魚にされた高杉と子土の話
その後の二人 クリスマス
高杉は険しい表情で見つめていた。今にも人を殺しそうな表情だ。作業着に赤い染みでも付いていたなら、警察を呼ばれていた事だろう。
通りがかった人もその物々しい雰囲気にギョッとするが、高杉が見ている物が分かると「ああそうか」と気にならなくなる。そして一部の人間からは「がんばれ」と心の中で応援させていたりする。
ガラス越しには玩具がディスプレイされていた。その周りにはツリーやプレゼントBOX。赤や緑、星がキラキラと輝く装飾。「メリークリスマス」の文字と赤い服を着た老人が印刷されたポスターが貼られていた。
今の世には、夜中に良い子にプレゼントをくれるサンタクロースと呼ばれる奇天烈な老人がいるらしい。それを知ったのはつい最近の事だ。
高杉が生まれた頃にはそんな人物は存在していなかった。外国には居たらしいが。少なくとも、高杉の時代に居たのは妖怪とかそんな物だ。自分も似たような物に変えられてしまっていたし。良い妖怪もいるが、悪い妖怪の話を聞く事の方が多かった。夜な夜な枕元に、と言われると枕返ししか浮かばない。
高杉が人間に戻って初めての冬だ。そんな認識だったからか、話に尾ひれが付いてしまった。職場では「顔に似合わず大人になるまでサンタを信じていた青年」という事になっている。顔に似合わず、は失礼だと思うが顔が怖いのは自覚している。
自分を魚に変えた神様は随分とイタズラ好きなのかもしれない。
そもそもなぜ魚にしたのか。数百年ぶりの二足歩行には苦労した。始めは立っているのもままならない。まともに歩けるようになるのには数ヶ月かかった。そこから就職先を探し、生活が安定している事を証明。そうして、ようやく迎えに行く事が出来たのだ。
歩く事に時間はかかったのに、現代の一般常識は頭に入っていた。例えば通貨だとか、機械や電車の乗り方など。あの池に居た頃も、全く何も知らない訳ではなかった。けれど、情報源は限られいる。神様は生活にある程度困らないようにしてくれたらしい。どうやったのか、戸籍まで用意されていた。だが、サンタクロースという情報はくれなかった。
何十件、何百件と就職先を探し、ようやく今の小さな町工場に辿り着いた。戸籍はあれど、学歴も職歴もない。おまけにこの見た目である。門前払いなんてザラだった。
それでも必死に高杉が耐えられたのは、ひとえにあの子供存在である。あの子の為にも手を汚す事は出来なかった。
人の良さそうな(実際には良すぎる)社長は、やや怯えた表情で面接をしてくれた。昔の高杉ならいいカモだと騙したり、殴って財産を奪っていたに違いない。
そこで「親戚の子供を引き取りたい」と話した。どこもかしこも落ちて、ロクに話も聞かない会社ばかりだった。だが、ここの社長は話を聞こうとしてくれた。ヤケとも言えたし、口が滑ったとも言えた。話すつもりのなかった話をしてしまった。
それにいたく感激した社長はその場で採用を決めてくれた。おまけに、住む場所まで用意してくれたのだ。
古い木造アパート。大家は社長の知り合いで、これもまた人の良すぎる老婆だった。前の住人が夜逃げしたらしい。家具を撤去するにもお金がかかる。自分ではとても出来ない。気にならないなら、そのまま使ってくれていいと言われた。
社長も老婆も心配になる程のお人好しだ。悪人が騙しに来たらどうするのか。自分が言えた立場ではないが、番犬くらいにはなれるだろう。
結局、何も決まらず家路に着いた。テレビも雑誌も見ない。流行りも子供が好む物も何も分からない。自分が子供だった頃とは何もかもが違っている。
聞いた所であの子供は何も欲しがらなかった。施設から魚の図鑑を餞別代わりに譲ってくれたが、別に気にいっていたという事でもない。あれには魚が、唯一高杉の影を追っているだけなのだから。
