いつかこんな未来も-来るかもしれない運転-

 1週間後、小さめの旅行鞄を持って新幹線で向かった先は長野。2泊3日なのでゆっくりできそうだ。必要な物は着替えと財布と大きめのサブバックくらい。サブバックにはたんまりお土産を詰め込む予定だ。
 11月の長野は冷え込むようなので、羽織も忘れずに入れてある。それと小さめのカイロも持たされた。
 紅葉の時期には少し遅いので、見るのは難しそうだが場所によってはまだ残っているみたいだ。ガイドブックを読みながら十四郎が珍しくはしゃいでいるようだった。紅葉が見えずとも景色は綺麗だし、温泉や蕎麦もある。
 お土産までチェックしているのだから相当楽しみなのだろう。
 東京から長野まではあっという間で、まだ午前中である。ひとまず有名な観光地を目指す。やはり羽織を持ってきて正解だった。日差しはあるが肌寒い。お土産も見ながら歩き回ったのと、朝食を簡単に済ませていたせいか早めの昼を摂る事にした。やはりここは蕎麦だろうと、ガイドブックでチェックしていた店を探した。昼には少し早い時間だったからか、人気店でありながらすぐに席に着けた。流石に今回ばかりはマヨネーズは控え目になっていた。食べ終わり席を立つ頃には、店内に人が増え始めていた。
 腹ごなしに周辺をフラフラした後に予約した旅館へと向かう。駅からは離れた所にあるし、土地勘もあまりないので早めに向かっておくのがいい。
 時間をかけて辿り着いた旅館は想像していたよりもかなりいい、所謂超高級旅館のようで一瞬足がすくむ。ここまで用意されてフラれましたとか絶対に言えねえええええ!!とっくの昔に退路は断たれていた。元より逃げるつもりなどなかったが、確実に決めなければかぶき町には帰る事が出来なさそうだ。例え帰ったとしてもお妙の薙刀の錆コースな気がする。
「どうした?」
「い、いや?よっしゃあー!行くぞー!!」
「?お前、そんなに楽しみだったのか?」
 急に立ち止まったのを見て十四郎が振り返る。動揺と緊張を誤魔化すために気合いを入れたら「楽しみだったのか」と勘違いされた。その一部始終を玄関前で迎えてくれた仲居さんに見られていたようだが、一切表情を崩さない辺り流石プロである。
「すっげぇ…」
 案内されたのは離れの方で、そこからの景色は綺麗という一言に尽きる。十四郎も同じだったようで暫く2人でその景色を眺めていた。露天風呂も付いている。かぶき町の喧騒とは真逆の静かな世界が広がっていた。時間の流れでさえ、10分の1にでもなったようだ。
 夕食は18時頃にお願いしたので、それまで暫く時間がある。十四郎が煙草を吸いながら景色を眺めているうちに、荷物を寝室の方に移動させる。
 一度息を吸ってから、自分の旅行鞄を開ける。着替えを取り出すとそこには紙袋。十四郎がこちらへ来ていない事を確認してから、紙袋から指輪の箱を取り出して中を開けた。
 そこにはちゃんと2つの指輪が並んでいて、息を吐く。何度も鞄に入れた事を確認していたがこういう物は何度確認してもしたりない。外側はあっても中身がない、という事もあり得ない話ではない。すでに何度か夢に見て夜中に飛び起きている。あれは本当に心臓に悪い。寿命が確実に縮んだし、十四郎を誤魔化さなければならないのも骨が折れた。
 不安になる程に大切な物になっている事に正直驚いている。働くのは疲れるし、指輪など別に必要ないと思っていた。だが、今はどうだ。夢に出る程に自分の中に大切な物になっている。指輪はなくともプロポーズは出来る。言葉にしろと言われれば難しいが、それでも指輪という形にしてよかったと思う。
 鞄の底に指輪を戻して、主室に戻ると座椅子に腰かけた十四郎がお茶と菓子を食べていた。歳をとると好みも変わってくるのか、若い頃よりも甘い物を口にする事が増えた。用意された菓子が余程気に入ったのか、包み紙に書かれた名前をメモしている。
「これ、美味いぞ」と差し出された菓子は確かに美味かった。空いた小腹にちょうどいい。「土産に買ってやろうな」と言えば「ああ」と笑った。
