は効かないならうんと強度が高く密集した糸を作り出さなければ。
ちっ...面倒だなぁ
一瞬の隙で懐に入らんとする炭治郎の行く手を糸が阻む。ギュルッと累が糸を引くと禰豆子の姿が消えた。
2人の元にバタバタと血が垂れる。頭上を見上げると、禰豆子の身体に糸が食い込んだ状態で吊るされていた。
「禰豆子っ!!」
炭治郎が叫ぶと同時に、隣で膝をつく音が聞こえる。
からりと落ちた彼女の刀は、元の紺桔梗色に戻っていた。
ーーーーー
〜68【神頼みの綱】〜
くそっ...もう反動がっ
日向子は肩で息をしながらギリッと歯を噛み締める。
巫の異能と呼吸を連発すればこうなる事は分かっていたから、早々にけりをつける必要があった。
でも、もしもあの鬼の少年が..
自らの力で戦意を消すことが出来たなら、日向子はそれを信じようと思った。
伊之助に知られたら、馬鹿馬鹿しいとはっ倒されるだろうけれど。
でも駄目だったのだ。
ならば私は守る為に、奪われない為に闘う。
「炭治郎、ごめんね。私はもって呼吸が使えるのは、あと一回程度。だから、巫の異能であなたを手助けする。
糸は私が何とか防ぐから、炭治郎はあの鬼の懐にどうにか入って、そしたら私が壱ノ型を放つ。
炭治郎の刀に、【ヒノカミ様】を宿らせる。そうすればあの鬼の頚を切れるから。」
「え....」
「とにかく今は、言う通りにしてちょうだい」
日向子はあの時炭治郎にそう言って、共同戦線を挑む事にしたのだ。
でも、まさかこんなに早く反動が来るとは思わなかった。
まずい..、このままじゃ共倒れになってしまう。
「日向子姉さんっ!だ、大丈夫か?!..」
炭治郎が彼女の肩を支える。
ツーーと口端から垂れる血を見て、炭治郎はさぁっと顔を青くする。
その様子を見ていた塁は、にやりと笑った。
「その子はもう使い物にならないね。放って置いても死ぬだろう。全く冷や冷やさせるよね。君だけなら、殺すのは簡単そうだ」
ドクン、ドクンと湧き上がる怒りの脈動を炭治郎は必死に抑え込む。禰豆子を手にかけて、日向子姉さんは虫の息。
2人を守れるのは、自分しかいない。
炭治郎はすうっと息を吸い込む。
ー水の呼吸 拾ノ型 生生流転ー
次々と繰り出す斬撃で、炭治郎は糸を斬り放った。
よし、このまま距離を詰めていけば..
そう思ったが、
塁の懐に入り込むも、何故か彼は全く動じなかった。
「ねぇ、まさか糸の強度はこれが限界だと思ってるの?」
「!」
彼は血鬼術を発動した。
いくつもの糸が蜘蛛の巣のように無造作に交錯 する。
束になった糸を斬るには、明らかに回転が足りない。
負ける...
「た...炭治、郎っ...」
ヒューヒューとなる喉で、日向子は愛しい弟の名を発する。霞みゆく視界の向こうに、まさに手をかけられる瞬間の残像。
嫌なヴィジョンがよぎる。
いつも私は、愛しい人が
【目の前から居なくなる瞬間】を見てきた気がする。
そんなこと、させ....
ヒノカミ様ーー..
どうか彼等をお助けください
ーーーーー
〜69【絆の炎..ヒノカミ神楽】〜
炭治郎は走馬灯を見た。
死が差し迫る瞬間、過去の記憶が次々と流れていく。
その中で、必死に生き延びる術を探した。
血塗れで捕われている禰豆子を救わなければ、
酷いダメージを負っている日向子姉さんを早く医者に診せなければ
俺がやらなければー
失うなんて耐えられない、絶対に死なせないー
炭治郎は記憶の中で、父の影を見る。
(炭治郎、呼吸だ、呼吸を整えて
ヒノカミ様になりきるんだ)
ヒノカミ様...
そう言えば姉さんも同じ事を言っていた
(この耳飾りと神楽だけは必ず、途切れさせずに継承していってくれ..【約束】なんだ)
ドクン...
身体の奥底に眠る何かがみなぎっていく。
呼吸音が僅かに変わった。
ーヒノカミ神楽‼ (円舞)ー
炭治郎は激しく燃え盛る刀の刀身を、渾身の力で振り下ろした。
するとあれほど強固だった糸がバラけるように飛び散る。
突破された塁は目を見開く。しかし、瞬時に眼前に糸を張り巡らした。彼とて一瞬の隙も与えない。
今ここで相手を殺る。それは両者とも同じだった。
炭治郎はそれでも、退くことをしない。
ここで退いたとて、呼吸をいきなり切り替えた反動が来れば身体が動かなくなる事がわかっていた。
隙の糸が見えたなら、今がこの鬼を討ち取る逃せない機会だ。
ー父さんごめん...ー
今やらなければ、
例え相討ちになったとしても、この体が果てようとも
【大切な人達を守らなければ】
父が哀しそうな顔をする。それでも、
炭治郎の思いを受け止めたかのように、笑っていた。
お前ならそう言うと思っていたと、そう語りかけているかのように
日向子は燃え盛る温かな炎を見た。
懐かしい...