そういう生活だったから仕方がないのかもしれない。笑うようになったとはいえ、口数は多くはない。気づけば二人とも一日中無言、なんて事もあった。
それでも膝の上に乗って図鑑を読んだり、布団に入り込んで来る。一応は、心を開いてくれているのだろう。
「ただいま」
声に反応して図鑑に落ちていた視線が上がる。大きな目がぱちぱちと二三度まばたきをした。
小さくて狭い部屋は玄関を開ければすぐに子供の姿を見る事が出来る。広くてもゴミの中で生活していた時よりも、すぐに見付けられる。
「いい子にしてたか」
頭を撫でてやると擽ったそうにした。仕事中は大家に見て貰っている。保育園に行くような年齢ではあるが、小学校に上がるまでは数ヶ月。集団生活にはある程度慣れはあるが不安も残る。無理に入れる必要もないだろうと判断をした。
知らない人間にはまだ怯える時があるようだ。だが、大家には懐いているようで安心している。逆に大家も孫が出来たと喜んで世話を焼いてくれた。
小さな冷蔵庫にはタッパーが二つ。食事の面倒まで見られている。どうにか米の炊き方は覚えたが、料理となると簡単にはいかない。
火は簡単に点ける事が出来るが、調理の行程が変わった訳ではない。火加減を謝ればすぐに焦げるし、調味料を間違えれば料理と呼べぬ物が出来上がる。米も水加減など分からず、何度も失敗したものだ。
惣菜がスーパーやコンビニで手に入るのはありがたい。ビニール袋から割引シールの貼られた物を取り出した。統一感はない。食えればなんでもいいし、子供は何が好きかが分からない。心を開ききっていないのか、最初から「好きな物」がないのか。
「トシ。欲しいモンはねぇのか?」
食事を終えて落ち着いた所で、膝の上の子供に直接尋ねてみた。見下ろした頭は小さく、癖っ毛なのか髪は毛先が跳ねている。
同僚曰く「サンタさんにお手紙を書こう」と言って、子供の欲しい物を聞いているらしい。
しかし、子供の所にサンタは来た事がない。知ってはいるようだが、ピンと来てはいないようである。
高杉もストレートに聞いた方が早いとそうする事にした。子供の思ってる物と違っていたり、売り切れて泣かれた、という失敗談も聞かされたからだ。
絵本を読んでいた目が上に向く。暫く考える仕草をして頭を横に数回振った。そして、また視線を落とす。
「いらない」
そういう意味である。別に高杉が嫌いだとか、機嫌が悪いとか、喧嘩しているとか、ではない。本当に「必要ない」という意味だ。
子供は与えられる事に慣れていなかった。求めても与えられる所か、拒絶されてきた。当然愛情もなく、子供らしい生活すら出来ていない。
欲求がない。同僚の話では、買い物に出るとすぐに「あれが欲しい、これが欲しいと騒ぐ」のだという。実際に、駄々をこねて泣き出す様子も見た事もある。みんな膝の上に居る子供と同じくらいだった。
拙かった言葉も読み書きも、ゆっくりだが出会った頃よりも随分と上手くなっている。大家が色々と教えてくれているようで「この子はとても頭がいいわ」と言っていた。
育っていないのは感情の部分だろう。子供の境遇を聞いて、焦らず少しずつ接してやればいい、と言われてもやはり焦る気持ちがあるのは仕方がない。
「欲しい物はないか」という質問も何度かしているが、やはり答えは「いらない・欲しい物はない」である。
無理にやるものではない。だが、せっかく貰えるなら貰っておけばいいのにと思う。自分ならありがたく貰う。それどころか力付くで奪うような生き方をしていた。
大きくため息を吐くと子供が震えたのが分かった。両親はため息を吐いた後に手を上げたり、怒鳴ったりする事がよくあったらしい。
