涙(銀土)

えーん…えーん…と何処からか子供が泣く声が聞こえる。
何事かと昼寝をしていた木の上から降りてみれば、子供が泣いている。
人里の子供が迷いこんだか、と思ったが背中には小さいが黒い翼が見えた。
あぁ、烏丸天狗の子か。しかし、どうしてここに。烏丸天狗の縄張りはもっと西の方だったはずだ。

「おう。どうした坊主」
「ひぐっ…おじちゃん…うっ…だれ…?」
「おじちゃんじゃなくて、お兄さんな。1人か?父ちゃんと母ちゃんはどうした?」
「ぐすっ…父上も…母上も…うぅ…俺を守っ…で…!」

そこでまた盛大に泣き出した。
落ち着かせようと頭を撫でてやる。頭は小さくて、髪はとんでもなくさらさらとしている。

放っておくことも出来たが、じゃあサヨナラと出来る程薄情でもない。
それに、ちょうどいい暇潰しにもなりそうだし、めんどくさくなったら捨てるか食ってしまえばいい。

「よし、坊主。俺とくるか?」
「ふぇっ…?」
「俺も1人でな。それに俺がお前を鍛えて強くしてやるよ」
「ほん…と…?」
「おう、本当だ。なんたって俺は最強の大妖怪の九尾様だからな!」
「うん…!俺、強くなる!宜しくお願いします、おじちゃん!」
「お兄さんな」

〜数百年後〜

「銀時いいいいいい!!テメェ、サボってんじゃねえええええ!!!」
「ぎゃああああああ!!」

烏丸天狗の青年の蹴りが、銀髪の九尾の腹に見事にクリーンヒットし、吹っ飛ばされていく。

「と、とととと十四郎!これにはふかーーい訳が…!」
「ああ?ジャンプ読んでるだけの何処に深い訳があるんだ?」
「いやこれはだな…!ジャンプを読まないと死んでしまう病気なんだ…!」
「それ、何回目だと思ってんだ?さっさと飯を取りに行ってこいやああああ!!!」
「ずびま"ぜん"!!すぐに行ってきますううううう!!!」

最強の九尾の狐は、最恐の烏丸天狗の嫁をもらい毎日半べそをかきながら仲良く暮らしたそうな。
1/1ページ
    スキ