それでいて途方もなく切ない光り
それが炭治郎が発しているものと気付き、ふと安心する。
ヒノカミ様..いや
きっと父さんが守ってくれたのだ。
日向子はその情景を見届けると、
意識を手離した。
一方眠っている禰豆子が暗闇の中で耳にしたのは、懐かしい母の声。
起きてと、しきりに話し掛けられているのはわかってるのに、なんだかもの凄く眠くて、目が開けられないんだ。
ー禰豆子..お兄ちゃんとお姉ちゃんまで、死んでしまうわよー
はらはらと泣きながら母はそう言った。
いけない、守らなきゃ
こんな所で眠っている場合じゃないんだわ、私。
禰豆子は目をカッと見開いた。
グググと身体中の血を沸騰させるように力を込める。
そして、爆発した炎が糸を伝わり、
兄へと伸びていった。
ーーーーー
馬鹿な..十二鬼月である俺の糸が
金属さえいとも簡単に切断し数多の人間を
それが全く通用しないだと、塁はギリと唇を噛んだ。
あの方が、抹殺せよに通達を変えたのも頷ける。彼女は危険分子だ。我々鬼にとっての。
「君を家族にするのはやめだ。殺す。その奥の妹だけ渡して貰う。」
ヒュンと空を切る音と共に抱き抱えていた筈の禰豆子の感触が無くなる。少年の方を見ると彼は無理やり禰豆子を抱き留めていた。
「さぁ、もう奪ったよ。後は君達2人を、殺すだけだ」
炭治郎が駆け出そうとした時、日向子が哀れみをもった眼差しで最終警告を言い渡す。
「思い出せないのなら、仕方ない。
私達は奪われない為に闘うわ。」
炭治郎は戸惑う。匂いは日向子姉さんなんだ。自我も失っていない。
けれど、あんなに怪我も負っていたし、恐らく巫の異能を使ったのだろう。立っているのがやっと筈だ。
なのに、この状態はどういう事なのだろうか。
初めて目の当たりにした変化に、彼女の状態が全くわからない。
日向子姉さん、ごめん..
あの時俺は、伊之助の怪我を治した時から、おおよそ気付いていたんだ。なのに
気付かせないような素振りをしたあなたを見て、止められなかった。
結果、無理をさせてしまった。
何があっても守ると誓った人だったのに
日向子は刀を再度抜刀した。
その刀は真白に輝き、僅かな光の加減で様々な色に変化し光っていた。
まるで太陽光そのもの。
美しい刀身だった。
「炭治郎」
「!」
日向子は炭治郎に耳打ちした。
彼はぎゅっと刀の柄を握り締める。
塁を見る目の色が変わった。
彼等は何かをしでかす気でいると悟る。
ダッと走り出す炭治郎を近付かせまいと累は糸でガードした。
彼女を殺す前に、まずはこの男を葬る方が手っ取り早い。
「っ!邪魔だよ!!」
男の方にターゲットを絞りきれない。日向子は塁の行動範囲を抑制するように立ち回る。
一息つく暇もない。この女に通常の糸は効かないならうんと強度が高く密集した糸を作り出さなければ。
ちっ...面倒だなぁ
一瞬の隙で懐に入らんとする炭治郎の行く手を糸が阻む。ギュルッと累が糸を引くと禰豆子の姿が消えた。
2人の元にバタバタと血が垂れる。頭上を見上げると、禰豆子の身体に糸が食い込んだ状態で吊るされていた。
「禰豆子っ!!」
炭治郎が叫ぶと同時に、隣で膝をつく音が聞こえる。
からりと落ちた彼女の刀は、元の紺桔梗色に戻っていた。
ーーーーー
〜68【神頼みの綱】〜
くそっ...もう反動がっ
日向子は肩で息をしながらギリッと歯を噛み締める。
巫の異能と呼吸を連発すればこうなる事は分かっていたから、早々にけりをつける必要があった。
でも、もしもあの鬼の少年が..