それは根深く子供の中に染み付いて離れない。高杉にそういうつもりはなくても、反射的に身を固くしてしまう。
「悪い。お前の事を怒る事はしねェよ」
子供を抱えて膝の上からおろす。正面でしっかり顔を見えるようにした。涙が零れそうになっている瞳に罪悪感を覚えた。
「ただ、何かお前にプレゼントしてやりてぇってだけだ」
昔の高杉ならあり得ない言葉がスルリと口から出てきた。自分でも驚いているくらいだ。
「無理言って悪かったよ。まァ何か欲しいモンが出来たら教えてくれや」
子供も泣かせてまで上げるような物でもない。いつか、傷が癒えて自分から何かねだってきたら買ってやればいい。
高杉が危害を加えないと、安心したのか子供はゆっくりと頷いた。頷いて、考えるような仕草をした。
じっと待っていると、子供の手が高杉の手に伸びてくる。小さいが暖かい手だ。そこからじんわりと暖かさが広がっていく。
「たかすぎ。手、つめたい」
「そうだな」
「だから、トシこれがいい」
そう言うと絵本を捲る。そこには子狐が手袋をはめた絵が描かれていた。
「……まったくお前は」
高杉は心の中で白旗を振った。喧嘩で誰にも負けた事がなかったのに、小さな子供に簡単に負けてしまった。
「なら今度の休みに一緒に買いに行くか。トシが選んでくれるんだろ?」
「……うん!」
その時にトシの手袋も一緒に買ってやろう。気に入った物があれば、マフラーでも帽子でも買ってやる。あの大型のショッピングモールなら、本屋だってある。買ってやるのは絵本でもいい。靴に入った菓子でも、いちごの乗ったケーキでも。世話になりっぱなしの大家にも礼のひとつでもしなければ、また魚にされかねない。
ああ本当に敵わない。たった一人の子供に変えられてしまった。また足に確かな重みを感じた。数百年感じる事のなかった、足の痺れに嫌だとは少しも思わなかった。
高杉は険しい表情で見つめていた。今にも人を殺しそうな表情だ。作業着に赤い染みでも付いていたなら、警察を呼ばれていた事だろう。
通りがかった人もその物々しい雰囲気にギョッとするが、高杉が見ている物が分かると「ああそうか」と気にならなくなる。そして一部の人間からは「がんばれ」と心の中で応援させていたりする。
ガラス越しには玩具がディスプレイされていた。その周りにはツリーやプレゼントBOX。赤や緑、星がキラキラと輝く装飾。「メリークリスマス」の文字と赤い服を着た老人が印刷されたポスターが貼られていた。
今の世には、夜中に良い子にプレゼントをくれるサンタクロースと呼ばれる奇天烈な老人がいるらしい。それを知ったのはつい最近の事だ。
高杉が生まれた頃にはそんな人物は存在していなかった。外国には居たらしいが。少なくとも、高杉の時代に居たのは妖怪とかそんな物だ。自分も似たような物に変えられてしまっていたし。良い妖怪もいるが、悪い妖怪の話を聞く事の方が多かった。夜な夜な枕元に、と言われると枕返ししか浮かばない。
高杉が人間に戻って初めての冬だ。そんな認識だったからか、話に尾ひれが付いてしまった。職場では「顔に似合わず大人になるまでサンタを信じていた青年」という事になっている。顔に似合わず、は失礼だと思うが顔が怖いのは自覚している。
自分を魚に変えた神様は随分とイタズラ好きなのかもしれない。
そもそもなぜ魚にしたのか。数百年ぶりの二足歩行には苦労した。始めは立っているのもままならない。まともに歩けるようになるのには数ヶ月かかった。そこから就職先を探し、生活が安定している事を証明。そうして、ようやく迎えに行く事が出来たのだ。
歩く事に時間はかかったのに、現代の一般常識は頭に入っていた。例えば通貨だとか、機械や電車の乗り方など。あの池に居た頃も、全く何も知らない訳ではなかった。けれど、情報源は限られいる。神様は生活にある程度困らないようにしてくれたらしい。どうやったのか、戸籍まで用意されていた。だが、サンタクロースという情報はくれなかった。