 居ても立ってもいられなかったのか、十四郎はすぐに旅館の売店に向かい数箱を抱えて戻ってきた。
「買いすぎじゃねぇ?明日もあるんだぞ」
「売り切れてたらどうすんだよ。荷物になるなら送ればいいだろ」
「お前は相変わらずせっかちだな」
「お前は相変わらずぐうたらだ」
 そうして顔を見合わせて笑う。昔だったら口喧嘩だった。手も足も出た。いつからか笑い合うようになった。今も穏やかに笑い合う。
テレビは備え付けられていたが、付ける気にはならずゆっくり流れる時間を楽しんだ。
 運ばれた夕食もまた豪華でどれも美味い。山の幸から海の幸まで。昼に食べた蕎麦も美味かったが、こちらも美味くて箸が止まらない。見た目も楽しめるし、飾り切りや盛り付けは参考にもなる。地酒も美味くて最高としか言いようがない。
 すっかり膨れた腹をさする。もう食えないと言った気もするが、手は菓子に伸びている。
「まだ食うのか」
「甘い物は別腹だからな」
「俺の分も食ったのにか」
 俺も十四郎は若い頃はよく食べる方だった。特に真選組は身体が資本だ。丼に盛られた犬のエサを掻きこむ姿を何度も見た。神楽に「トシの方がご飯を沢山食べる」と言われてムキになり、負けるものかと暫く同じ量を食べ続けていたら俺だけが太っていった。解せぬ。
流石にもう昔みたいな量は食えなくなったが、旅行ということで気持ちが昂りいつもより食べていた。それは十四郎も同じらしい。
 1時間ほどゴロゴロしていたら腹も落ち着いてきた。明日は控え目に食べようと思う。
「おい、風呂は?」
「先に行っていいよ」
「一緒に入らねぇのか…?」
「入る!入ります!!」
 珍しい十四郎からのお誘いにすぐさま立ち上がった。少し腹が苦しいが一緒にお風呂に入る方が重要である。旅行という解放感か離れ専用の露天風呂だからか。とにかくこの旅館を手配した皆に感謝である。
 外は冷えるが湯は温かく心地よい。空には星が輝いている。おまけに十四郎が隣に居るのだからもう死んでもいいかもしれない。まだこんな所では死ねないけれど。死ぬなら十四郎の上がいい。というか正直抱きたい。俺が若かったら確実に抱いてる。若くないけど今すぐ抱きたい。下半身はまだまだ現役のつもりだ。
「おい、お前絶対に変な事を考えてるだろ」
「いいいいいや!?別に何にも考えてねぇよ?」
「そんな腹の出てるやつは俺は嫌だからな」
 十四郎は立ち上がって風呂から出てしまった。デザート以外は同じ量を食べた筈なのにその腹は少し膨らんでいるくらいだ。自分の腹を見るとポッコリと膨らんでいた。解せぬ。
 その日は早めに布団を入った。いつものように隣には十四郎が眠っている。旅館というだけで、いつも同じ筈なのに眠れない。明日もまた観光地を巡る予定だからもう眠っておきたいのに、一向に睡魔は訪れない。旅行が楽しみで眠れないというよりも、枕元の鞄の中身が原因だ。バカみたいに緊張している。ずっとずっと、プロポーズのシミュレーションを頭の中で数え切れない程にやってきたけれど、その答えは未だに出せないままでいる。
「おはよう」
「おはよー」
 正直あまり眠れなかった。それでも朝はくるし、プロポーズ計画で規則正しい生活をしていたお陰で寝坊せずに起床した。本当にありがたい。
朝食は軽めにした。昨日の夕食が腹にまだ残っている。一方の十四郎は普通に食べていたので、不思議でたまらない。この謎は一生解けないままなのかもしれない。
のんびり支度をして10時前には旅館を出た。
観光地を散策し次はもう少し早い時期に来て、紅葉が見たいと思った。もしくは夏でもいいかもしれない。プロポーズの事も今は頭の隅に置いておく。せっかくの機会なのだから楽しまなければ。
 旅館に戻る頃にはすっかり日が暮れてしまった。多少身体は疲れているが充実した1日だった。お土産があれもこれもと買っていたら、サブバックに入りきらなくて到着早々にフロントで配送の手続きを済まてしまう。
