猫(高土←銀)

猫は可愛い。
私宅の庭にフラりと現れた一匹の白い猫。毛がふわふわとしていて、もふもふすると癒される。
飼い猫なのか人慣れしているようで、こちらに警戒する事なく近付いてきた。
ゴロゴロと喉を鳴らし気持ち良さそうに目を細めている。ペロリと舐められるとザラザラした舌がくすぐったい。
構おうとするとプイとソッポを向くのに、構わないとすぐに拗ねる。そんな所も可愛いのだが、目の前の猫はそういうタイプではないらしい。
腹を見せて伸びてみたり、色んな所を舐めてみたりと随分と人懐っこい。おもちゃでもあればもっと遊んでやれるのだが、生憎この家にそんな物はない。猫が来るのだって初めてである。そういえば、こんな風に触る事も初めてかもしれない。また来るかは分からないが、今度おもちゃと缶詰めを買ってきてみよう。

「おい」
「なんだ来たのか」

猫がもう一匹来たみたいだ。白い猫に構っていたからか、最初から拗ねている。
突然現れたからか、その低い声のせいか、それとも両方か。驚いてしまったのか白い猫は驚いて一目散に俺の膝から庭の奥へと消えて見えなくなってしまった。

「お前のせいで逃げちまったじゃねぇか」
「知るか」
「猫に嫉妬すんなよ」

その猫―――高杉の顔が近付いてきて口唇が重なってすぐに離れる。見詰めあってもう一度口付ける。

「俺とも遊んでくれるんだろ?」
「仕方ねぇな」

背に腕を回す。久方ぶりの逢瀬に否応なしに体温は上がっていく。
どこかで猫の鳴き声が聞こえた気がしたけれど、もう目の前の愛しい猫の事しか考えられなくなってしまっていた。





(ううううう嘘だろー!?)

ご都合という魔法によって俺はまたまた猫になってしまった。しかし、一度経験している以上は慌てない。猫になった事を利用して土方の私宅に忍びこみ、見事に近付くことに成功した。
猫だからスキンシップは舐めるくらいしかできないが、それでも土方に触れられたのは発情期が来そうになる程嬉しかった。
それなのに。
まさかあの場に高杉が現れるなんて予想しておらず、驚いて一目散に庭へと逃げてしまった。
心臓が落ち着いた頃に向こうから見えない位置で様子を伺っていると2人が重なったのが見えて思わず声を上げてしまう。

「にゃあああああー!?」
(うわあああああああ!?)

かなり大きく鳴いたのに気付かれなかったようだ。それだけ行為に夢中になっている、という事なのか…
2人に関係が合った事にも驚いたが、それ以上に2人があんな表情をする事にも驚いた。
もうこんなの見せられたら入る隙間なんてどこにもないじゃねぇか…
失恋の痛みに、にゃあと鳴いた。





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