何十件、何百件と就職先を探し、ようやく今の小さな町工場に辿り着いた。戸籍はあれど、学歴も職歴もない。おまけにこの見た目である。門前払いなんてザラだった。
それでも必死に高杉が耐えられたのは、ひとえにあの子供存在である。あの子の為にも手を汚す事は出来なかった。
人の良さそうな(実際には良すぎる)社長は、やや怯えた表情で面接をしてくれた。昔の高杉ならいいカモだと騙したり、殴って財産を奪っていたに違いない。
そこで「親戚の子供を引き取りたい」と話した。どこもかしこも落ちて、ロクに話も聞かない会社ばかりだった。だが、ここの社長は話を聞こうとしてくれた。ヤケとも言えたし、口が滑ったとも言えた。話すつもりのなかった話をしてしまった。
それにいたく感激した社長はその場で採用を決めてくれた。おまけに、住む場所まで用意してくれたのだ。
古い木造アパート。大家は社長の知り合いで、これもまた人の良すぎる老婆だった。前の住人が夜逃げしたらしい。家具を撤去するにもお金がかかる。自分ではとても出来ない。気にならないなら、そのまま使ってくれていいと言われた。
社長も老婆も心配になる程のお人好しだ。悪人が騙しに来たらどうするのか。自分が言えた立場ではないが、番犬くらいにはなれるだろう。
結局、何も決まらず家路に着いた。テレビも雑誌も見ない。流行りも子供が好む物も何も分からない。自分が子供だった頃とは何もかもが違っている。
聞いた所であの子供は何も欲しがらなかった。施設から魚の図鑑を餞別代わりに譲ってくれたが、別に気にいっていたという事でもない。あれには魚が、唯一高杉の影を追っているだけなのだから。
そういう生活だったから仕方がないのかもしれない。笑うようになったとはいえ、口数は多くはない。気づけば二人とも一日中無言、なんて事もあった。
それでも膝の上に乗って図鑑を読んだり、布団に入り込んで来る。一応は、心を開いてくれているのだろう。
「ただいま」
声に反応して図鑑に落ちていた視線が上がる。大きな目がぱちぱちと二三度まばたきをした。
小さくて狭い部屋は玄関を開ければすぐに子供の姿を見る事が出来る。広くてもゴミの中で生活していた時よりも、すぐに見付けられる。
「いい子にしてたか」
頭を撫でてやると擽ったそうにした。仕事中は大家に見て貰っている。保育園に行くような年齢ではあるが、小学校に上がるまでは数ヶ月。集団生活にはある程度慣れはあるが不安も残る。無理に入れる必要もないだろうと判断をした。
知らない人間にはまだ怯える時があるようだ。だが、大家には懐いているようで安心している。逆に大家も孫が出来たと喜んで世話を焼いてくれた。
小さな冷蔵庫にはタッパーが二つ。食事の面倒まで見られている。どうにか米の炊き方は覚えたが、料理となると簡単にはいかない。
火は簡単に点ける事が出来るが、調理の行程が変わった訳ではない。火加減を謝ればすぐに焦げるし、調味料を間違えれば料理と呼べぬ物が出来上がる。米も水加減など分からず、何度も失敗したものだ。
惣菜がスーパーやコンビニで手に入るのはありがたい。ビニール袋から割引シールの貼られた物を取り出した。統一感はない。食えればなんでもいいし、子供は何が好きかが分からない。心を開ききっていないのか、最初から「好きな物」がないのか。
「トシ。欲しいモンはねぇのか?」
食事を終えて落ち着いた所で、膝の上の子供に直接尋ねてみた。見下ろした頭は小さく、癖っ毛なのか髪は毛先が跳ねている。
同僚曰く「サンタさんにお手紙を書こう」と言って、子供の欲しい物を聞いているらしい。
