ツイステット・シンドローム
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「大昔から思っていたんだけど、アンタって本当、超がつくほどの完璧人げ……いや、人魚だよね」
「となりますと、前世のそのまた前世あたりから僕たちは知り合いということで。ああ、なんてロマンチックなんでしょう」
「やめろ。その顔で言うな。そのうち、シャンパン片手に“君の瞳に乾杯”とか言い出しそうで怖いわ。今時、映画でも無いセリフだよ。もうちょっと、普通の男子高校生みたいなことができないわけ?それこそ、フロイドを見習って年相応の振る舞いというかモノの言い方というか」
「何をおっしゃいます。どこからどう見てもごく普通の男子高校生ではないですか」
「いや、どこが。あんたが普通の高校生ならば、私は一体何になるのよ。あー、待って待って。脳みそ空っぽのクラゲか?まさかまさかのミジンコか?それとも、岩場に打ち上げられた干からびたフナムシとか」
よし。口を開く前にこいつが言うであろう、ある程度の候補は言ってやった。
何故こんなことをするのか。それにはちゃんとした策略がある。あらかじめ、こちらから言っておくことによって、相手の言葉の鉄砲に詰めらた弾丸を無くす。完全に無くす事はできなかったとしても、ある程度は減らす事は可能だろう。そして、一発や二発ばかりのなけなしの残弾ではそう簡単に当てることはできない。幸運にも当たらなかった私はダメージを受けなくて済むというわけだ。
「ふむ。なるほど……」
顎に手を当て、いかにも考えていますと言わんばかりのポーズをとる。
さあ、どうだ?苦しいか?残り弾が少なくて不安か?
くくくとほくそ笑んでいると、強いていうなら、これですかねと言って、制服の内ポケットから、スマホを取り出した。
「トドですかね」
「これまた、随分と斬新なチョイスを……って。ちょっと。それ私の寝顔じゃん。何勝手に撮ってるのさ」
「はて?何を仰っているのか、わかりませんね。誰がどう見ても飛行術で疲れ切り、居眠りしてしまっているところを先生に叩き起こされる五秒前のトドの写真ではないですか」
「わあ!すごい!昨日の魔法史の授業で私が体験した出来事とそっくり!ジェイドくんの言うとおり、そのトドさん、私にそっくりだね!……なんて言うわけないでしょ」
震える拳をそっと抑え、机に手を置き、彼を思いっきり睨みこむ。身長的な問題があり、睨みこむというよりかは、睨みあげたと言った方が正しいかもしれない。
目の前の左右で色彩が異なる瞳は少しも揺れることなく、私が彼を見つめるように彼もまた見つめ返してくる。くすみ一つもない端正な肌にキュッと結ばれた口。知的で凛とした印象を与える切れ長の瞳。
ああ、どうしてこんなにも顔が良いのだろうか。少しでもいいから。1パーセントでもいいから遺伝子を分けて欲しい気分だ。
「おやおや、よく見たら、よだれを垂らしているではないですか」
「早く消して!今すぐに消せ、ジェイド・リーチ」
「となりますと、前世のそのまた前世あたりから僕たちは知り合いということで。ああ、なんてロマンチックなんでしょう」
「やめろ。その顔で言うな。そのうち、シャンパン片手に“君の瞳に乾杯”とか言い出しそうで怖いわ。今時、映画でも無いセリフだよ。もうちょっと、普通の男子高校生みたいなことができないわけ?それこそ、フロイドを見習って年相応の振る舞いというかモノの言い方というか」
「何をおっしゃいます。どこからどう見てもごく普通の男子高校生ではないですか」
「いや、どこが。あんたが普通の高校生ならば、私は一体何になるのよ。あー、待って待って。脳みそ空っぽのクラゲか?まさかまさかのミジンコか?それとも、岩場に打ち上げられた干からびたフナムシとか」
よし。口を開く前にこいつが言うであろう、ある程度の候補は言ってやった。
何故こんなことをするのか。それにはちゃんとした策略がある。あらかじめ、こちらから言っておくことによって、相手の言葉の鉄砲に詰めらた弾丸を無くす。完全に無くす事はできなかったとしても、ある程度は減らす事は可能だろう。そして、一発や二発ばかりのなけなしの残弾ではそう簡単に当てることはできない。幸運にも当たらなかった私はダメージを受けなくて済むというわけだ。
「ふむ。なるほど……」
顎に手を当て、いかにも考えていますと言わんばかりのポーズをとる。
さあ、どうだ?苦しいか?残り弾が少なくて不安か?
くくくとほくそ笑んでいると、強いていうなら、これですかねと言って、制服の内ポケットから、スマホを取り出した。
「トドですかね」
「これまた、随分と斬新なチョイスを……って。ちょっと。それ私の寝顔じゃん。何勝手に撮ってるのさ」
「はて?何を仰っているのか、わかりませんね。誰がどう見ても飛行術で疲れ切り、居眠りしてしまっているところを先生に叩き起こされる五秒前のトドの写真ではないですか」
「わあ!すごい!昨日の魔法史の授業で私が体験した出来事とそっくり!ジェイドくんの言うとおり、そのトドさん、私にそっくりだね!……なんて言うわけないでしょ」
震える拳をそっと抑え、机に手を置き、彼を思いっきり睨みこむ。身長的な問題があり、睨みこむというよりかは、睨みあげたと言った方が正しいかもしれない。
目の前の左右で色彩が異なる瞳は少しも揺れることなく、私が彼を見つめるように彼もまた見つめ返してくる。くすみ一つもない端正な肌にキュッと結ばれた口。知的で凛とした印象を与える切れ長の瞳。
ああ、どうしてこんなにも顔が良いのだろうか。少しでもいいから。1パーセントでもいいから遺伝子を分けて欲しい気分だ。
「おやおや、よく見たら、よだれを垂らしているではないですか」
「早く消して!今すぐに消せ、ジェイド・リーチ」