学パロ(夏休み)
「先生ヒマ」
「先生は暇じゃねぇんだよ」
「先生いつ終わんだ?」
「邪魔されなきゃその内終わる」
「先生、俺と仕事どっちが大事?」
「さっきからうるっっっせぇんだよ!!何お前!?学校じゃ興味ありません、ってクールぶってんのに、家だとなんでそんなにベタベタしてくんの!?」
リビングでパソコンを開き仕事をする土方の後ろに、ベッタリと高杉がくっついている。学校では、クールで硬派な一匹狼というウリでやっている……はずである。それが家の中では、やたらと土方を構いたがるのだ。
夏休み中の生徒は暇だとしても、教師の土方は暇ではない。部活も見に行かねばならないし、次の学期の準備や教育者としての勉強もある。比較的時間はある方ではあるが、高杉一人に構う事は出来ない。
「仕事の方が大事……ってワケか」
「当たり前だろ。社会人は暇じゃねぇの。分かったらゲームでもしてろ」
「飽きた。俺は先生と遊びてぇの」
さらに高杉がピッタリとくっつく。冷房がガンガンに効いた部屋では、その体温がちょうどいいくらいだ。高杉が「寒ぃ」と呟いたが、犯人が何を言っているのだろう。
「クーラーばっか浴びてると、ひ弱になっちまうぞ」
「優勝したから強ェの知ってんだろ」
三年生最後の夏。見事に高杉は剣道で全国優勝を飾った。強豪が集まる大会で全て一本勝ち。相手は高杉に触れる事すら出来なかった。勝負は最初から決まっていた、と言わしめた程だ。普段は高杉を煙たがっている教師も、手のひらを返して喜んでいた。
優勝したら「なんでも一つお願いを聞いてやる」というちょっとした賭け。それじゃつまらないからと「全て一本勝ち」と高杉自ら条件を付けた。そして本当に実現させてしまった。
そのお願いというのが「先生の家に行きたい」である。もっとえげつない要求をされると思っていたが、その可愛らしい事よ。思わず「キュン」なんて、三十路も近い男がときめいてしまった。
それでウキウキしながらやって来てみれば、土方は朝からパソコンに向かっている。そりぁ、不満の一つも出てもおかしくはない。ちゃっかりと二泊分の荷物まで持ってきていたから尚更だ。夏休みともなれば、生徒と教師が会う機会はグッと減る。真面目に練習もしたし、遠征の為に一ヶ月近くまともに顔を合わせられていない。
「夕方になったら出掛けるか。祭行くだろ?花火も上がるし」
そこまで大きな規模ではないが、近くで夏祭りがある。花火も上がるし、所謂夏祭りデートをしようという訳だ。生徒や知り合いに出会う可能性もあるが、人混みに紛れてしまえば逃げられらる。
「いい。花火はここからでも見えんだろ」
土方の部屋から、豆粒程度の花火が見える。ほとんど見えないに近いが、雰囲気くらいは味わえる。
「俺はここで先生を一人占めする方がずっといい」
部屋から一歩でも出れば、土方と高杉は教師と生徒に戻ってしまう。祭で生徒にでも出会ってしまえば確実に「先生」と呼ばれる。場合によっては補導なんて事にもなりかねない。そうなればデート所ではなくなってしまう。
「……分かった。今日はゆっくりするか」
土方だって、本当は学校でやる予定の仕事を家に持ち帰っている。立場上、一緒に居たいと表に出すのは難しい。それでも土方も高杉の事をちゃんと想っている。
「十四郎」
口唇に軽く熱が触れる。それ以上に熱い視線が土方を捉えていた。
「流されねぇぞ」
「チッ」
押し倒される前に牽制する。高杉は未成年でまだ学生だ。一線は越えてはいけないと、あわよくばを狙う高杉をかわし続けている。
「寝る」
興味を失くしたのか高杉はゴロリと横になった。
「終わったら起こしてやるよ。飯はどうする?どこか食いに行くか?焼きそばくれぇなら作れるけど」
「……焼きそば。マヨネーズ抜きで」
「内申下げんぞ、コラ」
クツクツと笑う高杉の声を口唇で塞いだ。
「先生は暇じゃねぇんだよ」
