学パロ(夏休み)
「先生ってさ、実はマジメだったりすんの?」
「……どういう意味だそりゃあ」
土方が読んでいたマガジンから顔を上げて、高杉に聞いた。もう三周目にもなるから、読んでいたとは言えないが。
朝から高杉はパソコンに向かって仕事をしている。土方に今日発売したばかりの、マガジンを買い与えて。時計はとっくに十五時を回っている。コミュニケーションは軽い昼食を摂っただけで、後は土方は放ったらかしだ。聞き分けのいい優等生の土方は、スマホを弄ったりマガジンを読んだりしてゴロゴロしていた。
それでも数時間放置とはいただけない。全国優勝というせっかくのご褒美なのに、これではただ来ただけではないか。高杉の視線はパソコンに固定されたままだ。
土方も人並みにその先には興味はある。だが、許したのは触れるだけのキスまで。そこから先には一切踏み込まない。
二人には大きな障害がある。同性で教師と生徒で、大人と未成年。世の中の動きとしては、同性はクリアできるかもしれない。だが、あとの二つは確実に批判の的になる。
高杉という教師には様々な噂があった。女子生徒を食い散らかしてるとか。同僚の女性教師を食い散らかしてるとか。保護者も食い散らかしてるとか。とにかくまあ散々な言われようであった。
そんな高杉が土方と付き合っているのは、本当に謎である。土方も分からないし、高杉も分からないと言っていた。前に「教師なのに?」と聞いてみたが「教師だからって全部分かる訳じゃねぇ」と返ってきた。
「好きだからじゃねぇか?」
「うげぇ……」
もっともらしい回答だが、高杉にあまりに似合わなくて吐く真似をした。しっかりしばかれてしまった。
高杉と二人で歩いている時、偶然にも元カノに会った。包丁で刺される、なんて事は一切なく。彼女は高杉の事はいい思い出と言って、薬指に輝く指輪を見せた。それから身体に気をつけてね、と言って颯爽と去って行った。
女性を食い散らかしている、という噂は本人だけが知らなかった。だから本当は、高杉という人間は至って誠実で真面目な人間なのである。
女性の影は見えないし、以外にも高杉からメッセージが来る事が多い。むしろ土方の方がズボラで二三日経ってから返事をする事が多々ある。部活や友人を優先しても、高杉は文句一つ言わない。ヒステリックに「部活と俺どっちが大事なんだ!?」と叫ぶ高杉を想像しようとしてやめた。最後まで想像したら、きっと笑いが止まらなくなってしまう。
「……何ニヤニヤしてんだ?」
「別にぃ」
顔に出ていたらしい。顔を隠してみたが意味はないだろう。
「夕方になったら祭でも行くか?花火も上がるみてぇだし」
そこまで大きな規模ではないが、近くで夏祭りがある。花火も上がるし、所謂夏祭りデートをしようという訳だ。生徒や知り合いに出会う可能性もあるが、人混みに紛れてしまえば逃げられらる。
「焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、イカ焼き、ラムネに」
「食いもんばっかじゃねぇか。若いっていいな」
「で、全部買ったら部屋に戻って、ここで花火見る」
「なんでだよ」
「だってさ……外に出たら先生独り占めできねぇじゃん」
「……それもそうだな。俺もお前を独占できねぇのは嫌だな」
もし生徒がいればその瞬間に高杉は「先生」に戻ってしまう。面倒臭いから逃げようと口では言っても、なんだかんだ面倒見がいい。
「十四郎」
「!?」
高杉の顔が近付いてきたから、土方は自然と目を閉じた。いつもと違うのは口唇に高杉の舌が触れて、飛び上がる程に驚いてしまったことだ。
「……少し先に進んでみるか?」
畳み掛けるように高杉は土方の耳元で囁く。それだけで土方は耐えられず、ゆでダコのようになってしまった。
「ま、まままままだいい!!」
「そうかい。残念だ」
