◆第参章 新たなる門出へ
貴女のお名前を教えてください
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〜43【不器用な人】
結局あの後、誰が日向子を継子にするか争奪戦が始まってしまい、収集を付ける為に親方様が解散を命じ、ようやく渋々引いてくれたのだった。
炭治郎達の元へ戻りたい旨を伝えると、産屋敷は東京の浅草へ向かうように言った。
彼等と巡り合うまでは烏が案内してくれるらしい。
道中、彼女は先程の出来事を思い返す。
師範に詳しく聞きたいことが山程あった。何故彼女は、日向子に【全て】を語ってくれなかったのだろう...。
星の呼吸の特性も、巫一族の特徴も
彼女は剣術の基礎は事細かく教えてくれたのに。
少し、いや..かなりショックだ。
「師範は、私では役不足だと思っているのかな。」
「それは違う」
!!
独り言のつもりがまさか言葉を返されるとは思っておらず反射的に飛び上がる。声のした方を見ると先程あったばかりの人物が。
「冨岡様?」
様はつけなくていいと言って暗闇から出てきた彼は、相変わらず表情がなく読み取りづらい。後をつけてきたのだろうか?一体何故..
「護衛は結構ですと申し上げたんですが」
すると彼は別件だと言って、一つだけ忠告しに来たのだと言った。
「星の呼吸元柱様は、ただお前に死に急いで欲しくないのだろう。自分の事はさておき、他人を案じてばかりなのだから。お前は..炭治郎によく似ている。」
「っ炭治郎の事..知っているんですか」
知っているも何も、炭治郎は弟弟子で2年前の惨劇の日も既に会っているのだと言った。
なんてことだ、鬼殺隊の柱が、すぐ近くまでいたのか..
今更どう足掻いても遅いけれど、運命とはつくづく残酷だと思う。
彼女の心を察したように義勇は、あの時、助けられなくてすまなかったと言った。
違う。
きっとあの時、彼が間に合っていても、最悪の事態は回避できなかったかもしれない。
それでも、彼は謝った。
あぁ、この人もまた
「あなたも、辛い過去を経験されてきたのですね」
そう問いかけると、彼は僅かに目蓋 を揺らした。
なんだ、分かりづらい人だなぁと思っていたが、なんて事はない。
寧ろこんなにわかりやすい人もいないかもしれない。
「冨岡さん。あなたは凄く優しい人ですね。」
ありがとうございます。そう言って微笑むと彼は、不意に顔を逸らした。
やがてこちらに表情は一切見せずに言葉だけを発する。
「覚えておいてくれ。大切な者を失えば、それを一生悔やみ背負う人間がいることを」
それだけを言うと、再び彼は夜の闇へと消えていった。
ーーーーー
〜44【東京浅草の騒動】
「うわぁ..凄い。これが東京なんだ」
浅草に着くと、煌々 と街中を照らす灯りと人の多さに日向子は圧倒されていた。
禍除けの力が込められた市女傘をしっかりと被り直し、炭治郎達を探すこと数分。
男性が叫んでいる所に遭遇し何事かと思って近寄ると、禰豆子が寝入っている姿を発見した。
「おいこら嬢ちゃん!せっかく俺が作ってやったうどんを一口も食わずに寝やがるとはいい度胸してるな!」
慌てて割って入り、店主に訳を聞くと、うどんを注文したにも関わらず、一緒にいた少年は血相変えて走っていくわ娘はいきなり寝るわで散々なのだと文句を垂れた。
炭治郎が禰豆子を置いてその場を離れるなど、余程の事情がない限りは有り得ない。
何か..あったのだろうか。
そう不穏に感じた矢先、大通りの方で騒がしい音がする。人が何かから逃れるように走ってくるのが見えた。
「一体何が...」
むくりと起き上がる禰豆子に気付き、日向子は炭治郎は?と聞くも最初はボーッとしていて視点がはっきりしない。
その内店主が無視された事も相まって尚のこと激昂し始めるものだから、どうしたものかと考えあぐねていた時、突然炭治郎が背後から箸を掴み、うどんを食べ出した。
礼を言い小銭を押し付けると、ようやく堪忍してくれたようだ。そのまま2人の手を掴みその場を離れる。
「日向子姉さん、良かった無事に会うことが出来て。禰豆子、いきなり置き去りにしてごめんな」
人気のないところまで来ると炭治郎は、日向子を抱き締め禰豆子の頭を撫でた。
「炭治郎、私も会えて良かった..ねぇ、通りで何かあったの?」
そう聞くと、炭治郎は険しい表情で唇を噛んだ。
「実は」
突然禰豆子が炭治郎の手をぐいっと引っ張る。明らかに敵意のある目が何かを捉えていた。
そこに佇んでいたのは、書生の格好をした男の子。
でも何処となく雰囲気がおかしい。日向子は反射的に腰に手を伸ばすが、炭治郎はそれを優しく制した。
「待っててくれたんですか?俺は匂いが辿れるのに」
どうやら炭治郎の知り合いのようだが、随分と面倒ごとを拾ってしまったというような呆れが伝わってくる。
「目眩しの術をかけている。辿れるものか。
それより..鬼じゃないかその女は、しかも醜女だ。
それにその妙な市女傘を被った奴は何者だ?
