◆第参章 新たなる門出へ
貴女のお名前を教えてください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〜35【鬼殺隊へ】
ー7日目の早朝ー
最終選別の条件をクリアした二人は、スタート地点の中腹へ向かった。そこで炭治郎は唖然とする。
「そんな..たった5人なんて」
「最初は何人居たの?」
20人はいた事を伝えると、彼女も驚きを隠せない様子だった。何でも彼女は後から追うように山を上がってきたようで、参加人数は把握してなかったらしい。
双子の少女達が淡々と説明する途中、やけに気性の荒い少年がいた。刀の支給をしきりに急かしており、なんだか態度が気に入らないなぁと炭治郎は眉根を寄せていた。
隊員に支給される物の一つ、鎹烏(かすがいがらす)が空を舞う。鴉と言うからには、みな黒い烏が与えられているかと思えば、金髪の少年は雀?そして日向子姉さんは..
「わぁっ、白い鴉だわ..」
アルビノのような白い毛並みの鴉が彼女の市女傘に止まっている。
綺麗だなぁ...。
姉さんはとても嬉しそうだ。何でも彼女の師範がよく白鴉を肩に纏っていたらしい。
炭治郎がそちらに気をとられていたその時。
ぎゃあっという鴉の鳴き声と羽音が聞こえて、見ると先程の少年が鴉を払い、白髪の少女の前髪を掴んでいる。
「鴉なんてどうでもいいんだよ!早く刀を寄越せ!【色変わりの刀】を!」
日向子がたまらず口を開いたと同時に炭治郎が動く。
少年の腕を握り、その手の力の入りようを見ると、相当怒っているようだ。
曲がった事が嫌いな、正義感の強い炭治郎が、
この光景を黙って見ていられる筈がないのだ。
尚も、喧嘩腰な少年に対して、ついに炭治郎は彼の腕の骨が折れる直前まで力を込めた。
ミシッと嫌な音が響き、少年は溜まらず腕を離す。金髪の少年はぎょっとしてその光景を見ていた。彼女を守るように立ちはだかる炭治郎を見て、少年は舌打ちした。
日向子はやれやれと肩を竦 め、被害に遭った子の頬を優しく拭う。
可哀想に...血が出ているわ。
黒髪の少女が構う事なく先に進める。
少しは同じ血を分けた姉妹をいたわってもいい気がするが、公私混同はしないように育てられているのだろうか..日向子は僅かに首を傾げる。
ともあれ、これで晴れて
日向子と炭治郎は鬼殺隊に属する事を許されたのだ。
日向子の当初の目的は一つ、果たされた。
後は、【鬼舞辻無惨を倒す事】だけだ。
「炭治郎、私そのまま師範の元へ戻ろうと思ったけど、禰豆子に会いたいんだ。一緒について行って構わない?」
炭治郎は彼女にそう問われると、肝心な事を話していない事に気付く..
ーーーーー
〜36【愛しい妹】〜
「日向子姉さん、禰豆子なんだが
生きてはいるしそれは嘘じゃないんだ。けれど...」
彼女は嫌な予感を察したように表情を曇らせる。
「...まさか、禰豆子が鬼にされたというの?」
こくりと頷くとそんなまさかと目眩を起こしたかのように彼女は額に手を当てた。
しかし、全て受け入れたように深く息をすると、こう話した。
「大丈夫、禰豆子を人間に戻す方法はきっとある筈だよ。私も同じ思いだから、一緒に頑張りましょう。炭治郎」
竈門家の幸せを一晩にして奪って行った。
憎き敵....鬼舞辻無惨。
皆を殺し、禰豆子を鬼へ変えた張本人。
炭治郎も日向子も、こいつだけは決して許さないと、そう固く心に刻んでいた。
炭治郎が鱗滝から教えてもらった、無惨の概要。
それは、この世で人を鬼へと変える事が出来る唯一の個体であること。
そして、鬼から人間に戻す手掛かりを持っているだろうことだ。
それは彼女の師範からも同様に聞かされているらしい。
「人間に戻す手掛かりを、教えたいところだけど..実は奴に囚われてから、ほとんど直接接触した事はないの。
眠らされていたから..鬼の生態はおろか無惨の事もあまりわからなくて、ごめんなさい。」
「いや、いいんだ日向子姉さん。その時の事はあまり思い出さなくていい。辛い記憶だろうから」
そう、彼女も被害者なのだ。
炭治郎は拳をこれでもかとキツく握った。
「とりあえず..帰ろう。
禰豆子は鬼になってしまったけど、何故だか人を食わないんだ。
だから、一緒に旅が出来ているけど、今はもう2年近く眠ってしまってる。