百面相する土方を見てクツクツと高杉は笑った。
「……どういう意味だそりゃあ」
土方が読んでいたマガジンから顔を上げて、高杉に聞いた。もう三周目にもなるから、読んでいたとは言えないが。
朝から高杉はパソコンに向かって仕事をしている。土方に今日発売したばかりの、マガジンを買い与えて。時計はとっくに十五時を回っている。コミュニケーションは軽い昼食を摂っただけで、後は土方は放ったらかしだ。聞き分けのいい優等生の土方は、スマホを弄ったりマガジンを読んだりしてゴロゴロしていた。
それでも数時間放置とはいただけない。全国優勝というせっかくのご褒美なのに、これではただ来ただけではないか。高杉の視線はパソコンに固定されたままだ。
土方も人並みにその先には興味はある。だが、許したのは触れるだけのキスまで。そこから先には一切踏み込まない。
二人には大きな障害がある。同性で教師と生徒で、大人と未成年。世の中の動きとしては、同性はクリアできるかもしれない。だが、あとの二つは確実に批判の的になる。
高杉という教師には様々な噂があった。女子生徒を食い散らかしてるとか。同僚の女性教師を食い散らかしてるとか。保護者も食い散らかしてるとか。とにかくまあ散々な言われようであった。
そんな高杉が土方と付き合っているのは、本当に謎である。土方も分からないし、高杉も分からないと言っていた。前に「教師なのに?」と聞いてみたが「教師だからって全部分かる訳じゃねぇ」と返ってきた。
「好きだからじゃねぇか?」
「うげぇ……」
もっともらしい回答だが、高杉にあまりに似合わなくて吐く真似をした。しっかりしばかれてしまった。
高杉と二人で歩いている時、偶然にも元カノに会った。包丁で刺される、なんて事は一切なく。彼女は高杉の事はいい思い出と言って、薬指に輝く指輪を見せた。それから身体に気をつけてね、と言って颯爽と去って行った。
女性を食い散らかしている、という噂は本人だけが知らなかった。だから本当は、高杉という人間は至って誠実で真面目な人間なのである。
女性の影は見えないし、以外にも高杉からメッセージが来る事が多い。むしろ土方の方がズボラで二三日経ってから返事をする事が多々ある。部活や友人を優先しても、高杉は文句一つ言わない。ヒステリックに「部活と俺どっちが大事なんだ!?」と叫ぶ高杉を想像しようとしてやめた。最後まで想像したら、きっと笑いが止まらなくなってしまう。
「……何ニヤニヤしてんだ?」
「別にぃ」
顔に出ていたらしい。顔を隠してみたが意味はないだろう。
「夕方になったら祭でも行くか?花火も上がるみてぇだし」
そこまで大きな規模ではないが、近くで夏祭りがある。花火も上がるし、所謂夏祭りデートをしようという訳だ。生徒や知り合いに出会う可能性もあるが、人混みに紛れてしまえば逃げられらる。
「焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、イカ焼き、ラムネに」
「食いもんばっかじゃねぇか。若いっていいな」
「で、全部買ったら部屋に戻って、ここで花火見る」
「なんでだよ」
「だってさ……外に出たら先生独り占めできねぇじゃん」
「……それもそうだな。俺もお前を独占できねぇのは嫌だな」
もし生徒がいればその瞬間に高杉は「先生」に戻ってしまう。面倒臭いから逃げようと口では言っても、なんだかんだ面倒見がいい。
「十四郎」
「!?」
高杉の顔が近付いてきたから、土方は自然と目を閉じた。いつもと違うのは口唇に高杉の舌が触れて、飛び上がる程に驚いてしまったことだ。
「……少し先に進んでみるか?」
畳み掛けるように高杉は土方の耳元で囁く。それだけで土方は耐えられず、ゆでダコのようになってしまった。
「ま、まままままだいい!!」
「そうかい。残念だ」
百面相する土方を見てクツクツと高杉は笑った。