自らの力で戦意を消すことが出来たなら、日向子はそれを信じようと思った。
伊之助に知られたら、馬鹿馬鹿しいとはっ倒されるだろうけれど。
でも駄目だったのだ。
ならば私は守る為に、奪われない為に闘う。
「炭治郎、ごめんね。私はもって呼吸が使えるのは、あと一回程度。だから、巫の異能であなたを手助けする。
糸は私が何とか防ぐから、炭治郎はあの鬼の懐にどうにか入って、そしたら私が壱ノ型を放つ。
炭治郎の刀に、【ヒノカミ様】を宿らせる。そうすればあの鬼の頚を切れるから。」
「え....」
「とにかく今は、言う通りにしてちょうだい」
日向子はあの時炭治郎にそう言って、共同戦線を挑む事にしたのだ。
でも、まさかこんなに早く反動が来るとは思わなかった。
まずい..、このままじゃ共倒れになってしまう。
「日向子姉さんっ!だ、大丈夫か?!..」
炭治郎が彼女の肩を支える。
ツーーと口端から垂れる血を見て、炭治郎はさぁっと顔を青くする。
その様子を見ていた塁は、にやりと笑った。
「その子はもう使い物にならないね。放って置いても死ぬだろう。全く冷や冷やさせるよね。君だけなら、殺すのは簡単そうだ」
ドクン、ドクンと湧き上がる怒りの脈動を炭治郎は必死に抑え込む。禰豆子を手にかけて、日向子姉さんは虫の息。
2人を守れるのは、自分しかいない。
炭治郎はすうっと息を吸い込む。
ー水の呼吸 拾ノ型 生生流転ー
次々と繰り出す斬撃で、炭治郎は糸を斬り放った。
よし、このまま距離を詰めていけば..
そう思ったが、
塁の懐に入り込むも、何故か彼は全く動じなかった。
「ねぇ、まさか糸の強度はこれが限界だと思ってるの?」
「!」
彼は血鬼術を発動した。
いくつもの糸が蜘蛛の巣のように無造作に
束になった糸を斬るには、明らかに回転が足りない。
負ける...
「た...炭治、郎っ...」
ヒューヒューとなる喉で、日向子は愛しい弟の名を発する。霞みゆく視界の向こうに、まさに手をかけられる瞬間の残像。
嫌なヴィジョンがよぎる。
いつも私は、愛しい人が
【目の前から居なくなる瞬間】を見てきた気がする。
そんなこと、させ....
ヒノカミ様ーー..
どうか彼等をお助けください
ーーーーー
〜69【絆の炎..ヒノカミ神楽】〜
炭治郎は走馬灯を見た。
死が差し迫る瞬間、過去の記憶が次々と流れていく。
その中で、必死に生き延びる術を探した。
血塗れで捕われている禰豆子を救わなければ、
酷いダメージを負っている日向子姉さんを早く医者に診せなければ
俺がやらなければー
失うなんて耐えられない、絶対に死なせないー
炭治郎は記憶の中で、父の影を見る。
(炭治郎、呼吸だ、呼吸を整えて
ヒノカミ様になりきるんだ)
ヒノカミ様...
そう言えば姉さんも同じ事を言っていた
(この耳飾りと神楽だけは必ず、途切れさせずに継承していってくれ..【約束】なんだ)
ドクン...
身体の奥底に眠る何かがみなぎっていく。
呼吸音が僅かに変わった。
ーヒノカミ神楽‼ (円舞)ー
炭治郎は激しく燃え盛る刀の刀身を、渾身の力で振り下ろした。
するとあれほど強固だった糸がバラけるように飛び散る。
突破された塁は目を見開く。しかし、瞬時に眼前に糸を張り巡らした。彼とて一瞬の隙も与えない。
今ここで相手を殺る。それは両者とも同じだった。
炭治郎はそれでも、退くことをしない。
ここで退いたとて、呼吸をいきなり切り替えた反動が来れば身体が動かなくなる事がわかっていた。
隙の糸が見えたなら、今がこの鬼を討ち取る逃せない機会だ。
ー父さんごめん...ー
今やらなければ、
例え相討ちになったとしても、この体が果てようとも
【大切な人達を守らなければ】
父が哀しそうな顔をする。それでも、
炭治郎の思いを受け止めたかのように、笑っていた。
お前ならそう言うと思っていたと、そう語りかけているかのように
日向子は燃え盛る温かな炎を見た。
懐かしい...
それでいて途方もなく切ない光り
それが炭治郎が発しているものと気付き、ふと安心する。
ヒノカミ様..いや
きっと父さんが守ってくれたのだ。
日向子はその情景を見届けると、
意識を手離した。
一方眠っている禰豆子が暗闇の中で耳にしたのは、懐かしい母の声。
起きてと、しきりに話し掛けられているのはわかってるのに、なんだかもの凄く眠くて、目が開けられないんだ。
ー禰豆子..お兄ちゃんとお姉ちゃんまで、死んでしまうわよー
はらはらと泣きながら母はそう言った。
いけない、守らなきゃ
こんな所で眠っている場合じゃないんだわ、私。
禰豆子は目をカッと見開いた。
グググと身体中の血を沸騰させるように力を込める。
そして、爆発した炎が糸を伝わり、
兄へと伸びていった。
ーーーーー