吐き気がする乾いた匂いがする。そんな奴を珠世様の元に連れ行く訳にはいかん。置いていけ。」
その瞬間、炭治郎は書生の少年の胸ぐらを掴んだ。
ーーーーー
〜45【治療薬の確立へと】〜
突然胸ぐらを掴まれた少年はあからさまに顔を歪ませる。しかし炭治郎は引かなかった。
「何の真似だ。」
「俺は何をされても言われても構わない。でも禰豆子や、日向子姉さんの事を悪く言うのは許せない。」
しばらく無言の均衡が続き、日向子は構わないからと炭治郎の手を半ば強引に離す。
少年は乱れた襟を整えながら炭治郎を睨み付けた。
炭治郎の顔を覗き見ると、彼もまた物凄い形相で睨み返している。
こんなに怒る炭治郎は、なかなか見な....
「禰豆子は街でも評判の美人だったし!日向子姉さんはいつ何時でもいい匂いがするんだからな!」
あれ、なんだかちょっと
恥ずかしいぞ...
炭治郎もそんなに自信満々に言わなくても
禰豆子が超がつくほどの美人というのは私から見てもそうだし、姉バカと思われて仕方ないくらい激しく同意だけど。
書生の少年は、炭治郎のその言葉を聞いて、
すんと澄ました顔をすると、それはそれは長いため息を吐いた。
「お前、馬鹿なんだろう」
何でそうなるんだと喚 く炭治郎を他所に、少年はくるりと背を向けて黙々と歩き出した。
「市女傘の女、珠世様の前でもその傘を取らないと約束するなら連れていってもいい。【俺たちには】その匂いがどうしても敵わん。」
「!わかりました。約束します」
慌てて日向子は垂衣を流し顔全体を隠した。
しばらくし、彼についていく事数十分。
ようやく一軒の洋装の建物の前についた一行は、少年の案内で内部へと入った。
「珠世様。戻りました。」
彼が呼びかけたのは、ベッドに倒れ込む女性の傍らで寄り添っていた割烹着 姿の女性だった。
美人な人だ。
その光景を見て我に帰った炭治郎が、任せきりで申し訳ないと謝るが、彼女は気にした素振りを見せず、ただただ憂いを帯びた瞳で語った。
彼女達は鬼である事。
その鬼の立場であるが故の苦悩と、それを逆手に取り知った鬼の特性。
「珠世さん、鬼になってしまった人を、人間に戻す方法はありますか?」
炭治郎が縋る思いでそう問うと、しばらくしてそれは可能であることを話してくれた。
教えてくれと頼み込む炭治郎に対し珠世は残念そうに目をふせる。
「ただ、今の時点では鬼を元に戻す事は出来ません。」
珠世は日向子の方を見た。
「貴女は、私達鬼が苦手とする太陽の香りがしますね。ひょっとすると、治療法の確立に近しい存在であるかもしれない。
是非とも貴女の血を調べさせてください。」
ーーーーー
〜46【奇襲】〜
「私の血をですか?それは構いません!それで禰豆子が人に戻れる可能性があるのならいくらでも!」
そう答えると、珠世はくすりと微笑み、あなた方は強い絆で結ばれているのですねと話した。
とても優しい顔をしていた..。
彼女は特殊な採取棒を日向子の腕に突き刺すとみるみるうちに一定量の血が取られていく。
炭治郎が不安気にその一部始終を見ていた。
「貴女は、何か特別な神職の家系の出ですか?禰豆子さんのような鬼も異例ですが、日向子さんのような鬼の血を拒む人間も私は初めて見ました。あの鬼舞辻でさえ鬼に出来なかった..。
何か、何か道が拓けそうな気がします。」