今日は控え目にしよう、と思っていたはずがやっぱり美味くて夕食は全て平らげてしまった。残すのは勿体ない。残されるのも辛い物がある。何より食べられない事の辛さを経験しているのもあるのだろう。他人から見れば可哀想と思われたとしても、過去が今の自分を作っている。
 腹が落ち着くと露天風呂に入ろうと言った。
酒を頼んでいたのでちびちびと飲む。酒と今日の思い出話で十四郎は饒舌だ。いつもと聞き手と話し手が逆転している。楽しそうに話す十四郎にうんうんと頷きながら「また来ような」と言えば小さく「うん」返事があった。
本当はもう少し一緒に居たかったが「逆上せそうだから先に上がる」と言って風呂を出た。浴衣に着替えて頭を乾かす。せめて今日くらいは大人しくしていて欲しい髪は、好き勝手に暴れ回る。諦めて寝室へと向かう。明かりは枕元だけにした。
 鞄を開けて紙袋を取り出した。最後にもう一度中身を確認する。
 正直な所、死ぬ程緊張しているし、本当にフラれてしまったらという不安で逃げ出してしまいたいくらいだ。告白した時よりも、初夜の時よりも緊張していると思う。心臓がバクバク煩いから心臓発作で死ぬんじゃないかとさえ思えてきた。結局、何と言ってプロポーズするか決まらなかった。こうなれば当たって砕けろである。砕けてしまったら困るが。
「銀時、もう寝たのか?」
 主室から十四郎の声がした。そちらの部屋に俺が居なかったので、寝てしまったのかと思ったのだろう。
「いいや、起きてるよ」
「そうか」
 覚悟を決めて正座して待つ。心臓が今にも飛び出そうだ。少し間を置いて襖が開けられた。
「よお」
「どうした?なんかお前変じゃねぇ?」
 平静を装って手を上げて挨拶してみたが大失敗である。このタイミングで挨拶するという時点でどう考えても平静ではない。明らかに挙動不審だ。
「ダイジョウブダヨ?フツウダヨ?」
「大丈夫なやつはそんなカタコトにはならねぇんだよ」
「トリアエズドウゾ」
 カタコトのまま座るように促せば、不審がりながらも正面に胡座をかいて座ってくれた。浪士を尋問する時の目をしている。「俺がやりました」と言い出しそうになる。何もやっていないけど。
「で、俺に何か話があるんだろ?夏頃から何かコソコソやってた事と関係してんのか?」
「えっ…気付いてたの…?」
「何年一緒に居ると思ってんだ。様子がおかしい事くらい分かるわ。それに、周りから『旦那が働いてるのを見ましたよ』って夏頃からやたら耳に入ってくるようになったんだよ。パチンコにも行ってねぇようだし何かあるな、と思った訳だ」
 現役を退いたとしても尋問も拷問も得意な十四郎は完全に鬼の副長状態。すみません、俺が犯人です。昔、白夜叉って言われてました。
 いつか何処からか多少は漏れるだろうと思っていた。目的は一部の人間しかしらないが、こっそり働いてる事を黙っていてくれとまでは言っていない。言ったとしても全員には無理な話である。それに十四郎も顔が広い。おまけにチンピラとはいえ警察官。洞察力や観察力が高いのは当たり前だし、なんたって真選組の頭脳である。
「いやぁ…実はさお前に話したい事があって」
「どうせこの旅行もその為のなんだろ?なんだ?俺に言えない借金か?浮気して女にガキでも出来たのか?それとも、老人ホームに入る金か?」
「わーーー!!!違う違う!!どれも違うから!!つーか俺どれだけ信用ねぇの!?」
「今までと日頃の行いだろ」
「ぐぅ…!」
 心当たりが多すぎて反論できない。会心の一撃である。これでは当たる前にガラスのハートが粉々に砕け散ってしまう。
 ロマンチックな台詞もシチュエーションも散々考えはしたが、そんな物に頼ってはいられない。下手な小細工をすれば首が飛ぶ。帯刀していない筈なのに刀が見えるもん。砕け散るか死ぬかの2択しかないもん。
そして、どこか覚悟を決めたような表情が寂しい。そんな顔をさせた原因は自分なのが苦しかった。
 こうなればストレートに!誤魔化そうとすれば事態は悪化する!勢いだ!勢い大事!!