原因はわからない、でも日向子姉さんに会ったら起きるかもしれないなぁ。
姉さんのこと大好きだったから。」
炭治郎はそんな淡い希望を口にすると、
日向子の手を引いて2人は山を下っていく。
彼の師範の家までの道中、7日間の疲労が一気に襲ってきた2人は、身体中あちこちに現れる痛みに耐えながらやっとこさ辿り着いた。
その時、バンッという激しい音と共に家の中から現れたのは
「禰豆子!お前起きたのかぁー!」
炭治郎が感極まり叫ぶと、彼女はくるっとこちらを向き駆け寄ってくる。
駆け寄ろうと踏み出したもののバランスを崩した炭治郎をひしと抱き締めた。
彼の師範である鱗滝さんも、よく帰ったと覆いかぶさるように抱き締める。
あぁ..鬼でも何でも関係ない、
紛れもなく愛しい妹だ。
込み上げる思いを日向子は必死に押さえ込む。
彼女には、禰豆子に触れられない理由があった。
ーーーーー
〜37【相容れぬ血】〜
禰豆子は日向子に気付くと、じーっと見つめていた。
炭治郎が日向子姉さんだぞ、覚えているか?と問いかけると、やがて目を見開いてタッと駆け寄ってくる。
「駄目よ禰豆子!!」
日向子は苦しそうな表情で禰豆子を制止する。
びくりと肩を震わして彼女は立ち止まった。
禰豆子は悲しそうに眉を下げて、うーっと唸っている。あぁ、こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
炭治郎はハッとすると禰豆子を優しく引き戻した。
「ごめんな禰豆子、姉さんに抱き着いたらいけないんだ。お前の体が、崩れてしまうかもしれないから。」
炭治郎の言う言葉を全てすんなり理解できていないような様子を見せる禰豆子は、
悲しそうに日向子を見つめるばかりだ。
こんなにも我が身が引き裂かれるような思いをした事はない。
久方ぶりに再会した愛しい妹を、思い切り抱きしめる事も出来ない身体なんて..
皮肉にも、この時ばかりは少し、巫の血が煩わしいと思ってしまった。
「日向子姉さんのせいじゃない。
全部、鬼舞辻無惨が元凶なんだから..禰豆子が人に戻れば、また思い切り抱き締められる筈だ。元の家族に戻れる。だから、そんな顔をしないで」
「うん、そうだね..。」
日向子は禰豆子に近付くと、優しい声色で話しかける。
「禰豆子、日向子姉さんだよ。生きていてくれてありがとう。
必ず、人間に戻すから..それまで、少しだけ辛抱していてね。」
まるで日向子の思いがテレパシーで伝わったかのように、禰豆子はふわりと笑った。
大丈夫だよと言ってくれている気がした。
その瞬間、ぶわっと涙が溢れる。あぁどうしよう..炭治郎も鱗滝さんも見ているのに、止まらないよ。
そんな彼女を炭治郎が抱き締める。
絶え間なく涙が溢れてはそれを拭ってくれた。
声を上げてひとしきり泣くと、鱗滝さんが声をかけてくれた。
「日向子と言ったか。炭治郎からよく話は聞いていた。君は..鬼に触れられない体質なのか。」
そうだと答えると、詳しく理由を聞かれたので
体験した事を端々に話した。
すると興味深く相槌を打つ。
驚く事に、彼は巫一族の事を知っていた。
ただ、現代にも実在するかについては半信半疑だったようだ。
「すると、星の呼吸の使い手と言うことだな。君の持つ力は、他に類を見ない特別な力だ。大切にしなさい。君の師範は..その市女傘を見ればわかる。」
そうか、生きていたのだな..
面で表情こそ読み取れないが、鱗滝さんは、感慨深くそう呟いたのだった。
ーーーーー
〜38【色変わりの日輪刀】〜
「ごめんね炭治郎、禰豆子にも会えたし、私一度師範のところに戻らないと..連絡してないから心配してると思うんだ。」
そう言うと、炭治郎はショックを受けたような顔で日向子を見る。
離れたくない
そんな思いが顔に出ているようだ。
でも、さすがに師範に無事な顔を見せないというのも気が引ける。悩んでいると鱗滝さんが助け舟を出してくれた。
「彼女には儂から鎹烏を送っておこう。お前たち家族は、一緒に居た方がいいだろう。
それに、数日もすれば刀鍛冶が日輪刀を受け渡しに来る筈だ。ちょうどいい、日向子の分も奴が打っているからな。」
「鱗滝さん。ありがとうございます。」
それはとても助かる。日向子は心から礼を述べた。何れ師範には2人を連れて会いに行くことにした。
それはそうと、日輪刀が来るんだったか..
