紫陽花(高土)

しとしとと雨が降っている。窓から紫陽花が咲いているのが見える。
高杉は事後の気だるさの残る身を起こすと隣に眠る土方の頬に触れた。
「ん…たか、すぎ…」
「あぁ、起こしちまったか」
その感触に眠りの浅かった土方は目蓋を持ち上げた。
「煙草」
「ほらよ」
起き抜けに一服するのは習慣だ。高杉も同様に煙管を口元に運ぶ。
「紫陽花の色が変わる理由を知ってるか?」
「は?」
「土の成分で変わるそうだ」
うつ伏せていた土方から煙草を奪い、仰向けにさせ組敷く。高杉はにやりと笑うと再び頬に触れると、ゆっくりと下へ下へと撫でるように動かした。情事後の敏感な身体はたったそれだけで肌を震わせる。
「お前はどうすれば色が変わる?」
土方の腹を撫でながら高杉が問う。半刻程前に子種を注いだ腹だ。だが、そのままでは腹を壊してしまうため掻き出されている。
「どれだけココに注げばお前は俺に落ちてくる?」
例えばそう紫陽花のように。色が変わってしまえばいい。
「……俺は変わらねぇさ。それはお前も同じだろう…?」
苦しいような愛しいような、そんな表情で土方が笑う。どう足掻いても自分達の色は変わらない。その道は交わる事がないと言っている。
「そうかい」
『ただ傍に一緒に居て欲しい』その言葉を飲み込んで、高杉は土方に深く口付けた。

1/1ページ
    スキ