「土方十四郎さん!」
「お、おう」
 眉毛と目の感覚を意識しながら姿勢を正して名を呼べば、連れて十四郎も背筋を伸ばした。脇に置いていた紙袋から箱を取り出す。出来ればもっとかっこよくてロマンチックでスマートに取り出したかった。
「俺と結婚してください!」
「はっ………………?」
 そこには漫画みたいな「ぽかん」とした表情をした十四郎がいた。本当にまんま過ぎて吹き出しそうになったのを堪えた俺を褒めて欲しい。
「黙ってて悪かった。指輪買う為にコッソリ働いてたんだ…今更かもしれねぇけど俺と結婚して一緒添い遂げてくれ…!!」
「え、あぁ、うん。…いや、あの…俺たち結婚してなかったのか…?」
「へっ?あーうん…ええと、俺はしてると思ってんだけど、十四郎そう思ってるで合ってる?」
「そのつもりだったんだが…違ったのか…?」
 驚いていた表情がみるみるうちに暗くなっていく。
「違いません!!結婚してます!!」
「じゃあ、なんで…」
「これには深い訳がありまして…」
 テレビで金婚式の夫婦を見た事。それを一緒に見ていた神楽に記念日やプロポーズはと聞かれた事。やってない事が新八やお妙にバレて、指輪を渡してプロポーズしろと言われた事を洗いざらい話した。十四郎は暗い物から呆れたような表情になる。自分で話していても情けなさでいっぱいである。
「事情は分かった。けど、せめて自分で考えてやった、くらい言えよ。嘘も方便だろ。神楽たちだってそういうつもりでやってんだろ。あぁ、本当に情けねえ…」
「面目ねぇ」
「俺は結構マジでガキでも出来たのかと思ったんだぞ。指輪なんぞに頼らなくても最初から言えばいいだろ」
「ごもっともです…」
「こんなジジイと一緒になっちまって、やっぱりガキが居ねぇの寂しいんじゃねぇか…って柄にもなく考えちまったんだぞ」
「悪ぃ…」
 同性同士では子供は出来ない。それはパートナー制度が出来ても、同性婚が認められても変える事が出来ない現実だ。
 幾度も話してきた事だが不安にならない訳ではない。あと何年一緒に居られるかも分からない。
「お前と何度も話してきた事だ。納得もしてる。女に産まれていれば、なんて思ったりとしねぇ。けどよ、この歳になっても不意に不安になる事があるんだ」
「俺もやっぱり不安になる時があるよ。お前は美人な嫁さん貰ってガキ作った方が丸くなってたんじゃねぇか、とか」
「おい、今なんか聞こえたぞ」
「まぁ、でもよ俺もお前もコイツじゃねぇと駄目ってなっちまってんだよ。好きだから不安になっちまうんだ。好きだから相手の幸せを願うんだ」
 十四郎をまっすぐ見詰めて話すのを続ける。
 同じように、十四郎が俺を見詰め返している。
「寂しさを埋める為に子供は作るんじゃねぇ子供は作れねぇけど、残せるモンはある。俺ぁ、新八や神楽に俺が渡せるモンを全部渡したつもりだ。あいつらの子供にもな。お前にだって、沖田くんを局長に据えるのに全部教えたろ?組だってお前が最初に基盤を作って、今の奴らに全部引き継いだろ?つまり、お前は母ちゃんで組は子供だ。お前が育てて次に繋いだんだ。ちゃんと俺たちは未来に繋げられるんだよ」
「なら近藤さんが父ちゃんか」
「なんでそこに食いついてくる訳!?そういう話じゃなかったよね!?ゴリラに許すのは組だけだからな!お前の旦那は俺だからな!!」
「ん」
