不意打ち 土総受けワンライ


 夏休みである。学生にとっては学校から解放され、悠々と羽を伸ばす事ができる。
 受験勉強や部活に勤しむ者もいれば、高杉のように特に何をするでもなく過ごす者もいる。
 部活もしていなければ、勉強にも大して力を入れてはいない。よくつるむ悪友は部活にバイトや勉強だと中々忙しいようだ。
 そういう訳で高杉は怠惰な日々を過ごしていた。一番彼を怠惰にさせているのは、ようやく付き合い出した恋人に会えないからなのが大きい。
 恋人である土方は剣道部の副部長として毎日、朝から晩まで部活に明け暮れている。強豪校であるし、副部長となれば忙しいのは当たり前だ。おまけに、幼馴染みの宿題を見てやったりまでしている。ようやくデートの一つでも出来るかと期待していたが、見事に裏切られてしまった。
 カレンダーには今日の日付に丸がされている。八月十日は高杉の誕生日である。土方は五月五日で、二人とも学校が休みのタイミングだ。そこから何となく親近感がわき、話すようになった。
 だから少しばかり高杉にとって誕生日は特別な意味を持っている。偶然この会話がなされなかったら、今も他人のままだったかもしれない。
 しかし、残念な事に剣道部は夏合宿に入っている。今年はたまたま予定がズレてしまった。それは事前に知らされていたし、ちゃんとメッセージも届いている。律儀にも日付が変わった瞬間に送られてきた。
 土方は明日には戻ってくる予定だ。誕生日のお祝いも、少し遅くなるがちゃんとやると約束してくれている。だから、高杉にとってはそれで十分なのである。
 悪友から「お前も来る?」「プレゼントもありまーす!」とメッセージが来た。腹の立つスタンプと写真付きで。なぜか高杉不在の誕生日会をしているようだ。一応は祝う気はあるようなので、スタンプを送り返した。
 ーーピンポーン
 インターフォンが鳴った。通販も頼んでいないし、来客の予定もない。可能性があるとすれば、悪友が突撃してくることだ。わざわざ写真を送ってきたのも、これが狙いだろう。絶対に驚いてやるものか、と思いながらドアを開けた。
「た、高杉!誕生日おめでとう……!」
 そこには白い箱を持った土方が立っていた。
「誕生日は、また改めてするから……!その、じゃあな……!」
 高杉が箱を受け取ったのを確認すると、土方は走り去って行った。
 呆然としているとスマホが鳴った。メッセージには「プレゼント受け取ったか?」とある。
 箱を開けるとショートケーキが一つ入っていた。「誕生日おめでとう」とチョコのプレートがつけられている。
 スマホに新しいメッセージが悪友と土方から送られてきている。全てを理解した高杉の心臓は早鐘を打っていた。
 
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