共闘(高土)
「…………すごかった」
映画が終わった後、感動しずきて言葉が出なかった。語彙力を失くす、というのを聞いた事があるがこれがそうなのかと実体験した所だ。
話題になっている映画を観に来ていた。普段は任侠映画が主でインド映画は初めてだった。字幕だし、しかも三時間もある。
口コミや前評判は良くても、実際に観てみたら……なんて事もよくある話。だが、一切そんな事はなかった。
最初から最後まで面白くて三時間があっという間に過ぎた。特に評判の良かったダンス以外もアクションシーンはハラハラしたし、真実に近づいた時にはハンカチを持って来なかった事を後悔した程だ。尊敬する人物は竹内のアニキだったが、今回そこに新たに二人のアニキが加わった。
余韻に浸りながらパンフレットを買い求め、胸に抱き締めた。そのまま劇場の外へと一歩踏み出した時だった。
「高杉…?」
「土方か…?」
バッタリと同級生に出くわした。名前を知っているくらいで話た事はほぼない。高杉はあまり学校に来ないが、成績はいいから教師陣は頭を抱えているという噂だ。
まさかこんな所で、と驚いたのだがそれよりも高杉が胸に持っている物の方が気になった。高杉の視線も同様に俺の胸元の物に向かっている。
「それ…お前も…?」
高杉も自分と全く同じ物を持っていた。同じタイミングで外に出たなら、同じシアター内で観ていたのだろう。
「なあ、高杉!!時間あるか!?良かったら映画の話しねぇか!?」
なんたる偶然か。この気持ちを共有出来る人間が目の前に居る! 映画の興奮と偶然の出来事にアドレナリンが全開になって、普段なら考えられないような事を口走っていた。
「おお!いいぜ!そこのズタバでいいか!?」
高杉は少し驚いた表情を見せたものの、すぐにOKの返事をした。こちらも少々興奮気味の様子だった。そのまま向かいにあるズタバに走っていき、適当に注文すると一番奥の席を陣取る。
それから、ひたすらに映画の感動を語り合った。頼んだコーヒーで渇きを潤しながら、ずっと話続けていた。
高杉は意外にも聞き上手で、俺が勝手に盛り上がっていたに近かった。だが、要所要所で考察を交えて話たり、俺が言語化できない感情を上手く言葉にしてくれた。
気付いたら何時間も喋っていたらしい。外は暗くなっていて、母親から「夕飯はどうするの?」というメッセージにさえ気付いていなかった。少しだけ店員の視線を感じたが、今の俺は無敵みたいなものだから全然平気だった。
その日を切欠にして、高杉と話すようになった。休み時間に屋上で駄弁ってみたり、寝不足になるまでメッセージでやり取りをした。実は喫煙仲間で秘密を共有したのも結束が強くなった理由かもしれない。抱いていたイメージより高杉はいいヤツだったし馬があった。
高杉と仲良くなるにつれて、同じような夢を見るようになった。始めの頃はぼんやりとしていたが、次第にハッキリとしてくる。
SF映画に出てくる宇宙人みたいな生き物が俺たちを取り囲んでいる。俺は高杉と背中合わせでそいつらと戦っていた。
俺は黒い制服みたいな格好で、高杉は派手な着物を着ていた。手には刀が握られている。
バッタバッタと敵を斬り倒していく様は我ながらカッコよかった。時代劇はあまり見たことがないが純粋にカッコいい。夢の中なら肩車でも戦えるんじゃないかと思ったけれど、それはどう頑張っても夢の中の俺たちはやってくれなかった。
でも、互いを信頼しあって共闘する様は二人のアニキたちさながらで夢で見る度に興奮した。いつも途中で終わってしまうけど、最後は二人で協力してボスを倒すのだろう。
ある日、それとなく夢の話を高杉にしてみた。一人でこの興奮を抱え込めなくて話したくて仕方なかったからだ。
「それ、俺も見てる」
高杉から予想だにしていなかった言葉が返ってきてさらに興奮した。内容を詳しく聞けば殆んど同じ。「こんな奇跡があるのか!?」と今度は二人で飛び上がった。
「これ、前世の記憶とかそういうやつじゃねぇ?」
「俺たち前世から親友だったんだな」
普段ならそんなオカルト的な事は信じないが、妙に納得した。それに共通の夢を見て内容も同じなら疑いようもない。
「そうだ、別の映画館でまだやってるみてぇだから明日観に行かねぇか?」
「いいな!何時からだ?」
「十二時の回だから……十時に駅前に集合でどうだ?」
映画がきっかけで親友を得られるなんて思いもしなかった。なんとなくアニキたちを俺たちに重ねてみたり。映画のように秘密なんて持っていないから、卒業しても高杉と遊べたら楽しいだろうなぁと考えている。