「先生いつ終わんだ?」
「邪魔されなきゃその内終わる」
「先生、俺と仕事どっちが大事?」
「さっきからうるっっっせぇんだよ!!何お前!?学校じゃ興味ありません、ってクールぶってんのに、家だとなんでそんなにベタベタしてくんの!?」
リビングでパソコンを開き仕事をする土方の後ろに、ベッタリと高杉がくっついている。学校では、クールで硬派な一匹狼というウリでやっている……はずである。それが家の中では、やたらと土方を構いたがるのだ。
夏休み中の生徒は暇だとしても、教師の土方は暇ではない。部活も見に行かねばならないし、次の学期の準備や教育者としての勉強もある。比較的時間はある方ではあるが、高杉一人に構う事は出来ない。
「仕事の方が大事……ってワケか」
「当たり前だろ。社会人は暇じゃねぇの。分かったらゲームでもしてろ」
「飽きた。俺は先生と遊びてぇの」
さらに高杉がピッタリとくっつく。冷房がガンガンに効いた部屋では、その体温がちょうどいいくらいだ。高杉が「寒ぃ」と呟いたが、犯人が何を言っているのだろう。
「クーラーばっか浴びてると、ひ弱になっちまうぞ」
「優勝したから強ェの知ってんだろ」
三年生最後の夏。見事に高杉は剣道で全国優勝を飾った。強豪が集まる大会で全て一本勝ち。相手は高杉に触れる事すら出来なかった。勝負は最初から決まっていた、と言わしめた程だ。普段は高杉を煙たがっている教師も、手のひらを返して喜んでいた。
優勝したら「なんでも一つお願いを聞いてやる」というちょっとした賭け。それじゃつまらないからと「全て一本勝ち」と高杉自ら条件を付けた。そして本当に実現させてしまった。
そのお願いというのが「先生の家に行きたい」である。もっとえげつない要求をされると思っていたが、その可愛らしい事よ。思わず「キュン」なんて、三十路も近い男がときめいてしまった。
それでウキウキしながらやって来てみれば、土方は朝からパソコンに向かっている。そりぁ、不満の一つも出てもおかしくはない。ちゃっかりと二泊分の荷物まで持ってきていたから尚更だ。夏休みともなれば、生徒と教師が会う機会はグッと減る。真面目に練習もしたし、遠征の為に一ヶ月近くまともに顔を合わせられていない。
「夕方になったら出掛けるか。祭行くだろ?花火も上がるし」
そこまで大きな規模ではないが、近くで夏祭りがある。花火も上がるし、所謂夏祭りデートをしようという訳だ。生徒や知り合いに出会う可能性もあるが、人混みに紛れてしまえば逃げられらる。
「いい。花火はここからでも見えんだろ」
土方の部屋から、豆粒程度の花火が見える。ほとんど見えないに近いが、雰囲気くらいは味わえる。
「俺はここで先生を一人占めする方がずっといい」
部屋から一歩でも出れば、土方と高杉は教師と生徒に戻ってしまう。祭で生徒にでも出会ってしまえば確実に「先生」と呼ばれる。場合によっては補導なんて事にもなりかねない。そうなればデート所ではなくなってしまう。
「……分かった。今日はゆっくりするか」
土方だって、本当は学校でやる予定の仕事を家に持ち帰っている。立場上、一緒に居たいと表に出すのは難しい。それでも土方も高杉の事をちゃんと想っている。
「十四郎」
口唇に軽く熱が触れる。それ以上に熱い視線が土方を捉えていた。
「流されねぇぞ」
「チッ」
押し倒される前に牽制する。高杉は未成年でまだ学生だ。一線は越えてはいけないと、あわよくばを狙う高杉をかわし続けている。
「寝る」
興味を失くしたのか高杉はゴロリと横になった。
「終わったら起こしてやるよ。飯はどうする?どこか食いに行くか?焼きそばくれぇなら作れるけど」
「……焼きそば。マヨネーズ抜きで」
「内申下げんぞ、コラ」
クツクツと笑う高杉の声を口唇で塞いだ。
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