Chapter1 深海に迷い込んだ熱帯魚
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四限目の授業が終わり、お腹を空かせながら向かう先は食堂。
それにしても、私語厳禁の魔法史の授業は地獄に等しかった。先生が黒板に板書するチョークの音以外、何も聞こえない教室の中、必死にお腹が鳴らないよう抑えていたのだから。
適当なところに座り、これまた適当に買ったパンを手にとる。デラックスメンチカツサンドっていうらしい。聞くところによると、購買部で一番人気な商品で、それを巡って熾烈な争いが繰り広げられるとか。
良かった。争いに巻き込まれなくて。
自分の運の良さに感謝をし、メンチカツサンドを頬張れば、口いっぱいに広がる肉汁と甘辛いソースの風味。シャキシャキと歯応えのある千切りキャベツは瑞々しく、噛むたびに甘さが増してくる。そして、柔らかいパンでサンドされている。
美味しい。これは、メンチカツサンド争奪戦が起こるのも納得できる。
無心で口を動かしていけばいくほど、お腹は満たされていく。だが、その一方で満たされないものもあった。
結局、誰にも話しかけられなかったな……。
ふとパンを運ぶ手を止める。
生まれた町が子供の数が少ない田舎なこともあってか、エレメンタリースクールもミドルスクールもそのまま上の学年へと繰り上がっていくというシステムだった。
だから、全員幼い頃からの顔見知りしかいなかったし、他の学校からの転校生なんて、まず、いなかった。完全に閉鎖された空間で生きてきたわけだから、友達の作り方というのがいまいち理解ができないわけで。
ふと周りを見やれば、みんな誰かしらと一緒に雑談しながら、食事をとっている。笑ったり、お互いの食事を分け合ったりと何とも楽しそう。絵にかいたような青春を送っているのに対して、こっちは……。ううん、止めよう。こんなことを考えたって、虚しくなるだけ。
そもそも、ここは学校だ。友達や恋人を作って淡い青春を送る場所じゃない。知を磨く場所だ。
高度な魔法や教養を学び、培い、立派な魔法士になるために設けられた学び舎だ。そうと分かれば、話は早い。夢に描いた学園生活はさっさと捨てて、学問に没頭するべし。
半ば、やけくそだったかもしれない。
パンを牛乳で流し込むと、移動教室だからと持ってきた五限の魔法薬学の授業で使う教科書を開く。
うん。なるほど、なるほど。つまり、これがこうなり、さらに……。
「―――……よくわかんない」
まだ、受けてもいない科目にこんなことを言うのはなんだけど、物凄くつまらない。自分が理系が苦手だということもあるかもしれないけれど、悪いけど仲良くはできなさそうな科目だ。数ヶ月後の定期試験で苦しめられる姿が目に見える。
このままだと、冬休みはクリスマス補習?
みんなが帰省するなか、先生と一対一で地獄のマンツーマン授業……。そんな最悪な未来を思い浮かべ、教科書と机の間に頭を入れ、絶望感の海に浸っていると、何やら熱い視線を感じた。
誰かに見られている。顔を上げずとも察しがついた。
一瞬、誰だろうと警戒したが、ふと頭の中にこんな考えがよぎった。
これって、もしかしたら。本当にもしかしてだけど、お昼のお誘いを受けている?
都合の良いわたしの希望的観測に過ぎない。だけど、こんなに大勢の生徒がいるんだ。
わたしと同じような状況に陥っている人がいてもおかしくはない。これは絶好のチャンスだ。
今まで神様なんて信じてこなかったけど、今日ばかりは感謝しよう。
これまた、調子のいいことを心の中で呟きながら、恐る恐る顔を上げると、そこには、こちらをにこやかな笑顔でこちらを見下ろすジェイド先輩の姿があった。
それにしても、私語厳禁の魔法史の授業は地獄に等しかった。先生が黒板に板書するチョークの音以外、何も聞こえない教室の中、必死にお腹が鳴らないよう抑えていたのだから。
適当なところに座り、これまた適当に買ったパンを手にとる。デラックスメンチカツサンドっていうらしい。聞くところによると、購買部で一番人気な商品で、それを巡って熾烈な争いが繰り広げられるとか。
良かった。争いに巻き込まれなくて。
自分の運の良さに感謝をし、メンチカツサンドを頬張れば、口いっぱいに広がる肉汁と甘辛いソースの風味。シャキシャキと歯応えのある千切りキャベツは瑞々しく、噛むたびに甘さが増してくる。そして、柔らかいパンでサンドされている。
美味しい。これは、メンチカツサンド争奪戦が起こるのも納得できる。
無心で口を動かしていけばいくほど、お腹は満たされていく。だが、その一方で満たされないものもあった。
結局、誰にも話しかけられなかったな……。
ふとパンを運ぶ手を止める。
生まれた町が子供の数が少ない田舎なこともあってか、エレメンタリースクールもミドルスクールもそのまま上の学年へと繰り上がっていくというシステムだった。
だから、全員幼い頃からの顔見知りしかいなかったし、他の学校からの転校生なんて、まず、いなかった。完全に閉鎖された空間で生きてきたわけだから、友達の作り方というのがいまいち理解ができないわけで。
ふと周りを見やれば、みんな誰かしらと一緒に雑談しながら、食事をとっている。笑ったり、お互いの食事を分け合ったりと何とも楽しそう。絵にかいたような青春を送っているのに対して、こっちは……。ううん、止めよう。こんなことを考えたって、虚しくなるだけ。
そもそも、ここは学校だ。友達や恋人を作って淡い青春を送る場所じゃない。知を磨く場所だ。
高度な魔法や教養を学び、培い、立派な魔法士になるために設けられた学び舎だ。そうと分かれば、話は早い。夢に描いた学園生活はさっさと捨てて、学問に没頭するべし。
半ば、やけくそだったかもしれない。
パンを牛乳で流し込むと、移動教室だからと持ってきた五限の魔法薬学の授業で使う教科書を開く。
うん。なるほど、なるほど。つまり、これがこうなり、さらに……。
「―――……よくわかんない」
まだ、受けてもいない科目にこんなことを言うのはなんだけど、物凄くつまらない。自分が理系が苦手だということもあるかもしれないけれど、悪いけど仲良くはできなさそうな科目だ。数ヶ月後の定期試験で苦しめられる姿が目に見える。
このままだと、冬休みはクリスマス補習?
みんなが帰省するなか、先生と一対一で地獄のマンツーマン授業……。そんな最悪な未来を思い浮かべ、教科書と机の間に頭を入れ、絶望感の海に浸っていると、何やら熱い視線を感じた。
誰かに見られている。顔を上げずとも察しがついた。
一瞬、誰だろうと警戒したが、ふと頭の中にこんな考えがよぎった。
これって、もしかしたら。本当にもしかしてだけど、お昼のお誘いを受けている?
都合の良いわたしの希望的観測に過ぎない。だけど、こんなに大勢の生徒がいるんだ。
わたしと同じような状況に陥っている人がいてもおかしくはない。これは絶好のチャンスだ。
今まで神様なんて信じてこなかったけど、今日ばかりは感謝しよう。
これまた、調子のいいことを心の中で呟きながら、恐る恐る顔を上げると、そこには、こちらをにこやかな笑顔でこちらを見下ろすジェイド先輩の姿があった。