映画が終わった後、感動しずきて言葉が出なかった。語彙力を失くす、というのを聞いた事があるがこれがそうなのかと実体験した所だ。
話題になっている映画を観に来ていた。普段は任侠映画が主でインド映画は初めてだった。字幕だし、しかも三時間もある。
口コミや前評判は良くても、実際に観てみたら……なんて事もよくある話。だが、一切そんな事はなかった。
最初から最後まで面白くて三時間があっという間に過ぎた。特に評判の良かったダンス以外もアクションシーンはハラハラしたし、真実に近づいた時にはハンカチを持って来なかった事を後悔した程だ。尊敬する人物は竹内のアニキだったが、今回そこに新たに二人のアニキが加わった。
余韻に浸りながらパンフレットを買い求め、胸に抱き締めた。そのまま劇場の外へと一歩踏み出した時だった。
「高杉…?」
「土方か…?」
バッタリと同級生に出くわした。名前を知っているくらいで話た事はほぼない。高杉はあまり学校に来ないが、成績はいいから教師陣は頭を抱えているという噂だ。
まさかこんな所で、と驚いたのだがそれよりも高杉が胸に持っている物の方が気になった。高杉の視線も同様に俺の胸元の物に向かっている。
「それ…お前も…?」
高杉も自分と全く同じ物を持っていた。同じタイミングで外に出たなら、同じシアター内で観ていたのだろう。
「なあ、高杉!!時間あるか!?良かったら映画の話しねぇか!?」
なんたる偶然か。この気持ちを共有出来る人間が目の前に居る! 映画の興奮と偶然の出来事にアドレナリンが全開になって、普段なら考えられないような事を口走っていた。
「おお!いいぜ!そこのズタバでいいか!?」
高杉は少し驚いた表情を見せたものの、すぐにOKの返事をした。こちらも少々興奮気味の様子だった。そのまま向かいにあるズタバに走っていき、適当に注文すると一番奥の席を陣取る。
それから、ひたすらに映画の感動を語り合った。頼んだコーヒーで渇きを潤しながら、ずっと話続けていた。
高杉は意外にも聞き上手で、俺が勝手に盛り上がっていたに近かった。だが、要所要所で考察を交えて話たり、俺が言語化できない感情を上手く言葉にしてくれた。
気付いたら何時間も喋っていたらしい。外は暗くなっていて、母親から「夕飯はどうするの?」というメッセージにさえ気付いていなかった。少しだけ店員の視線を感じたが、今の俺は無敵みたいなものだから全然平気だった。
その日を切欠にして、高杉と話すようになった。休み時間に屋上で駄弁ってみたり、寝不足になるまでメッセージでやり取りをした。実は喫煙仲間で秘密を共有したのも結束が強くなった理由かもしれない。抱いていたイメージより高杉はいいヤツだったし馬があった。
高杉と仲良くなるにつれて、同じような夢を見るようになった。始めの頃はぼんやりとしていたが、次第にハッキリとしてくる。
SF映画に出てくる宇宙人みたいな生き物が俺たちを取り囲んでいる。俺は高杉と背中合わせでそいつらと戦っていた。
俺は黒い制服みたいな格好で、高杉は派手な着物を着ていた。手には刀が握られている。
バッタバッタと敵を斬り倒していく様は我ながらカッコよかった。時代劇はあまり見たことがないが純粋にカッコいい。夢の中なら肩車でも戦えるんじゃないかと思ったけれど、それはどう頑張っても夢の中の俺たちはやってくれなかった。
でも、互いを信頼しあって共闘する様は二人のアニキたちさながらで夢で見る度に興奮した。いつも途中で終わってしまうけど、最後は二人で協力してボスを倒すのだろう。
ある日、それとなく夢の話を高杉にしてみた。一人でこの興奮を抱え込めなくて話したくて仕方なかったからだ。
「それ、俺も見てる」
高杉から予想だにしていなかった言葉が返ってきてさらに興奮した。内容を詳しく聞けば殆んど同じ。「こんな奇跡があるのか!?」と今度は二人で飛び上がった。
「これ、前世の記憶とかそういうやつじゃねぇ?」
「俺たち前世から親友だったんだな」
普段ならそんなオカルト的な事は信じないが、妙に納得した。それに共通の夢を見て内容も同じなら疑いようもない。
「そうだ、別の映画館でまだやってるみてぇだから明日観に行かねぇか?」
「いいな!何時からだ?」
「十二時の回だから……十時に駅前に集合でどうだ?」
映画がきっかけで親友を得られるなんて思いもしなかった。なんとなくアニキたちを俺たちに重ねてみたり。映画のように秘密なんて持っていないから、卒業しても高杉と遊べたら楽しいだろうなぁと考えている。
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