炭治郎と同じ職人さんなのか、どんな刀だろう?
数日後、定刻通りに彼はやってきた。
炭治郎と共にひょっこり覗くと、傘にいくつもの風鈴をぶら下げた人物がやってくる。
「俺は鋼鐵塚というものだ。竈門炭治郎と、竈門日向子の刀を打った者だ。」
そう自己紹介をする彼を炭治郎はもてなす為に家に上げようとするも、全く聞く耳を持たず淡々と己の打った刀についてウンチクを言い続けた。
変わった人だ...。
ひょっとこのお面顔をずいっと上げて、炭治郎と日向子の顔を交互に見る。
すると、赫杓の子である事と、紺桔梗 色の瞳を持つ彼女を珍しがった。
様々な家柄や人柄の刀を打つと、特徴が何となくわかるそうだ。
「こりゃあ、刀の色も期待できるなぁ」
嬉々としてそう語ると、鋼鐵塚はそれぞれに刀を渡した。早く抜いてみてくれと急かすので、2人は同時に鞘から刃をゆっくりと抜く。
するとどうだろうか
「おぉー!嬢ちゃんのはやっぱり深い紺色か!光の加減で刃が虹色に輝くなぁ。たまげたたまげた!あー、それに比べてこれは..」
黒いな
明らかに日向子とは違う反応に、炭治郎はショックを受けて縁起が悪いものなのかを問うた。
すると、不吉とかではないものの、剣士としては一番不名誉な理由で、出世出来ないと言われる色らしかった。
「炭治郎、ただ珍しいって言われてるだけだから、大丈夫だよ?」
彼は項垂れたように肩を落としていた。
なんだか不便に思い、頭をよしよしと撫でると、炭治郎は口元を緩ませる。
禰豆子が羨ましそうにむーーっと唸っていた。
その時、彼等の鎹烏がけたたましく鳴いた
ーーーーー
ー7日目の早朝ー
最終選別の条件をクリアした二人は、スタート地点の中腹へ向かった。そこで炭治郎は唖然とする。
「そんな..たった5人なんて」
「最初は何人居たの?」
20人はいた事を伝えると、彼女も驚きを隠せない様子だった。何でも彼女は後から追うように山を上がってきたようで、参加人数は把握してなかったらしい。
双子の少女達が淡々と説明する途中、やけに気性の荒い少年がいた。刀の支給をしきりに急かしており、なんだか態度が気に入らないなぁと炭治郎は眉根を寄せていた。
隊員に支給される物の一つ、鎹烏(かすがいがらす)が空を舞う。鴉と言うからには、みな黒い烏が与えられているかと思えば、金髪の少年は雀?そして日向子姉さんは..
「わぁっ、白い鴉だわ..」
アルビノのような白い毛並みの鴉が彼女の市女傘に止まっている。
綺麗だなぁ...。
姉さんはとても嬉しそうだ。何でも彼女の師範がよく白鴉を肩に纏っていたらしい。
炭治郎がそちらに気をとられていたその時。
ぎゃあっという鴉の鳴き声と羽音が聞こえて、見ると先程の少年が鴉を払い、白髪の少女の前髪を掴んでいる。
「鴉なんてどうでもいいんだよ!早く刀を寄越せ!【色変わりの刀】を!」
日向子がたまらず口を開いたと同時に炭治郎が動く。
少年の腕を握り、その手の力の入りようを見ると、相当怒っているようだ。
曲がった事が嫌いな、正義感の強い炭治郎が、
この光景を黙って見ていられる筈がないのだ。
尚も、喧嘩腰な少年に対して、ついに炭治郎は彼の腕の骨が折れる直前まで力を込めた。
ミシッと嫌な音が響き、少年は溜まらず腕を離す。金髪の少年はぎょっとしてその光景を見ていた。彼女を守るように立ちはだかる炭治郎を見て、少年は舌打ちした。
日向子はやれやれと肩を
可哀想に...血が出ているわ。
黒髪の少女が構う事なく先に進める。
少しは同じ血を分けた姉妹をいたわってもいい気がするが、公私混同はしないように育てられているのだろうか..日向子は僅かに首を傾げる。
ともあれ、これで晴れて
日向子と炭治郎は鬼殺隊に属する事を許されたのだ。
日向子の当初の目的は一つ、果たされた。
後は、【鬼舞辻無惨を倒す事】だけだ。
「炭治郎、私そのまま師範の元へ戻ろうと思ったけど、禰豆子に会いたいんだ。一緒について行って構わない?」
炭治郎は彼女にそう問われると、肝心な事を話していない事に気付く..
