ちっちゃくなった話
「お前病気か?」
「見りゃ分かんだろ。ガキに戻ってんだから」
「そういう意味じゃねぇ」
見た目は十歳程度の情人が、大人でも首を傾げるような書類を読んでいる。慣れもあるだろうが、難解なそれを手際よく片付けているようだ。
念のためだが、高杉にお稚児趣味はない。乳臭いガキなど全く興味など沸かない。暫く宇宙に上がっていたのだが、ちょっとしたトラブルで地球へと戻ってきた。そして、そのトラブルが情人の身にもふりかかっていたのである。
事の発端はどこぞの星の天人である。その星は子供を宝とし皆で大切に育てる、という文化を作り上げていた。子供に怪我でもさせれば逮捕され、死なせでもすれば即日処刑。極端な話ではあるが、文化を否定する事はそう簡単には出来ない。
「地球には子どもの日という素晴らしい文化があるのか!!」
といたく感動した。そして、あろうことかその場にいた人間を子供へと若返りさせてしまったのである。
なんとはた迷惑な話であろうか。中には見た目だけでなく中身まで若返った者までいる。だが、完全な善意である。しかもその星からは若返りの技術を提供してもらうという話だ。不老不死など権力者からすれば喉から手がでる程に欲しい。
不幸中の幸いで、若返りは一時的であった。人にもよるが大概は二三日程度。遅くとも一週間程で元に戻るという事だ。
そうして、目の前の情人はその遅いグループだったらしい。五日経っても未だに子供のままなのである。同じく巻き込まれた万斉の方は二日程度で戻ったというのに。
そんな状態でも仕事は待ってはくれない。むしろ、増やしたと言ってもいい。事後処理だとか、変更だとかで休みなく働き詰めとなってしまっている。
年中無休の警察にゴールデンウィークなど無関係な話ではある。だが、こんな姿になってまで仕事など、よほどのワーカーホリックなのではないかと疑ってしまう。
「飯は?」
「んー」
「次の休みは?」
「んー」
「誕生日だったんだろ?」
「んー」
すっかり仕事に夢中になった土方は生返事ばかりである。高杉の事を邪魔者扱いすらしない。まだ邪魔だと言われた方がからかう余地があるのに、それすらないのだ。全くもって面白くない。
「おい。くっつくな、暑苦しい」
高杉に後ろから抱き付かれ、流石に無視が出来ない。動きにくいし、暑い。さらに子供サイズだから、ぬいぐるみのようにスッポリと収まっている。
「いいだろ別に。減るもんでもねェ」
「児ポ法でしょっぴいてやろうか?」
「なら、膝借せや」
あっさりと引き下がったが、本当の狙いは後者だったらしい。大人ならまだしも、子供の身体だと少々キツイ。どかそうにも一苦労で、高杉の方が先に寝入ってしまった。
穏やかな寝顔を見て諦めが付いた。目を閉じれば整った顔立ちなのに、勿体ない。世の中がもう少し違っていれば、別の形で出会う事も出来たであろうに。
最近、構ってやれなかったしな。会える日はごく僅かで、こうしてゆっくり出来る事はさらに稀だ。少し傷んだ髪を撫で、露になった額に口唇を寄せようとした。
「そこは口にする所だろう」
「狸寝入りとは最低だな」
高杉とバッチリと目があった。なんとなくそんな気がして、額にならしてやろうと思っていたのに。
「まぁ、子供じゃ仕方ねぇか」
「大人になったらしてやるよ」
珍しく土方から口付けた。その先はお預けとでも言うように、離れ際に高杉の口唇を舐める。
「ククッ……こいつは、とんだ悪い子みてぇだな」
「この先がシてぇなら、良い子にして待ってるんだな」
高杉は言われた通り、膝の上から頭をどかした。土方はニヤリと笑うとまた仕事に戻ってしまう。
あれほど初心で軽いふれあいですら、顔を赤くしたというのに。その事に性的な物とは違う快感を得た。
長くともあと二三日の辛抱である。大人になった土方と何をして遊ぼうか。ひとまず仕事が終わるまで、ゆっくりと考える事にした。
「見りゃ分かんだろ。ガキに戻ってんだから」