「あぁもうこの子は…とにかく俺にはお前が必要で、お前には俺が必要なの!この歳まで不安になって道に迷い捲ってんだ、最後まで一緒にこの道を迷って肩並べて歩いていってくれや」
「それがお前のプロポーズ、って事でいいか?」
「これでいいです!」
「お前はすぐフラフラするし、勝手に居なくなるからな。仕方ねぇから最後まで一緒に居てやるよ」
「お前こそ暴走して迷子になっちまうからな。俺が最後まで隣で手ぇ繋いでてやるよ」
「上等」
 正直自分でも何を言ってるかわからねぇし、「上等」もOKの返事なの?どうなの?わからねぇ!と思ったが笑っているからたぶんOKなのだと思う。笑い方が喧嘩相手を見付けた時と同じだったけど。あながち間違いではない気もするからそれでいいか。愛してると言うよりも喧嘩してる方が俺たちかもしれない。
「ほら」
「え、なに?」
「なに?じゃねぇよ。指輪付けねぇのかよ」
「あっ!ああ指輪ね!忘れてたわ!」
「お前な…ボケが始まってるし遺産もねぇし、結婚すんの止めようかな…」
「やめてえええええ!!指輪付けさせてくださいいいいい!!」
 ひとまず、俺と十四郎の間に箱を置くとわざとらしく「ゴホン」と咳をひとつ。
「汝、土方十四郎は病める時も健やかなる時も…………なんだっけ?あーもういいや、坂田銀時を愛する事を誓いますか?」
「うろ覚えでやるんじゃねぇよ!!それただ言いたかっただけだろ!!」
「仕方ねぇだろ!牧師の依頼なんて受けた事ねぇんだから!ドラマの知識しかねぇわ!!」
「威張ってんじゃねぇ!もうちょっと考えてからやれよ!!」
「俺だって本当は色々考えたわ!で、誓うの?誓わないの?どっち!?」
「マジでなんでこんなヤツ好きになったんだろ…誓います!これでいいんだろ!」
 半分キレ気味に「誓います」と答えた十四郎の顔は暗い部屋でも分かる赤くなっているのが見えた。
「じゃあどうぞ」
「俺もやんのかよ」
「やって欲しいなぁー」
「わかったよ…汝、坂田銀時は土方十四郎を…一生愛する事を誓え」
「誓います」
 大胆にアレンジしてきた十四郎が不適に笑う。お前を一生愛せるなんて幸せ以外の何者でもない。
膝の上に置かれていた十四郎の左手を取って、薬指に指輪を嵌めていく。十四郎も同じように、俺の左手を取って嵌めてくれた。
 これで、残りの時間は全部俺の物でお前の物だ。
「綺麗なもんだな」
 左手だけを布団から出し、薬指を眺めながら十四郎が呟いた。
「だろ?指輪作ってる職人ってさ、廃刀令が出るまでは刀の鍔を作ってたんだってさ」
「そうか。きっと見事だったんだろうな」
「形は変わっても魂は変わらねぇ」
「ああ」
「帰ったら土産渡して報告だな」
「それが終わったら役所に行かねぇとな」
「役所?」
「結婚したんだろ?婚姻届出さねぇのか?」
「出します!出すに決まってんだろ!」
「先に届け貰っといて報告の時に証人の欄を書いて貰うか」
「そうだな、そうしよう」
「土産買い足さねぇとな」
「ああ。絶対に足りねぇな」
 土産なんかじゃ返せないデカイ借が出来てしまった。これから先、それを理由に集られても仕方ないだろう。あと40年くらいか。もっともっと長く一緒に居られたらいい。
「灯り消すぞ」
「ああ、おやすみ銀時」
「おやすみ、十四郎」
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