日向子は彼女らに自分の本当の生い立ちと、これまで分かってきた事について話した。
興味深く珠世は聞いていた。
頭の良い彼女は大体のことを噛み砕いて理解したようだった。
「巫一族の存在は、過去に耳にした事があります。
あれはもう数百年前のことでしたね..滅んだと聞いていましたが、何たる偶然でしょう。」
彼女は日向子の血を大事そうにしまうと、加えて禰豆子の血液、そしてより鬼舞辻に近しい鬼の血を取ってきて貰いたいと炭治郎達にお願いをした。
危険なことである事は重々承知でも、迷いはなかった。
「禰豆子だけでなく、もっとたくさんの人が助かるのなら、俺はその役目を引き受けます。」
「私も元よりそのつもりです。」
真っ直ぐな眼差しを向けると、ふっと彼女は笑いそうですかと呟いた。
その直後、愈史郎が何かの気配を察知したように伏せろと叫ぶ。反射的に炭治郎は禰豆子と(名前)に覆いかぶさるような態勢を取り、愈史郎も珠世を守るように抱え乱角な攻撃をしのぐ
巧妙に隠されていた筈の建物が無残にも外界が露わになり、甲高い声が響き渡った。
「キャハハ!見つけた見つけた。」
ぽんぽんと鞠をつく鬼の少女がにたり顔でこちらを指差している。瞬間新たな奇襲を仕掛けてきた。
炭治郎は禰豆子に奥で眠る女性を安全なところへ移すよう指示し、日向子もまた抜刀し戦闘体制に入る。
「耳に飾りの鬼狩りはお前じゃのう。邪魔者もおるが仕方ない。他も皆殺しにしてくれようぞ。」
この鬼達はどうやら炭治郎を狙っているらしかった。
匂いからすると今までの鬼とは桁外れだと言う。
耳飾り...それを狙う鬼舞辻直属の配下。
日向子の中で、あの惨劇の夜の記憶が蘇る。
私が家族を守れなかったあの夜。
もう同じ過ちは繰り返さない
私はもう無力じゃないもの
ーーーーー
結局あの後、誰が日向子を継子にするか争奪戦が始まってしまい、収集を付ける為に親方様が解散を命じ、ようやく渋々引いてくれたのだった。
炭治郎達の元へ戻りたい旨を伝えると、産屋敷は東京の浅草へ向かうように言った。
彼等と巡り合うまでは烏が案内してくれるらしい。
道中、彼女は先程の出来事を思い返す。
師範に詳しく聞きたいことが山程あった。何故彼女は、日向子に【全て】を語ってくれなかったのだろう...。
星の呼吸の特性も、巫一族の特徴も
彼女は剣術の基礎は事細かく教えてくれたのに。
少し、いや..かなりショックだ。
「師範は、私では役不足だと思っているのかな。」
「それは違う」
!!
独り言のつもりがまさか言葉を返されるとは思っておらず反射的に飛び上がる。声のした方を見ると先程あったばかりの人物が。
「冨岡様?」
様はつけなくていいと言って暗闇から出てきた彼は、相変わらず表情がなく読み取りづらい。後をつけてきたのだろうか?一体何故..
「護衛は結構ですと申し上げたんですが」
すると彼は別件だと言って、一つだけ忠告しに来たのだと言った。
「星の呼吸元柱様は、ただお前に死に急いで欲しくないのだろう。自分の事はさておき、他人を案じてばかりなのだから。お前は..炭治郎によく似ている。」
「っ炭治郎の事..知っているんですか」
知っているも何も、炭治郎は弟弟子で2年前の惨劇の日も既に会っているのだと言った。
なんてことだ、鬼殺隊の柱が、すぐ近くまでいたのか..