「そういう意味じゃねぇ」
見た目は十歳程度の情人が、大人でも首を傾げるような書類を読んでいる。慣れもあるだろうが、難解なそれを手際よく片付けているようだ。
念のためだが、高杉にお稚児趣味はない。乳臭いガキなど全く興味など沸かない。暫く宇宙に上がっていたのだが、ちょっとしたトラブルで地球へと戻ってきた。そして、そのトラブルが情人の身にもふりかかっていたのである。
事の発端はどこぞの星の天人である。その星は子供を宝とし皆で大切に育てる、という文化を作り上げていた。子供に怪我でもさせれば逮捕され、死なせでもすれば即日処刑。極端な話ではあるが、文化を否定する事はそう簡単には出来ない。
「地球には子どもの日という素晴らしい文化があるのか!!」
といたく感動した。そして、あろうことかその場にいた人間を子供へと若返りさせてしまったのである。
なんとはた迷惑な話であろうか。中には見た目だけでなく中身まで若返った者までいる。だが、完全な善意である。しかもその星からは若返りの技術を提供してもらうという話だ。不老不死など権力者からすれば喉から手がでる程に欲しい。
不幸中の幸いで、若返りは一時的であった。人にもよるが大概は二三日程度。遅くとも一週間程で元に戻るという事だ。
そうして、目の前の情人はその遅いグループだったらしい。五日経っても未だに子供のままなのである。同じく巻き込まれた万斉の方は二日程度で戻ったというのに。
そんな状態でも仕事は待ってはくれない。むしろ、増やしたと言ってもいい。事後処理だとか、変更だとかで休みなく働き詰めとなってしまっている。
年中無休の警察にゴールデンウィークなど無関係な話ではある。だが、こんな姿になってまで仕事など、よほどのワーカーホリックなのではないかと疑ってしまう。
「飯は?」
「んー」
「次の休みは?」
「んー」
「誕生日だったんだろ?」
「んー」
すっかり仕事に夢中になった土方は生返事ばかりである。高杉の事を邪魔者扱いすらしない。まだ邪魔だと言われた方がからかう余地があるのに、それすらないのだ。全くもって面白くない。
「おい。くっつくな、暑苦しい」
高杉に後ろから抱き付かれ、流石に無視が出来ない。動きにくいし、暑い。さらに子供サイズだから、ぬいぐるみのようにスッポリと収まっている。
「いいだろ別に。減るもんでもねェ」
「児ポ法でしょっぴいてやろうか?」
「なら、膝借せや」
あっさりと引き下がったが、本当の狙いは後者だったらしい。大人ならまだしも、子供の身体だと少々キツイ。どかそうにも一苦労で、高杉の方が先に寝入ってしまった。
穏やかな寝顔を見て諦めが付いた。目を閉じれば整った顔立ちなのに、勿体ない。世の中がもう少し違っていれば、別の形で出会う事も出来たであろうに。
最近、構ってやれなかったしな。会える日はごく僅かで、こうしてゆっくり出来る事はさらに稀だ。少し傷んだ髪を撫で、露になった額に口唇を寄せようとした。
「そこは口にする所だろう」
「狸寝入りとは最低だな」
高杉とバッチリと目があった。なんとなくそんな気がして、額にならしてやろうと思っていたのに。
「まぁ、子供じゃ仕方ねぇか」
「大人になったらしてやるよ」
珍しく土方から口付けた。その先はお預けとでも言うように、離れ際に高杉の口唇を舐める。
「ククッ……こいつは、とんだ悪い子みてぇだな」
「この先がシてぇなら、良い子にして待ってるんだな」
高杉は言われた通り、膝の上から頭をどかした。土方はニヤリと笑うとまた仕事に戻ってしまう。
あれほど初心で軽いふれあいですら、顔を赤くしたというのに。その事に性的な物とは違う快感を得た。
長くともあと二三日の辛抱である。大人になった土方と何をして遊ぼうか。ひとまず仕事が終わるまで、ゆっくりと考える事にした。
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