土受けワンライ 夏の終わり
夏休みも残すところあと三日。異常気象でバカみたいに暑く、もう秋だと言われても実感がない。だが、夏休みが終わると思うと、やはり夏ももう終わるのかと思う。
宿題は計画的に終わらせている。部活の方も遠征や試合で勝ったりと、充実していた。そろそろ、近藤と沖田が宿題が終わっていないやってない、と泣きついてくる頃だ。つい毎年手伝ってしまうから、今年こそ心を鬼にして断ろうかと考えている。
家のインターフォンが鳴った。生憎、今家に居るのは土方一人である。義姉が通販をしていたから、もしかするとそれかもしれない。
「桂!?」
「久しぶりだな!」
玄関を開けるとそこには、桂が立っていた。最後に会ったのは登校日だっただろうか。
「どうしたんだ急に?」
「どうしたもこうしたもない!もう夏休みが終わってしまうではないか!」
桂はよく突拍子もない事を言う。それが、良い所でもあり悪い所でもある。夏休みが終わるのはわかっているが、一体どうしたというのか。土方には見当がつかない。
「土方!俺たちは付き合っているというのに、夏休みに遊びにすら行っていないのだぞ!?」
「あ、あーーー……」
涙目の桂に流石に罪悪感が沸く。部活については桂も理解し、応援していてくれる。しかし、付き合っているのに、一日も二人で遊びに行っていない。坂田たちとも遊びに行くみたいだし、とほったらかしていた結果がこれだ。
「夏休みの計画も立てていたというのに、おかげで絵日記が真っ白じゃないか!」
「高校生に絵日記の宿題はねぇよ」
真っ白な日記帳を見せられる。小学生じゃあるまいし、そんな宿題は出されていない。大方、坂田あたりに吹き込まれでもしたのだろう。
「土方は遊んでくれないし、エリザベスは夏休みで実家に帰ってしまうし……俺は一人でUNOをして、ツタヤに行って、UNOをして、ツタヤに行っての繰り返しただった……」
「そ、そのごめんな……?」
「部活も仕方ないと理解している。だが、近藤たちとは夏祭りに行っているのはどういう事だ!?」
毎年、近藤や沖田に山崎と昔馴染みのメンツで夏祭りに行くのが恒例だ。時には海やプールにも遊びに行っている。
「お前が楽しそうにしているのを後ろから見ていた俺の気持ちが分かるか……!?」
「居たなら声かけてくれればいいじゃねぇか!」
「楽しそうにしているのに水を差すのは悪いだろう」
桂は真面目だからか、気を遣ってしまいがちだ。周りを良く見ているから余計にそれが出てしまう。
「銀時や高杉たちと屋台を制覇していたら、いつの間にか夏祭り四天王と呼ばれていたではないか!」
思っていたよりはしっかりエンジョイしていた。スマホには、射的の景品を全てかっさらったり、屋台メニューを全部制覇している写真があった。金魚すくいの金魚もすくすく育っているようで、ちゃんと名前もつけられている。屋台荒らしがいる、という噂が立っていたが、桂たちのことだったようだ。
「……楽しくなかった訳じゃない。だが、俺は土方と二人で遊びたかったのだ」
ポツリと桂が呟いた。それはもっともだ。つきあってるのに、恋人をほったらかしにする人間がどこに居るのだ。
「桂、ごめん。夏休みの計画って今からでも間に合うか……?」
「土方……!!」
桂の表情がパアッと輝いた。滲んだ涙をTシャツの袖で拭うと、鞄から分厚い紙の束を取り出した。
「これ、全部か?残り三日で?」
一緒に宿題をする所から始まり、コンビニでアイスを買ったり、プールに行ったり。登校日には一緒に登下校して、夏祭りに行く約束をする。夏祭りで屋台を回って、一緒に花火を見る。出来れば海にも行きたい。買い物や話題の映画も観に行きたい。
どれもこれも微笑ましい内容だった。高校生なのだから、もう少しあってもいいようなものだ。しかし、桂らしいといえばそうだ。堅物の筆頭のような男なのだから。
「とりあえずやれるやつ全部やるぞ!」
「本当か!」
「まずは……コンビニでアイス買って、映画観に行くか。帰りにツタヤでDVD借りれるな。プールは明日行けるか……」
たった三日で罪滅ぼしになるかは分からない。けれど、徹底的に付き合う腹積もりでいる。土方だって桂と一緒に居たいというのは、本物の気持ちである。
そのタイミングで、土方のスマホにメッセージが入った。近藤から「宿題が終わってない」というものである。
『これからは自分でやれ。俺は三日間、桂とデートだから』
送信すると桂にその画面を見せた。すぐに近藤から返事が来ていたが、既読スルーしてしまう。だってこれからデートをするのだから。
「よし、行くぞ小太郎!」
「な……!名前はまだ早いのではないか!?」
土方は桂の手を握った。するとさらに慌てふためく。
夏休みの計画に小さく書かれた「手を繋ぐ」「名前を読んで貰う」という文字を土方は、見逃してはいなかった。