ーーーーー
〜36【愛しい妹】〜
「日向子姉さん、禰豆子なんだが
生きてはいるしそれは嘘じゃないんだ。けれど...」
彼女は嫌な予感を察したように表情を曇らせる。
「...まさか、禰豆子が鬼にされたというの?」
こくりと頷くとそんなまさかと目眩を起こしたかのように彼女は額に手を当てた。
しかし、全て受け入れたように深く息をすると、こう話した。
「大丈夫、禰豆子を人間に戻す方法はきっとある筈だよ。私も同じ思いだから、一緒に頑張りましょう。炭治郎」
竈門家の幸せを一晩にして奪って行った。
憎き敵....鬼舞辻無惨。
皆を殺し、禰豆子を鬼へ変えた張本人。
炭治郎も日向子も、こいつだけは決して許さないと、そう固く心に刻んでいた。
炭治郎が鱗滝から教えてもらった、無惨の概要。
それは、この世で人を鬼へと変える事が出来る唯一の個体であること。
そして、鬼から人間に戻す手掛かりを持っているだろうことだ。
それは彼女の師範からも同様に聞かされているらしい。
「人間に戻す手掛かりを、教えたいところだけど..実は奴に囚われてから、ほとんど直接接触した事はないの。
眠らされていたから..鬼の生態はおろか無惨の事もあまりわからなくて、ごめんなさい。」
「いや、いいんだ日向子姉さん。その時の事はあまり思い出さなくていい。辛い記憶だろうから」
そう、彼女も被害者なのだ。
炭治郎は拳をこれでもかとキツく握った。
「とりあえず..帰ろう。
禰豆子は鬼になってしまったけど、何故だか人を食わないんだ。
だから、一緒に旅が出来ているけど、今はもう2年近く眠ってしまってる。
原因はわからない、でも日向子姉さんに会ったら起きるかもしれないなぁ。
姉さんのこと大好きだったから。」
炭治郎はそんな淡い希望を口にすると、
日向子の手を引いて2人は山を下っていく。
彼の師範の家までの道中、7日間の疲労が一気に襲ってきた2人は、身体中あちこちに現れる痛みに耐えながらやっとこさ辿り着いた。
その時、バンッという激しい音と共に家の中から現れたのは
「禰豆子!お前起きたのかぁー!」
炭治郎が感極まり叫ぶと、彼女はくるっとこちらを向き駆け寄ってくる。
駆け寄ろうと踏み出したもののバランスを崩した炭治郎をひしと抱き締めた。
彼の師範である鱗滝さんも、よく帰ったと覆いかぶさるように抱き締める。
あぁ..鬼でも何でも関係ない、
紛れもなく愛しい妹だ。
込み上げる思いを日向子は必死に押さえ込む。
彼女には、禰豆子に触れられない理由があった。
ーーーーー
〜37【相容れぬ血】〜
禰豆子は日向子に気付くと、じーっと見つめていた。
炭治郎が日向子姉さんだぞ、覚えているか?と問いかけると、やがて目を見開いてタッと駆け寄ってくる。
「駄目よ禰豆子!!」
日向子は苦しそうな表情で禰豆子を制止する。
びくりと肩を震わして彼女は立ち止まった。
禰豆子は悲しそうに眉を下げて、うーっと唸っている。あぁ、こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
炭治郎はハッとすると禰豆子を優しく引き戻した。
「ごめんな禰豆子、姉さんに抱き着いたらいけないんだ。お前の体が、崩れてしまうかもしれないから。」
炭治郎の言う言葉を全てすんなり理解できていないような様子を見せる禰豆子は、
悲しそうに日向子を見つめるばかりだ。
こんなにも我が身が引き裂かれるような思いをした事はない。
久方ぶりに再会した愛しい妹を、思い切り抱きしめる事も出来ない身体なんて..
