ライン(銀土)

某月某日、昼。

『なんかよくわからないけど、銀ちゃんが怒ってる?みたいアル』

と連絡を受け、ちょうど仕事も方がつき、このところ目立って大きな事件もないので、今日は早目に上がるかと近藤さんにその旨を伝えれば1つ返事で快諾してくれた。そのまま明日も休めとの事だったので、ありがたく休ませて貰う事にする。

『万事屋に来て欲しい』と続いていたので、ひとまず『これから行く』と短く返し着流しに着替え万事屋に向かった。



「入るぞ」

返事はなかったが、気にせずそのまま応接室に向かう。
そこには絶賛シリアスモードでゲン◯ウポーズをした銀時と、少し緊張したような神楽と新八がソファに向かい合って座っていた。
応接室に入ってきた俺に気付いた銀時が目線で促してきたので、素直に神楽の隣に腰を下ろした。

「えー、3人に集まってもらったのは他でもありません。銀さんね、ずっと我慢してたけど、3人に言いたい事があります。最近、コミュニケーションが少なすぎませんか!?」
「「「…………」」」

3人とも「何言ってんだコイツ」っていう顔になっていたに違いない。

「家族はね、もっと一緒にご飯食べたり遊んだりすべきなんです!それなのにどうですか!?最近はそれが減ったと思いませんか!?」

え、何言ってんだコイツ。

「前はよく食卓を一緒に囲んでましたよね!?」
「でも、この前3人で焼肉食べに行ったアル」
「え。知らないよ俺」
「土方さんにご馳走になっちゃいまして」
「飯誘おうとしたら、朝からパチンコ行ってたらしいじゃねぇか」
「ぐぅ…!!」

思い当たる節があるらしい。
新台がどうの、って朝から並びに行ったとか。
その情熱を多少は仕事に向けたらどうだ。

「そういえば、僕の家で鍋パーティーもしましたね」
「鍋パーティー」
「姉御と一緒に4人で鍋を囲んだネ」
「楽しかった?」
「おう」
「何鍋?」
「「「寄せ鍋」」」
「寄せ鍋、銀さん大好き」

あのシリアスモードはなんだったのか、というくらいに明らかに銀時が凹んでいる。
そりゃもう見事にべこっと。

「…どうして、誘ってくれなかったの…酷くない定春?」
「ワン」
「さだはるー」
「ワン」

ちょっと涙声になっている。

「あ、あの時は急に夕方から非番になってな…」
「連絡くれてもよかったじゃん…」
「連絡ありましたよ」
「トシちゃんL◯NEしてくれたアル」
「L◯NE」
「伝えようとしたら長谷川さんと呑みに行くから、って出かけちゃったじゃないですか」
「え、ちょっと待って?お前ら土方くんの個人的な連絡先知ってるの?」
「知ってるアル」
「知ってます」
「グループL◯NEもあるヨ」
「あるの」
「「「うん」」」
「え、もしかして結構やりとりしてるの?」
「相談に乗ってもらったりですとか」
「銀ちゃんの愚痴言ったりとか色々ネ」
「他にも?」
「ご飯に誘ってくれたりですとか」
「遊びにも連れてってくれるアル」
「なんで…銀さんは、そこに入ってないんでしょうか…土方くん…」
「お前『俺たちはスマホなんてなくても、愛の力で繋がってるから必要ないもん』とかぬかしてたろ」
「ぐぅぅ…!!」

会心の一撃でも入ったのか、うめき声を上げたかと思うとそのまま、テーブルに突っ伏してしまって動かなくなった。
よっぽどショックだったのか、全身真っ白になっている。

「おい、銀時…?」

返事がない、ただの屍のようだ。

流石に心配になり手を伸ばすと。

「…うん、わかった…みんな仲良しみたいで銀さんは嬉しいよ…」

ゆっくりと立ち上がった銀時は、幽霊のようにフラフラと寝室へと向かいパタン…と襖を閉めてしまった。

「銀時…?」
「銀さん…?」
「銀ちゃん…?」

声をかけても反応がない。
え、コレ本当に屍になってる…?

襖を開けようにも、つっかえ棒でもしてるのか全く開かない。

「銀さん!!今日はすき焼きですよ!!しかも、牛肉です!!」
「銀ちゃん!!私のプリン食べていいアル!!」
「スマホ買いに行こうな!?」

天岩戸のごとく、びくともしない寝室の襖が開いたのはそれから一時間後の事だった。


真っ白になった銀時を膝に乗せて蘇生しつつ、すき焼きを囲む。
口許に肉を運んでやればモグモグと食べたので、母親ってこんな感じなのかなぁなんて思ったりした。ずいぶん大きな子供だけど。

デザートのプリンを食べ終えた頃には、どうにか銀時も復活したので4人で出掛ける準備を始める。

「どんなのがいいか考えとけよ」
「土方くんとお揃いがいいな」
「ばーか」
「銀ちゃーん!トシちゃーん!まだアルか?」
「おー今行く」

のんびり玄関に向かえば、すでに準備万端で待ちくたびれた神楽が早く行きたいというように、ぐいぐいと腕を引っ張っる。

「銀ちゃんもトシちゃんも遅いネ!」
「そんなに急がなくてもスマホは逃げねぇよ」
「スマホ買うの銀さんの方だからね?」
「金を出すのは俺だけどな」
「モウシワケゴザイマセン」

ショップへの道のりを4人並んで歩く。
気が付けば、自然とその手は繋がれていて。
多少の気恥ずかしさはあれど、家族という確かな絆の繋がりを感じてこの日常がいつまでも続きますように、と願った。
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