今更どう足掻いても遅いけれど、運命とはつくづく残酷だと思う。
彼女の心を察したように義勇は、あの時、助けられなくてすまなかったと言った。
違う。
きっとあの時、彼が間に合っていても、最悪の事態は回避できなかったかもしれない。
それでも、彼は謝った。
あぁ、この人もまた
「あなたも、辛い過去を経験されてきたのですね」
そう問いかけると、彼は僅かに
なんだ、分かりづらい人だなぁと思っていたが、なんて事はない。
寧ろこんなにわかりやすい人もいないかもしれない。
「冨岡さん。あなたは凄く優しい人ですね。」
ありがとうございます。そう言って微笑むと彼は、不意に顔を逸らした。
やがてこちらに表情は一切見せずに言葉だけを発する。
「覚えておいてくれ。大切な者を失えば、それを一生悔やみ背負う人間がいることを」
それだけを言うと、再び彼は夜の闇へと消えていった。
ーーーーー
〜44【東京浅草の騒動】
「うわぁ..凄い。これが東京なんだ」
浅草に着くと、
禍除けの力が込められた市女傘をしっかりと被り直し、炭治郎達を探すこと数分。
男性が叫んでいる所に遭遇し何事かと思って近寄ると、禰豆子が寝入っている姿を発見した。
「おいこら嬢ちゃん!せっかく俺が作ってやったうどんを一口も食わずに寝やがるとはいい度胸してるな!」
慌てて割って入り、店主に訳を聞くと、うどんを注文したにも関わらず、一緒にいた少年は血相変えて走っていくわ娘はいきなり寝るわで散々なのだと文句を垂れた。
炭治郎が禰豆子を置いてその場を離れるなど、余程の事情がない限りは有り得ない。
何か..あったのだろうか。
そう不穏に感じた矢先、大通りの方で騒がしい音がする。人が何かから逃れるように走ってくるのが見えた。
「一体何が...」
むくりと起き上がる禰豆子に気付き、日向子は炭治郎は?と聞くも最初はボーッとしていて視点がはっきりしない。
その内店主が無視された事も相まって尚のこと激昂し始めるものだから、どうしたものかと考えあぐねていた時、突然炭治郎が背後から箸を掴み、うどんを食べ出した。
礼を言い小銭を押し付けると、ようやく堪忍してくれたようだ。そのまま2人の手を掴みその場を離れる。
「日向子姉さん、良かった無事に会うことが出来て。禰豆子、いきなり置き去りにしてごめんな」
人気のないところまで来ると炭治郎は、日向子を抱き締め禰豆子の頭を撫でた。
「炭治郎、私も会えて良かった..ねぇ、通りで何かあったの?」
そう聞くと、炭治郎は険しい表情で唇を噛んだ。
「実は」
突然禰豆子が炭治郎の手をぐいっと引っ張る。明らかに敵意のある目が何かを捉えていた。
そこに佇んでいたのは、書生の格好をした男の子。
でも何処となく雰囲気がおかしい。日向子は反射的に腰に手を伸ばすが、炭治郎はそれを優しく制した。
「待っててくれたんですか?俺は匂いが辿れるのに」
どうやら炭治郎の知り合いのようだが、随分と面倒ごとを拾ってしまったというような呆れが伝わってくる。
「目眩しの術をかけている。辿れるものか。
それより..鬼じゃないかその女は、しかも醜女だ。
それにその妙な市女傘を被った奴は何者だ?
吐き気がする乾いた匂いがする。そんな奴を珠世様の元に連れ行く訳にはいかん。置いていけ。」
その瞬間、炭治郎は書生の少年の胸ぐらを掴んだ。
ーーーーー
〜45【治療薬の確立へと】〜
突然胸ぐらを掴まれた少年はあからさまに顔を歪ませる。しかし炭治郎は引かなかった。
「何の真似だ。」
「俺は何をされても言われても構わない。でも禰豆子や、日向子姉さんの事を悪く言うのは許せない。」
しばらく無言の均衡が続き、日向子は構わないからと炭治郎の手を半ば強引に離す。
少年は乱れた襟を整えながら炭治郎を睨み付けた。
炭治郎の顔を覗き見ると、彼もまた物凄い形相で睨み返している。
こんなに怒る炭治郎は、なかなか見な....
「禰豆子は街でも評判の美人だったし!日向子姉さんはいつ何時でもいい匂いがするんだからな!」
あれ、なんだかちょっと
恥ずかしいぞ...