皮肉にも、この時ばかりは少し、巫の血が煩わしいと思ってしまった。
「日向子姉さんのせいじゃない。
全部、鬼舞辻無惨が元凶なんだから..禰豆子が人に戻れば、また思い切り抱き締められる筈だ。元の家族に戻れる。だから、そんな顔をしないで」
「うん、そうだね..。」
日向子は禰豆子に近付くと、優しい声色で話しかける。
「禰豆子、日向子姉さんだよ。生きていてくれてありがとう。
必ず、人間に戻すから..それまで、少しだけ辛抱していてね。」
まるで日向子の思いがテレパシーで伝わったかのように、禰豆子はふわりと笑った。
大丈夫だよと言ってくれている気がした。
その瞬間、ぶわっと涙が溢れる。あぁどうしよう..炭治郎も鱗滝さんも見ているのに、止まらないよ。
そんな彼女を炭治郎が抱き締める。
絶え間なく涙が溢れてはそれを拭ってくれた。
声を上げてひとしきり泣くと、鱗滝さんが声をかけてくれた。
「日向子と言ったか。炭治郎からよく話は聞いていた。君は..鬼に触れられない体質なのか。」
そうだと答えると、詳しく理由を聞かれたので
体験した事を端々に話した。
すると興味深く相槌を打つ。
驚く事に、彼は巫一族の事を知っていた。
ただ、現代にも実在するかについては半信半疑だったようだ。
「すると、星の呼吸の使い手と言うことだな。君の持つ力は、他に類を見ない特別な力だ。大切にしなさい。君の師範は..その市女傘を見ればわかる。」
そうか、生きていたのだな..
面で表情こそ読み取れないが、鱗滝さんは、感慨深くそう呟いたのだった。
ーーーーー
〜38【色変わりの日輪刀】〜
「ごめんね炭治郎、禰豆子にも会えたし、私一度師範のところに戻らないと..連絡してないから心配してると思うんだ。」
そう言うと、炭治郎はショックを受けたような顔で日向子を見る。
離れたくない
そんな思いが顔に出ているようだ。
でも、さすがに師範に無事な顔を見せないというのも気が引ける。悩んでいると鱗滝さんが助け舟を出してくれた。
「彼女には儂から鎹烏を送っておこう。お前たち家族は、一緒に居た方がいいだろう。
それに、数日もすれば刀鍛冶が日輪刀を受け渡しに来る筈だ。ちょうどいい、日向子の分も奴が打っているからな。」
「鱗滝さん。ありがとうございます。」
それはとても助かる。日向子は心から礼を述べた。何れ師範には2人を連れて会いに行くことにした。
それはそうと、日輪刀が来るんだったか..
炭治郎と同じ職人さんなのか、どんな刀だろう?
数日後、定刻通りに彼はやってきた。
炭治郎と共にひょっこり覗くと、傘にいくつもの風鈴をぶら下げた人物がやってくる。
「俺は鋼鐵塚というものだ。竈門炭治郎と、竈門日向子の刀を打った者だ。」
そう自己紹介をする彼を炭治郎はもてなす為に家に上げようとするも、全く聞く耳を持たず淡々と己の打った刀についてウンチクを言い続けた。
変わった人だ...。
ひょっとこのお面顔をずいっと上げて、炭治郎と日向子の顔を交互に見る。
すると、赫杓の子である事と、紺
様々な家柄や人柄の刀を打つと、特徴が何となくわかるそうだ。
「こりゃあ、刀の色も期待できるなぁ」
嬉々としてそう語ると、鋼鐵塚はそれぞれに刀を渡した。早く抜いてみてくれと急かすので、2人は同時に鞘から刃をゆっくりと抜く。
するとどうだろうか
「おぉー!嬢ちゃんのはやっぱり深い紺色か!光の加減で刃が虹色に輝くなぁ。たまげたたまげた!あー、それに比べてこれは..」
黒いな
明らかに日向子とは違う反応に、炭治郎はショックを受けて縁起が悪いものなのかを問うた。
すると、不吉とかではないものの、剣士としては一番不名誉な理由で、出世出来ないと言われる色らしかった。
「炭治郎、ただ珍しいって言われてるだけだから、大丈夫だよ?」
彼は項垂れたように肩を落としていた。
なんだか不便に思い、頭をよしよしと撫でると、炭治郎は口元を緩ませる。
禰豆子が羨ましそうにむーーっと唸っていた。
その時、彼等の鎹烏がけたたましく鳴いた
ーーーーー