わがまま(銀土)



「土方くーん、わがまま言って!」
「はぁ?」

唐突に副長室に押し掛けてきたかと思えばこれだ。
意味が不明すぎて、とうとう頭の中身まで天パになってしまったのか。
腰に抱きつくな。こっそり尻を揉むな。

「俺は土方くんのどんなわがままも大人の余裕と包容力で許し、叶えてしまうスパダリ銀さんになりたいの!」
「俺の知ってるスパダリ銀さんはそんな事言いません」
「いいからわがままを言えよ、コノヤロー!」

ついには畳の上でじたばたと駄々をこね始める始末。
振動で字が歪む。墨がちょっと飛んだじゃねぇか。…わがままで白夜叉の首よこせ、って言ったらコイツくれんのかな。

「なんで、俺がテメェのわがままに付き合わなきゃならねぇんだよ」
「土方くんにもわがままの1つや2つあるでしょ。神楽なんて毎日わがままばっかだぞ」
「わがままなぁ…近藤さんが居て総悟がいて終や組の連中がいる。お前も新八や神楽もいて、毎日それなりに幸せに生きてんだ。これ以上のわがままを言ったらバチが当たらぁ」
「土方くん…」
「そうだな…もし1つだけわがままを言ってもいい、って神様が許してくれんなら、義兄にお前らの事を見て貰いたかったかな」
「よしわかった!土方くん、ここに名前と判子押して!!」
「お、おう?」

万事屋の懐から出された紙に言われるまま、自分の名前と判子を押す。
おい待て。これ。

「婚姻届じゃねぇかあああああ!!!」
「いつでも結婚できるように常に婚姻届はスタンバってました!!」
「お登勢さんや近藤さんの名前まで書いてんじゃねぇか!!」
「もうゴリラには承認済みだ!」
「済みだ、じゃねぇよ!何やってんたあのゴリラ!!」
「それじゃ行くぞ!」

大事そうに婚姻届を懐にしまい、抵抗する間もなく肩に担ぎ上げられる。
そのまま局長室へ行き

「おう、ゴリラ!土方くん連れてちょっと行ってくるわ!」
「じゃあ、明後日までトシは休みにするからよろしく頼んだぞ!」

何してやがるゴリラ!!バナナか!?バナナで買収でもされたのか!?

「はああ!?どういう事だよ!?つかどこに行くつもりだ!」
「そりゃあ、婚姻届見せに行くに決まってんだろ」
「役所に行った所で突き返されるだけだぞ」
「違ぇよ。お前の兄ちゃんにだ」
「よろ…」
「そういう訳で、今ちゃんと幸せですって見せに行こうぜ。まぁ、今日は二人でだけど、次は新八と神楽も一緒にな」

あぁもう本当にこいつは…
スパダリなんかならなくてもいいよ。マダオでどうしようもない、そのままのお前に惚れちまったんだから。

「……銀時」
「いっ、いいいいい今、『銀時』って言った!?」
「一緒になるなら屋号のじゃおかしいだろ」
「あんだけお願いしても呼んでくれなかったのに!あーもー!土方くん大好き!!」
「テメェも…な、名前で呼べよ」
「おう!十四郎」

たまにはわがままの1つでも言ってみるもんだ。
お前のわがままだって、たまには聞いてやらんでもない。
これからもよろしく、銀時。

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