炭治郎もそんなに自信満々に言わなくても
禰豆子が超がつくほどの美人というのは私から見てもそうだし、姉バカと思われて仕方ないくらい激しく同意だけど。
書生の少年は、炭治郎のその言葉を聞いて、
すんと澄ました顔をすると、それはそれは長いため息を吐いた。
「お前、馬鹿なんだろう」
何でそうなるんだと
「市女傘の女、珠世様の前でもその傘を取らないと約束するなら連れていってもいい。【俺たちには】その匂いがどうしても敵わん。」
「!わかりました。約束します」
慌てて日向子は垂衣を流し顔全体を隠した。
しばらくし、彼についていく事数十分。
ようやく一軒の洋装の建物の前についた一行は、少年の案内で内部へと入った。
「珠世様。戻りました。」
彼が呼びかけたのは、ベッドに倒れ込む女性の傍らで寄り添っていた
美人な人だ。
その光景を見て我に帰った炭治郎が、任せきりで申し訳ないと謝るが、彼女は気にした素振りを見せず、ただただ憂いを帯びた瞳で語った。
彼女達は鬼である事。
その鬼の立場であるが故の苦悩と、それを逆手に取り知った鬼の特性。
「珠世さん、鬼になってしまった人を、人間に戻す方法はありますか?」
炭治郎が縋る思いでそう問うと、しばらくしてそれは可能であることを話してくれた。
教えてくれと頼み込む炭治郎に対し珠世は残念そうに目をふせる。
「ただ、今の時点では鬼を元に戻す事は出来ません。」
珠世は日向子の方を見た。
「貴女は、私達鬼が苦手とする太陽の香りがしますね。ひょっとすると、治療法の確立に近しい存在であるかもしれない。
是非とも貴女の血を調べさせてください。」
ーーーーー
〜46【奇襲】〜
「私の血をですか?それは構いません!それで禰豆子が人に戻れる可能性があるのならいくらでも!」
そう答えると、珠世はくすりと微笑み、あなた方は強い絆で結ばれているのですねと話した。
とても優しい顔をしていた..。
彼女は特殊な採取棒を日向子の腕に突き刺すとみるみるうちに一定量の血が取られていく。
炭治郎が不安気にその一部始終を見ていた。
「貴女は、何か特別な神職の家系の出ですか?禰豆子さんのような鬼も異例ですが、日向子さんのような鬼の血を拒む人間も私は初めて見ました。あの鬼舞辻でさえ鬼に出来なかった..。
何か、何か道が拓けそうな気がします。」
日向子は彼女らに自分の本当の生い立ちと、これまで分かってきた事について話した。
興味深く珠世は聞いていた。
頭の良い彼女は大体のことを噛み砕いて理解したようだった。
「巫一族の存在は、過去に耳にした事があります。
あれはもう数百年前のことでしたね..滅んだと聞いていましたが、何たる偶然でしょう。」
彼女は日向子の血を大事そうにしまうと、加えて禰豆子の血液、そしてより鬼舞辻に近しい鬼の血を取ってきて貰いたいと炭治郎達にお願いをした。
危険なことである事は重々承知でも、迷いはなかった。
「禰豆子だけでなく、もっとたくさんの人が助かるのなら、俺はその役目を引き受けます。」
「私も元よりそのつもりです。」
真っ直ぐな眼差しを向けると、ふっと彼女は笑いそうですかと呟いた。
その直後、愈史郎が何かの気配を察知したように伏せろと叫ぶ。反射的に炭治郎は禰豆子と(名前)に覆いかぶさるような態勢を取り、愈史郎も珠世を守るように抱え乱角な攻撃をしのぐ
巧妙に隠されていた筈の建物が無残にも外界が露わになり、甲高い声が響き渡った。
「キャハハ!見つけた見つけた。」
ぽんぽんと鞠をつく鬼の少女がにたり顔でこちらを指差している。瞬間新たな奇襲を仕掛けてきた。
炭治郎は禰豆子に奥で眠る女性を安全なところへ移すよう指示し、日向子もまた抜刀し戦闘体制に入る。
「耳に飾りの鬼狩りはお前じゃのう。邪魔者もおるが仕方ない。他も皆殺しにしてくれようぞ。」
この鬼達はどうやら炭治郎を狙っているらしかった。
匂いからすると今までの鬼とは桁外れだと言う。
耳飾り...それを狙う鬼舞辻直属の配下。
日向子の中で、あの惨劇の夜の記憶が蘇る。
私が家族を守れなかったあの夜。
もう同じ過ちは繰り返さない
私はもう無力じゃないもの
ーーーーー