しかし、子供の所にサンタは来た事がない。知ってはいるようだが、ピンと来てはいないようである。
高杉もストレートに聞いた方が早いとそうする事にした。子供の思ってる物と違っていたり、売り切れて泣かれた、という失敗談も聞かされたからだ。
絵本を読んでいた目が上に向く。暫く考える仕草をして頭を横に数回振った。そして、また視線を落とす。
「いらない」
そういう意味である。別に高杉が嫌いだとか、機嫌が悪いとか、喧嘩しているとか、ではない。本当に「必要ない」という意味だ。
子供は与えられる事に慣れていなかった。求めても与えられる所か、拒絶されてきた。当然愛情もなく、子供らしい生活すら出来ていない。
欲求がない。同僚の話では、買い物に出るとすぐに「あれが欲しい、これが欲しいと騒ぐ」のだという。実際に、駄々をこねて泣き出す様子も見た事もある。みんな膝の上に居る子供と同じくらいだった。
拙かった言葉も読み書きも、ゆっくりだが出会った頃よりも随分と上手くなっている。大家が色々と教えてくれているようで「この子はとても頭がいいわ」と言っていた。
育っていないのは感情の部分だろう。子供の境遇を聞いて、焦らず少しずつ接してやればいい、と言われてもやはり焦る気持ちがあるのは仕方がない。
「欲しい物はないか」という質問も何度かしているが、やはり答えは「いらない・欲しい物はない」である。
無理にやるものではない。だが、せっかく貰えるなら貰っておけばいいのにと思う。自分ならありがたく貰う。それどころか力付くで奪うような生き方をしていた。
大きくため息を吐くと子供が震えたのが分かった。両親はため息を吐いた後に手を上げたり、怒鳴ったりする事がよくあったらしい。
それは根深く子供の中に染み付いて離れない。高杉にそういうつもりはなくても、反射的に身を固くしてしまう。
「悪い。お前の事を怒る事はしねェよ」
子供を抱えて膝の上からおろす。正面でしっかり顔を見えるようにした。涙が零れそうになっている瞳に罪悪感を覚えた。
「ただ、何かお前にプレゼントしてやりてぇってだけだ」
昔の高杉ならあり得ない言葉がスルリと口から出てきた。自分でも驚いているくらいだ。
「無理言って悪かったよ。まァ何か欲しいモンが出来たら教えてくれや」
子供も泣かせてまで上げるような物でもない。いつか、傷が癒えて自分から何かねだってきたら買ってやればいい。
高杉が危害を加えないと、安心したのか子供はゆっくりと頷いた。頷いて、考えるような仕草をした。
じっと待っていると、子供の手が高杉の手に伸びてくる。小さいが暖かい手だ。そこからじんわりと暖かさが広がっていく。
「たかすぎ。手、つめたい」
「そうだな」
「だから、トシこれがいい」
そう言うと絵本を捲る。そこには子狐が手袋をはめた絵が描かれていた。
「……まったくお前は」
高杉は心の中で白旗を振った。喧嘩で誰にも負けた事がなかったのに、小さな子供に簡単に負けてしまった。
「なら今度の休みに一緒に買いに行くか。トシが選んでくれるんだろ?」
「……うん!」
その時にトシの手袋も一緒に買ってやろう。気に入った物があれば、マフラーでも帽子でも買ってやる。あの大型のショッピングモールなら、本屋だってある。買ってやるのは絵本でもいい。靴に入った菓子でも、いちごの乗ったケーキでも。世話になりっぱなしの大家にも礼のひとつでもしなければ、また魚にされかねない。
ああ本当に敵わない。たった一人の子供に変えられてしまった。また足に確かな重みを感じた。数百年感じる事のなかった、足の痺れに嫌だとは少しも思わなかった。
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