宿題は計画的に終わらせている。部活の方も遠征や試合で勝ったりと、充実していた。そろそろ、近藤と沖田が宿題が終わっていないやってない、と泣きついてくる頃だ。つい毎年手伝ってしまうから、今年こそ心を鬼にして断ろうかと考えている。
家のインターフォンが鳴った。生憎、今家に居るのは土方一人である。義姉が通販をしていたから、もしかするとそれかもしれない。
「桂!?」
「久しぶりだな!」
玄関を開けるとそこには、桂が立っていた。最後に会ったのは登校日だっただろうか。
「どうしたんだ急に?」
「どうしたもこうしたもない!もう夏休みが終わってしまうではないか!」
桂はよく突拍子もない事を言う。それが、良い所でもあり悪い所でもある。夏休みが終わるのはわかっているが、一体どうしたというのか。土方には見当がつかない。
「土方!俺たちは付き合っているというのに、夏休みに遊びにすら行っていないのだぞ!?」
「あ、あーーー……」
涙目の桂に流石に罪悪感が沸く。部活については桂も理解し、応援していてくれる。しかし、付き合っているのに、一日も二人で遊びに行っていない。坂田たちとも遊びに行くみたいだし、とほったらかしていた結果がこれだ。
「夏休みの計画も立てていたというのに、おかげで絵日記が真っ白じゃないか!」
「高校生に絵日記の宿題はねぇよ」
真っ白な日記帳を見せられる。小学生じゃあるまいし、そんな宿題は出されていない。大方、坂田あたりに吹き込まれでもしたのだろう。
「土方は遊んでくれないし、エリザベスは夏休みで実家に帰ってしまうし……俺は一人でUNOをして、ツタヤに行って、UNOをして、ツタヤに行っての繰り返しただった……」
「そ、そのごめんな……?」
「部活も仕方ないと理解している。だが、近藤たちとは夏祭りに行っているのはどういう事だ!?」
毎年、近藤や沖田に山崎と昔馴染みのメンツで夏祭りに行くのが恒例だ。時には海やプールにも遊びに行っている。
「お前が楽しそうにしているのを後ろから見ていた俺の気持ちが分かるか……!?」
「居たなら声かけてくれればいいじゃねぇか!」
「楽しそうにしているのに水を差すのは悪いだろう」
桂は真面目だからか、気を遣ってしまいがちだ。周りを良く見ているから余計にそれが出てしまう。
「銀時や高杉たちと屋台を制覇していたら、いつの間にか夏祭り四天王と呼ばれていたではないか!」
思っていたよりはしっかりエンジョイしていた。スマホには、射的の景品を全てかっさらったり、屋台メニューを全部制覇している写真があった。金魚すくいの金魚もすくすく育っているようで、ちゃんと名前もつけられている。屋台荒らしがいる、という噂が立っていたが、桂たちのことだったようだ。
「……楽しくなかった訳じゃない。だが、俺は土方と二人で遊びたかったのだ」
ポツリと桂が呟いた。それはもっともだ。つきあってるのに、恋人をほったらかしにする人間がどこに居るのだ。
「桂、ごめん。夏休みの計画って今からでも間に合うか……?」
「土方……!!」
桂の表情がパアッと輝いた。滲んだ涙をTシャツの袖で拭うと、鞄から分厚い紙の束を取り出した。
「これ、全部か?残り三日で?」
一緒に宿題をする所から始まり、コンビニでアイスを買ったり、プールに行ったり。登校日には一緒に登下校して、夏祭りに行く約束をする。夏祭りで屋台を回って、一緒に花火を見る。出来れば海にも行きたい。買い物や話題の映画も観に行きたい。
どれもこれも微笑ましい内容だった。高校生なのだから、もう少しあってもいいようなものだ。しかし、桂らしいといえばそうだ。堅物の筆頭のような男なのだから。
「とりあえずやれるやつ全部やるぞ!」
「本当か!」
「まずは……コンビニでアイス買って、映画観に行くか。帰りにツタヤでDVD借りれるな。プールは明日行けるか……」
たった三日で罪滅ぼしになるかは分からない。けれど、徹底的に付き合う腹積もりでいる。土方だって桂と一緒に居たいというのは、本物の気持ちである。
そのタイミングで、土方のスマホにメッセージが入った。近藤から「宿題が終わってない」というものである。
『これからは自分でやれ。俺は三日間、桂とデートだから』
送信すると桂にその画面を見せた。すぐに近藤から返事が来ていたが、既読スルーしてしまう。だってこれからデートをするのだから。
「よし、行くぞ小太郎!」
「な……!名前はまだ早いのではないか!?」
土方は桂の手を握った。するとさらに慌てふためく。
夏休みの計画に小さく書かれた「手を繋ぐ」「名前を読んで貰う」という文字を土方は、見逃してはいなかった。
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